真・恋姫†無双・公孫賛√ 〜白花繚乱〜第3話
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 一刀がこの幽州に居座るようになって一日目。

 

【白蓮】「ほら、一刀。もうおきろよ」

 

【一刀】「ん………」

 

 鳥も鳴き始める早朝。疲れがあるのか、一刀はなかなか起きずにいた。寝かせてやりたいのは山々だが、今日から一刀には色々と知ってもらわなければならないこともあるために、そうもいかなかった。

 

 一刀を起こすために、白蓮は一刀が眠っている部屋にきて、体をゆするも、なかなか起きない。

 

【白蓮】「おい、一刀。いい加減にしないと無理やり起こすぞ」

 

【一刀】「ん〜……あと五分…」

 

【白蓮】「何を寝ぼけてるんだ…」

 

 お決まりの寝言も、白蓮には意味すら通じなかった。仕方なく、白蓮は強行手段にでる。

 

【白蓮】「仕方ないな………ほら!さっさとおきろ!!」

 

 がばっと一刀の体を包んでいる布団をめくり上げる。

 

【一刀】「んあぁぁ〜〜〜〜」

 

 急に体が冷えることで一刀は寝ぼけながらも苦しみだした。

 

【白蓮】「あははは、ほらさっさとおき―――!?」

 

 そんな一刀の様子がおかしかったのだが、一刀の体の一部を視界の端に捉え、白蓮の言葉は止まってしまう。

 

【白蓮】「な……なななななななな……なななぁぁ!??」

 

【一刀】「ん〜?…あぁ…白蓮…おはよ…」

 

 顔を真っ赤にして、後ろずさる白蓮にそっけなく挨拶を交わす。

 

【白蓮】「お、おおお、おお、お前、そそそそっそそれはなんだ!?」

 

【一刀】「――?」

 

 

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 一刀を指さして、白蓮は慌てふためく。

 

 一刀はそんな彼女の様子が理解できず、半開きの目をこすりながら、自分の周りを見渡す。

 

【一刀】「―――………え?」

 

 自分の下腹部辺りのところで視線の移動がとまる。そこにはよく見覚えのあるモノがあった。

 

【一刀】「え、え、えええ、ええ、え?」

 

 思わず自分の体を触りまくる。しかし、胸の辺りには無いはずのものまであって、それがあるなら、股間で猛威をふるっているコレはあってはいけなくて。

 

 自分の体がまったく理解できない状態に陥っている。

 

【白蓮】「お、お前、男だったのか!?」

 

【一刀】「ちょ、ちょっとまて!俺にも何がなんだか…!!と、とりあえずそれ返して!」

 

 白蓮から包まっていた布団を取り戻し、自分の体を隠すように被りなおす。

 

 それから数刻の間、二人してわめき散らした後、騒ぎが聞こえたのか星がこの場に入った。

 

【一刀】「………っ」

 

【星】「しかし…………文字通り二刀流とは……さすがに天から参られた方ということか…」

 

 既に半泣きになりつつある一刀を尻目に、星がつぶやく。

 

【白蓮】「はぁ……でも、昨日湯に入ったときはちゃんと女だったはずだろ?」

 

 一通り慌てた白蓮も既に落ち着きを取り戻し、一刀の状態の不可解さに頭を悩ませていた。

 

【一刀】「………うん。」

 

【星】「それが今朝目覚めてみれば、ソコだけ男になっていたと。」

 

 二人は俺が女だと思っている。だから、二人からしてみれば、女性にいきなり男のモノが生えたという事実。しかし、俺にとっては男から突然女になったうえで、コレだ。混乱の度合いが明らかに違っていた。

 

 

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【星】「ふむ………では」

 

【白蓮】「星?」

 

 何かを納得したように、星は頷き、俺のそばへと近寄ってくる。

 

【一刀】「な、何?」

 

【星】「いえ、何は共われ、とりあえずは治めるものを治めなければと思いまして」

 

