真・恋姫†無双〜黒の御使いと鬼子の少女〜 94
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「……ご主人様」

 

 蜀へ向かうために歩を進める道中、桃香は何度目かの振り返りをする。

 

「桃香様、心配なのはわかりますが、あまり振り返られていると兵にも心配が広がりますぞ」

「うっ、ごめんなさい……」

 

 星はそう言って戒めたものの、内心は桃香と同じだ。だが、彼女は北郷の約束を信じているのだ。

 

「それに、主は無事に戻ると約束なされた。それを我らが信じずにどうします」

「……そう、だけど」

 

 と、そこへ月がやってくる。

 

「あ、あの、桃香さま、星さん。雪華ちゃん見てませんか?」

「雪華ちゃん? こっちで見てないけど……」

「ふむ、私も見てないが。愛紗の所ではないのか?」

「やっぱりそうなのかな……」

「どうした? 見当たらないのか?」

 

 星の問いに月は頷く。

 

「さっき、隊が二つに分かれる時に手伝ってくれていたんですけど、いつの間にか見え無くなって……」

 

 そのとき、ちょうど周囲の警戒に出ていた愛紗が戻ってくる。

 

「月? どうしたのだ?」

「あの、愛紗さん、雪華ちゃんは一緒じゃありませんか?」

「いや、さすがに警戒に雪華を連れては……」

「じゃあ、どこに……」

 

 月の言葉に愛紗の顔が険しくなる。

 

「まさか、いないのか?」

「……はい。今、詠ちゃんにも訪ねてもらってるんですけど」

 

 と、そこへ詠が血相を変えて駆け込んできた。

 

「月っ! 大変っ!」

「詠ちゃん?」

「雪華が、雪華が殿の方に混ざってるかもしれないっ!」

「“!?”」

 

 その報告に全員の顔が青ざめる。だが、一番青ざめたのは愛紗だった。

 

「それは本当かっ!?」

「兵の一人が“あいつにお守りを渡すから。すぐ戻るから”って言ってたってっ!」

 

 お守りを渡すだけならとっくに戻って、この隊の中にいなければおかしい。いないという事は彼女は自分の意志で殿に着いていったという事になる。

 

「一体なぜっ!?」

 

 だが、その答えは誰も分かるはずがない。

 

「くっ!」

「愛紗っ! どこへ行くっ!?」

「雪華を連れ戻しに行かなければっ!」

「お主がいなくなれば攻略に支障が出るっ!」

「だがっ!」

 

 守ると約束をした。そんな少女を置いていけるのだろうか。

 

「気持ちは分かるが今更どうしようもないっ!」

「だからと言ってっ!」

 

 心に従うのであれば、制止を振り切って駆けだしたい。だが、星の言うことはもっともだ。揺れ動く気持ち。だが、それを止めたのは三国無双の武将だった。

 

「……私が、行く」

「恋っ!? だが……」

 

 とは言うものの、いかに彼女とて足の速さまでは変えられない。だが、そこに“足の速い”部隊がいれば?

 

「我ら御剣隊がお供します」

「黄仁も……」

 

 この劉備軍の中でも遊撃を主とする御剣隊は首位を争う俊足の部隊。彼らであれば殿の部隊にも追いつけるだろう。だが、そうなったらそうなったで問題も出る。

 

「黄仁。お主たちも愛紗と同じく我らが要の一隊。はいそうですかと行かせるわけにはいかん」

「趙雲さま、しかし天女様も我らが象徴。いくら張飛様がいらっしゃるとは言え危険であることに変わりはありませぬっ!」

 

 黄仁の言う事ももっともだ。だからと言って行ってこいとも言えぬ。どちらも一理ある以上は話し合わねばならない。だが、そこへ最後の一手が加わった。

 

「ならば、恋とねねを御剣隊とやらの頭に据えて運用すればよかろう」

 

 華雄だ。華雄がその話に加わった。

 

