氷の龍は世界最強 月下の会合A
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 俺は今、夢を見ている。

 また、あの夢。

 声を聞こえる。

 木霊している。

 押し潰すような・・・包み込むような・・・この手に落ちる雷鳴のような・・・・・・

 また、俺の目の前に氷の龍が現れる。

 そして、龍は凍えるほどの冷気を放っている。

 俺は、毎度のこと、凍えるほどの冷気を身に浴びながら

「なんだよ、お前・・・」

 龍は毎度、同じことを口にしている。

「小僧・・・貴様が・・・我を・・・・・・」

 だけど――、

「何を言っているんだ、聞こえないよ!!」

 叫ぶ。

「我の名は・・・・・・」

 名前を言おうとしているようだが、この凍えるほどの冷気で

「聞こえない」

 声が聞こえないのだ。

 俺は凍えるほどの冷気と雷鳴によって、目を閉じてしまい、思わず、意識を覚醒する。

 

 俺は夜中なのに意識を覚醒させる。

 すると、俺の目の前には雫の寝顔があった。

「えっ!?」

 と、思わず、俺は起き上がってしまい、ゴチンと俺と雫の額をぶつかってしまった。

「いてて・・・」

 俺は頭を抑えながら、雫の隣に座る。

 雫も

「いったぁ〜い」

 と、額を抑えて涙目になっている。

 だけど、彼女の顔色が悪そうだ。

 顔色が真っ青を通り越して、真っ白だった。

 俺は思わず、雫の腕を掴んで

「雫!? 大丈夫か!? 顔色が真っ白だぞ!?」

 叫ぶようにして言い放つ。

 雫は俺の叫びに対して、

「あれぇ〜? 蒼汰? どうしたの? なんだか・・・意識が・・・遠のく・・・感じがする・・・」

 それを聞いて、俺は不味いと思い

「バカ。それって死にそうじゃないか!! 死ぬな、雫!! 死なないでくれ!!」

 彼女に抱きついた。

 すると、雫の体温がほんのり温かいだけでほとんど冷たかった。

 これは不味いと思い、俺はギュッと抱きしめる。

 その際、俺の胸板に柔らかな2つの感触があるけど、無視して抱きしめる。

 俺の体温で雫を温かくさせようと思ったからだ。

 

 だけど、どうして、雫がこんなに冷たくなったんだ。

 俺は、そんなことを思っていると

「キミの霊圧に当てられて、彼女は死にかけているんだよ」

「え?」

 と、何処からか、声が聞こえた。

 俺は辺りを見渡すも誰もいない。

 中庭の中心に振り向いてみれば、黒装束に白い羽織を羽織った長髪の女性が立っていた。

 いや、此奴は男の娘だな。

 おそらく、俺に似た容姿だ。

(だけど、この視線・・・どこかで・・・)

 俺は頭を悩ませていると、

「どうやら、俺の姿が見え、俺の視線に見覚えがあるようだな」

 口にする。

 俺の視線? もしかして・・・!?