【一刀】「え、えーと、なんのこと…かな…?」

 

【星】「私も初めて故、至らぬところはご容赦くだされ」

 

 と、妖艶にほほえみ、星を俺の体に寄り添うように近づいてくる。

 

【白蓮】「せ、星!何をしてるんだよ!」

 

【星】「口淫ですが、なにか?」

 

 俺の太腿に息がかかるほど顔を近づけたところで星は何事も無いように言い放った。

 

【白蓮】「ば、ばか!そういうのはだな!」

 

【星】「一部がこうなっているとはいえ女同士。裸の付き合いとでも考えればよいのです。」

 

【一刀】「いや、たぶん違うと思う…。」

 

【星】「ふふ・・・。」

 

 俺のツッコミにも反応せず、星は俺の下着に手をかける。

 

 ちなみに下着はさすがに女物をつけるほど、俺も男を捨てたくは無かったので俺の服を持っていった侍女が洗濯するのを急いで止め、返してもらった。服もそうすればよかったのだが、泥や砂があちこちにこびりついていて、とても着られる状態ではなかったために、あえなく断念し、白蓮の服をそのまま借りることとなったのだ。

 

【白蓮】「うぅ………やっぱりだめだ!!!」

 

 突然叫びだした白蓮は、俺のそばにいた星の腕をつかみ、部屋の入り口のほうへと駆け出した。

 

【星】「な、白蓮殿、痛っ……いたい…!」

 

【白蓮】「一刀!さっさとソレ治めたら広間に来い!いいな!」

 

 それだけ言い放って、白蓮は思い切り扉を閉めた。

 

 

【一刀】「治めろったって……………どうしろっていうんだよ。」

 

 いきり立ったソレを眺めつつ、呟く。

 

【一刀】「………んっ」

 

 触ってみたら、とても自分とは思えないような声がでた。

 

【一刀】「はぁ…………」

 

 ため息はずいぶん深いものだった。

 

 

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 しばらくすると、どうやら朝の生理現象だったようで、自然と治まった。

 

 部屋の机の上には、洗濯が終ったようで、俺の服が置いてあったので、ソレを着て白蓮に言われたとおり広間へ

 

と向かう。

 

 

【白蓮】「………あ、一刀。もういいのか?」

 

【一刀】「なんかどう答えても微妙な空気になりそうだけど………うん。大丈夫。」

 

 広間に入れば、中には白蓮が一人だった。

 

【一刀】「……星は?」

 

【白蓮】「あいつなら外へ行ったよ。別にウチの臣下ってわけじゃないからさ」

 

【一刀】「あ、そうなのか」

 

 昨日からのやり取りで、すっかり星も白蓮に仕えているんだと思っていた。

 

【一刀】「それで、何するの?」

 

【白蓮】「あぁ、お前に手伝ってほしいとは言ったものの、一刀がこの国についてどこまで知っているのか分から

 

なかったからさ。それを聞いておこうとおもって」

 

 そういうと、白蓮は奥においてあった地図を引っ張り出し、その場に広げた。

 

【一刀】「これは………漢の地図か」

 

【白蓮】「あぁ、正確には南蛮やら匈奴とか、西なら五胡あたりまで載ってるけど、さすがにその辺りの情報は少

 

ないから、かなり曖昧なんだけどな」

 

 白蓮は指を地図の端から端へと動かし、説明してくれる。

 

 年代を感じさせる質感。色もすでに茶色がかったところもある。

 

【白蓮】「それで、今私たちが治めている幽州はここ。」

 

 内陸に位置する土地。街道の線を辿ってみるとあちこちへとのびていた。

 

【白蓮】「で、こっちが都。天子様が鎮座されている洛陽だ。」

 

【一刀】「あぁ、そのあたりは大体わかる。地理関係はそんなに問題ないと思う。」

 

 実際に一度大陸を統一したわけだから、少なくともこの漢の地理においてはおおよその知識は持っている。

 

