英雄伝説〜灰の騎士の成り上がり~
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〜カレイジャス・ブリッジ〜

 

「――――――王国義勇兵団”白隼隊”。カシウス中将の発案によって結成された”この戦争限定のみ王国軍に所属する緊急臨時軍事部隊よ。”指揮官クラスは司令のリシャールおじさんと副官のカノーネお姉さんを除けば王国軍に所属している軍人達だけど、所属している一般兵達は元”特務兵”だったR&Aリサーチの所員達を除けば全員”民兵”――――――つまり、”王国の民間人よ。”」

「な――――――」

「何ですって!?」

「ええっ!?お、王国の”民兵”!?」

「”民兵”という事はあの部隊の大半の兵達は”王国の民間人”なんですか!?」

「しかもカシウスのオッサンの発案によるものだとっ!?」

「そ、そんな……幾らリベールを守る為とはいえ、どうしてカシウスさんはオズボーン宰相の”国家総動員法”のような事を……」

リシャール達が戦場に突撃している様子を映像端末の一部分で映している中、映像端末に映っているレンは意味ありげな笑みを浮かべながらリシャール達の事について説明し、レンの説明を聞いたその場にいる全員が血相を変えている中オリヴァルト皇子は絶句し、サラとエリオットは信じられない表情で声を上げ、ラウラは真剣な表情で声を上げ、アガットは厳しい表情で声を上げ、アネラスは信じられない表情で呟いた。

「うふふ、幾ら何でも”国家総動員法”と一緒にするのは間違っているわよ。”白隼隊”に所属している王国の民兵達はその名の通り”義勇兵”――――――あくまで”王国の民間人自身が白隼隊に所属する事を申し出て王国軍の訓練を受けで兵になった”のだから、”国家総動員法”みたいに”民間人を軍属にする事を強制していない”わよ。」

「”王国の民間人自身が白隼隊に所属する事を申し出て王国軍の訓練を受けで兵になった”って事は、白隼隊に所属している王国の民間人の人達はみんな、本当に白隼隊に所属する事を自分から申し出たの、レンちゃん!?」

レンの説明を聞いたティータは信じられない表情でレンに問いかけた。

 

「ええ、そう聞いているわ。」

「ちょっと待って!幾らリベールがエレボニアとの戦争勃発寸前の緊急事態で民間人自身の希望とはいえ、”自警団”ならともかく”戦争に参加する事を前提とした民間人による軍事部隊の結成”なんてアイナ達――――――リベールの遊撃士協会は絶対に黙っていないわ!アイナ達は何をしていたの!?それにオリビエ達に加勢するまでリベールで活動していたあたし達もそんな部隊の存在は聞いたこともないわよ!?」

「確かに少人数ならばともかく、あれ程の大人数の民兵を募集し、鍛え上げる為には国がその部隊の存在を公表する必要がある上”国家総動員法”で徴兵されたエレボニアの民兵達のように、軍人として育て上げる為の”期間”も必要だな……」

「そもそも、民間人を戦争に投入する部隊なんて大々的に募集したら、遊撃士協会(ギルド)が絶対黙っていないよね〜。リベールはエレボニアと違って、政府や軍もそうだけど、王家との関係も良好だし。」

ティータの疑問にレンが肯定するとシェラザードは厳しい表情で新たなる疑問を口にし、シェラザードの疑問を聞いたミュラーは複雑そうな表情で考え込み、ミリアムはミュラーとは別の推測をした。

「シェラザードお姉さん達が知らないのも無理ないわよ。”白隼隊”の結成は遊撃士協会に気づかれないように秘密裏に行われたのだから。――――――”カシウス中将の依頼――――――白隼隊の結成の知らせを王国の民達に知らせるという依頼を請けた民間調査会社――――――R&Aリサーチの所長や所員達”の手によってね。だから、当然リベールの遊撃士協会も”白隼隊”の存在は現在まで把握していないわよ。」

