真・恋姫†無双-白き旅人- 第十三章
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「はぁ・・・」

 

 

薄暗い部屋の中

一人の少女が、深い溜め息を吐き出していた

薄い紫色の髪を三つ編みにした、背の低い少女だった

その手には手錠が付けられ、足にも足枷がはめられていた

 

 

「どうして、こんなことになっちゃったんだろう・・・?」

 

 

“こんなこと”というのは、恐らくは今の状況のことを言っているのだろう

薄暗い部屋の中、こうして自身が閉じ込められている状況のことを

しかし、だ

このような状況に陥っているのは、何も彼女だけではないのだ

 

その証拠に・・・

 

 

 

「まったく・・・嬢ちゃんの言うとおりだ」

 

 

彼女のすぐ隣には、彼女と同じように拘束された一人の男がいたのだ

ボサボサとした髭に、随分と体格のいい男が

 

 

「厠とか食事とか、そこら辺は世話されっから・・・まだ、いいけどよぉ」

 

 

“いい加減、帰りてぇぜ”と、男は溜め息を吐き出した

それから苦笑を浮かべ、“はは”と笑いを漏らす

 

 

「折角“御遣い様”に助けてもらったってぇのによぉ・・・ツイテないったらねぇぜ」

 

「“御遣い様”、ですか?」

 

 

ふと、男が呟いた名前

その名前に、少女は首を傾げる

そんな少女に向い、男はニッと笑って見せた

 

 

「名前くらい聞いたことがあるだろ?

あの“天の御遣い様”よぉ

乱世を終わらせて、三年前に消えたっていう」

 

「天の、御遣い・・・」

 

 

その名は、少女も聞いたことがあった

三年前・・・乱世の終わりと共に消えていったという

英雄の名を

 

 

「その御遣い様によぉ、俺ぁ助けてもらったのよ

今から、ほんの数か月前にな」

 

「え?

けど、御遣い様は・・・」

 

「だから、帰ってきたんだよ

御遣い様は、この大陸にな」

 

 

言って、男は笑う

そんな男の言葉に、少女はキョトンとしていた

 

 

「その顔は、信じてねぇって顔だな?」

 

「あ、いえ、その・・・」

 

「かっはっは、気にすんな!

普通は、そう思うもんなぁ」

 

 

“それによぉ”と、男は何か思い出すような表情を浮かべ・・・“笑った”

 

 

 

「山賊なんてやってた俺に、御遣い様は言ったんだよ

“力を貸してくれ”ってよぉ

俺にとっちゃ、それだけでいいんだ

この大陸の中、こんな俺のことを“必要”としてくれた

そんだけで、俺はいいんだよ」

 

 

 

 

『今からでも間に合うさ

君の・・・君たちの力を、この国の今の為に

そしてこれから先の未来の為に、貸してくれないかな?』

 

 

 

 

男は、今でも思いだせる

あの日、森の中で出会った・・・あの、“白き旅人”のことを

あの日、自分を必要だと・・・そう言ってくれた青年のことを

 

 

 

「おじさん・・・」

 

「かっはっは、おじさんはよしてくれ

こう見えて結構若いんだぜ

なにより、俺にはちゃんと“周倉”ってぇ名前があんだ」

 

「す、すいません・・・周倉さん」

 

 

“気にすんな”と、周倉

それから彼は何かを思い出したかのように、少女を見つめ呟いた

 

 

「そういや、嬢ちゃん

随分と今更な感じもするがよぉ・・・名前は、なんてぇんだ?」

 

「私の、名前ですか?」

 

 

“おう”と、周倉は笑う

それにつられ、彼女も“そう言えば、まだでしたよね”と笑った

 

それから彼女は、柔らかな笑顔を浮かべ言ったのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の名前は“関平”と言います

今は師のもとで学び、衣服などの仕立て屋をしているんです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪真・恋姫†無双-白き旅人-≫

第十三章 陰謀の成都!?〜折角だから俺は、この赤い扉を選ぶぜ!〜

 

 

 

 

 

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ーーーー†ーーーー

 

 

「これは・・・」

 

 

