緋弾のアリア 我ら、栄光のADレイバー隊
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学園島……、東京にある武偵を育成する専門学校である東京武偵校の所在地である。

そんな学園島の一角……、明日無き学科として有名な「強襲科」の訓練を行う強襲科棟と、車両などによる支援を行う「車両科」の車両科棟がある場所の中間辺りに、まるで中小企業の工場を思わせる様な棟がある。

この場所こそが、現在、新しい社会的脅威となっているレイバー犯罪に対抗するべく武偵局が設立し、この物語の主役である東京武偵校|AD《エーディー》レイバー隊のテリトリーである「特殊車両科」棟である。

 

 

そこに向かって、ガシャン、ガシャンと言う独特の機械音を立てつつ、第二次世界対中にイギリス軍の偵察用装甲車であるダイムラー偵察車を改造して作った指揮車の『ADR指揮車 D型』誘導を受けつつ、この隊の主力戦力であるレイバーの『篠原重工社製 AV-98 通称:イングラム|AD《武偵》型』が2機向かっていた。

「疲れた……」

その2機のうちの1機……、1号機の中で凄まじい疲労感に包まれながら、俺、|海老原海斗《えびはらかいと》はボヤいていた。

只今、俺が乗っているこのイングラムは現在、実用化されているレイバーでは、間違いなく「史上最高性能」と名高い名作レイバーであり、俺達ADレイバー隊の兄貴・姉貴分に当たり、度々の共同訓練や共同作戦で協力関係に当たる「警視庁警備部特車2課 第2小隊」にも配備され、数々の悪名と伝説を築き上げてきた、押しも押されもしない名機だ。

しかし、その伝説と悪名を轟かすだけの性能を求めるが故に移住性はハッキリ言って最悪そのもの……。

普通の人なら、数分間乗っただけで、たちまち”マーライオン状態”になってしまう代物だ。

先にも言った用に俺達の兄貴・姉貴分で度々の共同訓練や共同作戦でお世話になっている特車2課 第2小隊の隊長である、後藤隊長さん曰く……「天にも昇る様な気持ちで地獄行き」だとの事……。

そんなレイバーに、俺は酔わないと言う「特異体質」だからこそ、パイロットに任命され、現状に至るわけだが……。

やっぱり酔わなくても移住性が悪いものに長時間箱詰めにされていては、ドッと疲れが出てくる物である……。

まぁ、それはそれでレイバー乗りならではの体験なので、個人的には「まぁ、いい思い出」って所だけどな……。

生身の体で銃を持って走り回るより、何十倍も楽って事もあるしな。

 

 

ちなみに、第2小隊に配備されているイングラムとADレイバー隊に配備されているイングラムAD型(※以下、AD型)は、様々な違いがある。

まず第2小隊のイングラムが”スリムでスタイリッシュな洗礼された細身の外見”なのに対し、俺達の乗るAD型は全体的に”ゴツイ、ゴリマッチョな外見”となっている。

同じイングラムなのに、どうしてこの様な違いが出たのかと言うと、元々イングラムを作った篠原重工が、日々凶悪化の一途を辿るレイバー犯罪に対抗するべく「イングラムの近代化改修モデル」として”AD型のベース”を開発、警視庁に売り込もうとしたらしいが失敗……、主が居ない「宙ぶらりん状態」となって篠原重工の倉庫に放置されていた。

そこにレイバー隊の強化を行っていた武偵局が目を付け、”値下げしても立った上で、購入する”事を名乗り出たらしい。

これは篠原重工にとっても多少の経済的損失は出ても、「不要在庫処分が出来る」ありがたい話であり、双方共にWinWin状態だったとか……。

んでもって、その購入に当たって武偵局側は、その試作イングラムに対し、「整備の簡易性の向上(※運用・管理などを未成年が殆ど行う武偵校に配備する当たっては、ある意味当たり前の要望)」や「遠隔操縦機能の搭載(※殉職生徒の減少の為)」等と言った独自の要望を付け足したらしく、コレに篠原側が答える事によって、今のイングラムAD型が誕生し、俺達の元に配備されたという……。