「あ、”R&Aリサーチの所長や所員達”という事は……!」

「大佐や”特務兵”の連中の仕業かよ!?」

「なるほどな……3年前のクーデターの件にしても、カシウスの旦那がいたからこそ遊撃士協会も事前に察知する事はできたが、そのカシウスの旦那が遊撃士協会から去った上クーデターの時と違い、今のリシャールの旦那達は”民間人”でもあるから、リベールの遊撃士協会がリシャールの旦那達の動きに気づけなかったのも仕方ないかもしれないな……」

「本来ならば私達遊撃士が”保護”すべき”民間人”という”盲点”を突かれてしまったという事ですか……」

「かつては”遊撃士”として活動していたカシウス卿だからこそ、遊撃士協会を出し抜ける”盲点”にも気づいていたのだろうな。」

「それらの件もあるが、エレボニアと違って今まで遊撃士協会に対して協力的なリベールが――――――それもかつては遊撃士だったカシウスさんが、そんな遊撃士協会の規定に触れる”策”を実行するなんてアイナ君達も想像もしなかったからというのもあるからだろうね。」

意味ありげな笑みを浮かべたレンの説明を聞いて白隼隊の結成に関わっている人物達が誰であるかを瞬時に察したアネラスは不安そうな表情で、アガットは怒りの表情でそれぞれ声を上げ、ジンとエレインは複雑そうな表情で呟き、アルゼイド子爵とオリヴァルト皇子は複雑そうな表情で推測を口にした。

 

「その……”大佐”や”特務兵”って一体何のことなんですか……?」

「話の内容から察するに3年前のリベールのクーデター事件が関係しているようですけど……」

「”特務兵”って言うのは3年前リベール王国軍内で結成された情報機関――――――”情報部”に所属している兵士達の事で、”大佐”は当時の”情報部”のトップだった人物―――――アラン・リシャール大佐の事よ。で、そのリシャール大佐達は”身喰らう蛇”の連中の仕業によって3年前”リベールの異変”が起こる半年前に国内で様々な暗躍をして”クーデター”を起こしたのよ。」

「結社が関わっていたという事は、もしかして”リベールの異変”とも関係があるの?」

エリオットとエマの疑問にサラが答えると、アリサは事情を一番知っていそうなシャロンに訊ねた。

「はい。3年前の”導力停止現象”を起こす原因となったリベール王国内に現れた”七の至宝(セプト=テリオン)”の一つである”空の至宝”――――――”輝く環(オーリオール)”の封印の一部を解く為ですわ。」

「前にも説明したと思うけど、当時エレボニア帝国の各地の遊撃士協会の支部が結社が雇った猟兵団によって爆破されてね……その猟兵団を叩き潰す為に来てくれた”助っ人”がカシウスさんなんだけど、結社が猟兵団にそんなことをさせた一番の目的はカシウスさんをリベールから離す事でクーデターを察知されて事前に潰させない為だったそうよ。――――――ちなみにだけど、当時ノーザンブリアへパパの墓参りをしていたあたしが知らせを聞いてエレボニアに帰国しようとした所をその女が邪魔してあたしがエレボニアに帰国する日を遅らせやがったのよ。」

シャロンの説明の後に更なる説明をしたサラはジト目でシャロンを睨み、その様子を見たその場にいる全員は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

 

「クスクス………――――――ちなみにだけど、”白隼隊”に志願して訓練を受けたリベールの民兵達にはみんな、ある”共通点”と”目的”があってね。彼らはその”共通点”と”目的”があるからこそ、”白隼隊”に志願して訓練を受けてリベールの”民兵”になったと言っても過言ではないわ。」

「”白隼隊に志願した民兵達の共通点と目的”だと?一体何なんだそれは。」

レンの説明のある部分が気になったクロウは眉を顰めて問い返した。

「あらあら、紅き翼の中でも貴方だけは”白隼隊の共通点と目的”もそうだけど、”白隼隊に志願した民兵達の気持ち”を察する事はできると思ったのだけどねぇ?――――――”帝国解放戦線”を結成した元帝国解放戦線リーダーだった”C”さん♪」

