真・恋姫†無双-白き旅人- 第二十六章
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「ここは・・・?」

 

 

立ち上がり、呟いたのは人和だった

彼女が見つめる先

其処は彼女が思い描いていた場所とは、まったく違う場所

 

 

「確か、樊城に向かっていたはずでは?」

 

 

人和の言葉

応えるよう近づくのは、彼女たちを運んできた“馬車”

 

 

「うぬ、確かに此処は樊城ではない」

 

 

其処にいたのは、筋骨隆々の一人の“漢女”

 

 

「しかし、御遣い殿に頼まれた場所は“確かに此処で間違いない”」

 

「卑弥呼さん、それっていったい・・・」

 

 

“どういうこと?”と、そう言ったのは天和である

その言葉に、卑弥呼と呼ばれた漢女はコクリと頷く

 

 

「此処は、いまだ“秘匿された場所”

それ故着くまでは内密に、慎重に事を進めるよう頼まれていたのじゃ」

 

 

言って、卑弥呼が見上げる先

其処には、“あの旗”が揺らめいている

 

 

「お主らにしか出来ぬことがある、と・・・この場所に運ぶよう頼まれた」

 

「私達にしか、出来ないこと?」

 

 

地和も、つられ見上げた

その旗に書かれた文字に、彼女は見覚えがない

 

しかし、なぜだろうか

彼女は、彼女たちは、何故かわかった

 

その旗に、記された文字

それが、きっと・・・“彼”のものであるということが

 

 

 

 

 

「“晋”・・・アイツが、この世界の為に造った、“国”の名だ」

 

 

 

 

 

ふと、その場に響いた声

この場にはいなかったはずの、“聞き覚えのない声”

 

 

「まったく、一年もの間無茶をさせやがって

ここまで手を回すのに、どれだけ苦労したのかアイツはわかってるのか?」

 

 

やがて、現れた一人の男

さながら“導師”のような、奇妙な衣服を身に纏った男は大きなため息をついた

 

 

「ようやく、お披露目というわけだ」

 

「うぬ、ご苦労じゃったな・・・“左慈”よ」

 

 

卑弥呼の言葉

左慈と呼ばれた男は、“まったくだ”と再び息を吐き出す

 

 

 

 

 

 

「たまたま北郷が“イイ男”だったから、手を貸したようなもの・・・これがフツメンだったら、いまごろ殺している」

 

「まったく、お主という奴は」

 

 

言って、二人は笑いあう

人和は、“あ、コイツもきっと駄目な奴だ”と冷や汗を流した

 

 

「んもう、いったいどういう状況なのん?」

 

 

そんな中、ぬっと姿を現したのは淳于瓊である

左慈はその姿を見つめ

 

やがて・・・カッと目を見開いた

 

 

 

 

 

 

 

「卑弥呼が・・・増えた、だと?」

 

 

 

 

 

 

 

“やっぱり、こいつはダメだ”と

 

人和は一人、空を見上げるのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪真・恋姫†無双-白き旅人-≫

第二十六章 喧嘩をしようぜ

 

 

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「ふぅ・・・」

 

 

トンと、竹簡を机に置き呂蒙は一度息を吐いた

そんな彼女の様子を見て、趙累は苦笑する

 

 

「お疲れですかな、呂蒙殿」

 

「あ、いえ・・・失礼しました」

 

「いえいえ、責めているのではありません

何より、私も呂蒙殿と同じ気持ちですからな」

 

 

そう言って、趙累は溜息と共に自身の肩を叩いた

 

 

「ご両人、しばし休憩をとってはいかがですか?