「華雄よ。そうは言うが、では恋の部隊はどうするのだ?」

「それは私が引き受ける。顔見知りもいる」

「かゆう……」

「それに、あの男にはこの命の礼もある。少しだけでも返させてもらいたいのだが」

 

 その言葉に星は悩みの表情を見せるが、月が後押しする。

 

「私たちの所にいた人は最初に華雄さんやし、いえ、張遼さんに鍛えられています。だからきっと問題ないです」

「それは僕も保証するわ。少なくとも命令が通らないなんてことは絶対にない」

 

 詠の保証も加わり、ついに星は折れた。

 

「……私とて、雪華は妹のようなものだ。助けられるのであれば助けたい。頼めるか?」

「ん……」

「我らが命に代えましてもっ!」

 

 こうして、恋を隊長とした急造御剣隊が殿へと向かうことになった。

 

「改めまして、御剣隊副隊長、黄仁と申します。簡略で申し訳ありませぬが、呂布殿。何卒よろしくお願いいたします」

「ん」

「それと軍師殿はいつ頃合流を?」

「もういるのです」

「のわぁ!?」

 

 いつの間にいたのか。黄仁の背後に音々音がいた。

 

「も、申し訳ありませぬっ!」

「……ふむ、まぁその先を言わなかったので良しとしてやるのです」

 

 よかった、目に入らなかったことを口にしなくて本当に良かったと心の中で思った黄仁だが、それはすぐに飲み込んで本題に入る。

 

「これより我ら御剣隊は呂布殿、陳宮殿の指揮下に入ります」

「ん。ねね」

「御意なのですっ! まずは、隊の特徴などを説明しやがれですっ!」

 

 そして簡単な打ち合わせの後、隊は後方へと砂塵を残して駆けて行った。

 

 その頃、雪華というと……

 

(気持ち悪い……)

 

 昔の茶色い外套を纏い、荷車に潜り込んで隠れていた。だが、そも荷車は人が乗るものではない。乗り心地など考えられていないものにうずくまるようにして乗っていれば酔うのも道理だ。

 

「でも……」

 

 あの時に見た異変を見逃すわけにはいかなかったのだ。

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 雪華は北郷たちが隊を分けるという話をしているとき、愛紗の元へ向かっていた。

 

「はっ、はっ、はっ……」

 

 なんでかといえば、住民の皆の様子を見るように愛紗に頼まれていたからだ。で、とりあえず大丈夫そうという事を報告しに向かっていた。

 

「……あれ?」

 

 だが、ふと何かが気になった。

 

「???」

 

 周りを見渡すが、おかしいと思うようなことは無い。でも、何かが引っかかる。

 

「??????」

 

 というか、なんだか角がやけに響いているような気がする。

 

(なんだろう?)

 

 生まれてこの方、こんなことは初めてだった。

 

(ん〜?)

 

 そして、何と無しに空を見ると、鳥が飛んでいた。

 

(…………あれ、あの鳥さん“変”)

 

 逆光で姿がよく見えないのだが、なぜかおかしいと感じた。しかも、その鳥を見ていると角が一層響くような気がする。

 

「ねぇ、おばあちゃん」

 

 近くを歩いていた老婆に話しかける。

 

「これは、天女様。何でございましょう?」

「あそこに、変な鳥さんいない?」

「変な鳥、ですか?」

 

 言われて目を細める老婆だが、

 

「……鳥、ですか? 申し訳ないのですが、この老婆には“見えませぬ”なぁ」

「え?」

 

 見えないというのは、考えていなかった。だって太陽を背にして飛んでいるとは言え、その影が見えないなんていう事はないはずだ。

 

「天女様?」

「ご、ごめんね。見間違いだった」

「いえいえ」

「頑張ろうね!」

「はい」

 

 それだけ会話して、雪華はもう一度影の鳥を凝視する。すると、一瞬だが見慣れたものが見えた気がした。

 

(……あれ、もしかして)

 

 雪華はそこで違和感の正体がようやくわかった。“薄い”のだ。体も、翼も。それもそのはず。何せ、その鳥は、

 

(あの鳥、紙でできているんだっ!)

