ショタ一刀のお祭巡り(朱里+雛里編)
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「第?回『戦術闘議会』、優勝者は…同着一位で諸葛亮様及び鳳統様でございます!」

 

「っ、や、やったね雛里ちゃん!」

 

「うん、やったね朱里ちゃん!」

 

自分達の名前が発表され、二人は手を取り合って喜んだ。

 

実は、試合でもしどちらかが優勝した場合でも、二人…いやこの場合一刀も合わせて三人でいようと話し合ってはいた。

が、この結果は予想していなかったので二人の喜びもかなりのものだった。

 

ちなみに、普通は同着一位の場合はもう一回戦やってちゃんと優勝者を決めるが、

この戦術闘議会の種目である戦火繚乱遊戯札、今では三国に広まった大人気ゲームであり、

参加者も三国から集まり、智将以外にも多くの文官や一般参加者が募ったために、試合時間も半端なかった。

弱いものが瞬殺される場合であっても拠点得点が0になるまでには数ターン掛かる。

強い者同士で行った場合は互いに一進一退を繰り返し、お陰で試合で規定されたターン数限界まで行われた。

(規定ターンに到達したら、その時点で拠点得点が多いほうが勝利)

そんなこんなで全試合が終了したときには既に月が昇っていた。

そこから更に試合を行うとなると下手すれば明日になってしまうためにこの結果になった。

 

まぁ実を言えばこうなることは予想されてはいたので、一応上位三位までの賞品はそれぞれ二つ用意してある。

三人目が出た場合は残り拠点得点の合計で競い一番下が下ろされることになる。

 

「それでは表彰式を行います」

 

表彰台の一番高い所には朱里と雛里が、一段低い所には風と稟が、二段低い所には冥琳が立っている。

どうでもいいが、段差二つ差があっても背の高さは冥琳が一番上だった…

 

表彰台に立っている全員に賞金と賞品である希少札の束(レアカードのパック)が渡される。

三国合同で競われる試合の賞品が札では釣り合わないのではと思うものもいるだろうが、

この場に集まったものにとってはある意味金よりも価値があるものであったので問題なし。

 

更に、朱里と雛里にとっては議会で得た賞品よりも、争奪戦で得た一刀との同伴権の方が重要だった。

 

賞品が渡され閉会式が進む中、二人は早く終わらないかとそわそわしていた。

 

「それでは、これにて『戦術闘議会』を終了いたします!

 こちらの施設は毎日毎時間開放しておりますので、使用したい方はいつでもお申し付けください。

 では…解散といたします!」

 

司会の解散宣言の直後、二人は駆け出した。関係者用の観客席にいる一刀の所に向けて…

 

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『自慢のお姉ちゃんたち』

 

二人は駆ける…速度から生まれる風圧によりトレードマークとも言える帽子を落とさぬよう両手で押さえながら、

神速とも呼べる速度で駆ける…

廊下を走りぬけ、階段を跳び越し、すれ違うものを小規模な竜巻に変えながら二人は駆ける…

そして、たどり着いたその場所では、

 

「「一刀くん!」」

 

「…………………ZZz」

 

一刀が寝てた…

一刀の横には一人の侍女がいた。その侍女は蜀に仕える侍女であり、将達のことは知っている。

侍女は突然駆けつけてきた二人に一瞬驚いたが直ぐに笑顔に戻る。

 

「諸葛亮様、鳳統様。まずは優勝おめでとうございます。御二人がこの子の”お姉ちゃん”ですか?」

 

「「は、はい」」

 

「ふふ…可愛らしい弟様ですね。御二人の名前が発表されたときは飛び跳ねながら自分のことのように喜んでいましたよ」

 

「はわわ〜///」

 

「たまたま近くにいました私はこの子に捕まってしまいまして御二人のことをたくさん話してもらいました」

 

「あわわ〜///」

 

「そして話し続け、はしゃぎ続けて疲れてしまったのかぱたりと眠ってしまったんですよ。もう夜も遅いですしね」

 

「そ、それはご迷惑を…」

 

「いえ、話も聞けましたしこの子の世話が出来て私はとても嬉しかったです」

 

侍女が浮かべたその表情はとても母性の喜びに満ち溢れていた。

朱里と雛里は話を聞いて顔を赤くしている。

 

「それでは、少々残念ですが私はこれにて失礼させていただきます。弟様の後はお任せしてもよろしいでしょうか?」

 

「「はい。ご苦労様でした」」

 

「はい。では失礼いたします」

 

侍女が去ったのを確認してから、二人は寝ている一刀に視線を戻す。

 

「…一刀くんに悪いことしちゃったね…」

 

「うん…こんなに夜遅くまで待たせッちゃった」

 

「雛里ちゃん…明日からはうんと一刀くんとお祭楽しもう!」

 

「朱里ちゃん…うん!」

 

決意した二人は一刀を起さないように自分達の宿泊先へと抱えていく。

 

自分達より幼い子供と言えど、元々あまり体力の方はなかったので交代交代で抱えた。

体力以外にも、抱えることで耳の直ぐ傍にきた一刀の口から寝息や寝言が当たり、

精神的にも交代しなければ抱えるほうが倒れてしまいそうだったので…

 

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『夢の中で…』

 

祭り2日目の朝…朱里、雛里、そして一刀の部屋。

そこには右手に筆を左手に竹簡を握った軍師が二人と、寝台で寝ている一刀がいた。

 

この二人、一刀が寝ている間に仕事をしているわけではない。

朝になり遅くまで起きていたことで疲れ目を覚まさない一刀よりも早く起きたことはあっている。

起きた直後は二人して一刀の寝顔や寝返りを打つ仕草を見て堪能していた。

 

そして寝言まで出てきて、最初はその光景も微笑ましく見ていたのだが…

寝言の内容を聞いていく内に表情が引き締まっていき、慌てて先に書いた二つを手にした。

 

「ん…むにゅ…あ、アイシャお姉ちゃm…い、いまは…だm」

 

「ふむふむ…確かに、この時点で攻めてしまえば罠に嵌ってしまう可能性がありますね」(メモメモ

 

「みにゃ…zzz…セイお姉ちゃ、ん…いっしょ」

 

「あ、確かに…この時協力し挟み撃ちすれば敵の被害は甚大になるよ」(メモメモ

 

「にゃむ…んむ…のんお姉ちゃん…おっぱい、くるしいょ…zzz」

 

「「…………………(自分の胸を触る)…ハァ」」(深〜いため息

 

「ン…んぁあ…お姉ちゃんのお口の中、くすぐった…ぃ…あったかい…むにゅ」

 

「はわわ〜/// 一刀くん…い、一体どんな夢見てるの〜」

「///雛里ちゃん!こ、これは参考に出来るよ!」(メモメモメモメモ

 

一刀の寝言、それはそれは奇妙奇天烈なものだった…

 

あるときは蜀代表の二大軍師が感心せざるを得ない戦闘が繰り広げられ…

 

あるときは身体的特徴に関することを言われ傷つき…

 

あるときは密かに執筆している創作本(艶本)のネタが出てきて…

 

二人は竹簡に書き続けた。文字で埋め尽くされた竹簡は、後ろを見ることなく、後方に向かって放り投げられる。

それは放物線を描いて机の上に乗る。投げた竹簡がどうなったかを確認する間も惜しく、後ろを見ることが無い。

竹簡は落ちることなくきれいに積み上がっていく。落ちないのは良いが積みあがり方がキレイすぎた…

積むに積み上がり続けた竹簡は、ニュートンもビックリのバランス感覚で積みあがっていく。

底辺は机一杯の広さ、そして上に行けば行くほどに広くなっていく上面。その光景は奇跡とも呼べた。

 

だが…その奇跡も永遠ではなかった。

終に上面が机の3倍の広さにまでなった所で、二人が同時に投げた竹簡が頂上に乗らずに、その山に当たって落ちてきた。

落ちた場所は丁度投げた本人の頭上。落ちてきた竹簡を拾い乗せなおそうと後ろを向いて…

そのときになって初めて自分達の後方の状況を確認した。

目の前には上に行けば行くほどに広くなった逆三角の竹簡の山。

その山は先程投げた竹簡が当たった衝撃でゆらゆらと揺れていた。

当たった衝撃はそれほど強くなくても、逆三角の山ならば僅かな衝撃でも大きく揺れる。

揺れはだんだんと大きくなり、やがて倒れてくる。二人に向けて、竹簡の雪崩となって…

 