「何?」

「ぼ、僕達の中でクロウだけは察する事はできるって……」

「わざわざ”帝国解放戦線”や”C”の名前を出した事を考えると、恐らくその件と関係があるのだろうな。」

「遠回しな言い方は止めて、とっとと答えを言えやっ!」

小悪魔な笑みを浮かべたレンの指摘にクロウが再び眉を顰めている中、マキアスは不安そうな表情でクロウに視線を向け、ユーシスは真剣な表情で呟き、アッシュは厳しい表情で答えを促した。

 

「仕方ないわねぇ。――――――白隼隊に志願した民兵達の”共通点”は13年前の”百日戦役”で家族、恋人や伴侶、友人と言った親しい人達を亡くして”孤独”になって今まで生きて来た事よ。」

「ひゃ、”百日戦役で親しい人達を亡くして孤独になって生きて来た人達”って事は……」

「”百日戦役”でのエレボニア帝国軍によるリベール侵攻によってエレボニア帝国軍に殺された人達の”遺族”――――――”戦争被害者”か……」

レンの説明を聞いたその場にいる全員が血相を変えている中トワは辛そうな表情で呟き、アンゼリカは重々しい様子を纏って呟いた。

「”ただの戦争被害者”じゃないわよ。さっきも言ったように白隼隊に志願した民兵達は”百日戦役によって親しい人達を亡くした後、今もなお孤独に生きている人達よ。”百日戦役後結婚や新たなる出会い等で、”新たなる親しい人達を作って生きている百日戦役のリベールの戦争被害者達”に関してはR&Aリサーチの面々は”白隼隊”の結成の話すらしなかったらしいもの。――――――ここまで言えば、白隼隊の民兵達の”目的”はもうわかるでしょう?」

「”百日戦役で自分達の親しい人達の命を奪ったエレボニア帝国軍への復讐”ですか……」

「……だから、白隼隊の人達は”民兵”であるにも関わらず、画面越しでもわかる程の”殺気”を纏っているんだ。」

「そういえば”白隼隊”を率いる”将”と思われる人物は号令時に”リベールの怒りと悲しみをエレボニア帝国軍に叩き込め”と言っていたが……まさに言葉通りの意味だったのか……」

「なるほどね〜。”帝国解放戦線”を例に挙げたのは、白隼隊の民兵の人達も”帝国解放戦線”みたいに失うものがなく、悲しむ人達もいない”復讐の為なら自分は死んでもいい”と思っている人達ばかりだからなんだろうね〜。」

説明を終えたレンは意味ありげな笑みを浮かべて答えを促すとセドリックは辛そうな表情で答えを口にし、フィーとガイウスは辛そうな表情で映像端末に映るエレボニア帝国軍と戦う白隼隊の民兵達を見つめ、ミリアムは複雑そうな表情で推測を口にした。

 

「正解♪―――だから言ったでしょう?”鉄血宰相に大切なものを奪われ、その復讐の為ならば自分達の身がどうなってもいいという考えを持つ人達ばかりの帝国解放戦線”を結成した元帝国解放戦線リーダーだった”C”さんなら、白隼隊の民兵達の気持ちも察する事はできるでしょうって♪」

「……ッ!!ああ…………まるでかつての俺や帝国解放戦線の連中を見ているようで、白隼隊の民兵達の気持ちも自分が嫌になるくらいわかるぜ、クソッタレがッ!!」

「クロウ君……」

「……………………」

小悪魔な笑みを浮かべたレンに指摘されたクロウは両手の拳を強く握りしめ、唇を噛み締めた後怒りの表情で声を上げ、クロウの様子をトワは心配そうな表情で見つめ、アンゼリカは重々しい様子を纏って黙り込んだ。

「ハハ……リベール全土を見て回ったにも関わらず、私は何もわかっていなかったんだね……――――――”百日戦役が生んだリベールの怒りと悲しみ”を。」

「幾ら”全ての元凶”が関係していたとはいえ、白隼隊の民兵の方々のエレボニア帝国軍への憎悪も”大国としてのプライド”を守る為だけにリベールに対して”百日戦役”の”償い”をしなかったエレボニア帝国の怠慢さや傲慢さが生んだものなんでしょうね……」

