真・恋姫†無双-白き旅人- 第十六章
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あの日

 

愚かだと思っていた王がいなくなり

 

 

 

新しい・・・愚かな王がやって来た

 

 

 

私は思った

これでは、同じことの“繰り返し”だと

所詮、同じく愚かな小娘ではないか

 

断言できる

予知できる

 

この国は、“負けてしまうだろう”

 

だから私は、国を発った

唯一人の、私の弟子である法正を

この国に、残して

 

かくして、時は経ち

私の思っていた通り・・・この国は、無様にも敗北してしまう

 

ーーーやはり

思っていた通り

私自身、わかりきっていたことなのだが

あの王では、ダメだ

だからこそ、私はかねてより考えていた“策”を実行することにした

 

 

この国を、“在るべき姿へと戻す為に”

 

 

法正は優秀だ

蜀の中では、私の次に優れているであろうほどに

故に、彼女が新たな蜀内にてそれなりの地位にいるであろうことは

最早、わかりきっていたことである

考えるまでもない

 

だからこそ、“やりやすかった”

私が奴を置いて行ったのも、その為だったのだから

さり気なく、私の存在をチラつかせればいいのだ

そうすれば、“責任感”が強く“真面目”なアイツのことだ

自身の手で、決着をつけようとするだろう

 

国内には、私と同じ考えをもつ同士も多くいる

私の部下だった者だって、少なくはない

 

さらには、三国会議の為に

あの愚かな王、並び部下共は成都から姿を消した

 

これならば、無理な話ではない

 

確実に、“国を獲れる”

 

 

その、ハズだったのだが・・・

 

 

 

「貴様は・・・」

 

 

 

そんな私の目論見は

企みは

“完膚なきまでに、読まれていたのだ”

 

 

「司馬懿・・・仲達

まぁ、覚えなくっても別にいいよ」

 

 

 

司馬懿、仲達

そう名乗る、白き外衣を身に纏った

怪しい、一人の男に

 

有り得ない

有り得ない、あり得ない、アリエナイ!!

 

何故!?

何故このような、得体の知れない男に

このような、素性の知れないような男に!

この私の策を、看破された!?

 

ざわめく

私の心中は、未だかつて無いくらいにざわめいていた

 

そんな私の心中など知らないとばかりに

関係ないとばかりに

 

男は、溜め息を吐き出すとともに

言い放つ

 

 

 

「さって・・・いいかげん、“シリアス”も疲れちゃったからさ

悪いけど、もう終わらせてもいいかな?」

 

 

 

意味など、わからない

何を言っているのか、さっぱり理解できない

 

しかし、それでも

私には、その一言が・・・何かの、“終わり”を意味しているのだということだけは

 

悔しくも、感じ取っていたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪真・恋姫†無双-白き旅人-≫

第十六章 決着する成都!!

 

 

 

 

 

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「師匠っ!!」

 

「ば、落ち着きな嬢ちゃんっ!」

 

 

はためく、劉旗のすぐ傍

集められた、捕まっていたはずの職人達

その中の一人である、少女・・・関平は、声を大にして叫ぶ

そんな彼女のことを、一緒に捕まっていた周倉が必死になって止めていた

 

 

「離してください!

師匠が、師匠が危ないんです!!」

 

「だから、落ち着けって!!

ていうか俺からしたら、なんか絵図的にアンタの師匠よりも、その師匠を人質として選んじまった男の方が心配なんだが!」

 

 

まったくもって、その通りである

縛られてるはずの彼女の師匠、淳于瓊は何故かハァハァと息を荒げている

幸か不幸か、まだ王塁は気づいていないようだったが

 

 

「それに、“あの人”がいるんだ!!

大丈夫に、決まってらぁ!!」

 

「“あの人”・・・?」

 

 

言われて、彼女が見つめる先

其処にいたのは、白き外衣を身に纏った・・・一人の男

男というのも、聞こえてきた声から判断したものであって

実際に彼の顔は、被っているフードのせいで窺い知れないのだが

そんな男のことを見つめたまま、彼女の隣にいた周倉は

唯、嬉しそうに・・・“笑った”

 

 

「あの人なら・・・絶対に、なんとかしてくれる!!」

 

 

言って、彼は拳を握り締める

そんな彼を見つめ、彼女は僅かに戸惑ってしまう

 