「はわわーーーーーーーーーーーーーーーー!?!?!?」

「あわわーーーーーーーーーーーーーーーー!?!?!?」

ガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラ…コロン

 

成す術も無く、二人はあっという間に雪崩に飲み込まれてしまった…

何故か帽子だけは見えていたが…

 

二人の絶叫と雪崩の騒がしい音を聞いて、やっと一刀が目を覚ます。

そして彼はその惨状を見て驚くのであった…

 

その後「おーねーちゃーーーーんーーーーー!?」という一刀の絶叫が宿中に響き、

それを聞きつけた侍女達によって二人は助け出された…

 

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『身近な所に敵はいる…』

 

二日目の夜、場所は銭湯…

 

結局一刀が起きて二人が助け出されたそのときは既に昼食時になっていた。

昼食を済ませ、その日は普通に祭を楽しみ、日が沈んだ頃になり三人は一般解放された銭湯を訪れた。

 

二人はこの時をかなり楽しみにしていた。

一刀の若い故に傷みや渇きの無い潤いのあるサラサラの髪を洗えるのを…

真白く傷もしみも無い汚れない子供の肌を洗えることを…

体に触れる度にくすぐったがり身悶え喘ぐ一刀の姿を……これはいいのだろうか?

 

そんな若干邪なことを考えながら三人は銭湯の扉をくぐる。そこにいたのは、

 

「おや、一刀殿に朱里、雛里ではないか」

 

「はわ!?」「あわ!?」

 

「あ、セイお姉ちゃん。今からお風呂?」

 

「うむ。これほどに広い入浴できる場、女にとってはこの上なく魅力的なもの。

 入りに来ない女性はおらぬだろうな」

 

他愛の無い会話を一刀と星はする。その横では二人がこれでもかと言うくらい焦っていた。

二人が邪なことを考え実行しようとしている時は、何故かその場には星の姿があった。

艶本を読んで男女の営みについてを勉強しようとしているとき叱り…

男の籠絡方法を自分達で実験しようとしているとき叱り…

まさか今回もそれが起こるとは思ってもおらず、星の登場に焦っていた。

 

今回は自分達がからかわれたりすることは無いだろう。だが、それ以上に懸念することがある。

それは、一刀が奪われること。今は他愛の無い話をしているが、このような絶好の機会を彼女が逃すはずが無い。

 

「それでは私が洗って進ぜようか?」

 

「お姉ちゃんが?」

 

「ああ。私が見事気持ちよく洗って差し上げよう」

 

案の定だった。自分達の頭脳をフル活動させて何とか星を追い払う作戦を考える。

だが、口による説得・力ずくでは星に敵わない。ならばどうすれば良いか…

 

そう考えていると、二人は壁に張られた張り紙のある部分を目にする。

 

”露天風呂にて入浴飲酒を許可。番台にて販売中。

 祭期間限定銭湯メンマ同時販売”

 

それを読んだ瞬間「これならば!」と思い立ち、すぐさま星に教える。

 

「なんと!?期間限定のメンマとな…これは捨て置けん!!」

 

一刀の服を脱がし終わりいざ入浴使用としていたところで声を掛け止めることができた。

星の姿が見えなくなったことを確認してからこれ以上邪魔が入らないうちにと、

二人は信じられない速度で服を脱ぎ、畳んでから一刀を連れて風呂場に入る。

 

その後は特に問題なく仲睦まじく互いの体を洗いあった。

その光景を、周囲の女性客は「仲の良い姉弟ねぇ」と微笑ましく見ていた。

本人達からすればこの評価は心の底から喜べるものではなかった。

仲が良いと見られるのは良いが、これだと余り年の離れていない姉弟に見られているだろう。

二人は、特に朱里は大人なお姉さんみたいな感じで見られたかったのだ…

 

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『チキチキ追いかけっこwww』

 

祭の三日目の朝…

 

一刀は三人の仲で一番早く目を覚ました。軽く揺すってみるが二人が起きる様子はなかった。

相手をしてくれる者がおらずつまらなく思っていた一刀は部屋を見回して暇つぶしになるものを探す。

そして部屋の隅に置かれたあるものに視線を向ける。ある物とは、朱里と雛里の大きな鞄。

 

旅をして一刀(大人)の所に来た二人は、その後は一刀の下で暮らそうと決意していたために、

生活用品・教材・勉強道具・etc…を全て持ってきた。それも1つの鞄に全て詰め込んで…

その所為か、鞄はとてつもなく大きくなり、明らか持つ主の3倍はある。

今は城で暮らしているためにそれほど膨らんではいなかったが、

それでも一刀と同じくらいの大きさに膨らんだ鞄がある。

 

一刀は気になった。あの中には何が入っているのか…

どれくらい中に入れられるのか…

 

そう思った一刀は鞄を引っ張り出し中に手を突っ込む。そして始まる一刀の採掘作業www

 

@一刀は筆を見つけた!自分で自分の体をくすぐり爆笑…十数秒で飽きた…

A一刀は縄を見つけた!前跳び、後ろ跳び、交差二重跳びをそれぞれ30回以上したところで飽きてポイ…

B一刀は教本を見つけた!中を見て文字の羅列を見た途端興味を失った…

C一刀はエロ漫画を見つけた!中身を見ても内容が分からず?顔。子供にゃ早すぎたようだ…

D一刀は算盤(そろばん)を発見!床に当てて勢いをつけてコマを回転…興味を持った。

 思い切り勢いをつけて何度も何度もコマを回転…かなり興味を持った。

 もう1つの鞄をあさり同じ算盤を発見。ダブルで回転。もう夢中だ。

 二つの算盤、先程見つけた縄、これらを見ているうちに頭上で豆電球が光った…

 

ガサゴソという音を聞き朱里と雛里は目を覚ます。

完全に覚めていない頭で二人は挨拶を交わした後音の発生源のほうを見る。

そこには算盤を両足にくくりつけている一刀がいた。

 

「あ、お姉ちゃんたちおはよう!」

 

「うん、おはよう一刀くん…何をやってるの?」

 

「うん、見てて見てて!」

 

作業が終わったのか、一刀は嬉々として二人の注目を集め、そして算盤の上に立つ。

そしてその場でスピンする。余りの高速回転で二人は完全に目を覚ました。

 

「はわわ!?す、すごいです一刀くん!どうやってそんなに早く回転できるんですか!?」

 

「うん、これ!!」

 

言いながら一刀は自分の足の裏を見せ付ける。

そこには水鏡先生特製、少々大きめかなり頑丈応用すればマッサージにも使えちゃう算盤が着けられていた。

それが両足についている。

 

「これ使ったらスゴク速く走れるの!ぼくちょっと走ってくるね!!」

 

湧き上がる衝動を抑えることが出来ないのか、一刀はあっという間にローラーシューズならぬソロバンシューズで滑り去った。

一寸置いて二人は我に帰り、慌てて一刀を追いかける。

 

「はわわー!一刀くーん、算盤は計算する道具ではいてすべるものじゃないでスーー!!」

 

「あわわ…朱里ちゃん、問題はそこじゃない様な…」

 

そして一刀の逃走、朱里と雛里の追走が始まった…

 

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『チキチキソロバンシューズ追いかけっこ・城内編@』

 

部屋から出た二人が見たのは、既にかなり距離が離された一刀の後姿。

全力で追いかけるが、自分の足では追いつけない。どうすればよいか…

と、悩む二人の視界に複数の将達の姿が映る。

 

「皆さん、一刀くんを止めてくださーーーーーーい!」

 

宿中に響き渡るかのような大声で呼びかけ、将達はその声のほうを向いてみると、

 

「お姉ちゃん達、おーはーよーーーーーーーー!」

 

自分達に向けて超高速で接近する一刀を見る。

子供には出せないだろう予想も出来ぬ高速に、皆は思わず脇に避け道を空けてしまった。

空けられた道を、一刀は誰にも止められることなく通り過ぎ、

 

”Whirlwind to roll the skirt of a passing person.”