「オリビエ………皇太子殿下……」

「……………………」

辛そうな表情で肩を落としたオリヴァルト皇子と悲しそうな表情で語るセドリックの様子をミュラーは辛そうな表情で見守り、アルゼイド子爵は重々しい様子を纏って目を伏せて黙り込み

「……量産した”オルグイユ”を王国軍本隊ではなく白隼隊――――――いえ、”特務兵”達に使わせているのは元々”オルグイユ”の操縦経験があるからかしら?」

重々しくなったその場の空気を変えるためにシェラザードは別の事をレンに訊ねた。

「またまた正解♪エレボニア帝国軍に対する憎しみによって士気が高い民兵達に量産されたエレボニア帝国軍の最新式戦車である”アハツェン”の2倍の火力を出せる戦車であるオルグイユ、かつては王国軍の中でも王国親衛隊に並ぶ精鋭だった”特務兵”。そしてそれらを率いて采配するのは”剣聖の後継者”たるリシャールおじさんなんだから、白隼隊が今のエレボニア帝国軍にとってはどれだけ恐ろしい部隊なのかは察する事ができるでしょう?」

「ええっ!?ア、”アハツェン”の2倍の火力!?白隼隊の人達が操縦しているリベールの新型の戦車と思われるあの戦車って、そんなに火力があるんですか!?」

「は、はい……ただ、当然既存の戦車と比べると相当なスペックがある事で動かす為には『アルセイユ』クラスの高出力なエンジンがないと動かせなかったのですが……」

「リベールはその『アルセイユ』を開発した国なんだから、当然”オルグイユ”とやらを動かす為の高出力なエンジンも新たに作る事も容易だったでしょうし、何よりも既に戦車自体を開発していたのだからあの”オルグイユ”とやらの戦車の量産も容易だったという訳ね。」

レンの説明を聞いて驚きの表情で声を上げたアリサの疑問にティータは複雑そうな表情で答え、セリーヌは呆れた表情で呟いた。

「白隼隊を率いるリシャールという人物は”剣聖の後継者”と仰っていましたが……まさか彼もエリゼのようにカシウス卿の弟子なんですか?」

「うん……カシウスさんの弟子はリシャールさんとエリゼちゃんを含めて他にもいるんだけど、リシャールさんがカシウスさんから直々に剣術の指導を受けたのだけど……その結果リシャールさんの剣術はカシウスさんに匹敵するようになった事に加えてカシウスさんのように戦術眼や情報戦に長けていた事から、百日戦役後遊撃士になったカシウスさんが一度軍を去る事ができたのは王国軍内に自分の後を継げる人物―――――つまり、リシャールさんがいたからなんだ……」

「馬鹿なっ!?あの”剣聖”に匹敵するだと!?」

「ちょ、ちょっと待ってください……!という事は白隼隊を率いているリシャールさんという方はカシウス中将の跡継ぎの人物なんですか……!?」

「ええ。他にもカシウスさんの剣術や戦術眼を受け継いだ人達もいるけど、”カシウス先生の全てを受け継いだ真の後継者”は大佐――――――リシャールさんと言っても過言ではないわ。」

ラウラの疑問に答えたアネラスの説明を聞いたユーシスと共に驚いたマキアスは信じられない表情で訊ね、マキアスの疑問にシェラザードは静かな表情で頷いて答えた。

 

「で、でも……どうしてあのカシウス中将が自分の”後継者”と認める程の人物がクーデターを……」

「結社が関わっていたって話なんだから、大方”暗示”の類でそいつが操られてクーデターを起こしたんじゃねぇのか?」

「確かにそれは間違ってはいないんだが……」「

「その……リシャールさんがクーデターを起こした理由は”リベールを愛する想いが強過ぎたから”というのもあるんです……」

トワの疑問に対して答えたクロウの推測を聞いたアガットとティータはそれぞれ複雑そうな表情を浮かべて答えた。

「”リベールを愛する想いが強過ぎたからクーデターを起こした”とは一体どういう事なんでしょうか?」

「彼がクーデターを起こした理由は輝く環(オーリオール)――――――つまり、”リベールが至宝を手に入れる事でリベールが再び百日戦役のような苦境に陥った際、奇跡を起こす為だったのさ。”」

