英雄伝説〜灰の騎士の成り上がり〜
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オリヴァルト皇子達が最下層に辿り着くと中央には黒き聖獣、その後方には虚ろな目をしたセドリック皇太子とテスタ=ロッサ、そしてセドリック皇太子の前に意識を失ったミリアムが寝かされており、最奥にはオズボーン宰相とアルベリヒ、ゲオルグが控えていた。

 

 

〜黒キ星杯・最下層”黄昏ノ始マリシ地”〜

 

「ミリアムちゃん…………!」

最下層に辿り着いたトワはミリアムの状態を見ると声を上げ

「……………………」

「セドリック…………やはり君は…………」

「うむ…………暗示で操られておる。」

「ジークフリードの件もそうだが、皇太子殿下の件も君が関わっているのか――――――ジョルジュっ!?」

虚ろな目をしたセドリック皇太子を見て真剣な表情を浮かべたオリヴァルト皇子の言葉に続くようにローゼリアは重々しい様子を纏って呟き、アンゼリカはゲオルグを睨んで声を上げた。

 

「…………Z組が来るかと思っていたけど、まさか君達が来るとはね、アン…………トワ…………」

「ジョルジュ君…………どうしてこんなことを!?」

重々しい様子を纏って呟いたゲオルグに対してトワは悲痛そうな表情で問いかけ

「今の僕は”黒の工房”の一員である”銅のゲオルグ”だ。”ジョルジュ・ノームという仮初”はもういない。」

「ジョルジュ…………く…………ん…………」

「どうやら本気のようだね…………」

ゲオルグの意志を知るとトワは愕然とし、アンゼリカは厳しい表情でゲオルグを睨んだ。

 

「フフ…………放蕩皇子に”紅き翼”の才媛、ログナー侯の娘に魔女の”長”か。招かれざる客だが――――――主催(ホスト)として歓迎させてもらおうか。」

「…………この期に及んで挨拶は結構さ。」

「そしてヌシが今代の”地精の長”か――――――”黒のアルベリヒ”よ。」

不敵な笑みを浮かべるオズボーン宰相の言葉に対してオリヴァルト皇子は真剣な表情で答え、ローゼリアはアルベリヒを睨んだ。

「フフ、初めましてと言うべきか。お会いできて光栄だ、緋色の魔女よ。それにその様子だと放蕩皇子達にも私達がしようとしている事等も説明しているようだから、説明する暇が省けて感謝しているよ。」

「フン、どの口が…………」

アルベリヒの言葉に対して鼻を鳴らしたローゼリアはアルベリヒを睨んだ。

 

「まず二つ、聞かせてもらおうか――――――”巨イナル黄昏”とは一体何なのだい?」

「それとミリアムちゃんに何をするつもりなんですか!?」

「ハハハ…………!”黄昏”を一言で説明するのは難しい。だが、エレボニアに掛けられた巨大な”呪い”を解くものであると言えるだろう。いや――――――”完成させると言うべきか。」

オリヴァルト皇子とトワの問いかけに対して声を上げて笑ったアルベリヒは気を取り直して説明をした。

「その呪いというのが”巨イナル一”か…………」

「ヴァリマールを含めた騎神とも関係しているみたいだが…………」

アルベリヒの説明を聞いたローゼリアとアンゼリカは厳しい表情を浮かべて考え込んでいた。

 

「1200年前に存在していた焔の至宝”アークルージュ”に大地の至宝”ロストゼウム”。その相克の果てに生まれた”鋼”を、地精と魔女は七つに分割して抑えた。しかし――――――”力”はともかく”呪い”までは抑えきれなかったのだ。そうして暗黒竜、獅子戦役、12年前の百日戦役などは起きた。もちろん去年の内戦や。皇帝が撃たれたことも同じだ。」