無理もない話だった

彼の見つめる先、あの白き外衣をはためかせる男

その男は、一言でいえば・・・“妖しい”

これに尽きるであろう

しかし、そんな男のことを周倉は信じているのだ

その年不相応な顔を綻ばせ、声をあげ主張しているのだ

“大丈夫”だと

 

 

 

「司馬懿・・・仲達」

 

 

呟き、彼女はもう一度見つめる

あの男を、司馬懿仲達を

 

 

「貴方は、いったい・・・」

 

 

彼女は、測りかねていた

目の前で、佇む男のことを

 

あの、“白き光”のことを・・・

 

 

 

 

 

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さて、そのような感じで彼を測りかねているのは

何も彼女一人ではない

 

 

「あ奴・・・いったい、何者なのだ?」

 

 

劉備玄徳をはじめとする、蜀の重鎮たち

彼女達もまた、目の前で王塁に声をかけたあの男のことを

司馬懿仲達のことを、測りかねていたのだ

そんな彼女たちの声を代表するように、声をあげたのは関羽こと愛紗であった

 

 

「司馬懿、仲達・・・奴はいったい、何者なのだ?」

 

「何者やろねぇ〜」

 

 

と、その彼女の言葉に対して、茶化す様笑うのは霞だった

相当、急いだのだろう

乱れた髪もそのままに、未だに少し息が乱れているようだった

それでも、彼女は笑っていた

経った今、目の前に現れた一人の男

司馬懿仲達の姿を、優しげな瞳で見つめたまま

 

 

「“何者やろねぇ〜”じゃないだろう!

“コレ”を書いたのは、あ奴なのだろう!?」

 

 

言いながら、愛紗が霞に突き付けたのは・・・一通の手紙

それは間違いなく、一刀が霞へと預けたものだった

彼女はそれを見つめ、“あ〜、それなぁ”と笑う

 

その紙には、たった一言

これだけが、記されていた

 

 

 

 

 

≪成都、陥落す≫と・・・

 

 

 

 

 

勿論、それを読んだ瞬間に劉備こと桃香が首を傾げたのは言うまでもない

無論、他の皆も同じようなリアクションである

もっと言えば、霞でさえ首を傾げてしまう

 

その数秒後・・・辺りは、一気に騒然となった

 

中でも、一番焦ったのは霞である

まさかこのようなことが書かれていようとは、想像も出来なかったのである

しかしもうここまで来たら、このままの勢いで帰ってしまった方がいいのかもしれない

 

その後、この紙により蜀軍の進軍速度は一気に上昇

結果、このように早期帰還となったのだ

 

もっとも・・・先に着いたであろう、夏候姉妹に追いつこうと元々早く移動していたのもあったのだが

 

 

 

ともあれ、絶好の機会に帰ってきたのは間違いないだろう

 

 

 

最初は、“なに、ぶっ飛んだ内容の手紙を持たせとんねん!”と怒鳴ってやろうと思っていた彼女だったが

目の前で、堂々と、この事件の首謀者である王塁を追い詰める彼を見た時に

そんな気持ちは、消え去ってしまったのだ

 

 

 

「ま、ええやんか細かいことは

無事にホラ、こうして間に合ったんやから」

 

「細かいことって、はぁ・・・」

 

 

呆れたよう

いや、諦めたように吐き出されたのは溜め息だ

 

 

「まぁ・・・此処に来るまでの間も、お前は頑なに教えてはくれなかったしな

しかし、お前が真名を預けるほどの人物なのだから

多少は信じてやろうとは思うが・・・」

 

 

そこで、彼女は再び見つめる

 

 

「しかし、妖しいな・・・」

 

「ああ、うん、まぁ・・・否定は出来へんなぁ」

 

 

そして、この一言である

“ごめん、一刀”と、霞は心の中謝った

 

 

「それにしても・・・まさか、こんなことになるなんて・・・」

 

 

と、そんな中呟いたのは誰であろう

蜀の筆頭軍師である、諸葛亮こと朱里である

彼女の視線は、先ほどから王塁を捉え離さない

 

 

「いったい、どうして・・・」

 

「ま、そんなこと・・・今にわかるやろ」

 

 

“カッカッカ”と、笑う霞

彼女はそれから、白い外衣を身に纏う男を見つめ

言ったのだ

 

 

 

「さぁ、そろそろ幕引きやろ・・・一刀」

 

 

 

 

 