「もしかして、お前はここ最近、俺を見ていた視線か!!?」

「その通り。俺は朝霧峻。十二番隊隊長。((死神|・・))だよ」

 俺は峻という男の娘が言った言葉「死神」という単語に目を見開く。

「俺と同じ・・・死神・・・」

「ほぅ・・・キミも天職は死神かな? まあいい。それよりも、そこの彼女を診させてくれる?」

「どうする気だ?」

「体調を良くしてあげるよ」

「・・・・・・」

 俺は峻という男の娘を慎重に見ながら

「分かった・・・・・・だけど、もし、雫に何かしたら、お前をぶっ飛ばす」

「これで成立だね」

 俺は雫を峻という死神に預けた。

 預けた途端、彼は雫の背中に手を当ててぽぉ〜ッと淡い光を出す。

 俺は、それを見ながら

「それで本当に治るのか?」

「あくまで、応急処置だ。専門的な機関に預ければ一命を食い止める」

「そうか、良かった」

 俺はホッと胸をなで下ろす。

 だが、峻という人は俺にあることを告げる。

「だけど、明日の遠征には、彼女は出られない」

「そんなに不味いのか?」

 俺は心配そうに雫を見る。

「体温が著しく落ちている。このまま、明日、遠征にでも出たら、死んでいただろう。その原因はもう分かっているだろう?」

 峻は俺に雫がこうなった原因を聞いてくる。

 さっきの言葉を思い出し、俺は身体を震わせながら言葉を漏らす。

「俺が・・・俺が・・・雫を殺そうとしていた・・・のか・・・?」

「そうだ。キミの霊圧に当てられて、彼女は命を落としそうになっていた」

(いや、彼女の拍動からして・・・もう・・・長くないな)

 峻は俺に教えていないが、雫の命がもう風前の灯火であった。

 峻は雫の背中に手を当てて、治療、延命を促してながら、俺にこんなことを告げる。

「キミ、本格的に死神にならないか?」

「え?」

 いきなり、何を言っているんだ。

 俺が死神に?

 どういうことだ?

「キミのような、力の強い奴は力の制御を学ばないといけない。教えておいといてやる。今のままだと、キミは彼女だけじゃなく、周りの皆を、キミの力で殺していた」

「・・・・・・」

(俺の力で・・・雫を・・・)

 俺は、幼馴染みを自分の手で殺してしまいかねないことを知り、身体が震え上がってしまう。

 峻は俺の胸に手を当てて

「声が聞こえるんじゃないのか?」

 核心を突く言葉を投げられる。

 声・・・ああ、聞こえる。6歳の頃から、ずっと・・・もしかしたら、俺は6歳の頃から、周りに迷惑を・・・・・・

 俺は今までのことを思いだし、身体が震え続ける。

 峻は俺が震え上がっているを見て、ハアと息を吐く。

「天才といえども、自分にとって大切な存在が傷つく。酷く情緒不安定になるな」

「悪いか」

「いや、俺たちは死神といえど、人間だ。非情になれというのが無理な話だ。それでどうする? このままだと、キミは再び、彼女を殺すことになるが・・・」

 峻って人の話を聞くかぎり、このままじゃあ、俺は再び、雫を殺してしまう。

 雫を失いたくない。だけど、このままじゃあ、俺が雫を殺してしまう。

 そこに彼は追い打ちをかけるように残酷なことを告げる。

「さっき、安静していればなんとかなると言ったが・・・すまない。俺の力でも無理だ。四番隊の澄香でも完全に治療することが不可能だ」

「どういうことだ・・・」

「彼女の意識が昏倒している。俺の応急処置で延命しても無理だというのが分かった」

「どうすれば、雫は生きられるんだ!?」

 俺は縋るように言い返すと彼がとてもキツいことを告げる。

「彼女を死神にさせるしかない」

「え?」

「幸い、彼女の魂魄は無事だ。彼女の魂魄とキミの魂魄を((尸魂界|ソウルソサエティ))に送る」

「((尸魂界|ソウルソサエティ))?」

「死後の世界。キミたちにわかりやすく言うなら天国だと思えばいい。そこへ君たち2人を連れて行く。そうすれば、魂魄までは死ぬことはなくなる」

「雫が生きていられるなら、それでいい!!」

「いいのか?」

 ここで峻は俺にあることを問う。

「今の話はつまり、キミも死ぬことになる。それはつまり、二度と元の場所には戻れなくなることを指す」

「雫と一緒にいられるなら、俺は何処へでも行く!!」

 俺にとって、雫は心許せる。

 唯一の存在。

 天才で孤独だった俺を救い出してくれた。

 変わっている俺にいつも、傍にいてくれた。

 俺は雫がいない世界は嫌だ。

 俺の所為で雫を死なせたというなら、俺が雫を守る。

 この命に代えても――!!

 この時ほど、俺は自分を責めることはなかった。

 自分の所為で愛する人を失わせることがどんなに辛いことなのかを身を以て知ったからだ。

 峻は俺の気持ちを理解したのかしなかったのか分からないが、何処からか取りだした杖の先端を俺の額に向ける。

「俺が今からやることを信じろ」

 と、言った瞬間、杖の先端が俺の額を押し当てて、俺の身体から、なにかが飛び出した気がした。

 飛び出したのは俺だ。

 いや、俺の魂だ。

 俺の意識である魂が身体から抜け出した瞬間、俺の身体はベンチの背もたれにもたれかかって気を失っている。

 ん? なんだこれ?