何だか、コレだけ見ると俺って”不要在庫”に乗っているんだな……。

まぁ……、そんな経由でも他の警察や武偵のレイバー隊が旧式のレイバーに乗っている中で、最新型のレイバーに乗れるだけありがたい状態なんだろうけどさ……。

やっぱり……、内心複雑な物があるよなぁ……。

 

 

そう思いながら、俺がイングラムのペダルやらレバーを操作してドックに向けて1号機を歩かせていると、頭に付けているレイバー用のヘッドギアの無線機から、2号機のパイロットである|草薙《くさなぎ》マリが、俺と同じ様に少なからず疲労困憊と言った感じの調子で、こう言い放つ。

『あー……、お腹すいたな……、帰ったら何か無いかなー……』

「|昴《スバル》が、気を利かせてくれている事を祈りたいな……」

そう俺とマリが無線機越しにぼやいた瞬間だった、指揮車から俺とマリのイングラムの誘導を担当していた指揮担当の|桜井明美《さくらいあけみ》が、まるで話の間に割って入るかの様にこう言い放つ。

『何よ二人揃って?自分の体で動いたわけじゃないのに、「腹減った」ですって?他の科より楽しているのに、ぜーたく言うじゃいないわよ!!』

「お前はコレを操縦して無いからいえるんだよ!!」

『海老原の言う通り!!レイバー乗りは意外とエネルギーを使うんだよ!!』

桜井の発言に対し、俺が若干切れ気味返す側でマリが”レイバー乗りにとっては御もっとも”と言える反論を言い放つ。

実際、レイバーの操縦と言うのは見た目や予想以上に細かく繊細な作業の連続である。

そりゃ、レイバーは工学やIT技術の発展によるスーパーテクノロジーが生み出したマシンだけあって、最新鋭のコンピューターOSが手伝ってくれている。

とはいえ、基本的には操縦者が2本のレバーやペダル、多数のボタンを適切に使い分ける事が基礎中の基礎としてある。

ましてや、土木作業とかならまだしも一定の状況を繰り返して作業する事による慣れで何とかなったとしても、基本的に”ガチンコの殴り合い&銃撃戦”や”事故災害時の人命救助”と言った『警備活動』をする俺達の常に一定の状況じゃないから、レイバーは絶えず細かい操縦が必要になる。

でもって、自然とパイロットのエネルギーもかなり消費するのだ……。

桜井……、時々思うのだが、お前は自分のポジションが”指揮・戦術分析”だって事を忘れてないか?

お前の役割は敵レイバーの様子及び、周囲に展開する強襲科突入部隊の状況、そして俺達レイバー搭乗員の状態等を的確に把握し、俺やマリと言ったレイバー操縦主に伝え、的確な警備作戦行動を展開する事に繋げるのが仕事だろ?

それをマジで忘れているんじゃないだろうな……、お前……。

多分、今のマリも同じ事を思っているんだろうな……、きっと……。

ふとイングラムのディスプレイに写る指揮車を見つつ、そう思った時には既に俺達はドック近くまで来ていた。

「レイバーが戻ってきたぞ、総員各電圧及び油圧系統のチェック並びに搭乗員搭乗タラップの用意を急げ!!」

そう一人の整備員がメガホンを片手に俺とマリのイングラムが戻ってきた事を確認するや否や大声で叫び、俺達のイングラムを直ぐにでも整備できる様な体制を整える。

彼、彼女らのお陰で俺達は仕事できるありがたい存在である。

 

 