いくら竹簡、書類とにらみ合っていても、そう簡単に済む話でもありますまい」

 

 

そんな二人にそう言ったのは、満寵であった

今、この場にはこの三人しかいない

内容が内容だけに、関係のないもの、信用に足るもの以外はこの部屋への出入りを禁じているからだ

 

 

「しかし、我らが集まってすでに五日・・・少しでも、円滑に話しを進められるようにしておかなければ・・・」

 

 

言いながら、“いや、無理な話ではあるがな”と趙累は溜息を吐き出す

 

 

「どれをとっても、誰かが納得しない

誰もが納得する答えなど、我ら等が出せるはずもなし・・・か」

 

「趙累殿・・・」

 

 

呂蒙は、下を向いてしまう

実際、彼の言う通りだと思ったからだ

 

呉蜀間において、この荊州の問題は相当に根深い

 

呉に利すれば、蜀は損をし

蜀に利すれば、呉が損をする

 

また、その土地に住む豪族の者たちも黙っていない

 

自分は、蜀に対し恨みがある

自分は、呉に対し嫌悪感がある

蜀のやり方が嫌いだ

呉になんか、この土地は任せられない

自分の家は、呉に焼き払われた

 

 

数え挙げてみてもキリがないのだ

 

このような状況下で、皆が納得する答など出せようか?

 

 

 

 

「とにかく、一時休憩にいたしましょう」

 

 

そんな二人の様子を見て、満寵はフッと笑みを浮かべ言う

この二人の苦労が誰よりもわかるのは、ほかならぬ彼である

故に、彼は二人に少し休むようしきりに促していたのだ

 

 

「お二人のお気持ちもわかりますが、それで体を壊しては元も子もない

それに、悩んでも何も変わらないならば、今休んだところで何も変わることはありますまい」

 

「満寵殿・・・ふっ、そうですな」

 

「そう、ですね・・・ありがとうございます、満寵殿」

 

 

満寵の言葉

二人は顔を見合わせ、苦笑した

 

それから、満寵は手をパンっと叩く

 

 

「では、私が茶を入れてまいりましょう

最近練習中でしてな、ぜひとも両人に味見を頼みたい」

 

 

言いながら、立ち上がる満寵

その姿を見つめながら、呂蒙はフッと思い出すようにつぶやいた

 

 

「そういえば、華琳さん・・・曹操さんは、もう間もなく着く頃でしょうか?」

 

「曹操様ならば、恐らくは今晩にでも着くはずですな

同じく、呉蜀の皆さまも今日中には着くと思われますが」

 

「そうですか・・・だいぶ、早いですね」

 

「今回は、三国会議どころではないほど問題が起きていましたからな」

 

 

はじめは、建業から

そして、成都へと

ここ最近、立て続けに起きてきた・・・大きな問題

 

それぞれの国だけではなく、下手をすれば大陸すら巻き込んだ可能性すらある問題である

 

しかし、どの問題も早急に解決することができた

それは何故か?

などと、問う必要はない

 

その理由など、わかりきっている

 

 

 

「御遣い様がいなかったら、どうなっていたか・・・」

 

 

そう言ったのは、実際に建業にてその光景を目にした呂蒙だ

 

彼女の言うとおりである

建業にしろ、成都にしろ

彼がいたおかげで、迅速に解決することが出来ていた

しかも、それぞれ二国に対し大きな利をもたらしている

 

故に、彼女は彼に対し大きな尊敬の念を持っていた

 

しかし、同時に・・・大きな、“違和感”も感じている

 

 

 

「御遣い様が、いたから解決できた

ですが・・・そう何度も、そんな大きな事件に“出くわすことができるものでしょうか”?」

 

「呂蒙殿・・・」

 

 

呂蒙の言葉

趙累は、同意するよう頷いた

 

 

「私も、実は不思議に思っていましてな

尚且つ、解決する際の手際は実に鮮やか・・・まぁ、それが天の力だと言われれば、それまでなのでしょうが」

 

 

言って、息を吐き出す

そんな二人の言葉を遮るよう、笑いだすのは満寵だ

 

 

 

 

「お二人とも、やはり相当お疲れのようだ

ここは、急ぎ自慢の茶を用意しましょうぞ」

 

 

 

 

満寵の言葉で、二人もまた笑った

“考えすぎだ”と、そう思いながら・・・

 

 

 

 

 

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ーーー†ーーー

 

 

 

「少し考えれば、わかることだったのよ」

 

 

そう言って、馬上にて笑うのは曹操こと華琳である

 

 

「建業にしろ、成都にしろ

あまりにも事件の発生から解決が早すぎるわ」

 

 