「な…………暗黒竜とやらと父上の件はともかく…………それぞれの事件に、呪いなんていうものが介入する余地はあったのかい!?」

アルベリヒが口にした驚愕の事実に一瞬絶句したオリヴァルト皇子は真剣な表情で問いかけた。

「クク…………おかしいとは思わなかったのかね?――――――いかに事情があったとして、開戦の口実に自国民を虐殺するなど近代国家ではおよそあり得ない事件だ。露見した場合のコストにも見合わない…………”普通なら理性が邪魔するはずなのだよ。”黒幕は小貴族の将官達。彼らは個人としては特に邪悪でもなかったという。そうですな、閣下?」

「ああ、彼らは良くも悪くも平凡だった。四大名門の圧力や結社の使徒の入れ知恵もあったがそれだけでは説明できぬほどの愚行だ。取り調べで彼らは言っていた――――”魔が差した””自分が信じられない”と。」

アルベリヒに話を振られたオズボーン宰相はかつての出来事を答えた。

 

「…………なるほど、そういうカラクリか。」

「そ、それじゃあ、もしかして…………」

「それが”巨イナル一”という存在の”呪い”だというのかい!?」

二人の話を聞いたローゼリアは静かな表情で呟き、ある事に気づいたトワは不安そうな表情をし、アンゼリカは厳しい表情で問いかけた。

「フフ…………無論、原因の全てではない。だが人や社会というシステムの作動において”黒い種”を植え付けるような”何か”――――その具象化された極みが関係している事を皇帝の件が証明している。」

「ちなみにユーゲント皇帝を銃撃した”犯人”――――――アッシュ・カーバイドはハーメルの”三人目の遺児”だ。」

「な…………ヨシュア君とレーヴェ君以外の”ハーメルの遺児”が他にもいたというのかい…………!?」

「…………なるほどの。恐らくそのアッシュとやらは12年前のハーメルの悲劇でその”黒い種”とやらが植え付けられたかもしれぬな…………」

アルベリヒの説明を補足したゲオルグの説明を聞いて一瞬絶句したオリヴァルト皇子は信じられない表情で声を上げ、ローゼリアは重々しい様子を纏って推測を口にした。

 

「フフ、正解だ――――――あれは我々が仕込んだものではない。いつか必ず、事を起こすことを彼は運命付けられていたのだ。ちなみに、取り除くことはおそらく女神にも不可能だろう。」

「そんな…………」

「……………………」

アルベリヒの話を聞いたトワは悲痛そうな表情をし、アンゼリカは重々しい様子を纏って黙り込んでいた。

「――――――馬鹿馬鹿しいとは思わぬか、そんなものに翻弄され続けるのは?だから私は、逆にその”呪い”を利用することを考えた。”巨イナル一”は強大だが、分割されたため”この次元”で及ぼす影響力は限定的だ。もし、”より練られた一つの鋼”に進化させた形で戻せるのならば――――世界を闘争の原理で染め上げ、人を遥かな高みへと導くことも可能だろう。」

「そしてそのために内戦が終結したばかりのエレボニアにメンフィル・クロスベル連合との無謀な戦争を強要させ、挙句の果てにはアルスターの民達を犠牲にしようとし、大恩あるリベールまで巻き込んだのか…………!」

「…………か、怪物…………」

「馬鹿な…………」

「――――――それを導くのが”巨イナル黄昏”。鍵となるのが白兎とその黒き聖獣というわけか…………」

オズボーン宰相の野望を知ったオリヴァルト皇子は怒りの表情で声を上げ、トワとアンゼリカは信じられない表情で呟き、ローゼリアは冷静な様子で推測した。

 

「フゥン…………――――――ま、でもそこにメンフィル(レンたち)を巻き込んだのは大間違いだったようね?」

「クフッ♪リウイお兄ちゃんやエヴリーヌ達どころか、ヴァイス達やセリカ達まで敵に回したんだから、絶対に計画は失敗するに決まっているようなものだよ。」

一方いつの間にか”黒キ星杯”に突入してアリサ達が突入した際に現れた突入地点で待機し、自身の魔力で錬成した小さな鳥を使い魔の代わりにして最下層に潜ませて状況を見守っていた”菫色の髪の少女”は真剣な表情を浮かべた後”自身の隣にいるエヴリーヌ”と共に不敵な笑みを浮かべた。