 

通過する際に発生する風により彼女達の下半身の下着と生足が露になる。

一刀は通り過ぎ既に見えず、周囲に男はいなかったが、それでも彼女達は風で捲りあがるスカートを押さえずにいられなかった。

下着の中に、いわゆる大人の下着とそれが似合う将を見て二人は軽くショックを受けてしまった。

そこに誰がいてどんなのを穿いていたかは…皆さんの御妄想にお任せします…

 

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『城内編A』

 

二人が宿泊している宿は全部で4階建て。全ての部屋は外壁側にあり、廊下は反対側が見え、中心は吹き抜けとなっている。

上から見ると通路は四角形であり、一刀は先程から廊下を一周し、二人に合流したら反回転でまた一週…これを繰り返していた。

 

一刀の周回パターンを読み、二人は二手に分かれ他の将達にも協力を仰いで待ち構えるが、

その全てを一刀はかわすかわす…

 

捕まえようとするからダメなのだと考え付いた二人は通り道を封鎖することにする。

道が塞がれれば止まざるを得ないだろうと二人は考えていた。だが、その考えは甘かった…

 

机を横にして並べ、その後ろには武将達が待ち構える。正に鉄壁と呼べる布陣。

やがてコーナーを曲がって一刀が姿を現す。そしてこちらに向かってくる。

そのスピードは衰えることは無い。それを見てここままでは一刀が大怪我をと思ったが…

 

”The wall becomes the earth again if touched.”

「うっわーーーーーーーーい!」

 

驚くことに一刀は回転により下に向かう勢いを殺し、そのまま壁を伝って布陣を越えてしまった。

一同揃ってあっけにとられるが、直ぐに我に帰って宿に設置されている継声管で抜けられたことを反対側に伝える。

 

反対側で壁を伝って超えられたことを聞きバリケードの配置を換える。

向こう側が見えるだけの隙間を残して即席で天上まで達する壁を設置する。

Uターンするにも部屋の中に回避するにもどちらにしても止まるときが来る。

その瞬間を逃すまいと全員が銭湯さながらの気を張る。

 

そして一刀がコーナーを曲がってこっちに来る。

だが、またしても一刀は速度を緩めずに突っ込んでくる。

さては壁蹴りでもして急旋回でもするのか?と今までの行動からありえなくは無い考えが浮かぶ。

だが、それさえも外れてしまった。

驚くことに一刀は少し扉がある側の壁によったかと思うと、助走をつけて柵の向こう、吹き抜けに向けて飛び出した。

今一刀達がいるのは3階。子供でなくても落ちたらただではすまない高さだ。

 

「「一刀くーーーーーーーーーーーーーーん!?!?」」

 

慌てて一刀を見た朱里と雛里は、そこで驚くべき技を目にする。

 

”Like a dragon rising to the sky, the person climbs the pillar.”

「いぃぇええーーーーーーーーーーい!!」

 

なんと一刀は避難用のポールに算盤の車輪を当て、ポールを中心に回転しながら上って行った。

そして4階の高さまで到達した所で柵の内側に向けて飛び降りた。

 

朱里と雛里は一刀の姿が見えなくなったところでようやく我に帰ることが出来、慌てて階段を駆け上った…

即席で作ったバリケードをそのままに…

 

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『城内編B』

 

4階に上がった一刀は暫くその階を走り回った後、

階段(のスロープ)を利用して更に上、屋上に向かっていた。

一刀が走り回っているうちに武将達は一刀の姿を捉えるが、

それは彼の上に上がっている後姿だった(朱里と雛里は疲れて小休憩)

 

慌てて自分たちも屋上に登ってみると、一刀が屋根の上を元気に走り回っていた。

落ちたら生きてはいられないであろう場所、逃げる場も無いこの場所なら終に捕まえられる。

そう思うが、捕まえ方を誤ってしまってはただではすまない。

武将達は慎重に一刀への距離を詰め逃げ場をなくしていく。

 

「さぁ、もう逃げ場は無いで。大人しくしといてや?」

 

体の後ろで捕獲用の網を構えながら、優しく呼びかけてみるも一刀は止まる様子が無い。

更に距離をつめ端っこに追いやった所で一刀はとんでもないことをする。

なんと屋根の角に向けてもうダッシュを始めた。

このままでは屋根から真っ逆さま!?と思い慌てて駆け寄るが一歩遅かった…

 

一刀は屋根の角から飛び、

 

”The person who goes down the way linking the nature.”

「ひゃーーーーっほーーーーーぅ」

 

祭の飾りとして吊り下げられている旗の縄に算盤の車輪をあて、

縄を伝って宿の外へと出て行った…

 

一方、一刀を押さえんと飛び出した武将達はと言うと…

屋根から飛び立つ→もう一人が抑える→勢いを殺せず自分も巻き込まれて飛ぶ→もう一人が抑える

→勢いを殺せず自分も巻き込まれて飛ぶ→もう一人が抑える……

とこんな感じで結局武将の滝が二階まで続いた。戻るときは皆で二階から戻っていった…

 

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『チキチキソロバンシューズ追いかけっこ・城外編@』

 

窓の外から、一刀が縄を伝って宿の屋根の上から城下町に下りたのを見ていた二人は、

将たちと共に町に出てきていた。

宿から出て、二人は集められるだけの将を集め協力してもらうことにしていた。

今の一刀は子供、祭で人が溢れかえっている中から彼の姿を捉えるのは困難である。

もはや人海戦術に頼るほかなかった…

 

将が散開して一刀の姿を探していると、その集まった将の中の三人、

鈴々・季衣・流琉の三人が人ごみの中から一刀の姿を捉える。

 

少々開けた場所に出たところで三人は一刀に向かって駆ける。

向かってくる三人を見たところで一刀は三人がいる反対方向に向かって走り出した。

自分達の姿を見て逃げ出したのだと思った三人は慌てて追いかける。

 

一刀は信じられない速度で走りながらも、人混みの隙間を器用に通って通行人に当たることがなかった。

それに対して三人は全力で走ろうとするとどうしても通行人にぶつかってしまうので、

道路の端のなるべく人通りの少ない所や、屋根に上ってその上を走って追いかけていた。

 

4人の追いかけっこが暫く続き城壁の近くまで来ていた。

不思議なことに城壁に近づけば近づくほど人が少なくなってきている。

終に城壁が見えるところまで来ると人は全くいなくなっていた。

何故か?と考える前に3人は一刀の姿を探すことにする。

 

右を見て、左を見て、もう一回右を見たところで自分達に向かって手を振っている一刀の姿を見つける。

さては観念したのか?と期待して一刀のところまで行く。

「捕まえた」と言う前に一刀が喋った。

 

「ねぇ!お姉ちゃんたちも競争しよう!!」

 

競争とは何のことか?改めて周囲を確認すると、なにやら足に自身がありげな人たちが集まっていた。

そして上を見てみると”城壁一周競争”なる垂れ幕が下がっていた。

 

設定をお読みになった方はご存知と思うが、この三人は”超距離障害物競走”に参加していた。

その所為か、このような競争競技に対しての熱意が上昇中であった。

飛び入り自由人数制限なしとのことだったので3人は一刀と共に参加を決意する。

既にソロバンシューズでクラウチングスタートの姿勢をとる一刀の横に並んで3人も走る体勢をとる。

 

「よ〜い…始め!!」

 

司会者の高らかな宣言と共に走者達は一斉にスタートした。

競争に参加するだけ会って参加者皆速い速い。

だが、その中で飛びぬけて速い者達がいた。

鈴々、季衣、流琉、そして…一刀。

 

天心万蘭、元気溌剌という言葉が似合う前3人は両手足をもはや視認するのも困難なまでに振るっている。

そして一刀は…ローラーシューズではより重心を低くし体重移動を巧くすればそれだけ速くなる。

今の一刀は重心を3人の腰の高さかそれ以下まで低くし絶妙な体重移動で滑り3人に並んでいる。

そして前3人は時々順番が入れ替わったりするが、基本的に常に一直線で走っていた。

前に走っているものが前方から来る風の抵抗を受け、その後ろを走っている自分は抵抗を受けず僅かだが前を走るものより速くなれる。

スリップストリームという現象だ。3人はこれを意図的にやっているからもはや技術と言える。

(分かりにくい人はマリオカートで誰かのピッタリ後ろを走ってみてください。ブワッと加速しますから)

一刀は4人の中で一番後ろを常に走っているので余り抵抗を受けずに滑り続けられる。

 