因みにだが、ココに居る整備員の人数は合計60名。

何れも、整備科や車両科の整備担当をレイバー隊設立を受けて、教務課が無造作に引き抜き編成されている。

そんな引き抜き要員が55名で、残る5名はイングラムの製造元である篠原重工から出向してきたエンジニア達であり、事実上の整備班長を担当している。

この5名の整備班長の指示に従い、ADレイバー隊整備班は動いていると言っても過言では無いだろう。

 

 

そんな、ありがたい影の主役である整備班の誘導にしたがって俺とマリはイングラムを器用に操縦して移動式パレット兼ターンテーブルに固定する。

すると機械音を上げてイングラムを乗せた移動式パレット兼ターンテーブルがゆっくりと回転し、イングラムは180度回転する。

その回転を終えると同時にパレットがゆっくりとレールに従って移動して、イングラムを整備用ドックへと移動させていく。

んで、最終的に整備用ドックに俺とマリのイングラムが移動し終えると同時に固定用クリップがイングラムの両肩を挟む様に降りてきて、イングラムをガッチリと固定する。

それを合図と言わんばかりに整備班が搭乗タラップを用意、俺とマリはそれを使ってイングラムから降りるのだった。

すると、それに気付いた一人の男子がスポーツドリンクとエナジーバーを手に俺達の元にやってくる。

「二人共、お疲れ」

「お、流石は昴。桜井とは違って気が利くな」

「ホント、ホント」

「何、その嫌味?」

そう言って不機嫌そうな桜井を側めに置いて、俺とマリがスポーツドリンクとエナジーバーを受け取った相手は、先程の会話にチラッと出てきた男子こと|東原昴《ひがしはらすばる》だ。

ポジションは桜井と同じく指揮・戦術分析担当であり、いざと言うときには桜井と同じ様に指揮車にて指揮・戦術分析を行うのがコイツの仕事だ。

だけど、性格は完全に正反対。桜井が血気盛んに自らトラブルに首を突っ込むタイプなのに対し、昴は冷静にトラブルを回避する事に全力を尽くすタイプ……。

同じポジションなのにどうして、ココまで正反対の奴が担当しているんだろう……。

因みに俺の乗る1号機の指揮を取るのは桜井で、残るマリの2号機を指揮しているのは昴だ。

あぁ……、全く持って苦労するぜ……、桜井の指揮で戦うと……。

だって桜井の指揮って……、「そこにDDTよ!!」「あー、もう面倒くさいから0距離射撃でぶちのめせ!!」と言った感じだぞ……。

この調子じゃ、『破壊神』と名高い特車2課第2小隊の悪名を……、既に受けついでるかもな……。

 

 

ふと将来に不安を抱いていた時だった。

「あ、いたいた」

……と言った感じで、桜井やマリとは別の女子の声が聞えて来る。

その声に俺達が一斉に声のした方に顔を向けると、そこに居たは同じレイバー隊のメンバーの女子……|夕張佳代《ゆうばりかよ》の姿があった。

コイツのポジションはイングラムを現場まで搬送する為の大型トラックの”レイバーキャリアのドライバー”だ。

まぁ、主な仕事は上にも書いてある様に基本的にはイングラムを事件現場まで搬送する事が主任務だ。

しかし、それ以外にもキャリアに積んでいるレイバー本体バックアップ用のコンピュータにて、レイバーのダメージなどをリアルタイムで把握、桜井や昴と言った指揮担当に伝え、それを元に犯人レイバーに有効な一手を考える材料にしたり、作戦後の整備の手助けなんかに有効活用する。

 

因みに俺達ADレイバー隊が使用しているレイバーキャリアは、民間中古車市場に出回っていた日野ディーゼル社製の大型トレーラーのヘッド部分を武偵局が格安で購入。

んで、その後に別のメーカーに頼んでレイバー輸送トレーラー部分を作らせ、ヘッド部分にレイバー本体バックアップ用のコンピュータ、遠隔操縦用コントローラー……と言った感じの物を付けて作った代物だ。