 俺は自分の胸にある鎖らしきものに触れる。

 その鎖は抜け殻になった俺の身体と繋がっていた。

 

 峻は雫にも俺と同じことをして身体から魂が抜き出る。

 雫の胸にも鎖らしきものが繋がっているが、俺と違って今すぐにでも引きちぎれそうになっているのが見えた。

 なんだろう、あの鎖が引きちぎれた瞬間、ヤバいことが起きそうな感じがした。

 峻は雫の背中に触れるのを止めて、杖を抜く。

 抜くと刀らしきものが・・・いや、あれは刀だ。

 どうして、彼が地球にある武器を持っているんだ!?

 俺は今、関係ないことを考え込んでしまう。

 峻は手に持っている刀で俺と雫の鎖を躊躇いなく断ち切った。

 彼が俺と雫の鎖を断ち切った瞬間、身体がドクンと背筋を凍らせるなにかが脈動した。

 なんだ、今のは!?

 この背筋が凍りつく感覚は!?

 断ち切られた鎖の切断部分を見て、身の毛がよだつ、なにかを感じとった。

 峻は俺の胸の鎖を教えてくれた。

「その鎖は因果の鎖」

「因果の・・・鎖・・・」

「人間が生きている間。肉体と魂魄を繋ぎ止める鎖のことだ」

「魂魄?」

「魂魄というのは魂のことだ。今のキミの状態のことを指す。そして、肉体と魂魄を繋げる鎖が切れると、その肉体は死ぬことになる」

「死ぬ!? どうしてだ!?」

「実のところ、死神がいる世界は天国といえる場所にある。そこに行くには死ぬか身体を霊子に変換しないといけない。だけど、今の状況だと霊子変換は間に合わない。その理由は分かっているな?」

 彼が言う理由に俺はすぐに分かった。

「霊子変換しても、雫が死にかけなのは変わりないというわけか」

 確かに、雫は俺が死なせたと言われてもおかしくない。

 雫と共にいられる唯一の手段というわけか。

 俺は雫と一緒にいられるなら、何処へでも行ける気がする。

「霊体となったキミたちを魂葬する。魂葬すれば、流魂街という魂魄が流れ着く街に送られる」

「流魂街・・・」

 俺はこのあとに送られる場所を言われる。

 すると――、

「う・・・うぅ〜・・・」

 雫が身動ぐ。

 ボソボソとだが、目を開けて身体を起こす。

「あれ・・・私は・・・いったい・・・・・・」

 朧気ながらも意識を覚醒する雫。

 俺は起き上がった彼女を見て

「雫・・・」

 目尻に涙を溜め、

「雫!?」

 思わず、抱きついてしまった。

「ちょ、ちょっと、蒼汰!? どうしたの、急に!?」

 雫は俺に抱きつかれて、顔や頬を紅くしながらしどろもどろ慌ててしまう。

 俺は涙を零しながら

「だって・・・さっきまで・・・お前・・・目を覚まさなかったから・・・」

 心配の想いがいっぱいで言ってしまう。

 俺の言葉を聞いて、彼女は

「そういえば、さっきまで意識が朦朧していたわね」

 ついさっきまでのことを思い出している。

 ここで雫は顔を赤くしながら、俺に

「ね、ねぇ・・・蒼汰。お願いだけど・・・離れてくれないかな・・・? その・・・当たってるから・・・」

「え?」

 ここで俺は雫が言っていることの意味を最初は分からなかったが、俺の胸板に当たっている感触から徐々に分かっていき、顔を赤くして、すぐに離れた。

「悪い・・・俺が不甲斐なかった」

 なお、しっかりと謝罪をする。

 心配させてしまったとはいえ、みだりに抱きついてしまった俺の不甲斐なさがあった。

 

 だけど、雫は俺にバレずに胸中では

(蒼汰に抱きつかれた・・・嬉しい・・・)