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「く、くそ・・・いったい、いったい何なんだお前は!!!」

 

 

辺りに、叫び声が響いた

この事件の首謀者、王塁のものである

そんな彼の目の前・・・白き外衣を身に纏う男は

司馬懿仲達こと、北郷一刀は呆れたように溜め息を吐き出し・・・呟いた

 

 

「だ〜から、司馬懿仲達だってば

フードをとったら超イケメン・・・って、今はとれねーか

まぁ、いいや、そんなこと

そんなことよりも、俺は言ったはずだよ

シリアスは、もう終わりだって」

 

 

“だからさ”と、彼は持っていた大きな杖を

王塁へと、向けて構えた

 

 

「もう・・・終わりにしよう」

 

「・・・っ!?」

 

 

“ビクリ”と、大きく体を震わせる王塁

その表情には、明らかな“焦り”

それから・・・恐ろしいまでの“怒り”が、安易に見て取れた

 

 

「・・・けるな」

 

「・・・」

 

 

故に、一刀にはわかっていた

たった今、この男が言おうとしていることが

その、感情が・・・

 

 

 

「ふざけるなっ!!!!」

 

 

 

今この場で、爆発するであろうことが

彼には、容易に想像できていたのである

 

 

 

 

「これで、終わりだと!?

長い間、この私が考え、練り、編んだ策が・・・これで、終わりだと!!?

お前のような、得体の知れない男に、終わらせられるだと!?

そのようなこと・・・認められるはずがないっ!!!!」

 

「はぁ・・・往生際が悪いなぁ、アンタ」

 

「五月蠅い!!

貴様に・・・貴様に、何がわかるっ!!!!

いや、貴様だけではない!!

私の弟子も、あの・・・愚かな王にも!!

この私の想いなど、理解は出来まい!!!」

 

 

“愚かな王”

そう言って、彼が指を差したのは・・・桃香だった

 

 

「あの、愚かな王は!!

愚かにもこの国を乗っ取り、愚かにも誰もが仲良く暮らせる国等という幻想を抱かせ!

そして、愚かにも敗北した、愚かな王なのだからっ!!!!」

 

「貴様・・・!」

 

「何が、“三国同盟”だ!

何が、手を取り合い、支え合うだ!!

そんなもの、唯の綺麗事にすぎぬ!!!」

 

 

今にも斬りかからんとする、蜀の将兵に怯むことなく

彼は、叫び続ける

 

 

 

「この国は、蜀は“負けたのだ”!!

そして、魏は“勝った”!!

それだけだ!

それ以外、何もないだろう!!

愚かな勝負を挑み、愚かにも、惨めに、目も当てられないくらいに、完膚なきまでに!!

この国は、敗北したのだ!!!!

この国は、正真正銘、“敗戦国”なのだ!!!!」

 

 

 

響いた

その声は、その叫びは

辺り一帯、あらん限りに響き渡った

やがて・・・その叫びの後

王塁めがけ、武器を構え駆けだしたのは・・・愛紗である

 

 

 

「貴様ぁ・・・!!!!」

 

 

彼女は、自慢の獲物を構え

ただ一直線に、目の前の男を切り裂かんと

駆けだしていたのだ

その突然の・・・或いは“必然”の行動に

一同は、焦ってしまう

 

 

「愛紗ちゃん!!?」

 

「あんの、アホが!!」

 

 

しかし、その声も

あの愛紗の勢いでさえも、その殺気でさえも

次の瞬間には

 

 

ーーー見事に消え去っていたのだ

 

 

 

 

「がっ・・・!?」

 

 

それは、愛紗が武器を構え駆けだすよりも

桃香が、駆けだした愛紗を止めようとするよりも

“カラン”と、何かが落ちる音が響くよりも

或いは・・・霞が、愛紗の不穏な気配に感づいた時よりも早かったのかもしれない

 

唯一つ、言えることといえば

彼女達が気づいた時にはもう、王塁は吹き飛んでいたのだ

いや、“殴り飛ばされていたのだ”

彼の目の前で、白き外衣をはためかせ

その中に見える、“白き衣服”を輝かせ

いつの間にか脱げていたフードの中、“三年前よりも伸びた髪”を風に靡かせながら

 

彼は・・・その瞳に、様々な“想い”を揺らしながら

 

 

あの王塁を、殴り飛ばしたのだ

 

 

 

「貴様・・・っ!?」

 

「ああ、ちくしょう

シリアスは終わりだって、自分で言ったくせになぁ」

 

 

殴られた頬をおさえ、戸惑う王塁

そんな彼の目の前

彼は・・・唯、堂々と佇む

 

 

「アンタ、言ったな?