だから、特車2課に配備されている99式大型特殊運搬車の様に「仮眠用のベッド」等と言った「拠点として運用する為の装備」は一切無く、あくまで純粋に「レイバーを現場まで運び、起動させた後にデータを収集する専用作業車両」に過ぎないわけだ……。

これまた因みにだが……、少し前に東京で3日間、開かれた国際会議の警備に俺達ADレイバー隊も他の強襲科の生徒や特車2課と共に参加していた。

その際に俺達に夜通しの夜間警備任務があって、それが終わって俺達は特車2課第2小隊に警備任務を引き渡し、仮眠を取ろうとした際に指揮車の中やキャリア、挙句の果てにはそこら辺にシート引いて寝ている俺達を見て哀れに思った、第2小隊の先輩達が99式大型特殊運搬車の仮眠ベッドや、機動隊に配備されている”拠点機能形成車”の仮眠ベッドを貸してくれたのは、いい思い出だよ……。

 

んでもって、そんな彼女の手にはキャリアのコンピューターから印刷した、何らかのデータを示す円グラフや棒グラフ等がビッシリと書かれたプリントが握られている。

「うーわ……、夕張お得意のデータ分析結果だよ……」

「あれ正直言ってめんどくさいのよね……」

チラッと見えたプリントの内容を前に昴と桜井が苦虫を潰したような表情になる。

それもそうだろ、の何故かコイツは世にも珍しい”データマニア”だ。

コレを元に夕張は俺やマリ、桜井や昴に長くありがたーいお説教をタップリとしてくるのだ……、それもまるで新しいおもちゃを手に入れた子供の様に目をキラキラとさせながら……。

いや、勿論、自分達の乗るレイバーの状態を把握してこそ、いざ言う時の有効な作戦行動が出来るのは間違い様の無い事実だよ……。

だけど……、それを訓練終了後直ぐとか、作戦を終えて帰還して直ぐ……、それも物凄く疲労している時にするのは止めてくれ!!

そう胸の内で思いながら、無駄にキラキラした笑顔で俺達の元にやって来た夕張は開口一番こう言い放つ。

「はーい、毎度おなじみの訓練後のデータ分析結果よ……って、アレ?」

「どうした?」

「2号機のデータ資料が……、落しちゃったのかしら……」

夕張の無駄に長くて複雑なメカ話を聞かなくて良い機会だから、このまま一生見つからないでくれ……、2号機のデータ……。

俺の問い掛けに対し、行方不明になった2号機の稼動データーを探し、オロオロしている夕張を見つめていた時だった。

「夕張、女子トイレの前に落してたぞ……」

「あ、そんな所にあったんだ〜……、良かったー……、ありがとうね」

そう言って俺達の願いをぶち壊すような発言と共に、夕張にデータを渡したのは彼女と同じくキャリアを担当している|土屋幸太郎《つちやこうたろう》だ。

まぁ、コイツも夕張ほどじゃないが相当なデータマニアだもんな……。

って言うか……、何だ?武偵のレイバー隊におけるキャリア担当の採用条件は「病気レベルのデータマニア」か?

この二人を見る度にそう思うんだよな……、警視庁のほうは比較的まともな人ばっかりなのに……。

 

因みに夕張が俺の1号機キャリアを担当し、土屋が自然とマリの2号機キャリアを担当している。

 

んでもって、そんな夕張と土屋を見つめながら「え〜、まず最初に海老原の1号機だけど……」と言う夕張のデータ解説に、嫌々ながら耳を傾けた瞬間だった。

「お、お前ら全員ココにいたのか」

と、言う俺や昴、土屋とは違う男子の声が聞えてきて、俺や昴、土屋と言った男子達は愚か、桜井や夕張、マリと言った女子達も一斉に声の掛けられたほうに顔を向ける。

そして、顔を向けた俺達の視界に入ってきたのは、このADレイバー隊の指揮官である、3年生の|青柳翼《あおやなぎつばさ》リーダーだ。(※余談だが、残る俺達は全員2年生である)

