M60 チリシャーマ
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説明
2022年5月完成

「過剰」や「欠落」を抱え込まぬ組織や兵器など(物語として)語るに値しない、演出する必要すらないのである。一体どこの誰がシャーマン戦車やB-29を主役に据えて物語を語ろうとするだろうか?―押井守

と押井守はいうものの、2010年代になってからシャーマンやT-34を主軸とした映画が公開され、また模型誌では繰り返しジム特集が組まれる昨今、この種の量産兵器というか主力兵器は予め喪われた「物語」を模型的に再構築するに当たりその自由度の高さ、そしてエース機に対するある種の照れから改めて評価されています(ガンダムはアムロがパイロットだけど、ジムくらいなら俺にも乗れんじゃね?という卑屈な親近感)
さて、私が初めて買った戦車模型は多くの人と同じようにタミヤのティーガーI戦車(当時新発売の極初期生産型)で、その後パンターや90式を作るのですが、長らくシャーマンは作りませんでした(今年はじめの地球防衛軍のM4A3E8が初めて)
それは単純に自分が模型として作るのはわかりやすい格好よさや強さを備えたドイツ戦車であり、スペックにもスタイルにも劣るアメリカ戦車は嫌いではないけど作りたいものリストには乗りませんでした
さらに言えば当時はシャーマンやP-40、F4Fは紹介文にもその汎用性は認められつつも「凡庸」と書かれていたことがその魅力を更に毀損していることが拍車をかけました
長じて私も就職して物の見方が変わったのと同時に、戦史研究も進み戦場によってはシャーマンはパンターにキルレシオで大幅に優越したりF4Fはゼロ戦に勝ち越していたりすることが判明し、個人的にも再評価するところがありました
結局のところシステムと生産力が勝敗を決めたという話に帰結するのですが、その勝利の中に個々の性能に劣る兵器に乗って戦場に赴かざるを得ない兵士の心情や、知略を巡らせてジャイアントキリングを達成する(総合キルレシオでも勝ち越す)、その構図の素晴らしさに気が付き、社会人として見習うべきは単純な強さではなくそっちだろうと気が付きました
そしてそれを支えるのはシャーマンなどの押井守が物語的な価値を認めない兵器なのだということも
その一方で他人と同じものはほしくない、差別化したいというマニア心も私の心に確かに存在し、かくして私はそのアンビバレントな欲求から大量生産された兵器のマイナー仕様(塗装含む)を好むようになったのです…

それで本題のM60チリシャーマンですが、これは
 1.アメリカで1941〜1945年に生産されたM4が
 2.イギリス・フランス軍等に供与され
 3.戦後それらを世界中からイスラエルがかき集め、61口径CN-75-50 75mmライフル砲装備のM50スーパーシャーマンに改造されて中東戦争を戦い抜き
 4.更に60mmHVMS砲仕様に改造されチリに売却、2003年に最後の車両が退役
という60年に渡る複雑な来歴を辿っています
他方運用期間が長いにも関わらず(ティーガーなんて4年程度だ)ただでさえマイナーな戦後シャーマン(有名なのはM4A3E8かイスラエルくらい)の転売に次ぐ転売を経た最後の姿なので知名度は膨大なシャーマンシリーズの中でもトップクラスに低いと思います
それでも砲塔前部と後部に追加ブロックが溶接されたM50はそれだけで十分ストレンジな姿ですが、そこからさらに60mm砲に換装されたためある種の奇形的進化をした動物のようにも見えるのでとても魅力的です
仮にアルゼンチン軍やボリビア軍が21世紀の戦場でM60と遭遇したら動く戦争博物館だとさぞや驚いたでしょう

そんなM60ですが資料や資材が集まってきたので製作を開始しましたが、まずはM60の仕様の確認から始めました
本体はドラゴンのM50で、これは同社のM4A4をベースとして砲塔や足回り等の部品を追加したキットで、M60はその来歴の来歴の複雑さから各種仕様がちゃんぽんになっており写真を見る限りM4A1やM4A3ベースの車両もあるようですが、ドラゴンがM4A4ベースなのでそれに合わせる形でM4A4車体を持つM60を作成することにしました
改造点は
・主砲:自家製3Dプリントパーツに置換
・エンジンデッキ:自家製3Dプリントパーツに置換、ついでに主砲トラベリングロックも追加
・排気管:プラ棒で本体を、真鍮板を曲げてカバーを作る
・後部荷物ラック:プラ板・プラ棒で新造。ジャンクパーツで荷物を適当に作る
・履帯:AFVクラブのT80履帯に置換
などですが、はっきり言ってこれらの改造よりもドラゴン製の本体をちゃんと組み立てる方に労力を費やししています
いっその事M4A1ベースの車両もいるのでタミヤのM51から車体を持ってくるほうが早いかもしれません
あとフィギュアは実際のチリ軍の写真を見るとヘルメットが現用米軍に似ていたのでバーリンデンの湾岸戦争仕様からそのまま乗車
戦車長はボディーアーマー着て拳銃を左胸に挿しているのでかなり殺意が高いと言えるでしょう
今回モデルにしたM4A4車体の車両として確実に存在していると言えるF-3823号車ですが、実車は緑一色の写真しなかったのでそのまま再現すると地味になりそうだったので微妙にトーンの違う緑二色の迷彩として模型的なアレンジを加えました
マーキング類は自作デカールです

単品の割にかなり苦労しましたが(タミヤのM4A3E8の5倍以上の労力かかってると思う)、こうやって60年の歴史を持つ姿を見るとこれはこれで語るに値する物語を持っているのではと思います
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コメント
コメントありがとうございます!私も砲身が違うだけだと思ってドラゴンのキットを買って調べて驚いたクチです。エンジンデッキを手作業で作るのは困難なので、例えばエンジンデッキそのままにしてイスラエルでの60mm砲試験仕様(妄想です)とかいっその事私の次の投稿作みたいに砲塔だけ展示とかどうでしょうか?シャーマンは自由です!(branz01)
チリ陸軍のM60!私も敢えて75mm→60mmに換装して小口径高速弾を積んだシャーマンを作ろうと思った事があるのですが、デカールは単体で発売されたのにコンバージョンキットすら無くて絶望しました。砲身だけならなんとか自作出来るかもと思ってましたがエンジンデッキこ違うんですね。どこは全く気付きませんでした。(模型狂い)
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