 

 そこで、玄輝の話を思い出す。

 

(確か、しきがみ? って紙で作るんだよね?)

 

 なら、あの鳥は……!

 

(し、白装束だっ! 白装束の鳥さんなんだっ!)

 

 気が付いてしまった彼女の心臓は鼓動を3倍にも早める。

 

「ど、どうしよう……」

 

 愛紗に言ったとしてもすぐに忘れてしまうかもしれない。かと言って自分一人ではどうしようもない。

 

「あ、いた。雪華ぁ〜!」

「っ!!!」

 

 呼ばれた声に驚いてから声のした方を見ると詠が駆け寄ってきていた。

 

「詠お姉ちゃん」

「ん? どうしたの?」

「えっと」

 

 どうしようか迷って空を見上げると、鳥はすでにいなくなっていた。

 

「あ、あれっ!?」

 

 慌てて周りを見渡すと、鳥は列の後ろの方に飛んで行っていた。

 

 内心、ちょっと安心した雪華は詠と向き合う。

 

「どうしたのよ。空なんて見て」

「ううん、なんでもない」

 

 怪訝そうな表情をするが、何も見えない以上は気にすることではないと考えた詠は雪華にさっき決まった話を告げる。

 

「実は隊を二つに分けることになったの。一つはこのまま進んで、もう一つは後ろの様子を見る隊になったわ」

「後ろ……?」

 

 その言葉に心がざわつく。

 

(後ろって、さっきあの鳥さんが飛んで行った方だよね……?)

 

 であるならば、後ろの隊は危険なのではないか。

 

「ねぇ、その後ろの隊には誰が行くの?」

「北郷と鈴々よ」

 

 その名前に雪華は凍り付く。

 

(鈴々ちゃんは、一度白装束に狙われてる、よね?)

 

 さらに言えば、北郷は皆の大事な人。そんな二人が行く方向に白装束の鳥が飛んでいった。

 

「詠姉さま、私っ!」

「あ、それと愛紗からの指示だけど、雪華は私や月と一緒に準備を手伝って。ちょっと急がなきゃいけないからすぐに行くわよ」

 

 有無を言わせず詠は雪華を連れて準備へと駆り出されてしまう。

 

(どうしよう……)

 

 手伝いつつも話す機会を窺うが、かなり慌ただしく動いている。

 

(このままじゃ)

 

 誰にも伝えることなく部隊は分かれてしまう。

 

(……もう、やるしかない)

 

 雪華は自分の荷物を移動させるふりをして、角を隠す時に使っていた外套を引きずり出した。

 

(捨てなくてよかった……)

 

 何人かから捨てたらどうか、と言われていたのだが、彼女からしたら何年も一緒に歩いてきた“相棒”なのだ。現に今、役に立ってくれる。

 

 外套を人目を忍んで纏い、後方の部隊に混ざろうとしたとき、

 

「天女様?」

「っ!」

 

 兵の一人に見つかってしまった。

 

「いかがなさいましたか? こちらの隊は……」

「あ、あの! 北郷のお兄ちゃんにお守り渡すのっ!」

 

 自分で咄嗟に出したにしては上出来ではないかと一瞬自画自賛。

 

「……そう、ですか。では、お早めになさってください」

「うんっ!」

 

 何とか乗り切った雪華は兵士の目がそれた瞬間に近くにあった荷車に潜り込んで丸まった。

 

(これで、少なくても一緒には行ける)

 

 そして、隊は後方へと歩を進めてしまった。

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(乗るの、間違えた……)

 

 で、現在乗り物酔いと戦う羽目になっている。

 

(は、早く止まってぇ〜)

 

 結構、限界に近づいていた。

 

 しかし、雪華の願いが届いたのか、荷車が止まった。

 

(と、止まったっ!)