この言葉

隣を駆ける、秋蘭は“確かに”と頷いた

 

 

「あのような大きな事件に、二度も出くわした

まぁ、二回出くわすだけならば“偶然”と言えなくもない

だけど、その二件共に・・・解決までの手際が、あまりにも鮮やかだわ」

 

 

確かに、彼女の言うとおりだった

 

大きな事件に、たまたま二回遭遇した

これ自体は、もしかしたら偶然あり得る話なのかもしれない

 

しかし、その二件共に迅速に解決してしまうのは・・・少し、不自然な話であった

 

 

 

「一刀は、恐らく・・・わかっていたのよ

その事件が起きることを、その事件をどう解決すればいいかということを」

 

「そのようなこと・・・」

 

 

“可能なのでしょうか”と、秋蘭はその言葉を飲み込んだ

そして、思い出す

 

彼が、成都の事件の際に言っていた言葉を・・・

 

 

 

 

『例えば、“起承転結”って言葉を知ってる?

物事の順序

“起”に始まり“結”に終わるっていう』

 

 

 

あの日、成都で

彼が、王累に向かい言った言葉を

 

 

 

『皆は、当然のことだけど“起”から始まった

事件を知り、そこから犯人を捜すという行動へと移ったんだ

だけどね・・・俺は、違うんだ』

 

 

 

ああそうだ

彼は、確かに言っていた

 

 

 

『ああ、そうさ

俺は皆とは、全く違うんだよ

言ったろ?

立ち位置が違うって

皆は“起”から始まった

だけど、俺は・・・“結”から、始まったんだ』

 

 

 

 

彼は、自分で言っていたじゃないか

 

 

 

 

 

 

 

『俺はね・・・誰よりも先に

多分、“アンタよりも早く”

“この事件の犯人がわかっていたんだよ”』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「華林様っ、ご報告いたします!」

 

「っ・・・」

 

 

突如、響いた声

それが自身の姉である春蘭の声であると気づき、秋蘭は我に返った

 

 

「どうしたの、春蘭」

 

「はい、ここより数里先・・・劉の旗と、孫の旗を確認したとのことです」

 

「あら、不思議なこともあるものね

三国が全く同じ時に、樊城に着こうかというなんて

桂花っ!」

 

「はい、華琳様」

 

 

言って、華琳は笑う

それから、傍に控えていた荀ケこと桂花に指示を出す

 

 

「二国に、伝言をお願い

どうせなら、三国で揃って樊城に入りましょう・・・と」

 

「御意」

 

 

 

 

 

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ーーー†ーーー

 

「しかし、驚いたな

まさか、桃香に続き華琳とも会うとは」

 

 

そう言って、フッと笑うのは呉の王である蓮華だ

 

 

「そうだよね〜」

 

 

“不思議なこともあるもんだね〜”と、蜀の王である桃香も笑った

 

 

「まったく、ね」

 

 

そんな二人の前

スッと杯をあげ、魏の王である華琳も笑みを浮かべる

 

三人が今いるのは、樊城まであと数十里と迫った場所

此処で三国集まって、野営することとなったのだ

 

 

 

「ともあれ、バラバラに着くよりは会談も進めやすいはずよ

もっとも、元々そんなに進みやすい話でもないのだけれど」

 

 

華琳の言葉

他の二人の王は、“うっ”と気まずそうに声をあげる

そんな二人の様子がおかしかったのか、華琳は意地悪気な笑みを浮かべた

 

 

「そろそろ、私も・・・魏も介入せざるおえない状況になってきたかしらね?」

 

「だから、華琳が来た・・・というわけか」

 

 

蓮華は、そう言ってため息を吐き出す

 

 

「確かに、我々だってはやく決着をつけたいものだが

お互い、譲れないものがある」

 

 

“そうだろ?”と、見つめるのは桃香だ

それに対し、彼女は気まずそうに俯いた

 

 

「うん、そうだね」

 

 

言って、ハッと彼女は思い出す

 

 

「そういえば、華琳さんと蓮華ちゃんに一つ聞きたかったことがあるんだけど」

 

「あら、何かしら?」

 

 

桃香の言葉

華琳は、杯に少し口をつけ言う

 