此処は、成都の街中にある酒場

其処の店外にある席だった

其処で彼・・・北郷一刀は、震える声を隠そうともせずに言った

その視線は、机の上に置かれた1枚の紙に注がれている

 

赤い文字で、ただ一言

“助けて”と、そう書かれた紙を・・・彼は、ジッと見つめていたのだ

 

 

 

「あの後、仲達ちゃんたちと別れてすぐにお店に向かったのん

そしたら何故かお店が閉まっててん・・・気になって中に入ったらん、こんな紙が置いてあったのよん」

 

 

そんな中、溜め息と共にそう言ったのは淳于瓊だ

心なしか低く、弱い声色で

 

 

「“助けて”ねぇ」

 

「うむ・・・これは、何らかの問題が起きている可能性があるな」

 

「せやなぁ

しかも、この字って・・・」

 

「あわわ・・・恐らく、“血”で書かれていますね」

 

 

“やっぱりか”と、皆が表情を歪ませる

この赤い文字がその弟子の血だとするならば、よほどの事態に遭った可能性がある

淳于瓊が心配するのも、無理はない話である

 

そんな中、だ・・・

 

 

 

「これって・・・」

 

 

 

唯一人・・・法正だけは、その紙を見つめたまま

この場にいる者とは明らかに違う意味で、動揺していたのだ

 

 

「法正さん・・・?」

 

 

その様子に気付き、雛里は声をかける

と、同時に彼女は雛里を見つめ・・・静かに話し始めた

 

 

「鳳統様には、仰いましたよね

今この成都で少々、“ある事件”が発生していると」

 

「っ・・・まさか」

 

 

雛里の言葉

法正は真剣な表情を浮かべ・・・頷いた

 

それから紡がれる言葉

その言葉に・・・皆が、言葉を失っていまう

 

 

 

 

 

「此処、成都では現在・・・鍛冶職人、建築家、料理人、仕立て屋

所謂“職人”、またはそれに類する者達が“いなくなる”という事件が多発しているのです」

 

 

 

 

 

この、成都の地で多発するという事件に

其の場にいた皆が、信じられないと・・・表情を歪めながら

 

 

 

 

 

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ーーーー†ーーーー

 

「そん、な・・・」

 

 

震える声で、そう呟いたのは雛里だった

そんな彼女にたいし、法正は苦虫を噛み潰したよう表情を歪め口を開く

 

 

「三国会議で、劉備様たちが成都から発って少しした頃でした

このような事件が、たびたび起きるようになったのは」

 

 

言って、彼女は懐から1枚の紙を取り出した

その紙には、細かな文字でビッシリと何かが書かれていた

 

 

「最初は、こんなことになるなんて思いもしませんでした

しかし、日が経つにつれ被害は段々と増えていき・・・」

 

「朱里ちゃんには・・・?」

 

「まだ・・・報告していません

その、諸葛亮様のお手を煩わせるほどのことではないと・・・」

 

 

“それが・・・”

 

ふと、見つめた先

法正は体を震わせ、涙を流していた

 

 

 

「こんな、ことに・・・なるなんて」

 

「法正さん・・・」

 

 

雛里の言葉

法正は涙を拭い、立ち上がる

それから・・・

 

 

「私の、責任です・・・」

 

 

自身の懐から、一本の短刀を取り出したのだ

 

 

「法正さんっ!」

 

 

“まさか”と、雛里は立ち上がる

其の場にいた皆も、一斉に反応した

 

彼女はその短刀を自身の首もとに宛がい・・・瞳を閉じたのだ

 

 

 

 

「駄目だよ、法正さん」

 

 

 

 

ふと、響いた声

凛とした声・・・温かな声

 

 

「そんなの・・・絶対に、駄目だ」

 

 

閉じられた瞳が、ゆっくりと開いていく

その瞳に映ったのは、“白”

 

 

「君は・・・“それでいいの?”」

 

「え・・・?」

 

 

呟き、見つめる先

その声の主は・・・一刀は、優しげに微笑む

 

 

「本当は、すぐにでも君は孔明ちゃんに知らせなくちゃいけなかったんだ

それが、正しいことなんだろうね

そりゃ、責任だって感じるだろうし・・・実際、これは君の責任だ」

 