この国は負けたって、そして魏は勝ったって

確かに、そう言ったな?」

 

 

言って、彼はツカツカと王塁のもとへと歩み寄る

それから彼の胸ぐらをつかみ、其の場に立たせ

言ったのだ

 

 

 

「そんなんじゃないだろ!!」

 

「っ・・・!」

 

 

突然の叫び

驚く王塁もよそに、彼は言葉を紡いでいく

 

 

「誰が勝ったとか、誰が負けたとか!

どの国が勝ったとか、どの国が負けたとか!!

あの戦いは、そんな“ちっぽけな結果”なんか・・・求めちゃいなかっただろうが!!!!」

 

「!!!」

 

 

叫び、彼は王塁の胸ぐらから手を離した

その瞬間、咄嗟に距離をとる王塁

彼はそれから、震える声もそのままに、彼に向い問い掛ける

 

 

「貴様は・・・まさか・・・・・・」

 

 

ゆっくりと、か細く、震える言葉を聞き

彼はその真っ直ぐな瞳をそのまま、自身の胸に手を添え・・・

 

 

 

 

「俺の名前は、北郷一刀

三年前に消えた、“天の御遣い”だ」

 

 

 

 

 

彼は、名乗ったのだ

三年前、この世界から消えた自身の名を

 

この場で、彼自身の口で

集まった皆の心に、響かせたのだ・・・

 

 

 

 

 

 

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ーーーー†ーーーー

 

「天の、御遣い・・・?」

 

 

震える声で、そう呟いたのは“蜀の王”桃香である

その隣では、同じように愛紗が信じられないと言った表情を浮かべていた

報告には、聞いていた

魏国の中、あの玉座の間で

 

しかし、それでも、いざ実際に目の前に立つその姿を見つめると

其の場に集まった者達は皆、言葉を失ってしまうのだった

 

 

 

「く、くく・・・」

 

 

しかし、しかしである

そんな中、唯一人だけいたのだ

 

 

「はっはっはははははははははははははは!!!!」

 

 

唯一人

このような状況の中

愉快そうに笑うことが出来る男が、そこにはいたのだ

 

 

「そうか!

貴様があの、天の御遣いだったのか!!!」

 

 

その人物とは、王塁である

彼は腫れた頬もそのままに、ただひたすら笑い続ける

 

 

「あの、魏国に舞い降りたという!!

戦場に出たとしても、“常に魏国の将兵の背中ばかりを見ていたという臆病者”が、貴様だったのか!!!!」

 

「っ・・・なんやて?」

 

 

“臆病者”

その言葉に真っ先に反応したのは、言われた本人ではなく

偃月刀を肩に担ぎ、先ほどから様子を窺っていた霞だった

彼女は溢れ出る殺気を隠そうともせず、射殺すような視線を王塁へと向けている

 

 

「ならば、貴様に言われる筋合いなどは一切ないな!!

貴様のような臆病者と、私は違うのだから!!!!」

 

 

それでも尚、王塁は止まらない

歪んだ笑みを浮かべたまま、彼は叫び続ける

 

しかし・・・

 

 

 

「ああ、そうだね

アンタの言う通りさ」

 

「っ・・・」

 

 

彼は・・・“一刀”は、笑っていたのだ

 

 

「俺はいつだって、皆の背中ばかり見ていた

俺は、“守られてばかりだった”」

 

 

そして、そのまま語り続けたのだ

その瞳を、ギュッと閉じながら

 

 

「秋蘭が危なかった時だって、俺はそれを知らせることぐらいしかできなくて

直接助けたのは、魏の皆だった

赤壁だってそうさ

結局、皆自身が動いたから勝てたのであって

それは・・・俺の力なんかじゃなかった

ああ、そうだ

俺は・・・“何もしていなかった”」

 

「一刀・・・?」

 

「そんな情けない自分が、俺は・・・大嫌いだった」

 

 

“大嫌いだった”と、彼は笑う

その笑みに込められた感情に、気付けた者はいないだろう

 

 

「俺はずっと、思ってたんだ

もっと・・・もっと、変わりたいって

“皆に守られる自分”じゃなくて、“皆を守れるような自分”になりたいって

いや、違う・・・なりたいんじゃない

“ならなくちゃいけないんだって”、そう思ってた」

 

 

“だから”と、彼は瞳を開いた

その中に、揺れる“決意”をそのままに

 

 

「俺は、“帰ってきたんだ”」

 

 

言って、彼は再び王塁の胸ぐらを掴んだ

それから、淡々と話を続けていく

 

 

「俺がどうして、アンタの策を看破できたか教えてあげようか?