リーダーは元強襲科でレイバー隊設立以前に起きたレイバー暴走事件で、暴走&破壊行動を行っている犯人レイバーによじ登るなり、コックピットを抉じ開けて、犯人に愛銃のデザートイーグルでメインパネルを破壊して、レイバーを停止&犯人を確保する……と言った、トンでもない活躍をしてみせたエース中のエースだ。

でもって、この一連の活躍を飼われ、新設されたレイバー隊のリーダーに命名され、今に至るわけである……。因みに、この一連のリーダーの活躍の一役を担った”相棒”の一人であるデザートイーグルは、現在進行形でリーダーの腰のホルスターに収まっている。

と言うか、リーダーに限らず「全ての生徒は銃及び刃物の携帯を義務とする」と言ったトンでもない規則がある為、俺達全員揃って銃を携帯している。

まぁ、俺から簡単に紹介すると……、俺はスライドシルバーのH&K USP、桜井はS&W M19の2.5インチモデル、夕張がSIG P230JPモデル。

んでもって、マリがグロック19と来て、昴がコルトガバメントのシリーズ70モデル、そして、土屋はコルトローマンの2インチ……と、言った感じだ。

後、この他にも俺とマリのイングラム両機、指揮車、キャリアに揃って自衛隊からリタイアした64式小銃が搭載されている。

これ等の銃火器は何れも揃ってイングラム及び指揮車、キャリアがやられた場合の自衛戦闘や周囲警戒体制時に使用する為の装備だ。

んでもって……、これ等の銃器を予想以上に発砲する機会が多いのは武偵ならではと言った所かね?

 

 

そう思い返しながら、リーダーに再び視点を向けると、リーダーは夕張の持っている書類とは別の書類を片手にこう言い放つ。

「本日、強襲科及び狙撃科と探偵科が共同で大規模強盗団のアジトへの一斉検挙作戦を行う事になった。コレに伴い俺達、レイバー隊は只今より検挙作戦終了まで準待機態勢にて待機……と言う命令が来た」

「リーダー、その大規模強盗団って……、前々から|自分達《東京武偵校》と対峙していた多国籍強盗団ですか?」

リーダーの発言に対し、夕張が思い返しながら問い掛けるとリーダーは一言「そうだ」と言って、首を縦に振った。

この二人の会話に関して、説明すると……、ここら数週間に掛けて勢力を増してきた多国強盗団が居て、こと在る度に俺達、東京武偵校の部偵達と一戦交えてきた訳だ。

その度の重なる戦闘の末に逮捕した幹部の証言によって、遂に奴らのアジト&ボスの正体が判明。

これを気に強盗団との戦いに決着をつけるべく、奴らのアジトに踏み込む……と言う作戦が本日、実行される訳だ。

それに伴い俺達レイバー隊は万が一、犯人がレイバーを使用した際の応援要員として、作戦が終わるまで待機する……と言う事だ。

 

え、「だったら、何で最初から出動しないのか?」って?

あのな、俺達のイングラムの装甲は鉄じゃなくてFRPなんだよ……、用は”強化プラスチック製”。

でもって、拳銃の銃弾及び手榴弾と言った爆発物の破片からは身を守る事が出来るが、7.62ミリNATO弾を使用する機関銃でも撃ち込まれ様なら、一瞬でレイバーは穴だらけ。

乗っている俺とマリも序でに蜂の巣……、殉職決定するは確実だ。

だから、今回の様に「犯人側にレイバーが居るかどうか分からないが、強力な拳銃以上の銃器を持った犯人が居るのは確実」と言った状況に、レイバーを持ち込んだ所で所詮は”お飾り”で終わってしまう。