「はい・・・」

 

 

“けど・・・”と、一刀

 

 

「法正さん・・・これは、“君の責任”なんだ

だからこそ、君はこの事件を解決する“義務”がある」

 

「・・・はい」

 

 

言って、彼女はシュンとしたまま頷く

そんな彼女のことをしばし見つめた後、彼女の頭を彼は・・・ポンと、優しく撫でた

 

 

 

「そして残念なことに・・・此処には、困ってる人を見過ごせないお人好しが一人いるんだよ」

 

「・・・え?」

 

 

戸惑う彼女をよそに、彼は彼女を見つめ・・・笑う

 

 

「ま、運が悪かったと思ってよ

俺みたいな奴に見つかったのが、運の尽きってやつさ

俺は、君を助けるよ

君が何て言おうが、俺はもう君に関わるって決めたんだ」

 

「ぁ・・・」

 

 

その笑顔は、とても輝いて見えて

その笑顔は、とても温かくて

 

 

 

「“間違い”ってのはさ、そのまんまだったら確かに“間違い”のままだけど

そっからの君次第で、なんにだってなるんだよ」

 

 

 

“だから・・・”と、言いながら差し出された手を

彼女は、掴んでいたのだ

 

 

 

「前を見て・・・そんで、笑えばいい

そっちのほうが、きっと上手くいく

そうして問題も解決して、もっと笑えばいいさ」

 

「・・・はい!」

 

 

 

その笑顔を、信じてみたくて

そんな笑顔に、自分も近づいてみたくて

 

いつか・・・

 

 

「あの、その・・・その前に、今さらなんですが」

 

「ん・・・どうかしたの?」

 

「貴女の、お名前は・・・?」

 

「ああ、俺の名前ね

俺は・・・」

 

 

いつの日か自分も、こんな風に笑えるようにと

そう思いながら・・・

 

 

 

 

 

 

「俺の名前は“司馬懿”

字は、“スティーブン・セガール”だ

電車とか船とか要塞とか、何処にだって何故か現れることで有名だよ」

 

「すてぃーぶ、んせが、え?」

 

 

 

 

 

 

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ーーーー†ーーーー

 

 

「え?

すて、ぶ・・・え?」

 

 

さっきまでとは全く違う戸惑いを見せる彼女に、彼は“チッチッチ”と指を振って見せる

先ほどまでの雰囲気は、何処へやら

彼はニコニコとしたまま、彼女の頭を撫で再び言う

 

どうやら、シリアスパートはお終いらしい

 

 

 

「スティーブン・セガールさ

さぁ、言ってみようか」

 

「え、えっと、それでは・・・」

 

 

戸惑いつつも、彼女は意を決したように口を開いた

 

 

 

「すてぃーびゅん・せぎゃ・・・イタッ!?」

 

 

 

カミカミだった

しかも雛里とは違い、もろに舌を噛んでいた

 

 

「ちょ、法正さん!?

大丈夫!?」

 

「死にます

埋まって、死にます」

 

「なんで!?」

 

 

口元をおさえながら、彼女はそう呟いた

その言葉に、彼は驚きに目を見開いていた

 

 

「私を助けてくれると、そう言ってくださった方の名前を噛むなんて

私なんて、頭から地面に埋まってしまえばいいんです

そして、何年かしたら綺麗な花を咲かせましょう

そしたらその花を、豪快に蹴り飛ばしちゃってください」

 

「落ち着いて、法正さん!

そんなこと言ったら、もう雛りんなんて100回は埋まってる計算になっちゃうから!!」

 

「私、そんにゃにでしゅか!!?」

 

「雛里、残念だが101回目だ」

 

 

クッと笑い、華雄は呟く

その呟きに、皆は小さく笑いを零していた

 

 

「しかし・・・やはり、“北郷”なんだなぁ」

 

「なんや秋蘭、いきなり何を言いだすねん」

 

「いや、ちょっとな・・・少し、嬉しくてな」

 

「そか・・・ま、ウチもそう思うわ」

 

「そうか」

 

 

言って、秋蘭は笑った

勿論、霞もだ

 

そんな中、いつの間にかまた酒をチビチビと飲んでいた雪蓮が口を開く

 

 

「けど一刀

法正を助けるってのはわかったけど、いったいどうするつもりなの?