俺はね、皆とは“立ち位置が違ったんだよ”」

 

「な、に・・・?」

 

「例えば、“起承転結”って言葉を知ってる?

物事の順序

“起”に始まり“結”に終わるっていう」

 

 

“まぁ、知ってるか”と、彼は笑う

 

 

「皆は、当然のことだけど“起”から始まった

事件を知り、そこから犯人を捜すという行動へと移ったんだ

だけどね・・・俺は、違うんだ」

 

「違う、だと・・・」

 

「ああ、そうさ

俺は皆とは、全く違うんだよ

言ったろ?

立ち位置が違うって

皆は“起”から始まった

だけど、俺は・・・“結”から、始まったんだ」

 

「なっ・・・!?」

 

 

彼は言った

自分は、“起承転結”の“結”から始まったと

それが意味することは、つまり・・・

 

 

「俺はね・・・誰よりも先に

多分、“アンタよりも早く”

“この事件の犯人がわかっていたんだよ”」

 

 

言って、彼は力を込める

王塁の胸ぐらを掴む手に、空いている方の拳にも

彼は、あらん限りの力を込めていく

 

そして・・・

 

 

 

 

「そんな“結末”を、俺は認めない

“認めるわけにはいかない”

だから俺は、ここで“線を引くんだ”!

皆が守ったモノが、もう二度と失われないように!!

彼女が・・・俺の愛した“彼女”が、もう二度と悲しまないように!」

 

「ぐっ!!?」

 

 

 

 

“ガツン”と、一際鈍い音をたて

王塁は再び、彼によって殴り飛ばされた

そんな彼を見下ろす様、彼は表情もそのままに

 

彼に向い、言ったのだ

 

 

 

 

「俺はもう、彼女達の背中で守ってもらおうなんて思ってない

“肩を並べるなんて、甘えるつもりもない”

俺は、“前に立つ”

皆の前に立って、俺は・・・彼女達を守る、“盾”になる

その為に俺は、“司馬懿”の名を背負ったんだ」

 

「く・・・わけの、わからないことを・・・・・・」

 

「わからなくってもいいよ

“わかってもらおうとも思わない”

彼女達にも、教えようとは思わない

だってこれは、俺が自分勝手に決めたことなんだから」

 

 

“けどさ・・・”と、彼は笑みを浮かべる

それから指を差したのは、未だに彼の足もとで痛む頬をおさえる王塁だった

 

 

「だからこそ、俺はアンタに“言葉を返すよ”

アンタなんかに、言われたくはないんだよ

アンタみたいな、全部“諦めた”奴には言われたくないってな」

 

「な、なんだと!?」

 

「だって、そうだろ?

アンタは、諦めていたじゃないか

“この国はもう駄目だって”、そう勝手に決めつけていたじゃないか」

 

 

そう叫び、彼が次に指を差したのは・・・法正

 

 

「彼女は・・・法正さんは、頑張っていたんだぞ!?

“敗戦国”だって、アンタみたいにいう奴がいる中!!

必死に、この国の為に、この国に住む人々の為に!!

彼女は、唯ひたすら頑張っていた!」

 

 

次いで、彼は視線をうつす

その視線の先には、桃香をはじめとする蜀の面々がいた

 

 

「彼女だけじゃない

劉備さんや諸葛亮ちゃん、蜀の皆だって頑張ってる

もっと、もっと・・・今よりももっと、これまでにないくらい!

この国に、笑顔があふれるようにって頑張ってる!!

彼女達は・・・“諦めていないんだ”!!

自分達の願った、“笑顔が溢れる国”を、諦めていない!!!!」

 

「!!」

 

 

一刀の言葉

王塁は目を見開き、言葉を失ってしまう

 

 

「さっき、言っただろ?