競争はいよいよ最終段階、トップを走る4人が最終コーナーを曲がった。

曲がり終えたとき今までたて縦一列だった並びが横一列に変わった。

僅かに残された牽制と逆転の直線コース。

誰かがぬ気出ればそれに追いつき、追い抜かされればまた抜き返す。

そんな状態がゴール直前まで続き、ゴールテープを切る直前4人が真直ぐ並んだ。

 

そしてそのままゴールテープが切られた…

 

周囲が歓声と喚声と嵐になる中、審査員が判定を行っていた。

同時にゴールした者が出たときを想定して撮影班を数人用意していた。

そして話し合いが終了し司会者に結果が渡される。

 

「え〜結果が出ましたので…皆さんお静かに!これより表彰を行います!!」

 

声の嵐が止み、あの激戦を制したのは誰かを聞き逃さんと皆口を閉じる。

 

「それでは発表いたします。優勝者は…こちらの少年です!」

 

「「「…………え?」」」

 

「ぃいやっほーーーーーーーーーう!」

 

まさかの一刀の優勝に3人は呆け、本人はこれでもかと言うくらいに喜んでいる。

一刀の叫びを聞いて3人はやっとその結果を認め一刀を褒め称える。

その後一刀に賞品が渡され競争大会は閉幕となる。

 

3人は打ち上げにどこか食べに行こうか?と誘うが、

一刀は勝ったことをお姉ちゃんたちに教えてあげたいと言って去っていってしまった…

 

去ってしまった一刀の後姿を残念そうに見送りながらも、

全力を立ち尽くした満足感と達成感で心を満たし3人はすがすがしい気持ちになっていた。

やがてこの場を去ろうとしたその時、一刀が競争に参加していたと聞きつけた朱里と雛里がやってきた。

 

汗をかく3人を見て一緒に参加していたのだと即座に判断する。

 

「鈴々ちゃん!」

 

「うにゃ?おお、朱里なのだ!どうしたのだ?」

 

「あ、あの…3人とも競争に参加してたんですよね?」

 

「そだよ」

 

「そのとき一刀くんも一緒に?」

 

「はい!いい勝負でしたけど、一刀くんが優勝しちゃいました」

 

「はわ!一刀くんが3人に勝ったんですか!?」

 

「そうなのだ!なんか足につけてたけどそのお陰ですごい速かったのだ!」

 

「あわわ…そ、それで一刀くんは今どこに?」

 

「他のお姉ちゃんたちに教えてあげたいっていって行っちゃったよ」

 

「「何で捕まえといてくれなかったんですかーーーー!!??」」

 

「「「………………あ」」」

 

走るのに夢中になる余り最初の目的を忘れていた三人であったとさ…

 

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『チキチキソロバンシューズ追いかけっこ・城外編A』

 

朱里、雛里含め一刀捜索捕獲隊は現在競馬場の前に集結していた。

聞き込みを行った所一刀は競馬場の方へ移動したとのこと。

そして競馬場周辺にいた人たちにも聞いてみたところ一刀は競馬場に入っていったと言う情報を掴んだ。

 

今度こそ逃がすまいと競馬場周辺を包囲して逃げ場をなくす。

元々競馬場の構造から出入り口の数は限られているし、仮に先のように屋根の上から逃げるにも行き先は限られる。

これだけの包囲網、いくら今の一刀と言えども抜けられないだろう…全員がそう考えていた。

 

競馬場の中からは競馬客の喚声と司会兼審判の音々音の拡声器で大きくなった彼女の声が響き渡っている。

 

『さぁ、中盤に入った今先頭争いを行うのは張遼選手、馬超選手、馬岱選手、ついでに公孫賛選手なのです!』

 

一刀がどこから出てくるか警戒しながら放送を聞いて勝負のすさまじさを想像する。

 

『先頭から離されていく後方では、それでも先頭に追いつこうと頑張りつつも互いに抜かれんと必死に競い合って、

 っと、その遥か後方からどんどん他の選手の抜かしていく…いく…い………』

 

なにやら放送から流れる音々音の調子がおかしい。驚きの余り呆然としている、そんな感じの声だ。

だが、次に発せられた音々音の絶叫が理由を語る。

 

『なんで一刀くんが馬にも乗らずに馬と同じ速度で走っているのですかーーーーーーーーー!?!?!?!?!?』

 

その絶叫を聞き朱里と雛里は慌てて競馬場の観客席へと駆けつける。

そして選手達を見る。

前のほうを走っているのは先ほど挙げられた4人。だがいつもよりも遅く感じられる。

音々音の言葉を聞いて後ろが気になり時々後ろを振り返っている。

 

そして彼女達の視線が向くほうに自分達も視線を向けてみると…

確かにいた…何頭かの馬が競い合うその傍らに一刀が走っていた。

駆ける馬の外側を走って一頭また一頭と追い抜いていく。(ルール上イン抜き禁止です)

時折徒走の、しかも子供なんかに!と思い一刀に迫るものがいたが、

一刀はその馬の股を、映画『ワイ○ド・スピード』のトラックの下を潜るワンシーンのように潜り抜ける。

 

後方の集団から抜け出した一刀は更に速度を上げて先頭集団に追いすがる。

 

「おいおい一刀、なんだってそんなに速く走れるんだよ?」

 

「うんとねぇ、なんかマオウお姉ちゃんのぶかけんでし?って人にね足見せたら、

 これを付けてみるといいっていって何か付けてくれたんだけど、それで速くなったの!」

 

「へぇ、すごいね一刀くん!でもなんで走ってるの?」

 

「あの勝ったらもらえるお姉ちゃんたちのやりのおもちゃ、アレがほしいの!」

 

「おいおい、そんなものの為にこんな危ないことしてるのか?

 それにあれはおもちゃじゃなくて偽物、危ないものだぞ」

 

「っや!欲しいの!」

 

「っはっはー!元気ええな!まぁ優勝賞品やのうて五位の賞品やからこのまま走っとったらもらえんで」

 

「む〜…でも、お姉ちゃんたちにも勝っちゃいたいもんね!」

 

「お、言うたな〜…ほんじゃ頑張りぃや!」

 

言いながら霞は速度を上げ他も同じくスピードを上げる。

喋っている間かなり速度が落とされていたために後方の集団も大分距離を詰められていた。

 

『…っは!?余りの光景に呆然としてしまっていたのです…

 さぁ、何時の間にやら後は最終直線を残すのみ、果たして先頭に立つのは誰でしょうか!?』

 

気を取り直して実況された内容の通り、ほとんどが最終コーナーを曲がり終えた所だった。

だがここに来て一刀にピンチが訪れた。

朝から今まで走り続け、その疲労が今になって現れてきてしまった。

先頭を走る4人はラストスパートを賭ける余り自分だけの世界に入って気付いていないが、

観客と後方集団には見えている。

 

後方集団はこれがチャンスと思いどんどん距離を詰めてくる。

一刀の方は遠目でも分るほどに息を荒くし体も思うように動かせないでいる。

そんな一刀を観客はもう見ていられない、直ぐに止めようと思う。

だが、観客の中に混じっていたこの二人は違った。

 

「「一刀くーーーーーーーん!がんばってーーーーーーーー!!」」

 

その声は、朱里と雛里の普段からは信じられないほどに大きな声は、

競馬場全体に響き渡り馬の足音をも通り越して一刀の耳に届いた。

一刀との同伴権を得て、現在最も一刀の近くにいる二人。

その声援を聞いて一刀は自らを奮い立たせてラストスパートを賭ける。

 

既にゴールした4人は邪魔にならぬよう避けた後自分達と一緒だった一刀がいないことに気付き、

慌てて後方を確認して改めて一刀を見る。

もはや身体も体力も限界なのであろう…それでも彼は気力で持ちこたえていた。

だが気力だけではどうしても足りない。それでも彼は諦めない。

 

ゴールまでは後数十メートル、後方からは馬の足音がどんどん大きくなってくる。

 

残り数メートル、後方集団までの距離もあとわずか…

 

そしてとうとう、一刀は集団に追い抜かれることなくゴールした!