 

「此処から、少し先に見たことがないお城があったんだけど・・・何か、知らないかな?」

 

「城、だと?」

 

 

驚き、声をあげたのは蓮華だ

次いで、華琳が杯を置き腕を組んだ

 

 

「こちらの国の荊州統括は満寵だけれど・・・そのような報告は、受けていないわね」

 

「私も、知らないな」

 

 

蓮華は、そう言って眉をひそめる

そんな二人の言葉に、“そっか”と桃香も不思議そうな顔をする

 

 

「旗にも、知らない文字が書いてあったんだ

“晋”って旗だった・・・私、そんな旗見たことない」

 

「“晋”・・・?」

 

 

確かに、ほかの二人も聞いたことがなかった

 

 

「詳しくは、調べてみたの?」

 

「ううん、会談もあるし時間がないかなって・・・けど、人の気配は感じないって愛紗ちゃんが言ってた」

 

「無人の、しかも見たこともない城・・・何か、怪しい感じだな」

 

 

蓮華の言葉

頷き、“だよね”と桃香

 

 

「確かに、おかしな話ね

会談が終わったら、少し調べてみたほうがいいかもしれないわ」

 

 

と、華琳は再び杯を手に取った

それを、スッと口元に運ぼうとして・・・

 

 

 

 

 

「か、華琳様っ!!

たたた、大変ですっ!!」

 

「「「っ!?」」」

 

 

 

 

 

咄嗟に、その手を止めることになった

 

 

 

 

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ーーー†ーーー

 

それは、三国の王の語らいより僅か数分前のこと

 

 

 

「しかし、まさかこのような所で会うとはな、愛紗よ」

 

「まったくだ、春蘭・・・まぁ結局、樊城で顔を会わせることにはなるのだが」

 

 

“それもそうか”と、そう言ったのは春蘭である

そんな彼女の言葉に、関羽こと愛紗は笑った

 

 

「しかし、ついに華琳殿も介入せざる負えない・・・か」

 

「仕方あるまい

乱世も終わった今、いつまでも争いの火種を残しておくわけにもいくまいさ」

 

 

“確かに、な”と、愛紗は溜息を吐き出す

 

 

「情けない話だが、しかしこの機会に少しでも話が進めばよいが」

 

 

愛紗の言葉

春蘭は、腕を組み空を見上げる

 

 

「進めて見せるさ

“アイツ”が叶えてくれたこの太平の世を長く・・・いつまでも皆が笑って暮らせる世を作るために」

 

 

春蘭が言った“アイツ”という人物

それが、誰のことを言っているのか愛紗にはすぐにわかった

 

 

「天の御遣い殿、か・・・思えば、不思議な御仁だった」

 

 

そう言って思い出すのは、あの成都での一件である

 

彼女たちからしたら、元は敵国である魏国の存在だ

何故、自分たちのもとに現れなかったのかと思ったこともあった

 

しかし・・・あの日

成都で見た、その姿に、その眩しさに、優しさに

 

彼女は、一瞬で心を掴まれてしまっていた

 

 

 

「一度、じっくりと話をしてみたいものだ」

 

「なに、じきに会えるさ」

 

 

愛紗の言葉

春蘭は、フッと笑みを浮かべ言う

 

そんな時だった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぁぁぁぁぁぁ・・

 

「「ん?」」

 

 

 

 

 

遠くから、何か、“声のようなもの”が聞こえてきたのだ

 

 

 

 

 

 

「何か、聞こえないか?」

 

「あ、ああ」

 

 

言って、二人は耳を澄ましてみる

 

 

 

 

 

“ああああぁぁぁぁああああ・・・・”

 

 

 

 

「や、やはり何か聞こえる・・・!」

 

「というか、だんだん近づいてないか!?」

 

 

言うや、春蘭は剣を手に取った

 

 

「こっちからか!?」

 

 

愛紗も、青龍偃月刀を構え言う

 

そして、二人が見つめる先・・・

 

 

 

 

 

 

 

「ぶるああああああぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

其処には確かに、“何か”がいた

 

 

 

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ーーー†ーーー

 

 