犯人を見つけるってこと?

それに職人たちが仮に、誰かに連れ去られたとしてもさぁ

その人たち、もう殺されちゃってるかもしれないじゃない」

 

「ちょ、ちょっとぉん!

そんなこと言わないでよん!」

 

 

その言葉に、淳于瓊が反応する

無理もない

自身の弟子が、その事件の被害者かもしれないのだ

しかし雪蓮の意見もまた、一理あった

いや、もっとも可能性があると言えるだろう

 

いなくなった人々は、もう殺されてしまったのだと・・・

 

 

 

「大丈夫だよ」

 

 

しかし、そんな中でも・・・彼は真っ直ぐとした目で、そう言ったのだ

相変わらず、太陽のように温かな笑顔を浮かべながら

 

 

「根拠はあるの?」

 

「う〜ん、と・・・“勘”じゃ、ダメかな?」

 

 

“勘”

そう言って、彼は彼女を見つめたまま微笑む

そんな彼の言葉に、彼女はしばし俯いた後に・・・顔をあげ、笑ったのだ

 

 

 

「ふふ・・・私の勘も、そう言ってるわ♪」

 

「なら、大丈夫だな」

 

 

顔を見合わせ、二人は笑う

それから彼は皆を見渡した

 

 

「ひとまず、俺は法正さんを手伝うことにする

皆は・・・」

 

「私は、一刀さんについていきます」

 

 

間髪いれずに、そう言ったのは雛里だった

 

 

「それに、これは蜀の問題ですし

他人事じゃ、ありませんから」

 

「雛里ちゃん・・・」

 

 

一刀はそんな彼女の言葉に、フッと笑みをこぼしていた

そんな彼につられ、笑うのは華雄だ

 

 

「愚問だな・・・私は、御遣いを守る斧だ

お前が向かう先、そこはつまり私が向かう先だ」

 

 

言って、斧を握り締める彼女が

彼にはとても頼もしく見えた

次いで見つめた先・・・雪蓮と霞は、彼を見つめ笑っている

 

 

「一刀がやるっちゅうんなら、ウチもそれに乗るっきゃないやろ?」

 

「そうね、そのとおりね」

 

「「そして問題解決したら、ご褒美に・・・一刀と同じ部屋で、オプションは腕枕つきで」」

 

「まだ諦めてなかったの!!?」

 

 

 

・・・動機が、すごく不純だった

 

 

 

 

 

 

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「んで・・・秋蘭達は、どうするんだ?」

 

「む、私たちか?」

 

 

一刀の言葉

秋蘭はしばし考えた後に、フッと笑みを浮かべる

 

 

「どうせ、蜀の皆を待たねばならん

その間、お前を手伝うとしよう」

 

「助かるよ

ていうかさ・・・」

 

 

と、言葉を区切り見つめるのは・・・春蘭である

 

 

「春蘭さんがさっきからずっと無口なのが、妙に恐いのですが」

 

「ああ、あれか・・・」

 

 

と、一刀に合わせ秋蘭も春蘭を見つめる

そんな二人の視線に気付くことなく、彼女は・・・春蘭は、何故か頬を赤くしたまま何かをブツブツと呟いていた

 

 

「な、なぁ秋蘭

春蘭の奴、いったいどうしたんだよ?」

 

「ああ、きっとあれだ

北郷に、惚れ直したんだろう」

 

「惚れ直した?」

 

「ふふ、なぁ姉者?

先ほどの北郷は、中々格好良かったからな」

 

「な、ば、そそそそそんなんじゃないやい!!」

 

「春蘭さん、落ち着いて」

 

「大体、北郷がカッコいいなど・・・そんな、いや、その、確かに先ほどの北郷は格好良かっ・・・」

 

 

“ギャーギャー”と、慌てふためく春蘭

そんな彼女の様子を、一刀と秋蘭はやはり楽しそうに笑って見つめていた

 

しかし・・・

 

 

 

「んふん?