満面の笑みで、しかし全力を出しつくして意識を失いゴールで倒れようとする一刀を、

霞が自分の下へと放り上げ抱きかかえる。

 

「お疲れ、よう頑張った!」

 

競馬場に歓声の嵐が巻き起こった。一刀のような幼い少年が馬に勝った。

誰もが一刀に向けて歓声と拍手を送っていた。

 

その嵐の中を朱里と雛里が一刀に向けて駆け寄ってくる。

 

「はわわ!い、一刀くん大丈夫ですか!?」

 

「心配ないで。今は疲れて眠ってるだけや。傷とかは一切無いで」

 

「ほぅ…それでは霞さん、一刀くんを渡してもらえませんか?」

 

「え〜…せっかく一緒に走ったんやし、お目当ての賞品も手に入るし、

 優勝できた打ち上げもしたいんやけどな〜」

 

「「あ(は)わわわわわわ」」

 

このままでは一刀がお持ち帰りされてしまう…

武では敵うはすも無い霞に対してどうすることも出来ない。

本当にこのままお持ち帰りされてしまうのか!?と思ったところで…

 

「う〜ん…むにゃぁ」

 

「お?起きてもうたか?」

 

「ぅにゅ…シュリお姉ちゃ…ひな…ちゃん…ぼ…がんb…ZZZ」

 

「……………」

 

霞はその寝言を聞いた。聞いてしまった。

確かに彼は賞品の武器のレプリカを欲しがって走り、そして手に入れた。

だが、それが成せたのも朱里と雛里がいたからこそだろう。

二人の一刀への声援は霞たちにも聞こえていた。

ゴールしてから振り返って見た一刀の姿を見れば彼がどんな感じだったか容易に想像できる。

苦笑を浮かべた霞は一刀を二人に差し出す。

 

「ほれ、せっかく一刀が二人の為に勝ったんやから、しっかり労ったりや」

 

「…霞さん…はい」

 

「もちろんです!!」

 

表彰にて一刀の保護者として、代理として賞品の武器のレプリカを受け取った後、

二人は一刀を連れて宿へと向かう。

 

夕食時になって一刀が目を覚まし競馬の結果を祝う。

風呂に入り、宿の部屋に戻って布団を被った途端、一刀は寝てしまった。

そんな一刀を二人は愛おしく思いながら二人も眠りにつくのであった…

 

 

ちなみに、二人の算盤はコマの材質が更に頑丈になり、

形が普通の算盤のように角ばったものではなく丸みを帯びた走るのに適したものに、

そして中にベアリングが組み込まれたことにより、

必要以上に長く速く回転する算盤を見てチョットだけため息が漏れたとさ…

 

-11ページ-

 

『奏でる旋律は子守唄』

 

祭の四日目…

 

昨日の疲れがまだ完全に取れていないのか、一刀は寝ている時間がかなり多かった。

 

朝、時間的に9時半ごろに「おなかが減った」と起きて朝食を食べた後、

朱里の服の袖を掴んだまま寝てしまった…

とりあえず朱里が付き添って、何時起きるか分らない一刀の傍にいてやることに。

頭を撫でてやったり頬を突いてちょっといたずらしたりしながら過ごした。

反応を見てチョット悶えていたがそこは割愛…

 

昼、またもや「おなかが減った」と起きて朝食をとる。

昨日手に入れた賞品である武器のレプリカを振り回して遊んだ後また寝てしまった。

 

起きた時に二人ともいなかったら可哀想なので、なるべく部屋を移動しないで何か暇つぶししようと考え、

それならば宿の部屋に備わっている小さな台所でお菓子を作ろうということになった。

 

そろそろ完成と言う所でなにやら気配を感じ、振り向くとそこには涎をたらしながら二人を、

とくに二人の手元にあるお菓子を凝視する一刀がいた。

「これ、食べちゃダメ?」と瞳をまぶしいくらいに輝かせながら視線で問うてくる様を、

まるで恋の、二人からすればそれ以上の可愛さのおねだりに抗えるはずもなかった。

 

やがて三人は完成したお菓子を食べる。二人は上品に、一刀はがっつく様に。

当然そんな食べ方をすれば口の周りについてしまうこともしばしば。

それを微笑ましく思いながら二人は一刀の口周りをキレイにしてやる。…もちろん自分達の口で!!

 

晩飯を済ませ、風呂に入ってさぁ寝ましょう!と言うときになって問題が起こった。

一刀が中々寝付けないでいるのだ。

その日のほとんどを寝てすごしたおかげで昨日の疲れはすっかり取れた。この場合は取れてしまったと言うべきか。

 

疲れが全く溜まっていないために中々寝付けない。

ならば意識的に、精神的に睡魔を誘ってしまえばと思い二人は考える。

 

そして思いつく。

朱里と雛里の自慢できる三つのもの。

1つ:頭脳。 1つ:料理(菓子がメイン) そして1つ:楽器の腕

あまり最後ので目だったことは無いが、実はその腕は冥琳に並ぶほど。(主人公の勝手な自己設定)

 

「一刀くん、これからお姉ちゃんたちがお歌を歌うんだけど聴きたい?」

 

「うん!ききたいききたい!!」

 

「それじゃぁ…」

 

言いながら二人は琴を用意する。

少し調子を見てから二人は深呼吸。そして互いに目配せをして…音が発せられ、歌が流れる…

 

琴から発せられる音から生まれる旋律は全身に染み渡るかのように透き通っている…

 

二人の口から発せられる歌はまるで母親の抱擁のように全身を包む込んでくれる…

 

一刀は瞳を閉じて身体で、心で二人の歌を聴いていた…

 

二人が奏でるのは子守唄…

 

一刀を想い、一刀ただ一人だけに捧げられ奏でられる子守唄…

 

故に二人の想いは歌となって一刀へ伝わっていく…

 

貴方に安らぎを…貴方に温もりを…私達は貴方に寄り添い包み込みましょう…

 

 

二人の音楽は数曲奏でられた。一曲が終わるたびに一刀は二人を称えるがどことなく眠たそうにする。

そして、何曲目かは分らないが、曲が終わっても一刀からの反応がなくなり、

見てみると、穏かな表情で眠りについていた。

 

その表情を見て、二人は想いが伝わったのだと喜んだ。

その後二人は一刀に寄り添って眠りにつく…

 

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『姫カルマジカル!』

 

祭の五日目…

 

彼、北郷一刀は今の姿(ショタ)になってからだが、初めて見た時からあるものが気になっていた。

それは…彼女、雛里の被っている帽子だ。

一目見た時からある存在を連想していた。

それを完全なものにするべく一刀は雛里のことを穴が空かんばかりに凝視する。

そして頭の中で完成図を描き出した一刀は彼女、雛里に手を伸ばす…

 

 

雛里は緊張していた…

現在朝食を3人で食べているのだが、朝起きてからもう直ぐ朝食を食べ終わろうとする今まで、

一刀から熱い視線を向けられている。

幼いながらも、その真剣な眼差しを見せられ雛里の胸の鼓動は高鳴り続ける。

顔を赤らめながら「(今の彼は子供今の彼は子供…)」と自分に言い聞かせ、

温かいお茶を飲んで落ち着こうとする。

そこで、視線を外さないまま同じくお茶を飲んでいた一刀が、

飲み終えた湯のみを机に置いた直後いきなり肩をつかんできた。

 

 

いよいよもって混乱する雛里に向けて一刀は言葉を放つ。

 

「ひなりお姉ちゃん!」

 

「ひゃい!?な、なに一刀くん?」

 

「へんしんして!!」

 

「………………ふぇ?」

 

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朱里と共に事情を問うた所、一刀は雛里の帽子を見て魔女を連想していたとのこと…

 

魔女と言うのは魔法、二人的に表現するならば妖術を使役する女性であると説明を受ける。

妖術、一刀的には魔法を使うと言うことで余り言い印象は受けなかったが、

一刀が言うには魔女には良い魔女と悪い魔女がいて、雛里は前者であるとのこと。

 

それから、魔女姿の雛里が見たいことと、自分がメイクアップさせたいと言う一刀の強い要望に応え、

雛里は一刀に身を任せる。

任された一刀は嬉々として雛里を変えていく。

 

被っている帽子はそのままに…

 

二本に結んでいた長い髪を解いて、一本の三つ編みに…

 

顔正面には度が無い少々大きめの眼鏡をかけさせて…

 

服はいつもの服をロングスカートに変えマントを羽織らせて…

 

魔女には欠かせない杖には彼女の羽扇を右手に…

 

左手には箒(柄の先に仁芭守弐千と書かれているのは多分気のせいだ…)を持たせて…

 

「かんせーーーーーー!!!」

 

理想の魔女を目の前にして一刀はとても嬉しそうだ。

 

変身させられた雛里と見守っていた朱里は、変身後を見て驚く。

そこまで大きく、むしろ少ししか手を加えていないのに、

今の雛里は幼さと大人さ、可憐さと妖艶さ、そしてどこか神秘的…それらが見事に混ざり合っていた。

 

「はわわ〜、雛里ちゃんすごくかわいい…」

 

「あわわ///自分でも信じられない…」

 

今の雛里を見て二人は喜んでいた。もちろんこれを成した一刀も喜んでいたのだが…

人の高鳴る欲望は止めることができない…

 

「ねぇねえひなりお姉ちゃん!」

 

「何?」

 

「ほうきに乗って!」

 

「??」

 

彼の意図がつかめず、とりあえず箒を床に置いてその上に乗る。

 

「ちーがーうーのー!立ったままほうきに乗ってほしいの!!」

 

「えっと…こう?」

 

箒にまたがった状態で一刀に確認を取る。それが正解と一刀は頷いて返す。

一体これがなんになるのか?

