江東の覇人 序
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川のせせらぎ・・・

 

 

虫の声・・・

 

 

それらを照らす・・・夜空の海に浮かぶ黄色い船・・・

 

 

それに合わせるかのように、数百匹の蛍が舞っている。

 

 

 

「綺麗だな・・・」

 

 

川辺で舞いを見つめている、赤子を背に、幼子を膝に、そして少女を隣においている男が呟く。

 

 

「うん・・・綺麗・・・・・・でも、何処か寂しい・・・」

 

 

男の呟きに、隣で頭を男の腕に預けている少女が囁いた。

 

 

「そうだなぁ・・・儚い光だなぁ・・・・・・雪蓮も、そんな事わかるようになったかぁ」

 

 

「もう・・・子供扱いしないで!私だって、今度戦に出るのよ?」

 

 

「出るっても、まだよちよちの時に母さんと一緒に出ただろう?」

 

 

「ちーがーう!今回は私も部隊を率いてでるの!剣を取って!」

 

 

駄々を捏ねるような少女に、男は微笑む。

 

 

だが、すぐにそれは、眩い月が輝く夜空へと向けられた。

 

 

「戦・・・か・・・・・・戦は・・・いつ終わるんだろうなぁ・・・」

 

 

「誰かが天下を統一したら・・・でしょ?そして、それを達成するのは我らが孫家!」

 

 

ぽんぽん・・・と、まだ幼い少女の頭を撫でる。

 

 

「お前にも・・・いつかわかる時が来るさ」

 

 

「?」

 

 

「にいさま〜、お腹へった〜」

 

 

膝で、体を男に預けている幼子が告げる。

 

 

「そうかそうか。蓮華はお腹減っちゃったか〜・・・もう、肌寒くなってきたしなあ・・・母さんも心配してるだろうし・・・そろそろ帰るかぁ」

 

 

「だー・・・」

 

 

「ん?シャオもお腹減ったのか〜?」

 

 

きゅるきゅる・・・と、可愛らしい音が背中の赤子から漏れる。

 

 

「うーあー・・・」

 

 

「わかったわかった。帰ろうな〜」

 

 

そう言い、男が立ち上がる。少女達も立ち上がり、ゆっくりと歩き出した。

 

 

「にいさま〜『いくさ』ってな〜に?」

 

 

「ん〜?戦ってのはな・・・人が、己の欲の為に、人を痛めつけちゃう事だよ」

 

 

「?」

 

 

イマイチわからないのか、幼子は首を傾げる。

 

 

「いつかわかる時が来る・・・いつか・・・な・・・・・・!?」

 

 

 

途端・・・男の表情が変わった。

 

 

 

「兄さん・・・?どうしたの・・・?」

 

 

少女が男の異変に気付く。

 

 

「いや・・・雪蓮、シャオを頼む」

 

 

と、背負っていた赤子を少女に託した。

 

 

「真っ直ぐ帰るんだぞ?いいな、雪蓮、蓮華?」

 

 

「は、はい」

 

 

「うん!」

 

 

「シャオもいいか?」

 

 

「あー」

 

 

「よし、行け。出来るだけ早くな。母さん心配してるだろうから」

 

 

「にいさまは?」

 

 

「ん?ちょっと用事出来たんだ。ごめんな?」

 

 

「はーい・・・早く帰ってきてね!今日は私と遊ぶんだから!」

 

 

「そうだな・・・約束は・・・・・・守らないとなぁ」

 

 

3人の頭をそれぞれ撫で、再び促す。

 

 

雪蓮と蓮華が手を繋ぎ、城までの帰路についた。

 

 

それを見届けると、男はそれとは逆方向に歩き出す。

 

 

「・・・・・・」

 

 

無言のまましばらく歩き、川辺の近くで立ち止まった。

 

 

 

 

「出て来い」

 

 

 

 

ただ一言・・・呟く。

 

 

瞬間、気配を消していた者達が、男の前に続々と現れた。

 

 

「気付いていたか・・・・・・」

 

 

「ったりめえだ・・・そんな殺気だだ漏れで気付かねえ筈がねぇだろ?」

 

 

そう言いながら、男は現状を確認する。

 

 

ざっと30人。しかもかなりの手練れ・・・すぐそこに来るまで、全く気付かなかった。

 

 

何処かの軍の暗殺者だろう。恐らくは、殆どが武将並の実力。

 

 

武器無しじゃあ・・・少しキツイか・・・・・・。

 

 

「んで、俺に何の用だ?」

 

 

「・・・・・・」

 

 

言葉にはせず、それぞれ武器を構える。暗殺に向いたものばかり・・・。

 

 

「おいおい・・・こんな田舎野郎殺したって何の得にもなんねぇぜ?」

 

 

「それは我らが主が決める事・・・死にゆく者に、これ以上の答えはいらんだろう?」

 

 

瞬間、不意を打ち、横から短い剣を振り下ろす暗殺者。

 

 

「しゃあねえ・・・」

 

 

それを寸前でかわし、相手の頭を掴む。

 

 

「っらぁ!!」

 

 

そして、その頭を近くの大木に叩きつけた。

 

 

ぐしゃりという気味の悪い音と共に、大木の半分が凹む。

 

 

当然ながら、叩きつけられた男は息絶えていた。

 

 

それをゆっくりと離し、改めて暗殺者達と対峙する。

 

 

 

「僭越ながら・・・江東の覇人、孫子威がお相手する」

 

 

 

殺気をぶちまけ、牽制。

 

 

その殺気に、経験豊かな暗殺者達もたじろいだ。

 

 

その姿に、口端を歪めながら男が叫ぶ。

 

 

「死にてえ奴はかかってこい・・・死にたくねえ奴はさっさと逃げな。俺の拳は・・・・・・手加減できねぇぜ!!!」

 

 

男が飛びかかり、江東の一角で、殺し合いが始まる。

 

 

 

 

その日以来・・・孫子威は・・・・・・家族に姿を見せる事はなかった。

 

 

 

 

誰もが死んだという。

 

 

孫家の英雄が、そう簡単に死ぬ筈などないのに。

 

 

少女達は生きているという。

 

 

自分達の兄が・・・そう簡単に死ぬ筈ないと信じて。

 

 

 

そして数年後・・・

 

 

 

孫子威の存在が歴史から薄れた頃・・・・・・

 

 

 

 

荊州に・・・・・・天の御遣いが舞い降りる。

 

 

 

 

説明
江東の覇人序章です。

初めての投稿なので、どうなるかわかりませんが…

よろしくお願いします。
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コメント
コメントありがとうございます!(アクシス)
影から見守っているとか。(ブックマン)
生まれ変わりとか?(キラ・リョウ)
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真・恋姫無双 恋姫無双 孫呉 江東の覇人 蓮聖 

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