まぁ……、こんな状況でレイバーを投入しなければならない時の為に遠隔操縦機能がAD型には搭載されている……、用は「的になれや」って機能だよな……、実質的に……。

その他にも、メンテナンスの手間やコストが普通の装備より何倍も高いレイバーを出して、結局出番無しで帰ってくるとなるとコストの無駄遣いで終わってしまう……と言った問題もある。

んで、これ等の課題を元にして、俺達ADレイバー隊は、今回の様な作戦においては最初からレイバーを持ち込まないで準待機態勢を取った状態で待機。

いざ、レイバー出現となった際に全力出撃して、現場に到着次第、応援に入る……と言うのがADレイバー隊の行動規定となっている。

いやはや……、基本的に事件が起きたら全力出撃の警察とは違って、金次第で動く武偵ならではの行動規定と言った所だな……。

 

ふとリーダーの言い放つ作戦内容&俺達に与えられた任務を聞き、メモしながらそう思っていると今度は夕張に変わって、昴がリーダーに問い掛ける。

「それで、その作戦は何時から始まるんですか?」

「あぁ、2時間後に始まるとの事だ。今の内にメシ食って、昼寝でもしておけ」

「「「「「「了解!!」」」」」」」

リーダーの指揮に対し、俺達が揃って復唱を帰すとリーダーは「よし……」と一言呟くと、こう言葉を続けた。

「俺はもう一度、強襲科や探偵科の奴らと確認に当たるから、何かあったら携帯に電話しろ。では、解散」

短く淡々とリーダーは言い放つと後ろをくるりと振り返り、俺達の元から去っていく。

そんな後ろ姿を俺達は見つめながら、こう会話を交わす。

「あー……、訓練後に準待機かよ……」

「面倒臭い事になったわねー……」

訓練の疲れを癒す間も無く出動の可能性が出てきた事に俺とマリが揃って愚痴をこぼすと、桜井が先程の夕張の様に目をキラキラさせながら、こう言い放つ。

「何言ってるよ!?活躍して英雄になれるチャンスが来たのよ!!絶好のチャンスと思いなさい!!」

「時々思うんだけど……、桜井さんって……、事件を楽しんでない?」

出動の可能性を前にテンションMAXの桜井を昴が若干、引き気味に見つめている……。

確かに俺も指揮される立場ながら、|コイツ《桜井》の精神や脳内が「正常じゃないんじゃないか?」と思う事が何度もあるよ……。

そんな事をふと思いつつ、目をキラキラさせている桜井を見つめる俺の側で、夕張&土屋のデータコンビが比較的マトモな会話を交わす。

「んー……、確かキャリアの燃料って、何時補給したっけ?」

「3時間前に満タンにしたばかりだぞ……」

「あ、そうだった、そうだった。今、その事を思い出した」

手をポンと叩きながら、軽く笑う夕張の声がドック内に鳴り響く整備機器の機械音に混じって聞えていた時だった。

「レイバー隊は相変わらずね〜……」

と、”ちょっとやそっとじゃ、絶対に真似が出来そうも無いアニメ声”がドック内に響き渡る。

っていうか……、この余りにも特徴的過ぎるアニメ声の主は……。

 

 

俺を含めたレイバー隊の全員がそう思いながら、声のした方に顔を向ける。

すると、そこに居たのは強襲科のエース……、数少ないSランク武偵の少女……、”神埼・H・アリア”であった。

ロンドン武偵校から留学してきたエース中のエース……、逮捕率は脅威の99%……、正に最強の武偵だろう。

そんな彼女が先程、リーダーの言っていた作戦に参加するのは当然として……、何でレイバー隊を尋ねているのだろうか?