 

 やったっ! と思ったのも束の間。なにやら騒がしくなる。

 

「……なんで、あの方……」

「急いで確認を……!」

(なんだろ?)

 

 胃の中のものが出ないように慎重に体を起こして、こっそり外を見る。だが、慌てて後ろ後ろへ駆けていく兵士が見えるだけで、その理由が分からない。

 

(もうちょっと……)

 

 慎重に頭を外に出して、後ろを確認すると……

 

(あれ、恋お姉ちゃんと玄輝の隊の旗?)

 

 なんでこんなところに? と思ったが、今の状況ですぐに気が付いた。

 

(わ、私だっ!)

 

 たぶん、詠や月辺りが気が付いてしまったのだ。そう判断した雪華はすぐに荷車に潜って再び丸まる。

 

(ば、バレませんようにっ!)

 

 馬の足音はだんだん近づき、ある程度進んだところで止まったかと思えば、今度は人の足跡が近づいてくる。

 

(……………)

 

 大丈夫。隠れることは玄輝からお墨付きをもらっているんだ。隠れながら何年生活を送って、

 

「……いた」

「なんでぇ!?」

 

 秒殺だった。ちなみに、何でバレたかといえば頭を上げていたのを恋がばっちり見ていただけだ。襟首を子猫を持ち上げるように掴んで持ち上げる。

 

「雪華、あぶないから、かえる」

「やだっ! 帰らない」

 

 バタバタと暴れるが、相手は三国無双。逃げられるはずもない。が、

 

「……どうして?」

 

 “察する”ことに関しても彼女は一流なのだ。

 

「……紙の、鳥さんがいたの」

「鳥は、紙じゃない」

「違うのっ! 白装束の鳥を見たのっ!」

「っ!」

 

 雪華の一言に表情が“恋”から“呂布”へ変わる。

 

「……本当?」

 

 呂布となった彼女に少し恐怖を覚えながらも頷く。

 

「……わかった。雪華は恋が守る」

 

 そう言って、彼女を肩に乗せる。

 

「……いいの?」

「大丈夫。それより、白装束なら、ご主人様も危ない」

「でも、恋お姉ちゃん白装束のこと」

「大丈夫。少し、覚えてる」

「本当っ!?」

「玄輝や、雪華ぐらいは 無理。でも、覚えてる」

 

 恋の言葉は雪華に強い希望を生み出す。

 

(恋お姉ちゃんがいるなら大丈夫だっ!)

 

 安心すると、一気に感覚が戻ってくる。

 

「……お姉ちゃん、下に降ろしてほしい」

「っ!?」

 

 そう。さっきまで酔っていたという感覚が。

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「白装束が……?」

 

 一度落ち着いたところで北郷にさっき見たものを報告する。

 

「……どうしてこんなところに?」

「ごめんなさい……」

 

 思わず謝った雪華の頭を北郷はしゃがんで撫でる。

 

「いいや、雪華が謝ることじゃないさ。理由を考えるのは俺たちの仕事だよ」

 

 そう言って一緒に来た恋、ねね、鈴々の三人に問う。

 

「皆はどう思う?」

「鈴々が強いからっ!」

「……(フルフル)」

 

 武将二人は置いとくとして、ねねの意見は、

 

「お前が気に食わねぇからじゃないですか」

「……さすがに見ず知らずの相手からそう思われるのはないと思いたいんだけど」

「冗談なのです。そこは流すべきでしょう、気の利かない男なのですっ」

「ええ〜……」

 

 と、不条理に嘆く北郷と、恋に“めっ”とされるねね。

 

「ねね」

「うっ、分かってるのです」

 

 と、咳ばらいを一つして、考えを話す。

 

「考えられる一番の理由はやはりあの男でしょうな」

「玄輝か……」

「です。ただ、こちらに何かちょっかいをかけるというより、偵察が主でしょうな」

「その根拠は?」

「こちらに仕掛ける気ならば、今は絶好の好機。でも、いまだに攻撃は無し。となると、こちらの動きをただ探っているのでしょう」

 