 

「そう、そこに横たわるのは”黒の聖獣”―――大地の至宝を見守るために女神に遣わされた存在だ。”巨イナル一”を抑えるために地精と魔女に協力した二聖獣の一方。900年前に穢され、呪いの大半を引き受け、己の存在を”聖地ごと深淵に封じた存在。”それを”剣”で屠ることで――――――”巨イナル一”を真に完成させる”黄昏”が始まる。その”剣”を完成させることが計画を始めるための前提条件だった。戦術殻と完全同期した、人にして武具でもある存在――――――不死の聖獣を屠れる”騎神用の武装”を錬成するための素材をね。…………本来は74体目にして最終型である”黒兎”を時間をかけて完成させる予定だったが…………想定外(イレギュラー)が起こった為、仕方なくそちらの73体目で代用する事にしたのだよ。――――――”自らの命と引き換えに”『終末の剣』へ昇華できる存在としてね。」

そしてアルベリヒは驚愕の事実を口にした!

 

「…………馬鹿な…………」

「それが…………ミリアムたちが造られた…………?」

オズボーン宰相達とオリヴァルト皇子達の対峙が始まった事で一時戦闘を中断し、話を聞いていたユーシスは信じられない表情で呟き、エリオットは不安そうな表情で呟き

「…………因果な話だぜ。」

「……………………」

レクター少佐は重々しい様子を纏って呟き、クレア少佐は辛そうな表情で黙り込んでいた。

 

「予想の斜め上…………いや、斜め下だったようだね。」

「…………どうしてそんな事ができるんですか…………?貴方だって…………大切な家族がいるはずなんじゃないですか!?そんな非道なこと、どれだけアリサちゃんが――――――」

アンゼリカは厳しい表情でアルベリヒを睨み、トワは悲痛そうな表情で問いかけた。

「”それ”は仮初の”私”だ。今の私は地精の長にして”黒の工房”の統括者―――――人としての生を捨て、使命を受け継ぎ、大いなる悲願を果たす存在。――――――そして偉大なる主に仕える下僕(しもべ)でしかない。そのために”私”は、あらゆる技術を集め、Ozにフィードバックし続けてきた…………!時にクロスベルの錬金術師から人造人間(ホムンクルス)の技術を盗みながら!時に暗黒時代の魔導師どもに魔煌兵の技術を与えて発展させながら!時に超一流の猟兵どもに武器を渡し、その戦闘データを取り込み…………!時に結社の十三工房に参画し、エプスタインの高弟にも取り入り…………!――――――時に大陸最大の重工業メーカー、ラインフォルトの力を利用しながら!」

「父…………様…………」

「お嬢様…………」

アルベリヒが語った今までのアルベリヒ自身を耳にしてしまって愕然とするアリサをシャロンは辛そうな表情で見つめた。

 

同時刻、帝都中央駅前――――――

 

一方その頃、”黒キ星杯”の出現と共に帝都中に幻獣や魔煌兵、そして”騎神”の”最後の試し”に現れた”巨大な影”に似た存在が現れた事で帝都が混乱に陥っている中、混乱に乗じて帝都に潜入したヴァイスラント決起軍は幻獣達を退治していた。

「…………フン、キリが無いな。」

「ええ…………恐らく儀式が続く限りは。」

ヘクトルを操縦するウォレス准将と共に自身の愛機である黄金のシュピーゲルを操作して”巨大な影”を滅したオーレリア将軍は鼻を鳴らし、オーレリア将軍の言葉に頷いたウォレス准将は周囲の警戒を再開した。

「お二方――――!」

するとその時アッシュを回収して両腕にアッシュを寝かせている決起軍の機甲兵が背後にいる二体の機甲兵と共にオーレリア将軍達に近づいた。

 