 

「それで…この後どうするの?」

 

その問いに対する回答は予想不可能なものだった…

 

「とんで!!」

 

「!?」

 

箒に乗って飛んでと来た…

いくらなんでもそれは無理。そう返そうとして、

 

「ドッキドッキワックワック」

キラ☆キラ☆キラ☆キラ☆キラ☆

 

一刀を見て出来なくなった…

今まで見た事が無いほどに期待で瞳を輝かせて、心境を口にまで出している。

その瞳に耐えられる将はこの恋姫の世界にはいない…

雛里は不可能を可能にしようと決意する!

 

「(一刀くんが見てる…一刀くんを悲しませたくない…

  お願いです、神様天子様仏様ご主人様、私に奇跡を!)」

 

目を閉じ雛里は強く祈り念じる…

 

「(飛んで!飛ばして!飛び立たせて!あい・きゃん・ふらい!!)」

 

 

人の強き想いは時として奇跡を引き起こす…

 

 

「はわわ!ひ、雛里ちゃん!足元を見てぇ!!」

 

「え?」

 

朱里の叫びを聞いて目を開けると、視線が天井近くに来ていた。

地に足を着いてないことを感じて足元を見る。その感覚は間違っていなかった…

今の雛里は彼女の帽子が天上に着き先端が僅かに曲がる高さにいた。

 

「スゴイスゴイスゴーイ!!本物の魔女だーーー!!」

 

一刀はこれでもかと言うくらいに舞い上がっていた。

そんな一刀を見て、本当に良かったと思いながら雛里は優しい笑みを浮かべる。

 

この日、この時、この瞬間、”魔法少女 魔慈華屡ヒナリー”が誕生した!

 

 

この後、一刀と本人の希望で同じやり取りを行った所、

朱里も同じことが成り、”魔法少女 魔慈華屡シユリー”が誕生した!

(過程すっ飛ばしてスマソン…)

 

魔法に関しては…空を飛べたのがよほどインパクトが強かったのか、

一刀の頭の中からそれ以外のことがきれいさっぱり消えてしまったためになしです。

二人も魔女についての知識は無いので発想自体が出てきませんでした…

 

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『青い空を二人の少女が飛びまわる…』

 

祭の六日目、一刀がショタでいられると思われる最後の日…

 

朝、まだ日が昇っていないとき、朱里・雛里・一刀の部屋に潜入する影があった。

影の正体は…霞。

 

「ん〜二人には悪い思うけど…やっぱりうちも一刀を独占とまではいかんでも、

 一緒にいたいとは思うねんな〜」(ぼそぼそ

 

ソロバンシューズの一件のときに見せられた一刀の朱里と雛里に対する想い。

それを見せられ霞は二人に嫉妬した、羨望した…

それらの気持ちが抑えきれずに、彼女は今この場所、三人が眠る寝台の一刀の頭の上にいる。

 

そして霞は一刀に手を伸ばす。昨晩遅くまで(一刀を寝かしつけるために)起きていた三人は起きる様子が無い。

終に霞は一刀を引っ張り出すことに成功!

引っ張り出された一刀は、それでも寝息を絶やすことなく穏かな寝顔を浮かべている。

それを見て霞は喜びが増す。

 

「ほんじゃ、堪忍な〜…」

 

そう言って一刀を抱えながら霞は部屋を出る。

 

部屋を出た直後、霞と同じくせめて最後の日は一刀と共に過ごしたいと望み、

一刀のもとに来た将に見つかったが、どうせなら一緒しようということになった。

彼女達の願いは一緒なのだ…

 

 

 

窓から入る朝日によって朱里と雛里は目を覚ます。

 

「う〜ん、おはよう朱里ちゃん、一刀くん」

 

「ふわぁ〜…おはよう雛里ちゃん、一刀くん」

 

「「………………?」」

 

挨拶を交わす二人、そしてなんだか違和感を感じる。

違和感を感じた場所、二人の間に位置する場所、その場所に視線を向けると…

 

「「一刀くーーーーーーーーーーーーん!?」」

 

一刀はいないことに驚愕し絶叫する。

さてはかくれんぼか何か?と淡い期待をしながら部屋を見渡すが特に変わったことは見受けられない。

いや…机を見た時、昨晩なかったものが置いてあった。

 

それは一本の竹簡。そこにはこう書かれていた…

 

「せめて最後の日くらいうちらにも一緒にいさせて〜な 霞より」

 

その一文から二人は全てを理解する。

霞の心情、そこから起した行動、そして恐らく他の将達も同じであるということも…

 

これはもはや自分達と霞だけのことではない…

自分達とその他全ての将達との一刀を賭けた戦いだ!

 

二人だけでは到底敵わない。相手には世界に名を轟かせた武将智将たち。

どんなに策をめぐらせても敵わないだろう…

だが一刀が関わっていると成れば話は別だ。

 

それに、昨日二人は一刀の為に奇跡を起したではないか!

今その奇跡を再び!!

 

「雛里ちゃん!」

 

「うん、行こう朱里ちゃん!」

 

「「変っ身!!」」

 

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宿の近くの広場には将達が集結していた。集結といってもただ単に偶然集まっただけではあるが…

それでも、全員の思いは皆一緒。ショタ一刀といられる最後の日を自分達も…

 

しばらく談笑しているとやがて一刀が起きる。

目を開いたそこが宿の布団の中、一緒に寝ていた二人でないことに驚くが、

抱きかかえていた霞が今日は一緒にいることになった(嘘)ことを一刀に話していく。

それを聞いて「そうなんだ〜」と返し「そうなんよ〜♪」と霞が笑顔で答える。

 

そしていざ出発しようとしたその時!

 

「「そこまでです!」」

 

昇って間もない太陽の光を背に、二人の少女が屋根の上に立っていた。

シルエットの上部、頭の上には特徴的なベレー帽とトンガリ帽。間違いなく朱里と雛里だ。

やがて光になれて二人の姿を改めてみると…

魔女っ子姿の二人を全員が見た。

 

「人の恋路を阻む者!」

 

「人の幸せ阻む者!」

 

「愛するものを盗む者!」

 

「愛するものを狙う者!」

 

「例えそれが友だとしても!」

 

「例え誰が許そうと!」

 

「私達は許しません!」

 

「ご主人様に代わって私達が!」

 

「「成!敗!です!!」」

 

「一刀くんとの奇跡より生まれ、一刀くんに全てを捧げる私!

 魔法少女 魔慈華屡ヒナリー!」

 

「同じく、魔法少女 魔慈華屡シユリー!」

 

「只今、推!参!!」

 

普段の二人からは想像できないほどの口舌と大音声。

そこまで大きく変わってはいないが、確かないつもとは異なった魅力に溢れる格好。

そして自分達の存在を見るもの全てに焼き付けようとするポージング。

ある者は呆然とし、ある者は拍手を送り、ある者は羨望の眼差しを向け、ある者は遠く過ぎ去った昔の自分を思い出す…

 

「自らの欲望の為に一刀くんを誘拐した皆さんを、

 このシユリーが懲らしめちゃいます!」

 

「あ、あわわ…朱「今の私はシユリーだよ!」…シユリー、

 懲らしめるのは難しいょ。ここは一刀くんを取り返すことが最優先だよ」

 

「…そうだったねヒナリー。では、一刀くんを返していただきます!」

 

ズビシっ!と羽扇を一刀を囲んでいる者達に向ける。

それを見て将達は…ニヤリ

 

「いくらけったいな格好しよったからって、それだけじゃうちらに勝つどころか一刀を取り返すなんて出来へんで?