ふと胸の内にそんな疑問が湧いてくる中、何故か馬が会う桜井がアリアに問い掛ける。

「アリア、どうしたの?」

「いや……、何となく立ち寄っただけよ……」

そう桜井の問いに、一言ポツリと呟くように返したアリアは、直ぐ側にて整備員達が整備するイングラムを見つめながら、こう言い放つ。

「こう言っちゃ何だけど……、あんた達、レイバー隊って……、バカみたいなチームよね……」

「「「なっ!?」」」

前々からキツイ性格のは知っていたけど……、ココまでストレートに「バカみたいなチーム」って、言われたらカチンと来るぞ……。

俺、マリ、桜井の3人が共にアリアの発言に度肝を抜かれる側で、当のアリアはこう言葉を続ける。

「いや……、あんた達の活躍には強襲科として大いに助かっているのは事実で……、アタシも感謝しているのよ……、でも……、絵図がどうみてもSF映画のワンシーンにしか見えないのよねぇ……」

「確かに……、それはよく言われる……」

アリアの「SF映画のワンシーン」と言う発言に対し、土屋が少なからず納得したように頷いた。

確かに……、巨大ロボを操縦し、稽古を積んで、敵と戦う……、少し前々ではアニメか映画、小説の世界でしかなかった光景だ。

そんな光景が今、ココに現実となって目の前にある……、確かにバカみたいな絵図らだよな……。

翌々、思い返すと何だかんだで納得が行くアリアの発言を聞き、胸の内の怒りが収まるのを感じつつ、アリアと同じ様にドック内に広がっている光景を見つめていると、当のアリアは「まぁ……」と一言呟くなり、こう言葉を続けた。

「アタシは決して『ムリ』とは言わないけど、生身の体でレイバーに立ち向かうのは骨が折れる行為なのも間違いないわ……、いざと言う時は頼りにしているわ。じゃあね」

”典型的なツンデレ(?)”を見せたアリアが、リーダーと同じ様に後ろを振り返って特車棟から去っていくのを俺が見つめていると、側に居たマリと昴がこう会話を交わす。

「うわぁー……、典型的なツンデレね……」

「まぁ……、デレがあるだけ、頼りにされているって事だよ」

「それもそうね……」

アリアの発言を解説するかのように言い放った昴の言葉に対し、マリも少なからず納得した様子だ。

そんなマリの様子を見つめながら、俺は背伸びをし、凝り固まった筋肉を解しながら、こう言い放つ。

「じゃあ、とりあえず……、パッと準備して、作戦が終わるまで待機していようぜ……」

「そうね……、まぁ……、必要無いと思うけどね……」

「そう願いたい物ね」

そう言葉を交わすと、俺達レイバー隊に出動命令が下る事が無い様に祈りながら、いざと言う時の出動に備える為に準待機態勢を取る。

 

 

しかし、この祈りも虚しく……。

この少し後に俺達、ADレイバー隊は愚か、アリア、特車2課第2小隊の先輩達も巻き込む大騒動が起ころうとは……。

この時、誰一人として予想できるものは居なかった……。

説明
現代日本……、日々凶悪化の一途を辿る犯罪やテロに対抗する為にとある国家資格が設立された。
銃及び刃物などによる武装を許可され、有償かつ、殺人以外のどんな荒事を犯してでも事態を解消する「何でも屋」

|武装探偵《英訳:Armed detective》……、通称:|武偵《ぶてい》

この武偵の設立と同時にハイパーテクノロジーの発展と共に生みだれた「機械」があった。
大型一人乗り産業作業用ロボット……、通称「レイバー」
誕生と同時にレイバーは建設や土木、軍事、救助等の分野に幅広く普及したが、レイバーを使用した「レイバー犯罪」と呼ばれる犯罪や事故も急増。
新たなる社会的脅威として、警察及び武偵達の前に立ち塞がる事となった。
警視庁は本庁警備部内に特殊車両2課を創設、同じ武偵局も各武偵局並びに、武偵を育成する各武偵校にレイバー隊を設立し、日々発生するレイバー犯罪に対抗した。

通称……、パトレイバー……、ADレイバーの誕生である。

※この作品は作者の”個人的な趣味と妄想100パーセント”でお送りします。
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