「フッ…………義理は果たしたか。ここでの目的は果たした――――――撤収するぞ!」

「イエス・マイロード!」

アッシュの回収を確認したオーレリア将軍は苦笑した後号令をかけ、オーレリア将軍率いる決起軍は帝都から撤収していった。

 

 

〜黒キ星杯・最下層〜

 

「宰相殿――――――いや、ギリアス・オズボーン。それが貴方の意志でもあり、強行するつもりなら――――全力で阻止させてもらおう。」

懐から銃を取り出したオリヴァルト皇子は銃口をオズボーン宰相に向けて宣言し

「我が拳の全てを賭けてでも―――」

「Z組のみんなの為に…………そしてリィン君達の為にも!」

「”黄昏”の発動は阻止させてもらうぞ。」

オリヴァルト皇子に続くようにアンゼリカ、トワ、ローゼリアもそれぞれの武装を構えて戦意を高めた。

 

「面白い…………」

「主が出る必要はありません。まもなく”緋”も復活し、皇太子の準備も整うでしょう。ならば先に”聖獣”を目覚めさせるべきでしょう。放蕩皇子達も前座くらいはこなせるはずです。」

オリヴァルト皇子達の行動を見て不敵な笑みを浮かべたオズボーン宰相に意見をしたアルベリヒはオリヴァルト皇子達に視線を向けて嘲笑した。

「…………好きにするがいい。」

「御意。」

オズボーン宰相の許可をもらったアルベリヒが指を鳴らすとオリヴァルト皇子達と黒き聖獣は巨大な結界に封じ込められた!

 

「しまった…………!」

それを見たオリヴァルト皇子が声を上げたその時目覚めた黒き聖獣がオリヴァルト皇子達と対峙した。

「う…………ぁ…………」

「…………穢れし女神の聖獣か…………」

「名も…………原型すら…………留めてなさそうじゃな…………」

黒き聖獣と対峙したトワは聖獣から感じる威圧感に圧され、アンゼリカとローゼリアは重々しい様子を纏って呟いた。

 

「――――――これより迎撃を開始する。まともに相手をする必要はない…………回避や防御に専念しつつ、結界の外に出る方法を探るよ…………!」

「はいっ!」

「了解…………!」

「うむ…………!」

そしてオリヴァルト皇子の号令に力強く答えたトワ達は黒き聖獣との戦闘を開始した。

 

黒き聖獣の戦闘能力はあまりにも圧倒的で、オリヴァルト皇子達は苦戦しながらも結界からの脱出方法を探っていたが、脱出方法は一向に見つからず、オリヴァルト皇子達は追い詰められつつあった。

 

 

「オリビエ…………!」

「不味いわね…………せめて結界の起点を外部から攻撃して破壊できればいいんだけど…………!」

苦戦しているオリヴァルト皇子達の様子を見たミュラーは声を上げ、厳しい表情で呟いたクロチルダが魔術を発動しようとしたが

「そんな事、させると思っているのかい!?」

「チッ…………!」

カンパネルラが妨害し、カンパネルラの妨害にクロチルダは舌打ちをした。

 

「…………これ以上は本気で不味そうね。仕方ないわね…………――――――エヴリーヌお姉様、お願いしてもいいかしら?さすがにオリビエお兄さんを死なせる訳にはいかないし、”紅き翼”の関係者を見殺しにしたらリィンお兄さん達の恨みを買って、余計な軋轢を作っちゃうかもしれないもの。それと”せっかく契約を結べた魔女の長をここで失えばメンフィル(レンたち)にとっても損失になるでしょうし。”」