 成程。確かに一理ある考えだ。だが、雪華はそうだとは思えなかった。

 

「で、でも、鈴々ちゃんは一度だけ白装束に狙われてるんだよ?」

「にゃ?」

 

 そう。鈴々は一度だけ白装束からの攻撃を受けたことがあるのだ。

 

「そんなことあったかー?」

 

 まぁ、当人は完全に忘れているし、雪華も直接見ているわけではない。だから、玄輝から聞いた話をそのまま話す。

 

「確か、月姉さまの国に行って戦ったときに華雄さんと戦ったって」

「そうなのだっ! でも、途中で……」

 

 と、そこで“あー!”と手を叩いて思い出した。

 

「そう言えば、そんな話を玄兄ちゃんが言ってたのだっ!」

「……俺も思い出した。本当に厄介だなこれ」

 

 北郷はそう言いつつ、額に手を当てる。

 

「なるほど。確かに鈴々が狙いの可能性もあるか」

「う〜ん、でもなんで鈴々なのだ?」

 

 そう。なぜ鈴々なのか?

 

「単純に、華雄を討ち取られるのがその時はまずかったとか?」

「なわけないのです。あの猪がいなくても恋殿がいれば」

「ねね」

「うっ」

 

 だが、“討ち取られるのがまずかった”という意見自体には恋も反対だった。

 

「かゆう、あの時やられても、後ろは虎牢関」

 

 そう。華雄がやられても、あの虎牢関があったのだ。もしも、華雄がやられて困るというのであれば、華雄を引きずってでも虎牢関まで退かせれば良かったのだ。

 

 それに、時間稼ぎが目的だったのであれば虎牢関を恋たちと共に式神で守らせればよかったのだ。

 

「……考えれば考えるほどよくわからないな」

 

 何故、華雄が戦っているときだけ介入したのか? 何故、月たちを人質にしてまで洛陽にいたのか?

 

「……なんであの戦いに関わっていたんだろう?」

 

 思わずこぼれた北郷の問い。そこで恋が思い出した。

 

「……弱ってた」

「へ?」

「白装束、確か、弱ってた」

「弱ってた? それがなんで……」

「ん〜、あ〜っ!?」

 

 突然、ねねが素っ頓狂な声を上げる。

 

「な、何だよ」

「龍穴なのですっ! 洛陽は龍脈の点の一つなのですっ!」

 

 龍脈。それは大地に流れる気を龍に例えたことから生まれた言葉。そして、その気が溢れるポイントこそが龍穴だ。古くから、そこに住まう者は天下を制す、長く反映するなど様々な効果が得られたらしい。

 

「……つまり、白装束は回復するために洛陽にいた?」

「(コクッ)」

 

 ならば、洛陽を押さえたのは納得がいく。

 

「じゃあ、鈴々を狙った理由は……」

「……力試し?」

「なるほどね。自分がどれだけ回復したか確かめるためってことか」

 

 実際はどうなのかは分からないが、今はそう判断しておくべきだろう。

 

「という事は、鈴々を狙っていたわけじゃないって仮定して、じゃあこれからどうするか」

「なら、白装束の警戒は雪華と恋殿で行い、鈴々とお前で後方部隊に対処するのです」

「そうだね。それで行こう」

「応なのだっ! 頼んだのだ、恋、雪華っ!」

「ん……」

「う、うん!」

 

 ほかにいくつか話を詰め、方針が決まった一行は警戒しつつ移動を始める。

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 どのくらい時間が経ったのだろうか? 雪華は初の戦場に緊張が隠せなかった。

 

(……こわい)

 

 呼吸が浅くなる。喉が渇く。頭もぼんやりする。野党に襲われていた時も、山賊に捕まった時もこんなに怖かったことは無かった。

 

(なんで、なんでぇ……)

 

 分からない。どうしてここまで怖いのか。

 

(玄輝ぃ……)

 

 と、そこで気が付いた。

 