 まぁ、何かしら準備してるんやろうけど…あんたら二人を抑えてまえばそれで終いや!真桜!」

 

「はいな姉さん!ほんじゃ喰らいや、新開発した”にわか網”!!」

 

言いながら取り出したのはロケットランチャーのような何か。

彼女が引き金を引くと…筒から巨大な網が飛び出した。

網の大きさは小屋一件を丸々包み込めるほどの大きさ。

(広範囲において上空から相手にかぶさってくる様子が雨のようであり、駄洒落的な感じでにわか網と命名)

 

波のように迫り来る網。これだけの大きさならあまり運動に向いていない二人ならこれで終わりだろうと思われた。

だが・・・

 

「甘いですよ。行こうヒナリー!」

 

「うん、シユリー!」

 

二人は箒にまたがり…強く屋根を蹴って飛び上がった。そう…跳ぶのではなく飛んだのだ!

 

それを見た全員が驚く中、二人は網の角を掴み取り、これを発射した真桜に向けて飛んでくる。

そして抵抗する間もなく、真桜とその周りに固まっていた将達に向け網を落とした。

網を被せられ一部がくんずほぐれつなってしまった。

 

-16ページ-

 

「まさか飛ぶとは思わなかったが…それなら下りてきた所を狙えば良い!」

 

網を確実に被せるために、手が届く高さまで降りてきた二人に武将達が飛び掛る。

 

「百も承知です!ですから…こうします!」

 

二人は懐から何かの塊を取り出し、同時に地面に向けて投げ放つ。すると地面に当たったそれが、

ボフンという効果音と共に周囲を煙で包み込んだ。

 

「っく、煙幕か…これやと見えへんな…しゃーない、この場は逃げんで!」

 

煙を振り払いながらその場を脱して霞は馬に飛び乗って、その場を離れる。

そして霞の声を聞いていた数人も同じように行動する。

 

いち早く煙を上空に逃げることで他のものの捕縛から逃れていた二人は、

煙の中から這い出た数人が馬に乗って放れていくのを見る。

 

「シユリー、何人かが馬に乗って離れるよ」

 

「はわわ!一刀くんもあそこに!?追いかけようヒナリー!」

 

「うん!」

 

言って、今まで一から直線コースで上空から馬に乗った集団に向けて飛ぶ。

 

「っく、もう見つかってもうたか。空じゃうち等は手出せへん。頼むで!」

 

「ええ。任せて」

 

「どれだけ離れようとどれだけ高くいようと当てて見せよう!」

 

騎馬した集団には弓将が多かった。自分達の本領を発揮するにはまず標的が見えなくてはいけない。

なので、煙で視界が遮られていた状況では矢を放つことが出来なかった。

 

「二人には悪いけど…落ちて頂戴!」

 

紫苑が矢を一本放つ。狙いは朱里。だが立った一本の矢では彼女に当たるはずが無い。容易く回避された。

 

「…やっぱり一本じゃダメね」

 

「ならば点を狙わず面を狙えば良い」

 

「儂も共に射よう。行きますぞ!」

 

紫苑、秋蘭、祭が複数の矢を同時に、そして連続して放ってくる。

複数人での同時射撃の連射。一本が外れても他の矢が、続いてくる矢が容赦なく二人を襲う。

 

だがそれすらも二人は回避する。右に、左に、時にはローリングで、、

一刀に向けての飛来をとめることなく、最小限の動きで飛んでくる矢を避ける避ける。

 

「ではワシも参加しよう!」

 

いいながら桔梗が振り向く。その手には豪天砲弐式が構えられ、長く連なった弾丸が装填されている。

先の三人に加えて弐式の速く強力な連射が加わり、まるで弾幕とも呼べる規模の矢の壁。

それでも二人は止まらない。バレルロールで回避しながらどんどん距離を詰めてくる。

 

「チィッ!こんだけヤッテもあかんか…しゃーない!例の作戦行くで!?」

 

馬に乗った一行は暫く進んだ所で曲がった。

距離を詰めていた二人もこれを追って曲がるが、

 

「どけどけー邪魔だ邪魔だーどけどけー!!」

 

「「は(あ)わわーーーーー!?」」

 

曲がった途端馬姉妹と白蓮が迫ってきた。

急上昇してギリギリかわすが、そこに、

 

「今なのだー!!」

 

「「「にゃーーーーーーー!!」」」

 

屋根の上から多人数の猫科の捕獲部隊が飛び掛ってきた。

それに対して、朱里は急降下し箒の掃く部分をこすらせながらスライディングで、

雛里は部隊の一人に柄の先を肉薄しハンドスプリングのような動きで回転しながら上昇回避。

一方ではなく二方向から回避されたことでどちらを狙えは?と混乱し、

その僅かな隙を突いて二人はその場を抜け出す。

 

抜け出した先、視界が開けた上空から霞を見た雛里はあることに気付き慌てて朱里の下に飛ぶ。

地面スレスレをなるべく体勢を低くしていた朱里は起き上がるや否や一気に加速する。

後ワンブロックで霞の所に到達する距離まで来たところで雛里が追いついた。

 

「朱…シユリー、あの中に一刀くんはいないよ!」

 

「はわ!?」

 

驚き前を見ると霞が振り返って飛龍偃月刀を構えていた。

 

「っしゃあ!今度はうちが相手したんでぇ、覚悟しいや!」

 

霞以外のものを見ても、いずれも一刀は傍にいない。ならばどこに?

そこで二人は思い出す。先程すれ違った三人を。

恐らく曲がったときに一時的一刀達を見失ったあのときに入れ替わったのだろう。ならば…

 

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「ぅおりゃあ!」

 

叫びと共に飛龍偃月刀が振られる。横薙ぎの一振りが当たる寸前、

二人はインメルマンターンで回避してそのまま逆方向に向けて急加速。

二階建ての建物の屋根ほどまで高度を上げると、直ぐに先程すれ違った三人を見つける。

 

「ヒナリー、私が注意をひきつけるから、ヒナリーは一刀くんを擦り抜けながら掻っ攫っちゃって!」

 

「シユリー…うん、わかった!」

 

言って、二人は二方向に別れる。朱里は目的の物を取りに、雛里は先回り。

 

目的の物を取ってきた朱里は猛スピードで飛行し三人に追いつく。

一刀は蒲公英の背中にしがみついていた。

 

「翠さん、勝負です!」

 

「おもしれー!叩き落としてやる!!」

 

翠は銀閃を構え、対して朱里は懐から一枚の写真を取り出し、

 

「はわー!ご主人様と翠さんのでえとの写真がー!?」

 

「そんなんにだまされって本物ー!?」

 

カード投げの要領で放たれた一枚の写真。なまじ動体視力が優れているため内容が見えてしまった。

写っていたのはゴスロリ姿で顔を真っ赤にしもじもじとしながら一刀に肩を抱かれているシーン(盗撮)

写真は白蓮の方向へ投げられ、狙い違わず白蓮の胸元に張り付く。

 

「だぁああ!返せ、見るな、触るなーーーーー!!」

 

「ちょ!?お、落ち着いてくれーーー!?」

 

白蓮の叫びも聞き耳持たず、翠は白蓮に、正確には彼女の胸元に張り付いている写真に向けて飛び掛る。

これで二人は抑えられた。だが残る一人、蒲公英には以外にも隙がなかった。

どうしようか迷っている所で、

 

「一刀くーーーーーーーーーん!」

 

少し離れたところから雛里の声が。その方向を見ると雛里が頭を下にして両手を広げながら飛んで来ていた。

それを見て、一刀はジブ○の一作品のあのシーンを思い出す。

今自分がその役なのだと思った一刀は、後僅かで雛里と接触する距離まで来たところで馬から飛び降りる。

 

「ぁあ!一刀くん飛び降りたら危(ヒュォン)あーーーー!?」

 

一刀が飛び降りたのを感じ慌てて振り返ったその瞬間蒲公英は見てしまった。

互いの腹の部分に顔を埋めて抱き合いながら離れていく一刀と雛里を。

 