「結界の起点を壊せばいいだけでしょ?」

同じ頃状況を見守っていた菫色の髪の少女は溜息を吐いた後エヴリーヌに要請し、要請されたエヴリーヌは少女に確認し

「ええ。ただし、聖獣は殺さないように注意して。」

「ん。」

少女の言葉に頷いた後魔弓に魔力の矢を番えて遥か下目掛けて次々と魔力の矢を放った!解き放たれた矢は凄まじい勢いで最下層に向かい始め

「い、今のは一体…………」

「一瞬だが”矢”のように見えたが…………」

「霊力(マナ)も感じたから、恐らく霊力による矢だと思うんだけど…………」

「矢が降ろうが槍が降ろうが、何でもいい…………殿下達を救ってくれ…………!」

一瞬で通り過ぎた矢を見たエマが戸惑っている中、ガイウスは静かな表情で呟き、セリーヌは考え込み、ユーシスは真剣な表情で声を上げた。そしてエヴリーヌが放った矢はオリヴァルト皇子達を封じ込めている数か所ある結界の起点に全て命中して起点を破壊し、結界の起点が破壊された事で結界は解けた!

 

「なっ!?結界が――――――」

「フフ、何者かは知らぬがどうやら放蕩皇子達以外にも招かれざる主催(ホスト)がこの星杯に紛れ込んでいるようだな?」

結界が解けたことにゲオルグが驚いている中オズボーン宰相は不敵な笑みを浮かべて矢が降り注いで来た上を見上げた。

「今のは魔力による矢…………?まさか…………”彼女”がこの星杯のどこかに潜伏しているのか…………?」

結界の起点に刺さった後消えた矢を目にしたオリヴァルト皇子は目を丸くした後魔力の矢を放つことができる自分が知る人物――――――エヴリーヌを思い浮かべて驚きの表情を浮かべた。

「何をしておる!今が白兎を奪還する好機じゃぞ!」

「あ、ああ…………!私とローゼリアさんが聖獣の注意を惹きつけるからトワ君とアンゼリカ君はミリアム君の救出を――――――」

「――――――!!」

ローゼリアに指摘されると我に返ったオリヴァルト皇子がトワとアンゼリカに指示をしかけたその時黒き聖獣は咆哮を上げ、全身から凄まじい瘴気を発生させた後再び咆哮を上げてオリヴァルト皇子達を吹き飛ばし、更に怪しげな紅色のレーザーのような攻撃をオリヴァルト皇子達に叩きつけて無力化し、オリヴァルト皇子達を無力化した黒き聖獣は全身を怪しげな紅色に変化させていた。

 

「…………ううっ…………」

「くっ…………まさかこれ程とは…………」

「どうやら完全に目覚めてしまったようじゃな…………」

「ハハ…………本当にいるんだったら、私達の前に現れて助太刀して欲しいんだけどね、エヴリーヌ君…………」

吹き飛ばされ、攻撃を受けたトワとアンゼリカは呻き、ローゼリアは痛みに顔を顰めながらも杖を支えにして立ち上がり、ローゼリアに続くように立ち上がったオリヴァルト皇子は疲れた表情で呟いた。

 

「フフ、”前座”の時間は終わったようだな。まあ、どの道女神の聖獣には通常の武装もそうだが、ゼムリアストーン製の武装では通じないのだから無駄な足掻きというものだ。唯一通じるとすれば魂で錬成した――――――」

オリヴァルト皇子達の様子を見たアルベリヒは嘲笑した後得意げに語り始めたその時

「次は聖獣の足を破壊して。四本の内の一本でも破壊すれば、すぐには動けないはずよ。」

「はーい。――――――アン・セルヴォ!!」

少女の要請によって再び突入地点から放ったエヴリーヌの魔力と闘気を纏わせた矢が凄まじい速度で黒き聖獣に襲い掛かり、聖獣の四本の足の内の一本に命中すると足を完全に破壊し、聖獣の態勢を崩した!