「”至宝”……”リベールが再び苦境に陥った際に奇跡を起こす為”………――――――!も、もしかしてそのリシャールさんという方は……!」

「”至宝”をリベールが手にすることで、リベールが”百日戦役”のように”大国”から戦争を仕掛けられた際に至宝の力を使って撃退できると考えたからなのかしら?」

セドリックの疑問に答えたオリヴァルト皇子の説明を聞いて察しがついたエマは目を見開き、セリーヌは静かな表情で推測を口にした。

 

「ああ……勿論、リシャール殿にクーデターを起こす原因である”至宝”を手に入れたいという暗示をかけた結社の”蛇の使徒”――――――”教授”もクーデターの原因の一つではあるが、特務兵達――――――”情報部”の設立を始めとしてリベールに”力”をつけさせたいと強く思い続けていたリシャール殿の”焦り”もクーデターが起こった理由だ。」

「ちなみにリシャールの旦那がそこまでする程焦っていたのは、”百日戦役”でエレボニアを撃退したカシウスの旦那――――――リシャールの旦那からすれば、”奇跡を起こしたカシウスの旦那が軍を去った事”が一番の理由だ。」

「……つまり、彼がクーデターを起こした真の理由はリベールへの愛国心故(ゆえ)、か。」

「はい………」

「ハッ……確かにリベールとエレボニアの”差”を考えれば、普通はリベールがエレボニアを撃退できるなんて思わねぇだろうな。」

「そうね……それこそ人によっては”奇跡”を起こしたように見えるかもしれないわね、カシウス中将は……」

ミュラーとジンの説明を聞いて重々しい様子を纏って呟いたアルゼイド子爵の推測にアネラスは辛そうな表情で頷き、アッシュの言葉にエレインは複雑そうな表情を浮かべて同意した。

「―――――なるほど。確かにレン皇女殿下の仰る通り、”剣聖の後継者”たるリシャール様率いる”白隼隊”は大混乱している今のエレボニア帝国軍にとってはとてつもない脅威の相手になるでしょうね。」

「ん……”百日戦役”で大切な人達を奪われた事でエレボニア帝国軍に対する復讐心に満ちた王国の民兵達に加えて王国の親衛隊に匹敵する”特務兵”にアハツェンの倍の火力を出せる新型の戦車……そしてそれらを率いるのは”剣聖の後継者”――――――つまり、”剣聖”が精鋭部隊を率いてあの戦場で暴れまわるようなものだね。」

「しかもリベールを愛するリシャール殿自身が祖国を守る為に戦っているのだから、士気はリシャール殿も含めてとてつもなく高いだろうな。」

静かな表情で呟いたシャロンの推測にフィーは同意し、ラウラは重々しい様子を纏って呟いた。

 

「皮肉な話よね。”国家総動員法”を発令したエレボニアはヴァイスラント新生軍の存在の影響があったとはいえ上手くいかず、その”国家総動員法を発令したエレボニアに戦争を仕掛けられたリベールの方がエレボニアのように発令した訳でもないのに国民達自らの意志で国家総動員法を発令したも同然の状態になる”――――――まさに”リベールの民達が一丸となって、この戦争に挑んでいる”のだから。」

「そ、それは………」

「3年前のクーデターも含めてリベール王国の人達をそこまで追い詰めたのも元を正せば”百日戦役”――――――エレボニア帝国なのか……」

「くっ……どうすればエレボニアが戦争を望むようになったのは一部の愚か者達による謀略が原因で、殿下達や俺達のように戦争を望まず、エレボニアを正そうとするエレボニア帝国人達がいる事を彼らはわかってくれたんだ……!?」