「もー!お姉さまたち何をやって…はっ!?」

 

一刀達が逃げた先では、朱里が両手に持った筒の様な何かから大量の煙をまき広げていた。

 

「あー!ウチが作った発炎筒!?」

 

それは試作品と言うことで成分量を誤ってしまい、

山火事規模の煙を噴出すことが出来てしまう発炎筒。

煙の色は遠くからでもはっきりと分る赤と緑。

両手に持った発炎筒から噴き出される大量の煙によって作り出された赤と緑の雲紛れこまれ、

将達は完全に一刀達を見失った…

 

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一刀達を見失いどうしようか悩むが、祭最終日を明日に迎えた今日、

他の町に行くことは無いだろうと考え、将全員で捜索隊も導入して一刀達を探す。

 

そして、三人が宿泊していた宿の部屋にて一通の書置きを発見する。

 

「水鏡先生に挨拶に行って来ます 伏龍鳳雛より」

 

これを見て将達は自分達の完全敗北を痛感しOTZになった…

 

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〜プチ解説〜

 

『自慢のお姉ちゃんたち』

 

一刀が二人のことをどれだけ想ってくれているかを知り、今後のことをいろいろと決意した場面ですね。

でてきた侍女は特にこれといって特別なことはありません。

強いていうならかなり母性に溢れているということでしょうか?

 

『夢の中で…』

 

よく本を読むのに夢中になるあまり周りのことに何も気づかなくなるときってありますよね?

で、二人はそんな状況に陥り竹簡の雪崩に飲まれてしまったとwww

二人をそんなにまでさせる一刀の寝言…考えてみるとすさまじい…

 

『身近な所に敵はいる…』

 

原作をプレイしていて常々思っていた。二人が物陰に隠れて艶本を読んでいるとき、

それは偶然なのか狙っているのか、大抵星の姿が…

これはもうネタにするしか無いだろうwwwということで書きました。

 

『チキチキ追いかけっこwww』

 

最初は算盤のコマを回しまくっている所を雛里に「メッ!」ってされるネタを書こうと思っていたのに、

何故かこんなことに…何だこの一刀www

繰り出す技やスピードはローラーどころかエアギア並み…

インラインスケートで本気で走ればレース用の自転車並みのスピードが出せるかもって話は聞くけど、

算盤で馬に追いつくとかどんだけ〜wwwwww

自分で書いててこれは無いだろうと思いつつも書かずに入られなかった…

 

『奏でる旋律は子守唄』

 

映画赤壁では孔明と周喩が琴で奏でて語り合うシーンがありまして、

それ観て書きたくなりました。

勉強不足で実際鳳統がどうだったかは知りませんが、

まぁ親友同士なら共通の特技があってもいいのではということで。

 

『姫カルマジカル!』

 

二人を魔女にするか、一刀に雛里の帽子をかぶせてみたら帽子が喋りだすか…

どっちのネタにするかチョット悩みましたが、ふと今話の結末が頭に浮かんでこっちに成りました。

しかしま〜、一刀の為とはいえ飛んじゃったよ…

ちなみに、モデルには式神の城のチビふみこを選びました。知らない人の方が多いかな?

 

『青い空を二人の少女が飛びまわる…』

 

恒例の一刀争奪戦、こんな形になりました。

せっかく魔女っ娘になったんだからもっとマジカルさせちゃおうかとも思いましたが…

とりあえずラピ○タのあのシーンが恋姫で再現できたから満足ですwww

 

-20ページ-

 

いかがでしたでしょうか、朱里+雛里編

 

まずはアンケートにて雛里のお姉さんっぷりを希望していた方には謝罪を…

 

すません…本当は自分も書きたかったのですが無理でした…OTZ

 

自分の脳内では既にはわわな朱里とあわわな雛里が定着しちゃってまして。

 

 

前回の投稿、紫苑+桔梗+璃々編とは違い今回はあまりショタコンっぷりが余りなかったような…

 

どちらかというと一刀の暴走とそれに振り回される二人になりましたね。

 

 

次回は…誰にしよう?残念ながらネタがあまりないんっすよね〜。

 

断片的に「こいつならこのネタを採用しよう」とかはあるんですけど、一話にするとなると…

 

現段階で執筆中の作品の中で一番進んでるとなると…

 

チェンジシリーズの麗羽⇔白蓮ですかね?

 

終わりはまだまだ遠いなぁ。ですが完全終了までは諦めずに頑張ります。

 

なにとぞ今後ともよろしくお願いいたします。ではこれにて…

 

-21ページ-

 

〜おまけの英語授業〜

 

ソロバンシューズ追いかけっこにて使いました一刀の技名の訳を載せたいと思います

 

@Whirlwind to roll the skirt of a passing person.

通り過ぎる人のスカートを捲りあげる旋風

 

AThe wall becomes the earth again if touhed.

 触れられるのならば、壁もまた大地と化す

 

BLike a dragon rising to the sky, the person climbs the pillar.

 天へと昇る龍の如く、人は御柱を登り行く

 

CThe person who goes down the way linking the nature.

天地を結ぶ道を下る者

 

以上です。エキサイト翻訳使って、訳した文をそのまま載せました。

 

そこまで英語力ないので、一通り見てみて特に何も感じなかったので…

 

ちなみに、@のは受け狙いですwww

説明
う〜ん…アンケートとった意味あるのかな?
書きやすかったので軍師勢の中でトップバッターを飾ったのはこの二人。
冥琳希望していた方スイマセン…

まぁ、とにかくどうぞ
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コメント
ルーデルさん っふ、算盤で馬と併走したりエ○ギアできる一刀に比べたら可愛いものさwww(MiTi)
jackryさん っふ、遠慮なく言ってしまえw実際それ狙ってますから(MiTi)
hallさん まぁ…エキサイト翻訳使って、そこにちょいと自分なりの訳を書いただけですがw(MiTi)
箒で戦闘機動とかどんだけwww(ルーデル)
そんな風に訳すのですか、自分で訳すとおかしくなってしまって困っていた所でした。ありがとうございます(hall)
hallさん 和訳したものを最後のページに追加しておきました。良ければご覧ください(MiTi)
作中に出る英語はどう訳せばいいの?おじさん古い人だから訳せないよ(hall)
tanpopoさん ネタが上がり一話として完成次第すぐに投稿いたします(MiTi)
flowenさん 貴方の期待する作品にできるか不安ですが、がんばります!(MiTi)
ブックマンさん スマセン、振り返ってみてみると、自分でもなんだか中途半端に感じてしまう… これは麗羽⇔白蓮編で挽回せねば!(MiTi)
雪蓮の虜さん 冥琳と雪蓮…ネタはあれど話には至らない…自分の文才のなさがふがいない(MiTi)
私的には翠&蒲公英が見てみたいですねぇ。(tanpopo)
チェンジシリーズの麗羽⇔白蓮… 目立つ事に慣れていないのに目立ちまくる中身が白蓮な袁紹。目立ちたいのに全く目立てない容姿の公孫賛、中身は麗羽様…面白すぎます!支援!(flowen)
あまりマッタリした時間が少なかった感じがしました。チェンジシリーズの麗羽⇔白蓮面白すぎるでしょうw(ブックマン)
冥琳と雪蓮編もみてみたいですーーーー!!!!!!(雪蓮の虜)
デルタさん ん〜…本当はそのシーンも入れようとしたんですけどねぇ…残念ながらそれだけの技能がありませんでした。いかに一刀を抱えたまま雛里(or朱里)を気絶させるかが特に(MiTi)
急上昇のシーンで『昇がれぇぇぇぇぇぇ!!』と絶叫する少年を幻視できましたwww(デルタ)
伏宮真華さん 魔女っ娘二人に勝算を送って頂けるとは!やってよかった(MiTi)
バッキーさん なんと…この作品でスピード感を感じていただけるとは…(MiTi)
ほわちゃーなマリアさん ぉお!正直不安でしたがそこに笑っていただけてうれしいですwww(MiTi)
ヒナリー、シュリーwwwwwww(伏宮真華)
待ってました!!息もつかせぬハイスピードアクションな回でしたね!www (バッキー)
馬に負けない速さで走る一刀に、笑ってしまったwwww(ほわちゃーなマリア)
タグ
真†恋姫無双 ショタ一刀 朱里 雛里 

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