(玄輝が、いたから)

 

 玄輝なら絶対助けてくれる。玄輝なら大丈夫。だから安心できた。でも、玄輝はここにいない。

 

「はっ、はっ、はっ……」

 

 さっきよりも呼吸が浅くなる。だが、その背中を撫でる手があった。

 

「大丈夫……?」

「れん、おねぇちゃん」

 

 不思議と撫でられている背中が温かくなり、いつの間にかいつもの呼吸に戻っていた。

 

「恋お姉ちゃん、凄い……!」

「…………すごく、ない」

 

 無言で照れる恋。

 

「みんなが、教えてくれた」

「張々とかが?」

 

 頷きで返す恋。

 

「苦しい時は、一緒にいるのが一番」

 

 なるほど。恋らしい言葉である。

 

「……こわい?」

「え?」

「雪華は、戦場、こわい?」

 

 恋の問いかけ。それに雪華は少し考えてから首を振る。

 

「戦う場所は、怖くない。でも、玄輝が……」

「…………ん」

 

 今度は頭を撫でる。

 

「玄輝がいなくて、怖い」

「恋がいる」

 

 短くも力強い言葉。

 

「恋が、絶対に守る」

 

 彼女の言葉には、言霊が宿っているのだろう。時に恐怖に陥れ、時に味方を立ち上がらせ、時に守るべき者に安らぎを与える。そんな力がある。現に目の前の少女にもう恐怖はない。

 

「うんっ!」

「…………(ニコッ)」

 

 笑顔を交わしたところで、ねねがやってきた。

 

「恋殿っ! 後方に砂塵が見えたのですっ!」

「ん」

 

 表情が戦神のそれへと変わる。

 

「鈴々や、ご主人様は?」

「すでに準備をしているのですっ!」

「雪華、いこ」

「うんっ!」

 

 こうして、曹操軍との逃げるための戦いが始まった。

 

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はいどうもおはこんばんにゃにゃにゃちわ。作者の風猫です。

 

さて、ついに雪華が初陣を飾ることになりました。白装束の気配がする中、あの曹操軍との対峙。果たして無事に終わることができるのか、待て次回っ!

 

と、次回予告もしたことで最近の話をば。

 

最近はよくオリンピックの話題が出てきますが、正直作者としては”感染抑える気あるのか、国は”と正直呆れながらニュースを見ています。

 

散々国民には我慢させといて、一番感染が広がりそうなイベントを開く。しかも、医者が足りないだの、ボランティアに出た人には謝礼もほぼでないだの、穴だらけの中で開こうとしている。

 

考えて行動しているのかと、疑問しか出てきません。

 

で、こんな人たちのために税が使われるわ、投票しなきゃいけないわ……

 

正直、ばかげた話だとは自分でも思いますが、一回全員辞めさせて、大総選挙でもやったほうがいいんじゃないかって本気で思います。

 

さて、愚痴っぽいのはここまで。

 

皆さま、いよいよ、いよいよ6月が終わりますっ! 休みの無い月が終わるのですっ!

 

そして、7月は4連休!(後半ではありますが)楽しみで仕方ないっ!

 

……まぁ、あまり外には出れませんがね。それでも、休みの時間があるというのはいいものです。

 

何しようかなぁ……と未来の楽しみにしております。

 

未来というと、初音ミクのマジカルミライの開催がやっと告知されたんですよね。いや〜、不安でしたがひとまずはよかったです。

 

後は無事に開催されるかどうか。こればかりは祈るしかありませんが、少なくても作者は全身全霊で祈っています。

 

と、ちょっと長くなりましたが今回はここまで。

 

誤字脱字がありましたら、コメントにお願いします。

 

ではではっ!

説明
オリジナルキャラクターが蜀√に関わる話です。

大筋の話は本編とほぼ同じですが、そういったのがお嫌いな方はブラウザのバックボタンをお願いします。
































ちゃんとオリジナルの話もありますよ?(´・ω・)
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