 

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【白蓮】「そうかそうか。だったら話ははやいな。」

 

 白蓮はそういって、地図を再び丸め、奥へと持っていった。

 

【白蓮】「で、本題なわけなんだけど、今この漢って国はこれでもかってほどに弱っている。下手すれば近いうちに崩れるんじゃ無いかってくらい。」

 

【一刀】「あぁ」

 

 白蓮が言おうとしていることはおおよそ見当がついた。

 

 しかし、俺は白蓮の言葉を聞き続ける。

 

【白蓮】「そうなったら、次の時代を作ろうといろんな奴が名乗りを上げると思うんだ。…………それで…」

 

 あまり人に頼むということに慣れていないのか、白蓮の言葉が詰まってしまう。

 

【一刀】「そうだな………。」

 

【白蓮】「お前の…その天の力っていうか知識っていうか……そういうのを…」

 

【一刀】「まず――」

 

【白蓮】「え…」

 

【一刀】「白蓮のところは昨日とさっき見た感じ、町はそれなりに活気がある。」

 

【白蓮】「あ、あぁ……」

 

 昨日も思ったことで、それは間違いなく白蓮の力だと言っていい。だけど、それと同時に思ったことは。

 

【一刀】「でも、ここって人が少ないよな。いや、住んでる人とかじゃなくて、この城にさ。」

 

【白蓮】「あぁ……それも悩んでいることのひとつなんだ。今は星が客将としていてくれるからいいが、もし星がいなくなった場合のことを考えると…」

 

 白蓮の政治の手腕は悪くない。でも、他に飛びぬけて目立った物があるわけではなく、また他に何かに秀でた人材もいない。唯一といっていいほどの存在が星こと趙雲である。

 

【一刀】「ここに書庫みたいなところってある?資料のおいてあるところ。」

 

【白蓮】「え、あ、あぁ。それならあるけど、お前字は読めるのか?」

 

【一刀】「まぁ、ある程度はね。ちょっとそこ行って来るから、道聞いてもいいかな。」

 

【白蓮】「それなら、ここをでて―――」

 

 白蓮から道を聞き、俺は広間を後にした。

 

【白蓮】「って、まだ話最後までしてないって!!おい、一刀ー!!」

 

 

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 〜書庫〜

 

 

【一刀】「ふぅ……こんなところか」

 

 いくつかの書を抱え、書庫の中に置かれた机にそれを置く。

 

【一刀】「………実際乱世で公孫賛は早い時期に袁紹に飲み込まれちゃうからな……。急がないと」

 

 白蓮についた段階で、懸念していたことのひとつがそれだった。少なくとも分かっている障害には手を打っておく必要がある。

 

 しかし、それにもやはり不安があった。もしかしたら、また俺は消えるんじゃないかと。

 

【星】「おや、一刀殿。こんなところでいかがされたかな」

 

【一刀】「あ、星。ってか、その殿ってなんだか緊張するんだけど……呼び捨てでいいよ?」

 

【星】「ふむ…。しかし、これは私なりに敬意の表し方ですから、どうかお気になさらず」

 

【一刀】「ん〜……」

 

 言ってはみたものの、やはり変える気はないようだ。

 

【星】「それより、何を見ておられるのです?」

 

【一刀】「ここの人材と最近おきた事件とかがあれば知りたくてさ。どのくらいの治安なのかとか。街の中は平和でも外に出れば……ってあるでしょ」

 

【星】「ふむ。そういえば近頃は頻繁に賊がでるようになりましたな。私もいくつか討伐にでたものも。」

 

【一刀】「そっか……」

 

 もう街の周辺でも賊が頻繁に出るようになっている。もしかしたら、思っている以上に時間は限られているのかもしれない。

 

【一刀】「そういえば、星は客将だって聞いたけど、白蓮以外に仕えてる人でもいるの?」

 

【星】「うん?いえ、特にそういうわけではありませんが…」

 