あの日・・・あの、最後の戦いの時

おれ達が手に入れたのは、“誰が勝った”とか“誰が負けた”とか

そんなもんなんかじゃ、断じてない

そんなもの、必要ない!!」

 

 

それでも尚、彼は避けび続ける

目の前の男、だけじゃない

この場に集まった者に、その心に

深く、響かせるように

 

 

 

 

「もう二度と、あんな悲しい想いをしないようにって

いなくなった人々の想いを、心に沢山背負って

そんで、新しい一歩を踏み出したんだよ!!

“一人で”じゃない、“皆で”!

何処か一つの国じゃなく、“この大陸に住む皆で”!!

一緒に背負って、俺達は歩いてんだよ!!

そんな中に、誰が勝ったとか負けたとか・・・そんなもん、存在してなんかないっ!!!」

 

「ぁ・・・」

 

 

 

 

 

“だからさ・・・”と、彼は王塁の前

膝をつき、手を差し伸べる

 

それから、笑ったのだ

 

 

「“王塁さん”も、もっと素直に言えばいいんだよ

“納得できない”なら、真っ向から語り合えばいいんだよ

こんな、手段なんかとらないで

真正面から、ぶつかればいいじゃないか」

 

「真正面から・・・」

 

「そうさ

王塁さんだって、本当はこんなこと・・・“望んでいなかったんだろう”?」

 

「私は・・・」

 

 

呟き、彼は苦笑を浮かべていた

 

 

 

「ああ、そうだ

私は・・・ずっと、認めたくなかった

主君である“劉璋様”の頃から、少しずつ民が苦しみ始めたことが悲しくて

どれほど努力しようとも、状況が一向に良くならなかったことが悔しくて

私はずっと、“過去の蜀国”を・・・あの、“皆が笑顔で暮らしていた我が国”を、取り戻したかった」

 

 

そう言って、彼は一人・・・静かに涙を流した

その傍で、一刀は笑顔を浮かべている

 

そんな光景を眺め、皆は思った

 

 

 

 

 

これで・・・全て、“終わったのだ”と

 

 

 

 

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ーーーー†ーーーー

 

「北郷・・・一刀?」

 

「・・・?」

 

 

 

 

ーーー“否”

まだ、終わってはいなかったのだ

 

 

 

「淳于瓊?

どうか、したのか?」

 

「仲達ちゃん

貴方が、北郷一刀・・・天の、御遣い様なのねん?」

 

「ああ、そうだ、け・・・ど・・・」

 

 

 

 

 

彼は、“忘れていたのだ”

 

この国には

この成都の地には

今、この場所には

とんでもない、“地雷”があったことを

 

彼は、すっかり忘れていたのである

 

 

 

 

 

「そうねん・・・ぐふふ

貴方がん、“愛しの御遣い様”なのねん・・・」

 

「あ、あはは

愛しの、なんて、そんな照れるなぁ・・・あははははは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(^ω^)アー・ユー・レディ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゴッ・・・」

 

「御遣いさまあぁぁぁぁああああああああああああああああんん”ん”ん”!!!!」

 

「うっひゃぁ、キターーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!???」

 

 

“音速”などという言葉を、勿論この場に集まった人々は知らない

しかし今ならば、何となく理解出来てしまいそうなくらいの勢いで

 

彼は・・・北郷一刀は、駆けだしていたのだ

無論、すぐ背後にいた淳于瓊もだ

 

こんどこそ、シリアスはお終いだろう

なんてメタなことを、この光景を眺めていた霞は思う

 

 

「さって・・・ウチも、そろそろ行こうかな」

 

 

“このままじゃ、一刀が喰われてまう”と、霞

此処に・・・命をかけた鬼ごっこが始まってしまったのだった

 

 

 

 

 

 

「くっく・・・あれが、噂の御遣い様、か」

 

 

言って、笑うのは王塁だ

そんな彼の側に、一人の少女が歩み寄る

 

 

「師父・・・」

 

 

法正である

彼女は今にも泣きそうな顔で、彼のことを見つめていたのだ

 

 

「そのような顔をするな、法正よ

お主に、そのような顔は似合わない

それに私は、お前のことを・・・“誇りに思っている”」

 

「師父?」

 

 

戸惑う法正

そんな彼女の頬に触れ、彼は頭を下げる

それから、こう言ったのだ

 

 

 

「よく・・・よくぞ、頑張ったな

この国の為に、この国に住む皆の為に」

 

「っ・・・はい」

 

 