“北郷”・・・?」

 

「・・・!」

 

 

淳于瓊が、“ピクリ”と何か反応した瞬間

彼は、“思い出したのだ”

 

ここに、とんでもない“地雷”があることを

 

 

 

「ぁ・・・そそそそーだ、春蘭、あと秋蘭も!!

ちょっと、向こうで話をしないか!!?」

 

「え!?

ちょ、ま・・・」

 

「じゅ、淳ちゃん!

淳ちゃんはこっちでほら、お弟子さんのとこに行った時のお話を詳しく聞かせてちょうだい!」

 

「そ、そやね!

それがええわ!」

 

「ひ、雛里!

法正からも、色々と聞く必要があるのではないか!?」

 

「ひゃ、ひゃい!」

 

「あらん、わかったわん」

 

「?

わかりました、鳳統様」

 

 

と、一刀に合わせ他の4人は一斉に淳于瓊を囲んだ

ナイスコンビネーションである

まぁ彼の貞操がかかっているのだから、無理もない話ではあるが

そんなナイスな仲間達に見送られ、3人は店から離れる

 

やがて辿り着いたのは、酒場付近の路地裏だった

 

 

 

 

「・・・と、ここまで来れば大丈夫かな」

 

「い、いったいどうしたのだ北郷」

 

「いや、ちょっとね・・・」

 

 

“あの化け物に狙われてるんです”とは、言えなかった

 

 

「そうだ・・・蜀の人達って、いつ頃に成都に帰ってくるんだ?」

 

「ふむ・・・早くても、明後日には着くだろうな」

 

「明後日、か・・・」

 

 

“けっこう早いね”と、一刀は笑う

そんな彼に対し、秋蘭はクッと苦笑を漏らした

 

 

「何処かの誰かが、相当急かしたからな」

 

「秋蘭っ!」

 

 

秋蘭の言葉に、突然叫びだしたのは春蘭だった

しかも、顔を真っ赤にしたままだった

そんな彼女の姿に、やはり彼は笑ってしまうのだった

 

 

「こら、北郷!

貴様まで、何故笑っている!?」

 

「はは、ごめん

うん、嬉しいよ春蘭」

 

「なぁっ!?」

 

 

そして、春蘭はまた赤面し

一刀と秋蘭は、声を出して笑うのだった

 

 

 

 

 

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ーーーー†ーーーー

 

「それにしても・・・職人たちを狙うなど、いったい誰の仕業なのだ」

 

 

しばらくして、春蘭が言った言葉である

彼女にしては珍しく、真剣に悩み考えているようだ

そんな彼女の隣、秋蘭は同じように悩んでいるように見えた

 

 

「職人たちを狙ったということは、何かしらの目的があったのだろう

その目的がわかれば、或いは・・・」

 

 

“しかし”と、秋蘭

そのすぐ向いでは、空を見上げたまま何かを考えていた

 

 

「ん〜・・・」

 

「どうかしたのか、北郷」

 

「いや、ちょっとね・・・」

 

 

“なんか、引っ掛かるっていうか”と、言いながら彼は苦笑する

それから、“よし”と一声

 

 

「ひとまず、今日は解散にしようか

こっちはこっちで調べとくから、秋蘭たちは・・・法正さんたちと一緒に、調べといてくれないかな?」

 

「む・・・法正とか?」

 

「うん

万が一ってこともあるし、それに魏国の将軍である二人がいてくれれば心強いだろうし」

 

「了解した」

 

「あと・・・俺が天の御遣いっていうのは、内緒にしといてくんない?

今は、“司馬懿仲達”って名乗ってるんだ

呼ぶならそっちか、一刀って呼んでくれ

それが“真名”ってことで通ってるからさ」

 

「む?

先ほど、“スティーブン・セガール”と名乗っていなかったか?」

 

「それはまた、偽名の偽名・・・って、凄いな春蘭!!?