「すすすす、凄まじい速度でへ、変態があぁぁぁぁああああ!!!!」

 

 

叫び、泣きじゃくる桂花

そんな彼女の様子に、若干の引き笑いを浮かべる華琳

 

 

「す、凄まじい速度の・・・変態?」

 

「そ、そんな馬鹿な話・・・」

 

「あるわけ・・・」

 

 

上から、華琳・蓮華・桃香である

しかし、そんな彼女たちの言葉を遮るよう・・・

 

 

 

 

「ぶるあああぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああん!!!!!」

 

 

 

 

響く、声

一瞬で、冷や汗をかく三人

 

 

「おらおらおら、ケガしたくなかったらどけえええ!!!!

御遣い様のお通りじゃああぁぁぁああああ!!!!」

 

 

次いで聞こえてきた声に、ガックリと肩を落としたのは華琳だった

 

 

「い、今・・・」

 

「御遣い様って・・・」

 

「ちょ、ちょっと待って・・・少し、時間を頂戴」

 

 

言いながら、ちらりと見つめる先

夜を照らすかがり火の、その先のほう

 

巻き起こる“粉塵”

その粉塵の先を駆ける、“変態”

 

そして・・・その変態に鞭をふるう、“見覚えのある男”

 

 

 

 

「この変態に掘られたくなかったら、道をあけろ男どもおぉぉぉおお!!!!」

 

 

 

 

其処にいたのは、間違いなく、彼女が知っている男

 

北郷一刀

 

今は司馬懿仲達を名乗る、天の御遣いその人であった・・・

 

 

 

 

 

 

「か、一刀おおおおおお!!!?

あ、貴方、何てことをやらかしてるのよっ!!?」

 

「そ、その声は華琳!?

い、嫌だ、見ないでくれ!!

この姿だけは、君には見せたくなかったのにっ!!」

 

 

“恥ずかしい”と片手で顔を覆いながら、空いたほうの手で彼は変態に鞭を振るう

そんな彼に対し、“まずは、その鞭を捨てなさい!”と華琳は吠えた

 

 

「嘘だろ、感動の再会がこんなことになるなんて!!」

 

「それはこっちのセリフよ!!」

 

 

叫び、指をさすのは華琳である

その言葉に対し、彼は“だよね”と舌をペロッと出す

 

 

「とりあえず、先に樊城に行ってるから!!

皆は、ゆっくりしていってね!!」

 

「あ、ちょ、待ちなさい一刀ぉっ!」

 

「無駄だ華琳!!

君には何より・・・速さが足りないっ!!!!」

 

「こ、こら人の話を・・・!!!」

 

「いけ、貂蝉!!

このまま、サヨナラの向こう側へ!!!!」

 

「ぶるあああああああああぁぁぁぁぁああああああああああ、ビンビンしちゃうのおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

「か、一刀おおおおおおおおお!!!!!」

 

 

 

 

 

華琳の叫びもむなしく、凄まじい速度で通り過ぎていく変態馬車

 

 

その場に、妙な沈黙が流れる

しかし、それも長くは続かない

 

 

「・・・よ」

 

 

わなわなと、体を震わせ

その顔を真っ赤にしながら、彼女は

 

魏の王は、覇王は吠えた

 

 

 

 

 

「全軍、直ちに樊城に進軍せよっ!!!!」

 

 

 

 

 

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ーーー†ーーー

 

 

部屋が揺れた

それも、少しではない

 

かなり、まるで何かが爆発したかのような揺れと轟音

 

そんな揺れに、慌てて目を開いたのは呂蒙であった

 

 

「い、いったい何が!?」

 

 

急ぎ着替え、部屋を飛び出す彼女

そんな彼女に続くよう、廊下に飛び出してきたのは趙累である

 

 

「呂蒙殿、何事かっ!?」

 

「わかりません!