「無駄よ。”侵略される側のリベール王国人”――――――ましてや”百日戦役”の件でエレボニアに対する復讐心に満ちた連中に”連中の復讐心が芽生える理由となった原因を作った元凶であるエレボニア帝国人であるアンタ達の言葉は絶対に届かないと思うわ。”」

「セリーヌ、それは……」

「どうして……どうして白隼隊の民兵の人達は幾ら復讐のためとはいえ、今まで平和に過ごしてきたのに、そんな自分の身を顧みない事ができるのよ……!」

「お嬢様……」

嘲笑を浮かべて語ったレンの指摘に反論できないエリオットは辛そうな表情を浮かべ、マキアスは暗い表情を浮かべながら顔を俯かせて呟き、悔しそうな表情を浮かべて身体を震わせるユーシスに指摘したセリーヌの指摘を聞いたエマは辛そうな表情を浮かべ、アリサは悲しそうな表情で声を上げ、アリサの様子をシャロンは心配そうな表情で見つめた。

「ま、”エレボニア帝国人”である貴方達だと白隼隊の民兵――――――いえ、”リベール王国人の気持ち”はわからないのも無理ないわよ。」

「”オレ達がエレボニア帝国人だから、リベール王国人の気持ちはわからない”とはどういう事なのだろうか?」

やれやれと言った様子で肩をすくめて呟いたレンの言葉が気になったガイウスは真剣な表情で訊ねた。

 

「エレボニアはゼムリア大陸全土でもトップクラスの”大国”で”搾取する側”にして”戦争”になれば、”勝者側”になる国。――――――対するリベールはエレボニアのような”大国”が”本気”になれば簡単に滅ぼされる”小国”かつ”搾取される側”で”敗者側”になる国。平民を虐げる貴族が”虐げられる側である平民の気持ちが理解していない”ように、”リベールのような小国を自分達の利益の為に搾取する側であるエレボニア人である貴方達が搾取される側――――――ましてや過去に起こった百日戦役(せんそう)でエレボニアに搾取され、大切な人達を奪われたリベール人の気持ち”なんてわからないって事よ。――――――それこそ、”長年エレボニアやカルバードに搾取されていた事でずっと独立を願い続けたたクロスベルの人々”の時のようにね。」

「……ッ!」

「……確かに今回の戦争を除けば、エレボニアは”国同士の戦争”に関しては負けたという話は聞いた事がないね……」

「メンフィルの登場や”剣聖”の反攻作戦によって帝国軍が大きな被害を受けた”百日戦役”すらも、戦争を仕掛けた件や百日戦役でエレボニアがリベールに与えた被害に対する謝罪や賠償もしない和解――――――それこそ、”大国”であるエレボニアが”小国”であるリベールをリベールの平和と引き換えに無理矢理黙らせたようなものだったな……」

「……ッ!無礼を承知で意見させて頂きますが、幾ら我が国が国力が他国と比べると秀でているとはいえ、他国を虐げるような国ではありませんっ!確かにオズボーン宰相が”宰相”に就いてからはオズボーン宰相の政策によって小国や自治州を取り込み、搾取してきましたが、それはあの男の”独裁”によるものです!”百日戦役”の件でリベールに対して心から罪悪感を抱いているアルノール皇家の方々もそうですがレーグニッツ知事やダヴィル大使のように良識あるエレボニアの政治家達はオズボーン宰相とは違います!」

「ユーシス……」

「つーか、この戦争でエレボニアの軍人達を殺しまくっている上、エレボニアの領土を奪い続けているテメェらメンフィルだけは他人(ひと)の事は言えねぇだろうが!」

レンの指摘に反論できないトワは辛そうな表情で唇を噛みしめて顔を俯かせ、アンゼリカとクロウは複雑そうな表情で呟き、真剣な表情でレンに反論するユーシスをマキアスは驚きの表情で見つめ、アッシュは怒りの表情でレンに反論した。

「失礼ね〜。その口ぶりだとアッシュお兄さんはメンフィルやパパ達の”過去”を知らないようだけど、レン達メンフィル――――――いえ、”闇夜の眷属”は元々”虐げられる側で弱者の立場”だったから、リベールのような”搾取された事がある弱者の立場の人々”の気持ちも理解しているわよ。―――さてと。どうやらエレボニア帝国軍の旗艦に動きがあるようだし、そろそろ”最終段階”の始まりかしらねぇ?」