そんなスラスラ言えたのって、春蘭が初めてだよ!!!??」

 

 

“というか、よく覚えてたね!?”と、一刀は驚きを隠せないでいた

それに対し春蘭は、“えっへん”という擬音が聴こえてきそうな勢いで胸を張った

 

 

「私にかかれば、どうということはない!」

 

「それを、普段の仕事で上手く使ってくれよ」

 

 

“なんだ、その限定された記憶力”

一刀と秋蘭が、2人揃ってそう思ったのは想像に容易い

仕事に使えないならば、果てしなく意味のないものである

 

 

 

「ま、まぁいいや

ひとまず、皆のところに戻ろう」

 

「そうだな

向こうも、何か話が進んでいるやもしれんしな」

 

 

 

秋蘭の言葉に頷き、三人は其の場から歩き出す

それから、あの酒場へと歩き出す

 

 

 

「あ、一刀さん

お帰りなさい」

 

「うん、ただいま」

 

 

やがて酒場へと辿り着いた時、自身に気付き雛里が声をかけてきた

それに、彼は笑顔を返す

 

 

「それで、何かわかった?」

 

「はい・・・それが、気になるところがあったんです」

 

「気になるところ?」

 

 

言いながら、彼は椅子に座った

それを見つめながら、雛里は自分で書いたのであろう紙を彼に向けながら話し始めた

 

 

「攫われた職人達なんですが・・・皆さん、特に城からのお仕事を集中して受けているところだったんです」

 

「蜀の皆の御用達ってこと?」

 

 

“はい”と、雛里

 

 

「淳于瓊さんのところも、最近ではお城の人の寝巻等を仕立てるよう頼んでいた場所でした」

 

「なるほど、ね・・・」

 

 

“ふむ”と、腕を組む一刀

しばらくはそのまま何か考えているようだったが、すぐに笑顔を浮かべた

 

 

「ま、詳しくは明日考えよう

今日はひとまず、解散ってことで」

 

「そう、ですね

そうしましょうか」

 

「うん、ぶっちゃけ“シリアスにはもう疲れたから”」

 

「あわわ、ぶっちゃけすぎです!?」

 

 

 

ともあれ、今日はもう解散ということになった

皆はそれぞれ、帰ろうと席から立ち上がる

 

そんな中、ふと・・・

 

 

 

「む?

ほんg・・・ではない、一刀」

 

「ん?」

 

 

春蘭に呼ばれ、立ち止まる一刀

“何事か”と振り向いた先・・・春蘭は何故か心配そうな表情を浮かべ言ったのだ

 

 

 

 

「一刀・・・お前、顔色が悪くないか?」

 

「・・・っ!」

 

 

 

言われ、彼は・・・“笑った”

それから、頭を軽く掻きながら言う

 

 

「あ〜、ちょっと疲れてるのかもな

大丈夫、今日ぐっすり寝たら回復すっからさ」

 

「ふむ・・・なら、いいのだが」

 

「そんじゃ、おれ達は宿に戻るよ

明日は・・・また、ここに集合ってことでいいかな?」

 

「うむ、了解した」

 

 

 

そうして、皆はそれぞれの場所へと帰っていった

春蘭と秋蘭は、成都の城に世話になるようだ

 

しかし・・・

 

 

 

 

 

 

 

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ーーーー†ーーーー

 

 

「あ、あわわわわわわわわ・・・」

 

 

“今日はまだ、終わっていない”

等と、とりあえず言っておこう

 

話し合いは終わった

宿にもついた

 

それで今日は終わりなのかと言われれば、答えは“否”である

 

宿に着いた後も、まだまだ今回の物語は終わらないのだ

 

 

 

 

「な、なんで私が一刀さんと二人で同じ部屋なんでしゅか!!?」

 

 

雛里の言葉

一刀はというと、その発言に驚きながら口を開いた

 

 

「俺の中の“雛りんlove”な気持が溢れ出して止まらなかったんだ」

 

「わけがわかりません!?」

 

「おいおい、雛里

今さら何を言ってるのだ

一刀と同じ部屋なんて、これが初めてじゃないだろ?」

 

 

華雄の言うとおりだ

今までだって、確かに一刀と同じ部屋だったことはあった

しかし、その場合は“皆いたのだ”