ひとまず、音がしたほうへ!」

 

 

二人は、駆けだした

周りはざわつき、彼女たちと同じように駆けて行く兵の姿がある

 

 

「あれは・・・」

 

 

ふと、見えた先

樊城の、南門の方角

どうやら、そちらの方角に兵士が向かっているようだった

 

二人は顔を見合わせ、コクンと頷きあう

そして他の兵士と同じように、南門のほうへと駆けて行く

 

 

 

「呂蒙殿、趙累殿!」

 

 

そんな二人の背後

響く聞き覚えのある声

それがこの城の主である満寵のものだと、二人はすぐに気づいた

 

 

「満寵殿!

いったい何が起こっているのですか!?」

 

「私も、まだ現場を見ていませぬ故、断言はできませぬが・・・」

 

「何処からか、攻撃を受けたとかですかな?」

 

「いえ、恐らく・・・ようやく、“風が吹いたのでしょうな”」

 

「「は・・・?」」

 

 

わけがわからない、という表情の二人

そんな二人のこともよそに、満寵は駆けて行く

 

向かう先

目的地である南門は、もうすぐ其処だ

 

 

 

 

「おお、やはり・・・貴方でしたか」

 

 

 

 

そこに、“彼”はいた

白き外衣を身に纏った、一人の青年が

 

 

「あ、久しぶり満寵さん」

 

「はい、お久し振りでございます・・・御遣い様」

 

 

満寵の言葉

遅れてきた呂蒙と趙累は、さらに呆気にとられてしまう

 

 

「随分、派手な到着ですなぁ」

 

「いや、ほんとにごめん

まさか途中で、華琳達・・・三国の軍が、夜営してるとは思わなくてさ

焦って、中央突破してきちゃった」

 

 

“テヘペロ”と、一刀

そんな彼の後ろ、馬車の中から続々と出てくる仲間たち

 

 

「あわわ・・・し、死ぬかと思いました」

 

「まさか、城門を吹っ飛ばすなんてな」

 

 

ふらふらと歩く雛里

そんな彼女の背中をさするのは華雄である

 

 

「うぅぅ・・・なんで、妾がこんな目に」

 

「さ、さすがにマズいですよ〜・・・こんな入城の仕方」

 

 

泣きべそをかき、言うのは袁術こと美羽である

その後ろ、あたりを見回しブルブルするのは張勲こと七乃だ

 

 

「アカン・・・さっきの華琳みたら、不憫で涙出そうになったわ」

 

「あ〜、うん・・・何年かぶりの再会だったのにねぇ」

 

 

言いながら、霞と雪蓮はホロリと涙を流した

思い出すのは、先ほどの華琳である

 

 

「め、目が回ります〜」

 

「目が回るどころか、吐き気がやヴぁい・・・」

 

 

最後に馬車を出たのは、馬謖と馬良の二人である

姉妹揃って、顔面蒼白であった

 

 

「き、君は・・・馬良かっ!?」

 

 

そんな二人のうち、白き眉をもつ少女・・・馬良の姿を見た瞬間、声をあげたのは趙累であった

 

 

「その声は・・・趙累様?」

 

「な、なぜ君がこんなところに!?」

 

 

言われ、“いや、私もよくわかってないんすよ”と苦笑い

遠くでは、“雪蓮様っ!?”という、呂蒙の声も聞こえてくる

 

 

 

「いやはや、ずいぶんと賑やかですなぁ」

 

 

そんな中、そう言って笑うのは満寵である

 

 

「いつの間にやら、お一人ではなくなっていたのですな」

 

「うん、そうだね」

 

 

“けど”と、一刀

すっと、振り返った先

 

見つめるのは・・・たった今しがた、自分たちが吹っ飛ばした南門

 

 

 

 

 

 

「今からもっと・・・にぎやかになるよ」

 

 

 

 

 

その視線の先

 

バサリと風に揺られ、三国の旗が闇夜に輝いていた

 

 

 

 

 

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「さて、役者は揃った・・・かな」

 

 

言って、歩き出す一刀

その視線の先

 

揺れる、三つの旗

 

 

“魏”

 

“呉”

 

“蜀”

 

その旗のすぐそばには、各国の王が立っていた

 

魏王、曹操

呉王、孫権

蜀王、劉備

 

その壮観な景色に、彼は笑みを浮かべていた

 

 

 

 

「さて、一刀

説明してもらいましょうか・・・何故、貴方がここにいるのか?」

 

