お父さんは、私に振り向かない! 第23話 それぞれの平日(6)
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 お父さんは、私に振り向かない!

 第23話 それぞれの平日(6)

 

 ・・・・・・

(まっすぐ帰ってきたのは良いが、果たして晩ご飯は出来ているのだろうか?)

 

 車を駐車場に止めながら考える。

 

(まあ、出来て無くても手伝えば問題は無いが・・・)

 

 車から降り、集合ポストの郵便物を確認してから玄関に向かう。

 

(車から降りた時チラッと居間側の部屋を見たが、部屋の電気は消えていたから恐らく台所だろう・・・)

(さて・・・どう入ろうかな?)

 

 普段ならそのまま鍵を開けて入るのだが、今は咲子が居る。そのまま鍵を開けて入っても良いが、インターホーンを鳴らして出迎えて貰う方法も有る。

 

(でも、料理をしていたら悪いよな・・・)

 

 玄関前でしばらく考えていると、急にカチャンと玄関のドアが開く。

 

「お父さんどうしたの? 入ってこないの?」

 

 咲子が玄関ドアを開きながら言う。

 

「あっ、入るよ。ただいま・・・」

 

「おかえり!」

 

 ニコッと笑顔で言う。

 玄関から家に入った瞬間、ふわっと料理の美味しそうな匂いが漂ってくる。

 

「お父さんの帰ってくる時間判らなかったから、直ぐにご飯は出来ないけど、そんなに掛らないから・・・」

 

(あっ・・・帰ってくる時間言って無かったな)

「すまんな・・・帰ってくる時間言って無かったよな・・・」

 

「本当だよ・・・でも、大丈夫! お父さんはお風呂でも入ってきて!」

 

 咲子は少々不満そうな口調で言うが直ぐに何時もの口調に戻る。

 

「手伝わなくても大丈夫か?」

 

「平気、平気! 後はお肉焼くぐらいだから」

「ほら、ほら、早くお風呂行った、行った!」

 

 咲子はそう言いながら、俺を浴室の方に押す。

 

(まあ、ここは任すか)

 

 俺は咲子の言う通り、荷物を置いて着替えを持ってお風呂に入ることにした。

 ・・・・・・

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 お風呂と言っても今の応援派遣の職場には浴場が備わっている。

 今日も仕事が終わってから、一風呂浴びてから帰宅している・・・

 

(まあ、この時期は少し歩くだけで直ぐに汗に成るからな・・・。シャワーだけでも浴びておくか・・・)

 

 軽くシャワーを浴びてから、部屋着に着替えて咲子が居る台所に戻る。肉は焼き終わったらしくフライパンを洗っていた。そして、俺に気付いた咲子は少しびっくりしたような表情をした。

 

「あれ? お父さんもうお風呂でたの?」

 

「ああ、実は職場でもうお風呂に入ってきていたんだ」

 

「なんだ〜。そうならそう言ってくれれば良いのに・・・」

 

「まあ、少し汗掻いていたからな」

「後、何か手伝えることは無いか?」

 

「ん〜、なら、お味噌汁注いでくれると嬉しいな!」

 

「んっ、分かった!」

 

 戸棚からお椀の準備をして、味噌汁の入った鍋の蓋を開ける。鍋の蓋を開けると味噌汁の良い匂いが台所に広がる・・・

 お玉で軽く味噌汁をかき混ぜお椀に注ぐ。味噌は白味噌だ。冷蔵庫に入っているやつをそのまま使ったんだろう。

 

「ほぅ。油揚げとわかめの味噌汁か・・・」

 

「そう! シンプルだけど美味しいよね!!」

 

「父さんもたまに作るよ」

 

「良かった。喜んで貰えそうで!」

 

 味噌汁を注いだ椀を居間と成っている部屋に持っていくと、座卓テーブルの真ん中には、大きなお皿に乗ったお肉がデンと置いて有る。

 

「匂いで大体気付いていたけど、やはり豚の生姜焼きか!」

 

「そう! コッテリだけど豚肉は夏バテにも良いし、ショウガの香りと風味で食欲も沸くしね!!」

 

 そう言いながら、部屋に来た咲子は何かの入った小鉢を持っていた。

 

「んっ、それは?」

 

「ああ、これ? ナスが旬だしナスの浅漬け作ってみた!」

 

「浅漬けか・・・珍しいの作るね?」

 

「えっ? お父さんは作らないの?」

 

「この類は殆ど作らないな・・・特にナスは・・・」

 

「ふ〜ん、まぁ良いや。折角作ったんだし食べてね!」

 にこっと笑顔に成りながら咲子は話す。

 

 今日の晩ご飯は、豚肉の生姜焼きとワカメと油揚げの味噌汁とナスの浅漬け・・・。銘々の少し大きめの小皿には千切りキャベツが乗っており、ドレッシングが掛っていた。

 

(・・・実はナスはあまり好きでは無いんだよな)

 

 子どもの時からナスは好んでは食べなかった。

 煮ると汁は紫色に染まって気持ち悪いし、皮の食感と中のスポンジみたいな食感がどうも好きに成れない。

 

(麻婆ナスや天ぷらはまだ良いのだが、浅漬けと来たか・・・見た感じ本当の生々しい浅漬けだな)

 

 小鉢のナスを見ると、一応シナッとした感じではあるが、皮は光沢も張りも有りそうで、ナス!! って雰囲気を醸し出していた。

 

「お父さんどうしたの? さっきからナスの小鉢をじっと見つめているけど、もしかしてナス嫌い?」

 

「いっ、いやそんな事無いぞ。浸かり具合はどうかな〜〜何て!」

 

「そう? 私の方は準備できたしご飯にしよ!」

 

「ああ・・・」

 

 冷蔵庫から発泡酒を取り出してきて今日の晩ご飯が始まる。

 一人暮らしの気ままな食事から家庭の食事に戻った気分だ・・・

 

 第23話 おわり

 第24話につづく

説明
単身赴任の父親の元に遊びに来ると言い出す娘。
遂にその時が来て、娘を迎えに行く。
だが、娘の咲子の行動が、普段と何か違う気がする・・・
前回の続きです。

前回の続きはこちらから
https://www.tinami.com/view/1005058

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