 少し苦笑いになりながら、星は答える。

 

 

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【星】「元々は自分が仕えるべき主君をさがして旅をしていたところだったのですが、白蓮殿はあのとおりでしたので、どうにもここが居心地がよかったのです。しかし、残念ながら白蓮殿も気はよいのですが、どうにも器が小さい。あの方では乱世を駆けぬくことは出来ぬでしょうから。」

 

【一刀】「あはは……。結構バッサリ斬って捨てたね…」

 

【星】「しかし、それも事実。……………ただ」

 

【一刀】「うん?」

 

【星】「昨日あたりから仕えてもよいかと思える人物には出会えました」

 

 星はそういって、俺の目を見てくる。

 

【一刀】「………………え、俺?」

 

【星】「ふふ。しかし、一刀殿はどうやら白蓮殿の物になってしまったようですし、これは悩みどころですな」

 

【一刀】「そ、そういわれてもな………」

 

 俺にしてみれば答えようの無い悩みだった。

 

 星に言われたことを気にしながらも、俺はもう一度書に目を移す。

 

 見たのはこの街の人事配置。基本的に文官で構成され、数少ない武官でも名の知れたものはいなかった。

 

 さきほども白蓮に言ったが、やはり絶対的に人材が不足している。ひとつの街を治めるならばこれでもいいだろうが、乱世で生き残るためには、足りない要素はいくらでもあった。

 

 かろうじて内政が上手く言っていることが救いだろうか。

 

【星】「一刀殿。」

 

【一刀】「ん?―――おわっと」

 

 星に呼ばれて振り向けば、木の棒状のものがこちらへ飛び掛っていた。

 

 あわててそれを受け止めると、どうやら武術の稽古で使う棍のようだった。

 

【星】「あまり考えてばかりいても仕方ありませぬ。すこし付き合ってくだされ」

 

【一刀】「付き合う………って、えぇぇ!?俺!?」

 

 

 

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 流れで星の鍛錬に付き合うことになった俺は、資料を棚へと戻し、庭のほうへと出て行った。

 

【一刀】「しかし、いきなり組み手ってどうなんだろう……」

 

【星】「なに、貴女の実力もわかるし、丁度よいではありませんか。」

 

【一刀】「俺の実力って……あの趙雲に勝てるわけ無いじゃん…」

 

【星】「そんなことはやってみなければ、わかりませぬ」

 

【一刀】「いや、やる前からわかりきったことも………おおぅっ!?」

 

 話している途中に星から高速の突きが飛んできた。

 

【星】「やはりなかなかやりますな。」

 

【一刀】「――びっくりした………てか、いきなりすぎるって!」

 

【星】「戦場で今から攻撃しますなどという馬鹿はおりませぬ!!!」

 

 こんどは二度、三度と連続して突きを放ってくる。

 

【一刀】「ちょ――このっ!……くっ」

 

 与えられた棍を操り、二撃目三撃目と受けていくが、次第に突きの速度に追いつかなくなる。

 

【星】「はっ!!」

 

【一刀】「っ!」

 

 一度間合いを離そうとしても、相手は槍の名手であり、そうそう思うとおりに動かせてはくれなかった。

 

 一撃目、突きを棍にかすらせ、回避。

 

 二撃目、突きから変化した払いを相手の棍と十字を描くように受ける。

 

 三撃目、受けた衝撃を反動にして体を回転させ、星は棍の後ろ側で一気に間合いをつめてきた。受けることも敵わず後ろへと下がるが、続く四撃目。棍を回転させ高速の突撃。離してしまった間合いは、星にとって最大の攻撃が可能な距離となった。

 

【一刀】「――――っ!!」

 

 突進しながら、突きを繰り出すその姿に見覚え感じた瞬間、自然と体が動いた。

 

 星の持つ棍の先が俺の体に当たるかという瞬間。その突撃を受けたのは、俺の棍。横向き受けたその衝撃に耐え切ることが出来ず、棍がこわれようとした刹那。

 