「え…………」

「エレボニア帝国軍の旗艦の動き――――――学院長はこの状況で何をするつもりなの……!?」

アッシュの反論に対して小悪魔な笑みを浮かべて答えた後に意味ありげな笑みを浮かべたレンが口にした言葉を聞いたエマは呆け、サラは真剣な表情で声を上げた。すると映像端末はエレボニア帝国軍と戦っているリシャール達の様子から滞空しているガルガンチェア1号の様子へと変わった。

 

〜少し前・ガルガンチェア1号・ブリッジ〜

 

「――――――ダメです!指揮官クラスの将兵達が次々と討たれ続けている事で地上の指揮はほとんど機能していません!」

「空挺部隊の方も混乱が大きく、こちらの指示が届いている攻撃艇は全体の2割程です!」

「報告!先程まで連絡が取れていた第11、14、17の師団長達との連絡が師団長達の悲鳴と共に突然途絶えました!状況を考えると第11、14、17の師団長達も討たれた模様!」

「報告!第3、5、9空挺部隊との連絡が途絶えました!連絡が途絶える寸前に聞こえて来た悲鳴を考えると王国軍の空挺部隊に撃破された模様!」

「くっ………どうすればこの状況を変えられる……!?」

少し前、次々と通信士を務めている軍人達が報告する悲惨な戦況報告の内容を聞いたレリウス中佐は思わず近くにある机を殴った後頭を抱えた。

「……………………まだ連絡が取れる地上の指揮官達にこの艦付近の地上に移動し、迎撃態勢を取る指示を。」

「イエス・コマンダー!!」

一方重々しい様子を纏って黙り込んでいたヴァンダイク元帥は指示を出し、ヴァンダイク元帥の指示に答えた軍人達は新たな通信を始めた。

 

「元帥閣下、一体どこに向かうおつもりですか……!?」

指示をした後ブリッジから去ろうとするヴァンダイク元帥の様子に逸早く気づいたレリウス中佐はヴァンダイク元帥に問いかけた。

「レリウス中佐、今からこの艦の指揮は君に任せる。儂はこの混乱による隙を利用し、精鋭部隊を率いてハーケン門の突破を試みる。」

「!?お、お待ちください!幾ら何でも無謀過ぎます!それにわざわざ地上からの突破よりも、この艦で空からの突破を試みた方が成功率が高いと思われます!」

ヴァンダイク元帥がこれからやろうとしている事を知ったレリウス中佐は血相を変えて反論した。

「背後には連合軍と新生軍の戦艦達が待機している上、ハーケン門側も王国軍もそうじゃが、メンフィル軍の戦艦も新型のステルス装置でまだ姿を現していない可能性が十分にある事を考えるとむしろ、空からの突破の方が成功率は低くなる。そもそも、この艦がハーケン門へと向かい始めた時点で背後に待機している連合軍と新生軍の戦艦達がこの艦に対して攻撃を仕掛けてくるじゃろう。」

「そ、それは………!し、しかしそれならば、何故連合軍や新生軍の戦艦、それに王国軍の空挺部隊もそうですが、先程3隻のガルガンチェアを破壊した何らかの存在はこの艦に今まで攻撃を仕掛けてこなかったのですか……!?」

ヴァンダイク元帥の指摘を聞いて一瞬口ごもったレリウス中佐は新たな疑問を指摘した。

「それに関してはあくまで推測になるが、連合がこの艦に同乗している”二人の民間協力者”を把握していた為、この艦に対する攻撃を控えていたのじゃろう。」

「あ…………――――――でしたら、このまま1号機でハーケン門の突破を試みた方がいいのでは……!?」

ヴァンダイク元帥の説明を聞いてある二人の人物達を思い浮かべたレリウス中佐は呆けた後意見をした。

 