「なあっ!?”終末の剣”でしか通じないはずの聖獣の足を破壊しただと!?」

「フフ、まさかここでも想定外(イレギュラー)が起きるとはな。」

「…………それもその想定外(イレギュラー)はオリヴァルト皇子達の援軍の可能性が高そうですね…………」

黒き聖獣の足が破壊された事に驚いたアルベリヒが信じられない表情で声を上げ、不敵な笑みを浮かべたオズボーン宰相の言葉に続くようにゲオルグは厳しい表情を浮かべてオズボーン宰相同様上を見上げた。

 

「今のはエヴリーヌ君の弓技(クラフト)…………!――――――エヴリーヌ君!私の声が聞こえているのなら――――――」

そして見覚えのある技を見たオリヴァルト皇子がエヴリーヌがこの場にいる事を悟り、声を上げてエヴリーヌに協力を頼もうとしたその時

「おのれ…………!何者かは知らぬが、”黄昏”の発動まで邪魔はさせんぞ!――――――主よ、予定よりも少々早いですが始めてもよろしいでしょうか?」

「――――――好きにするがいい。」

アルベリヒが怒りの表情で声を上げた後オズボーン宰相の許可を確認すると指を鳴らした。するとセドリック皇太子はテスタ=ロッサの中へと吸い込まれ、テスタ=ロッサは異空間から剣を取り出して構えてミリアムに視線を向けた。

 

「不味い――――――」

「目を覚ますんだ、セドリック――――――!!」

「やめてくれええええっ!!」

それを見たアンゼリカは厳しい表情を浮かべ、オリヴァルト皇子が声を上げ、ユーシスが悲鳴を上げたその時、再びエヴリーヌによる弓技(クラフト)――――――アン・セルヴォによる矢が剣を持つテスタ=ロッサの腕目掛けて襲い掛かったが

「この私を甘くみるな!ゾア=バロール!!」

「――――――」

アルベリヒの指示によって現われたゾア=バロールがクラフト――――――トライ・ブリューナクを放ってエヴリーヌの弓技(クラフト)を相殺した。そしてテスタ=ロッサは剣でミリアムの心臓を貫いた!

 

「かふ…………っ!?」

心臓を貫かれたミリアムは呻き声を上げ、ミリアムの身体から次々と大量の血が出始め

「ミリアム――――――ッ!」

それを見たユーシスは悲鳴を上げた!更にその時、アルベリヒが指を鳴らすとセドリック皇太子の意識が戻り

「あれ…………?僕は…………それにここは一体……――――――え。」

意識が戻ったセドリック皇太子は自身が操縦するテスタ=ロッサの剣がミリアムを貫いている所を見ると呆け

「ミリアム…………さん…………?僕は…………何…………を…………?」

「…………リィン…………みんな…………ごめん…………ね…………」

セドリック皇太子が呆然としている中意識を戻したミリアムは最後の言葉を告げた後絶命し、絶命したミリアムはアガートラムと融合し、”根源たる虚無の剣”と化した!

 

「殺…………した…………?僕がミリアムさん…………を…………?うああああああぁぁぁぁ――――――ッ!!」

自分の手でミリアムの命を奪った事を自覚してしまったセドリック皇太子が悲鳴を上げるとセドリック皇太子は瘴気に包まれ、”鬼の力”を解放したリィンのように髪は白く染まり、目は真っ赤に染まり、更にテスタ=ロッサは全身を瘴気に染め、核(ケルン)がある部分は怪しげな目が顕れた!

「騎神へのフィードバック…………!?」

「なにあれ…………!」

「…………第二形態…………」

「呑み込まれやがったか…………」

テスタ=ロッサの様子を見たセリーヌとシャーリィは驚き、ジークフリードとルトガーは静かな表情で呟いた。そして”根源たる虚無の剣”を手にしたテスタ=ロッサは黒き聖獣を圧倒し、聖獣の足を全て破壊して動けなくした後は聖獣の上に乗って嬲り殺すように何度も剣を叩き込んだ!