瞬間、彼女は涙を流していたのだ

大粒の涙を、恥ずかしげもなく

 

彼女がかつて“愛していた”、その師父の目の前で

彼女は、泣いていたのである

 

 

 

「さて、“劉備様”・・・この私に、どうか重き罰を」

 

「王塁さん・・・」

 

 

ふと・・・彼が声をかけたさき

いつの間にか、彼のもとへと歩み寄っていたのは劉備をはじめとした

蜀の重臣たちだった

 

 

「私は、貴女が留守の間にこの国を、我がものにしようと企みました

処断されようとも、文句は言えない立場でございます」

 

「王塁さん、だけど・・・」

 

「劉備様、貴方は“王”で御座います

その自覚を、貴方はもう少しお持ちになった方がいい」

 

「貴様・・・」

 

「まって、愛紗ちゃん!」

 

「桃香様・・・」

 

 

バッと、桃香は手を広げ愛紗を止めた

それから見つめたのは、自分の前で膝をつく王塁だった

 

 

「王塁さん・・・私は、“貴方を許しません”」

 

「御意・・・」

 

 

“許さない”

 

その一言に、彼はフッと笑みを浮かべる

“これでいい”と

そう、語っているかのように

しかし、だ・・・

 

 

 

「貴方が“罪に逃げることを”、私は許しません」

 

「っ!」

 

 

その笑顔は、一瞬のうちに驚きの表情に塗り替えられてしまう

 

 

「死に逃げることを許しません

この現実から、目を逸らすことを許しません

私は・・・貴方を、罰しません」

 

「劉備様

貴方は・・・やはり、甘い」

 

 

“甘い”

 

王塁は真っ直ぐに桃香の瞳を見つめ言う

しかし、桃香は笑顔を浮かべたまま言うのだった

 

 

「甘いのは、王塁さんのほうです

そんな簡単に、全てを諦めようなんて・・・甘すぎます」

 

「っ・・・」

 

「私は、確かに負けました

貴方の言うとおり、完膚なきまでに、華琳さんに負けてしまいました

だけど私は、まだ夢を“諦めてません”

私の願う夢は、“皆が笑顔でいられる国”は

まだ、叶えられます

皆が一緒に、手を取り合えるようになった今だからこそ

私は、この夢を絶対に諦めません」

 

 

そう言って、彼女はスッと手を差し伸べたのだ

温かな

それこそ、今が夜だと忘れてしまいそうなほどの

眩しい笑顔を浮かべながら

 

彼女は、手を差し伸べたのだ・・・

 

 

 

「認めたくないんだったら、精一杯悩んでください

納得いかないなら、真正面から私に言ってください

そうやって、一緒に歩んでいきませんか?

貴方の夢も、私の夢も

皆の夢が叶うような・・・そんな、笑顔でいっぱいになるような国を

一緒に、夢見てくれませんか?」

 

 

その手を、彼は

そっと、とったのだ

その言葉を、彼は

静かに、心の中で繰り返したのだ

その想いを、彼は

泣きそうになりながら、受け取ったのだ

 

 

 

「御意・・・!」

 

 

いや、実際に泣いていた

心の中

“いつの間に、このような泣き虫になってしまったのか”と

無邪気に、笑いながら

彼は、今までの分の涙を

 

今ようやく、流すことが出来たのだ

 

 

これにて、本当にお終い

今回の、一連の事件は

国を揺るがしかねないほどの、大事件は

 

ここに、幕を下ろしたのだった・・・

 

 

 

 

 

 

「みっちゅかいさまぁぁぁあああああんんんんん”ん”ぎもっちいぃぃぃぃぃいいいいい!!!!」

 

「来るなぁぁぁぁあああああああ!!!!!???」

 

 

 

 

 

・・・続く

 

 

-7ページ-

★あとがき★

 

はい、皆さんこんばんわ

 

やっぱり、長続きしないシリアス・・・!

 

次回で、とりあえず成都編は終了です

説明
十六章、です
成都編、次回で終わります

こんな長い間シリアスな展開が続くことを、誰が予想できただろうか・・・


序章
http://www.tinami.com/view/1001073
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コメント
それでも尚、彼は避けび続ける 目の前の男、だけじゃない この場に集まった者に、その心に 深く、響かせるように     叫ばなくちゃ(marumo )
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恋姫†無双 真・恋姫†無双 白き旅人 淳于瓊 

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