 

最初に口を開いたのは、魏王である華琳だった

そんな彼女に対し、彼はフッと笑い口を開く

 

 

「華琳・・・いや、曹操

君なら、わかっているだろう?」

 

「ふふ・・・そうね」

 

 

言って、彼女も笑った

 

 

「貴方は、この荊州の問題を片付けるために此処にいる」

 

 

“そうでしょ?”と、華琳

それに対し、声をあげたのは呉の王である蓮華である

 

 

「まさか、御遣い殿には・・・解決策があると言うのか?」

 

「う〜ん、まぁ・・・そのまさか、かな」

 

 

言って、彼は苦笑い

 

 

「それって、いったい・・・教えてください、御遣い様っ!」

 

 

そんな彼の言葉に反応して、叫んだのは蜀の王である桃香だった

 

 

「私たちだって、わかってるんです!

いつまでも、このままじゃダメだって・・・」

 

 

桃香の言葉

それに対し、彼はスッと視線を移した

 

その視線の先にいたのは、この荊州の地で最初に出会った少女

 

 

 

「誰かが、言ってたんだ

いつまでも、いつまでも同じことの繰り返しだって

乱世が終わったはずなのに、いつまでも争ってばっかで

こんなの・・・まるで、子供の喧嘩だってさ」

 

「仲達・・・」

 

 

馬良・・・彼が、この地で初めて出会った少女

この荊州の問題に疲れて、あきらめてしまった少女

 

 

 

「けど・・・いいじゃないか、子供の喧嘩

なんなら、一番わかりやすくっていいじゃないか」

 

 

 

その少女の視線の先

彼は、その白き外衣をはためかせ言う

 

 

 

「何度話し合ったって無駄だってんなら、いっそ全部派手にぶっ壊してやろうよ」

 

 

 

そう言って、彼は目で華雄に合図を送った

それに対し、華雄はフッと笑みを浮かべ何かをもって歩み寄る

 

 

 

「ぶっ壊すって・・・一刀、貴方、いったい何を言っているの?」

 

 

華琳は、ゴクリと唾を飲み込む

 

“気圧されている”

 

彼女だけではない

その場にいる皆が、彼の出す“空気”に、呑まれている

 

 

 

 

 

「簡単な話だよ

喧嘩をしようぜ・・・この荊州をかけて、みんなで喧嘩するんだよ」

 

 

 

 

 

やがて、華雄は一刀の隣に立ち・・・その、持っていた“旗”を広げた

 

 

 

 

 

 

「魏と、呉と、蜀の三国

そして・・・」

 

 

 

 

バサリと、広がった旗

その旗に書かれていた文字を見て、三国の王は驚きの表情を浮かべた

そんな三人の様子を面白そうに見つめながら

 

彼は、言う

 

 

 

 

 

 

 

 

「この司馬懿仲達の国、“晋”・・・四つの国で

この荊州を賭けて、最高で、最大の喧嘩をしようぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・続く

 

 

-9ページ-

 

あとがき

 

 

 

お久し振りです

今回は航海中、寄港地にての投稿と相成りました

次回投稿も、少々のお時間をいただくかと思います

 

さて

ようやく、荊州編が大きく進みました

 

この白き旅人始まって以来の、大きな試練となります

 

四国入り乱れての、大乱戦の始まりです

 

それでは、またお会いする日まで

 

 

荊州編 イメージソング

 

僕が描く放物線  鈴木結女

SHINE       12012

説明
お久し振りでございます

二十六話、公開いたします
航海中につき、次回もまた少々お時間いただきます

では、お楽しみください


序章
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これは非道い(笑)さて、司馬仲達と名乗りながらどう進めるのでしょうか?(エドガー)
……んんん???まったくもって聞き捨てならない台詞を聞いたような気がしますね?今更、戦なんて出来ないだろうし、何かしらの代替手段なのか?まさか戦を「最大の喧嘩」と表現しても「最高の喧嘩」とは表現しようがない筈……?(Jack Tlam)
最高で最大の喧嘩…幽○白書の魔界編みたいな感じかな?(mokiti1976-2010)
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