部屋が空いてないから、皆で一つの部屋に入ったり

お金を節約するために、一部屋にしたこともあった

 

しかし、このように“二人きり”でというのは初めてだったのだ

 

さらに・・・

 

 

 

 

「し、寝台も一つしかないんですが・・・」

 

「あ〜、これはオプションがあるから問題あらへん」

 

「そうよ、安心しなさい雛里」

 

「・・・オプション?」

 

 

嫌な予感しかしないが、とりあえず聞いてみる

すると、霞と雪蓮は顔を見合わせ笑った

 

 

 

 

 

 

「「一刀の腕枕付きです」」

 

「あわわっ!!?」

 

 

つまりは、同じ寝台で寝るということだ

その事実に、彼女は再び驚きの声をあげた

 

 

「ちょ、ちょっちょみゃっしぇきゅだしゃい!!」

 

「か、噛みすぎだよ雛りん

法正さんだったら、今ごろ二階から勢いよく飛び降りて地面にめり込んでるレベルだよ」

 

 

勿論、頭からである

 

 

「ていうか、雛りんは・・・俺と同じ部屋、嫌なの?」

 

「えっ!?

その、嫌じゃ、ないでしゅけど・・・」

 

 

そして、まさかの切り換えし

これには、流石の雛里も言葉に困ってしまう

 

そんなこんなで、悩むこと三十秒・・・

 

 

 

 

「わかり、ました・・・」

 

 

 

 

顔を真っ赤にしたまま、雛里はゆっくりと頷いたのいだった

 

 

 

 

 

 

-8ページ-

ーーーー†ーーーー

 

そんなこんなで、部屋の中

真っ暗な部屋の中

たった一つの寝台の中

 

一刀と雛里は、寝転がっていたのだ

無論、一刀の腕枕は発動されている

 

 

 

「それにしても、今日は疲れたなぁ・・・」

 

「ひゃ、ひゃい」

 

 

雛里は、緊張しているのか声が裏返っていた

“まぁ、仕方ないよな”と一刀は気づかない振りをしていたが

 

 

「春蘭や、秋蘭と再会したり

こっちで起こってる、変な問題に直面しちゃったり」

 

 

“ほんと、色々あったよ”と、彼は笑う

そんな彼に向い、彼女はふと何か思い出したよう呟いた

 

 

「そういえば、一刀さん

その・・・ありがとうございます」

 

「ん・・・何が?」

 

「法正さんのこと、です

いえ、この国の問題ですし・・・この国のこと、でしょうか?

とにかく、ありがとうございます」

 

「いや、いいって

気にしないで」

 

 

言って、彼はまた笑う

それから天井に向い、空いている方の手を伸ばした

 

 

 

「雛里ちゃん

君には・・・わかったかい?

今回の、この事件のこと」

 

「この事件のこと、ですか?」

 

 

“うん”と、彼は手を伸ばしたまま呟く

 

 

「これは・・・ただの事件じゃないよ」

 

「え・・・?」

 

 

一刀の言葉

雛里は、思わず声を漏らしてしまう

そんな彼女のことに気付かないまま、彼は言葉を続けた

 

 

 

「事件が発生したのは三国会議の為に蜀の名だたる面々が出発した後から

さらに、狙われたのは蜀の重鎮御用達の店の職人たち

ホラ・・・並べられた欠片は、確かに“答え”へと繋がっていくんだよ」

 

「一刀さん・・・?」

 

 

その言葉に

その発言に

生まれてくる、幾つもの疑問

 

しかし、彼はそれに答えることなく

 

 

 

ただ、一人・・・笑ったのだ

 

 

 

 

 

「大丈夫

この“司馬懿仲達”が、全部終わらせるから」

 

 

 

 

まるで、此処にはいない誰かに

優しく語りかけるように・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・続く

 

-9ページ-

★あとがき★

 

 

皆さん、こんばんわ

月千一夜です

 

 

シリアス多めな今回

しかし、やっぱり長続きしないのも、またシリアス

 

では、またお会いする日まで

説明
十三話
ふだんより、シリアス増しな今回
そして、やはり長続きしないシリアス

存分に、暇を潰してください


序章
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