 大いに喜んでいたとのことだ。

 俺に知らないだけで――。

 

「そろそろ、話を聞いてくれると嬉しいな」

 峻が俺と雫に話しかけてきた。

「「あっ」」

 俺と雫も今になって気がついて振り向く。

 峻は今の俺たちの現状とこれからのことを教えてくれた。

「これから、キミたちは魂葬する。魂葬すれば、流魂街という街に魂魄は流れ着く。流れ着いたら、真央霊術院に入学しなさい。キミたちは((死んだ形|・・・・))だけど、死神になれば、今以上に力が強くなれるはずだ」

「それを信用できるのか?」

「できる。最初に言ったはずだが、少年。キミは既に斬魄刀の対話が始まっている。それは既に霊力を身に宿していることになる。次に、彼女。キミも気づかなかったけど、霊力は持っている。力のある娘は真央霊術院で力を制御する術を身につけなければならない。現世ではキミの真の力は発揮できない」

「私にそんな力を持っているなんて・・・」

「俺もキミを応急処置するまで気づかなかった。キミも生まれ持った天才だ。それは俺が保証しよう。霊術院を卒業したら、護廷十三隊に入隊すること。これが現世に戻れる唯一の手段だ」

「何故、死神になるのにそんな遠回りなんだ?」

 俺の質問は雫も同じだったようで、「魂葬してから、こっちに戻れるじゃないのか」と口にする。

「遠回りなのは、一度、魂葬すると死神にならないかぎり、現世へ行くことができない。魂葬というのは一方通行なんだ。だから、一度、魂葬すれば、次に現世へ帰れるのは死神になるしか方法がない」

「断って、こっちに残った場合はどうなるの?」

「肉体に帰れず、次第に胸に鎖が消えて孔になる。そうすれば、キミたちは((虚|ホロウ))という醜い化物になる」

 俺と雫は峻の話を聞いて、醜い化物になることを想像したのかブルリと顔を青ざめる。

 顔を青ざめてしまえば、もう答えは1つしかない。

「雫・・・」

「そうね・・・」

 どうやら、雫も俺と同じことを考えていたようだ。

「俺たちを魂葬してください」

「お願いします」

 潔い判断に峻は

「・・・潔い判断だな」

 引き気味になる。なんでなるんだよ。

 こっちはお願いしている立場なんだが・・・

「あと、キミたちの肉体は俺が預かっておく。なにかと有効利用させてもらうよ」

「お願いします」

「変なことするなよ」

 言うのだった。

 

 そしたら、峻は杖の持ち手の部分を俺と雫の額に当てる。

 当てられた瞬間、意識が天に昇る感覚に陥る。

 天に昇る際、目を閉じる。

 次に目を開いて入って景色は時代遅れの街だった。

 

 蒼汰と雫の魂魄を流魂街に魂葬した峻は蒼汰と雫の肉体を平たい紐で包み込んだ。

 蒼汰と雫の肉体を包み込んだ後、こんなことを述べた。

「さて、ここからがキミたちの冒険の始まりかな。それにしても、氷川蒼汰。八重樫雫。キミたちは異世界の民でありながら霊力を持っているとは・・・だが、何故、あの2人に・・・((あんな力|・・・・))が秘めているんだろう」

 彼は蒼汰と雫に普通の人間には、ある特別な力を持っていることに気づいていた。

 その後、彼は義骸を利用して蒼汰と雫の死体を用意した後、((尸魂界|ソウルソサエティ))へと帰還した。

 

 そして、翌日、中庭で蒼汰と雫の遺体が発見された時はクラスメイトの誰もが大いに悲しんだ。

 皆に慕われていた((雫だけ|・・・))が――。

 なお、天才と称される蒼汰が死んだことに誰もが清々していたと記載しておこう。

説明
氷雪系最強『氷輪丸』などのBLEACH要素をぶち込んでみた。
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男の娘 独自設定 独自展開 天之河アンチ 多重クロス ヒロインは雫、オリヒロイン オリ主最強 オリキャラ ありふれた職業で世界最強 BLEACH 

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