ある魔法少女の物語 15「魔法少女の異変」
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 魔女を倒して新型インフルエンザの存在を消し去り、帰ろうとしていた矢先の事だった。

 

 突然、まり恵が何の前触れもなく倒れた。

「大丈夫か?」

 恭一は倒れたまり恵に手を差し伸べる。

 幸い、意識はあるらしく、まり恵は恭一の手を取って立ち上がった。

「……」

「まり恵ちゃん、痛かった?」

 奈穂子はまり恵に、怪我がないかと聞く。

 だが、まり恵は首を横に振った。

「何でもないわ。気にしないで」

 まり恵は皆に心配をかけないように言ったが、明らかに大丈夫そうではなかった。

 奈穂子はもう一度、倒れたまり恵の手を見る。

「嘘、怪我してるじゃない!」

「でも、あまり気にならないし、痛くないわ」

「駄目だよ! 傷口から黴菌が入っちゃうし、何よりまり恵ちゃんが死んじゃうよ! 早く急いで、手当てしよう!」

 そう言って、奈穂子はまり恵を真字駆公園に連れて行き、怪我した部分を水飲み場の水で冷やした。

 この公園の水は相当冷たいはずだったが、まり恵は一切の反応を見せなかった。

「……まり恵さん?」

「何でもないわ」

「まり恵さん?」

「おい、まり恵」

 カタリナ、三加、恭一は、まり恵の異変に気づいて彼女に声をかけたが、まり恵はそれしか言わなかった。

「……何でもないって言ったでしょう!」

「嘘をつかないで、まり恵ちゃん!」

 奈穂子はまり恵を心配し、彼女の手を握る。

 強く握ったはずの手だったが、まり恵は痛がるそぶりを見せなかった。

「痛くないの?」

「全然、痛くないわよ」

「まり恵ちゃんは、いつ頃からそうなったの?」

「……あたしが、魔法少女になった時よ」

「そんな!」

 奈穂子はまり恵から衝撃の事実を知らされ、ショックのあまり、膝から頽れた。

「まり恵ちゃん、こうなる事を知らなかったの?」

「あいつは、その事について何も言わなかったわ。あたしは、あいつに騙されてしまったのよ……」

 ジュウげむは魔法少女の副作用について何も言わなかった。

 彼(?)はこうなる事を知っていたのだろうか。

 三加とカタリナは、やるせない気持ちになった。

 

 この光景を見た恭一は、奈穂子にこう言った。

「いいか? 奈穂子。魔法少女になるというのは、こういう事になるんだ」

「恭一君……うん、分かっているよ。こんな目に遭うくらいなら、魔法少女にはならない方がマシだって」

 奈穂子は、素直に頷くしかなかった。

 確かに魔法少女になれば、起きた事を取り消す事ができるのだが……こんな副作用まであるとは。

 魔法少女になるという事がどれほど恐ろしいかを奈穂子は改めて知るのだった。

「それで、魔法少女になった人間を元に戻す方法はあるのか?」

「聞いてみましょう」

「よし、ジュウげむをとっちめてやるぜ」

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 恭一達は、ジュウげむを探した。

 魔法少女を人間に戻す方法があるのか、ジュウげむに聞きたいからだ。

 きっと、はぐらかすかもしれないが……。

 

「ジュウげむ! お前に聞きたい事がある!」

 公園の遊具の上に、ジュウげむは立っていた。

 普通の人から見れば、何もない場所に話しかけているように見えるが、恭一は真剣だ。

「何だい?」

「聞いてくれ、ジュウげむ。魔法少女を人間に戻す方法はあるのか?」

 恭一は、一番知りたい事を言った。

 もしかしたら、まり恵、三加、カタリナが元の日常に戻れるのではないかと、淡い期待を抱きながら。

 だが、そんな希望は無情にも打ち砕かれた。

「残念だけど、一度魔法少女になった人間を元の人間に戻す手段は無いよ」

「そんな……!」

「だって、願いを叶えたのはキミ達じゃないか。この世は等価交換でできているんだよ。

 キミ達の願いをボクが叶えるけれど、その代わりにキミ達はボクの願いを叶える。そんな当たり前の事を言うなんて、馬鹿だね」

「くっ……!」

 恭一は悔しさから、拳をぎゅっと握り締める。

 しかし、今の恭一ではどうしようもない事だ。

「人は弱くて儚いから、ボクが守ってあげたいというのに、それを蹴るなんて愚かしい」

「そんなわけあるか! 人はお前が言うほど弱くないんだ!」

「口先だけの言葉なんて、信じたくないな。人の弱さを知らない癖に……。

 もし今後、ボクの邪魔をするのであれば、キミ達には報いを受けてもらうよ」

 そう言って、ジュウげむは再び姿を消した。

 

「ジュウげむは、何がなんでも災いを消したいのね」

「天災も疫病も、みんなで乗り越えるものなのに、あのジュウげむという生物は別の手段で解決したいらしいですね」

 恭一達はジュウげむの行いを理解できなくなった。

 世の中で起こる災いは、皆で対策を考えてようやく解決できるものだと三加は知っている。

 もちろん、恭一や奈穂子もそう思っていた。

 だが、ジュウげむはそんな考えとは真逆の、魔法少女という手段を使って解決している。

 災いは乗り越えるものではなく、消し去るものだという考えらしい。

 もし消してしまえば、教訓も消えるというのに。

「ジュウげむが向かっている方向は、過去だ。未来へ向かっている俺達とは、逆だ」

「過去を変えたいという気持ちは私でも分かるけど、やっぱり、魔法少女になるのは良くないよ。

 だって、魔法少女になったら、未来がなくなっちゃうんだよ?」

「……」

 奈穂子の言葉は、魔法少女のまり恵、三加、カタリナの胸に刺さった。

 過ぎ去った時を取り戻した時、次の時への影響は計り知れないからだ。

 

「お願いだよ、ジュウげむ。もうこれ以上、恭一君も、まり恵ちゃんも、長根先輩も、カタリナさんも巻き込むのはやめて……!」

説明
色々なアニメやゲームを参考にして、この物語はできました。
ただ願いを叶えるだけでは面白くないので、こうなりました。
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