 自分でも意識のないうちに、俺は棍を回転させ、体をずらす。二人の間に、小型の台風が巻き起こったように、一瞬のうちに空気がはじけた。

 

【星】「っ!はあっ!!」

 

 しかし、回避したと自覚する間もなく、星は棍の逆側で、俺を打ち上げた。

 

 一瞬にいろんなことが起き、理解するもないまま、俺はその場に打ち付けられる。

 

【一刀】「がはぁっ………はぁ……はぁ……はぁ……やっぱっ……無理だって……」

 

【星】「ふぅ……いやいや、予想以上でした。」

 

【一刀】「はぁ……正直、意識なんて最初の一撃目くらいだよ……あとは何がなんだか…」

 

【星】「ふふふ。戦いなどそのようなものです。考えてから動いていては遅すぎる。」

 

【一刀】「そう…かな…」

 

【星】「えぇ。しかし、やはり貴女は面白い…。」

 

【一刀】「あんまり褒められている気はしないな…。」

 

【星】「気のせいでしょう」

 

 あははははと笑う星だが、俺にはそれに反応する気力も残っていなかった。ほんの一瞬なのに体力と一緒に全部持っていかれた感覚。その場に寝そべったまま、俺の意識は落ちていった。

 

 

 

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 ――夕方。

 

 意識を失ってから目が覚めるまで、およそ数刻。その間、白蓮が俺に付添ってくれていたようで、目が覚めると彼女の顔が見えた。

 

 星がばつの悪そうな顔していたから、おそらく白蓮に色々いわれたんだろう。

 

 俺は白蓮の許可をもらい、街へと来ていた。

 

 色々あって、こんな時間になってしまったけど、昨日上から見た街を歩きたかったんだ。

 

【一刀】「ふぅ………あてて」

 

 腕をのばしてみると、昼間星から攻撃を受けたところが少し痛んだ。

 

 普通にしていれば気になるほどでもないので、大丈夫なのだが、しばらくは引きずりそうだ。

 

 夕焼けに染まりつつある街を歩きながら、辺りを見回す。さすがに時間が時間だけに店じまいを始めるところもあったが、それでも、活気はまだ残っていた。

 

 しばらく歩いていると、街の一角に人だかりが出来ていた。

 

 何かと気になって行ってみる。

 

 野次馬を掻き分けるように前へと進み、俺はその惨状をみた。

 

【???】「………」

 

【???】「………ビクビク」

 

 二人の女の子。一人は何か呟いている。だが、この光景はもう一人によって描かれている。

 

 もうひとりの子はどうやら気絶しているようだが、体が痙攣しているのか、ビクビク震えていて、大量の血液を流していた。

 

【一刀】「ちょ、ちょっと………だいじょう…ぶ…?」

 

 恐る恐る近づく。

 

 もしかしたら、死んでる?とか考えながらも二人に声をかけた。

 

 

 

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【???】「ほらほら、稟ちゃ〜ん、とんとんしますよー」

 

【???】「フガフガ……」

 

【一刀】「……え」

 

 すると、近づいたことで、そのこの呟きが聞こえた。そして、その子は血を出している子の首元を数回たたき始める。

 

【???】「ふぅ……」

 

【???】「まったく、こんなところで鼻血なんてださないでください〜」

 

【一刀】「え……あれ………」

 

 鼻血を出していた子は正気をとりもどし、二人は立ち上がる。

 

 はっきりと顔が見えたことで、俺はその二人を眺めてしまった。

 

 見覚えがある……なんてものではなかった。強烈なまでの懐かしさと嬉しさと愛しさ。

 

【???】「………おや、すみません、心配をおかけしてしまったようで」

 

 メガネをかけた子が俺に向かって謝っている。

 

【???】「まったくだぜ。このねーちゃん危うくさけびだしちまったかもしれねーだろう」

 

 人形を頭に乗せた子はなにやら先ほどと口調が違う。

 