「いや、この艦もハーケン門に向かい始めればさすがの連合軍や新生軍も例えあの二人がこの艦に同乗している事実を把握していたとしても、この艦に攻撃を開始するじゃろう。”敵国に協力している二人の民間人の命”と”戦争の勝敗”を比べれば、どちらを優先するかは明白じゃ。―――それこそ、先程皇女殿下が宣言したように、”リベールに侵攻するエレボニア帝国軍は例外なく一切の容赦をしない”じゃろうからな。」

「そ、それは……………………――――――ならば、元帥閣下ではなく自分に精鋭部隊を率いさせてください!幾ら劣勢とはいえ、そのようなあまりにも成功率が低すぎる作戦を元帥閣下自らが行うべきではありません!」

静かに首を横に振って答えたヴァンダイク元帥の推測に対して反論できなかったレリウス中佐は辛そうな表情を浮かべたがすぐに表情を引き締めて新たなる反論をした。

「―――――レリウス中佐、君はまだ若い。このような”負け戦”で命を落としてはならん。死ぬべきは愚かな元部下を諫める事をせず、戦争の勝利の為に国民達を虐げ、皇族の方々の意思も無視した結果、多くの戦友達を死なせてしまい、祖国を後世に語られるであろう”歴史的大敗北”へと追いやった愚かで無能な指揮官であるこの儂じゃ。……儂とギリアスの愚かさによって皇女殿下のお言葉すらも無視した今のエレボニア帝国軍であろうとも”エレボニア帝国軍の総大将である儂の死を知れば戦意が折れて降伏の呼びかけに応じるじゃろう。”」

「げ、元帥閣下……まさか貴方は……ッ!」

寂しげな笑みを浮かべて答えたヴァンダイク元帥の話を聞いて既に”エレボニア帝国軍の敗戦”を悟り、”敗戦の責任を取る為やエレボニア帝国軍を降伏させる為”にヴァンダイク元帥自身が”死兵”になる事を察したレリウス中佐は悲痛そうな表情を浮かべてヴァンダイク元帥を見つめ

「―――――それではの。もし生きて皇太子殿下達にお会いする事があれば、皇太子殿下達もそうじゃがアルフィン皇女殿下にも儂の代わりに謝罪しておいてくれ。――――――皇太子殿下達の”勅命”に従わなかった事や”本物だと理解していたアルフィン皇女殿下を兵達の迷いを断つために偽物という偽りの情報を与え、エレボニア帝国軍にリベール侵攻を強要した儂が愚かであった事を。”」

そしてレリウス中佐に別れの言葉を告げたヴァンダイク元帥はブリッジから去って行った――――――

 

 

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実際、リシャールや特務兵が本気で暗躍したらリベールの遊撃士協会は気づく事はできなかったと思います。そもそもFCでクーデターを未然に防ぐ事ができたのも全てカシウスの先読みだった訳ですから……もしくはエステル陣営あたりなら気づく事はできたかもしれませんが、肝心のエステル達はエイドス達への協力でリベールを離れてましたので……

 

なお、次回リィン達の目的が判明し、Z組はそれを止める為に動き始める訳ですが、実はZ組を足止めするメンバーはリィンが宣言した時より増えている上ヴィータ達Z組に協力する元結社勢の足止めをするメンバーまでいます(ぇ)それが誰でどの勢力の人物なのかは次回である程度わかると思います。ちなみに追加メンバーや結社勢の足止めメンバーのほとんど……というかオリジナルキャラのチョウを除けば全員本来なら黎で初登場するキャラ達のフライング登場となりますので、誰がフライング登場するか察する事ができる人達がいるかもしれませんねww

 

それと次回はリィン達もそうですが大戦の”裏”で起こる戦いが判明し、その”裏の戦い”にはエステル達にエイドス達、セリカ達やジェダル達も登場させる予定です(豪華すぎて敵が哀れすぎるww)ちなみに実際の戦争関連は蚊帳の外と思われたロイド達特務支援課陣営も次の次の話で登場させる予定ですww

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ハーケン会戦〜王国義勇兵団「白隼隊」〜
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