 

「もう止めて…………止めてよ…………」

「…………セドリック…………頼むから目を覚ましてくれ…………!」

テスタ=ロッサの様子を見ていたトワは悲痛そうな表情で声を上げ、オリヴァルト皇子は辛そうな表情で声を上げた。そしてテスタ=ロッサが止めに剣を聖獣に突き付けると聖獣は断末魔を上げると同時に”巨イナル黄昏”が発動し、”巨イナル黄昏”が発動によってエレボニア帝国全土に黒い風が走り、エレボニア帝国全土は遥か昔から黒き聖獣が封じ続けていた”呪い”に侵され、更に赤黒いプレロマ草が様々な場所に生え始めた!

 

 

〜リベール王国・ボース市〜

 

「…………――――――!これは。」

一方その頃リベール王国のボース市のマーケットで買い物をしていたエイドスは血相を変えてエレボニアが位置する方向に視線を向け

「どうかされたのですか、エイドスさん。」

エイドスの護衛としてエイドスの付き添いをしていたリースはエイドスに訊ねた。

「…………先程エレボニア方面の霊脈が瘴気――――――いえ、”呪い”に侵された事を確認しました。…………恐らく今頃クレハさんやノイさん、お母様も感じ取っているでしょう。」

「んなっ!?エレボニア方面の霊脈が”呪い”に侵されたって事は、”鋼の聖女”から話を聞いたエステルちゃん達の話にあった…………!」

「副長達が阻止しようとしていた”巨イナル黄昏”が始まってしまったのですか…………!」

エイドスの説明を聞いたリース同様エイドスの付き添いをしていたケビンは驚いた後リースと共に真剣な表情を浮かべた。

 

「――――――ケビンさん、リースさん。買い物は中止です。”巨イナル黄昏”による”呪い”がこれ以上広がらない為にも、私達がエレボニア方面の霊脈から広がってくる”呪い”を防ぐ為に結界の儀式をして霊脈に結界を施しますのですぐにリベール王国に私やお母様達がリベールの霊脈の中心地で儀式をする許可を取ってください!それとメンフィル・クロスベル連合にも――――――いえ、”エレボニア以外の西ゼムリアの全国家、自治州”からリベールと同様の許可を取ってください!」

「了解しました…………!」

「はい…………!」

エイドスの指示にケビンとリースは力強く頷きそれぞれ慌ただしい様子で通信を開始し

「…………――――――私が人々の希望の為に与えた”至宝”が原因でかつて私達が守った世界を終わらせると言った私達のした事まで無駄にしてしまうような事は”私達”が絶対にさせません。だから貴方は安心してゆっくりと休みなさい―――――”大地の聖獣アルグレス”。」

決意の表情を浮かべてエレボニア方面に視線を向けたエイドスは”巨イナル黄昏”の発動と同時に命を落とした自身の眷属に祈りを捧げた――――――

 

 

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という訳で今回で閃Vラストイベントの話が終わったので、ここからは原作崩壊&オリジナル要素だらけの閃W編です!エヴリーヌと一緒にいた菫色の髪の少女は一体誰なんでしょうね〜(すっとぼけ)ちなみに菫色の髪の少女が今まで登場しなかった理由については、第一部もしくは1章のZ組側の話の時に判明する予定です(まあ、既に理由を察している人もいるかもしれませんがw)

 

 

 

説明
第36話
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コメント
完全ROM専様 まあ、原作と違ってリウイ達メンフィル、ヴァイス達クロスベル、そしてセリカ達戦女神陣営という遊戯盤を無茶苦茶にするようなメンツが相手ですからねw (sorano)
追記 原作を見ていて、リィティナ(リィン×アルティナ)って最高だなって思いました(意訳:アルティナをリィンの婚約者の一人にして欲しいです)。(完全ROM専)
アルベリヒ(というよりは○○○)への殺意が加速する話になりましたね。 アルティナが生き残ったことを喜べばいいのか、原作通りにミリアムが死んだ状況を嘆けばいいのか・・・。 いずれにせよ、ギリアス陣営の未来は暗いでしょうね。(完全ROM専)
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