【一刀】「あ……あの………えっと…」

 

 二人と話したい。そんな感情が体の奥から津波のように押し寄せてくる。

 

 だが―――わからない。

 

 思い出せない。

 

【???】「お前が言うな、風」

 

【一刀】「――――――っ!」

 

 稟、風。それを聞いた瞬間、頭が割れたような錯覚に陥る。鼓動を打つたびに体中に電気が走り、俺の脳を痛めつけるように駆け抜け、俺はその場に膝を折る。

 

 

 

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【???】「え、だ、大丈夫ですか!?」

 

 突然苦しみだした俺に、二人は近寄る。

 

【一刀】「………っはぁ……大丈夫……。たぶん」

 

 熱を放ち続ける体を押さえながら、俺は立ち上がる。

 

 深呼吸をくりかえし、俺はようやく息を整えることが出来た。

 

 まったく、心配して近寄って逆に失敗されていては笑いものでしかない。

 

【一刀】「ふぅ………よし。二人はこの町の人?」

 

【戯志才】「なんという切り替えの早さ…。……いえ、私たちは旅をしている者です。私が戯志才。こちらが程立です。」

 

【程立】「お姉さんは、もしかして天の遣いという方ですか?」

 

【一刀】「あ、えと俺は………。あぁ、まぁいいか。うん、なんだかそうなってるみたいだね。」

 

 お姉さんではないといいたかったが、この姿で何を言っても仕方なく、俺は諦めた。

 

【戯志才】「――ふむ。ではやはり公孫賛殿が天の意思を受けたというのは間違いないのですね。」

 

【一刀】「それほど大層なものでもないとおもうけどね……ただ俺を拾ってくれただけだよ」

 

【戯志才】「些細なものほど、得てして天啓となるものです。」

 

【一刀】「というか、よく分かったね。俺のこと」

 

【程立】「天の遣いは光り輝く衣を纏っているという話ですから〜」

 

【一刀】「あぁ、なるほどね…」

 

 自分の着ている服は今はフランチェスカの制服。これでは自然と目立ってしまうのも当然といえば当然。

 

【戯志才】「さて、それでは私たちはそろそろ宿へ戻ります。」

 

【一刀】「あ、うん。気をつけてね」

 

 二人の姿が見えなくなたところで、俺も城へと戻っていった。

 

 帰ってみると、どこから伝わっていたのか、俺が苦しんでいる様子を白蓮に知られていて、俺は何故か怒られてしまった。

 

 

説明
早くも第3話で自重できませんでした。すみませんw
しかし、イラストのほうで華琳の総攻撃フラグがすごいとのコメをたくさん頂いてしまって、今更ながら袁紹よりそちらで苦労しそうですw

それから、作中でもありますが、人材不足ははんぱじゃないので、今後の展開で勢力にかなり変動があると思います。

さすがに蜀の愛紗・鈴々、呉の蓮華・冥鈴・小蓮・祭、魏の春蘭、秋蘭、桂花のようないわゆる最古参?のメンバーはさすがにうごかせないですがw


第2話→http://www.tinami.com/view/100004

第4話⇒http://www.tinami.com/view/100962
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コメント
これで軍師文官問題は解決ですね。(ブックマン)
あー、フタナリて・・・・・・種馬の称号は健在ですか?(韻)
一刀・・・・・・男を忘れるなよオオおおおおおおおお(スターダスト)
「………んっ」って………一刀……(乱)
フ、フタナリ!?何この豪華設定。(霜月)
付いてるのかいw(ななや)
楽しく読ませていただきました。風、稟参入フラグ???次回、楽しみにしてます(黒猫)
むしろ、ソレが一刀の本体とも言えるモノですからね!!(セイン)
やはりソレが無ければ種馬とは言えませんからね(カロン)
コレで一応次世代は安心!(D,)
フタナリ姫w(yosi)
股間はそのまんまか(とらいえっじ)
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