東倣現想境その6
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人間の数なんて興味無し。無数にいるんだから。

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  東倣現想境 〜 Phantom Petal.

向こう側を眺める妖怪による他愛も無い雑談

 

 

 

 

 

冷たい風の吹く季節も終り、今年は例年通りの春が来た。

霊峰の樹海にはこの季節最も活動的になる春風の妖怪が棲んでいる。

桜の花も見所となり、今年も花見をと彼女は屋敷を飛び出した。

 

そんな時である。

 

 

  件 「やあやあ、張り切ってるねぇ。 お出かけかい?」

 

 

芸能人妖怪の菫野件が現れた。

彼女は何やらおもしろい話でも持ってきたかのような顔で桜子を引き止めた。

 

 

  桜子 「何よ、私は急いでるの。 わかる?春なの桜なの私の季節なの。」

  件 「まあまあ。 落ち着くがよい。」

  桜子 「あー?」

 

  件 「神社に向かうんでしょ? 丁度良かったわー。」

  桜子 「何よ何よ。 もったいぶってないで教えなさいよ。」

  件 「いいじゃない、これから行くんだから自分で確かめれば。」

 

 

神社の桜も見所となっているだろうと屋敷を出たが、件の様子を見ると

また何か起こっているらしい。

何が起こっているのか、目の前の妖怪に聞いても教えてくれそうに無いので

少し急いで神社に向かうことにした。

 

−−−−−−−−−−

 

境界の神社。

何かと不思議な出来事が起こるこの神社は、桜子の中で桜の名所のひとつでもあった。

彼女の期待通り、境内の桜は満開で花見をするには最高の状態である。

 

一見すると、特に異変は無さそうに見えた。

 

 

  桜子 「う〜ん、いい桜だわ。 私の花見眼は衰えることを知らないのよ。」

  奏 「で、何か変わった事は見つかったのかい。」

  桜子 「ぱっと見だと何も無いけど・・・変よね。」

 

 

桜子は地面を見渡して不思議そうな顔をしている。

 

 

  桜子 「ほら、あの花びら桜のものじゃないわ。 ・・・紫陽花?」

  奏 「紫陽花なんて咲いてないし、まだそんな季節でもないだろうに。」

  桜子 「変よね。 あっ、あの黄色いのなんて向日葵だわ。」

 

 

一面の桜吹雪に混じって、季節外れの花びらがぽつぽつと舞っている。

花びらを拾ってみたが、作り物では無く確かに本物だ。

あらためて辺り一面と手元の花びらを見てみると、ある事に気が付いた。

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  桜子 「・・・変だわ。 これはただの花びらじゃない。」

  奏 「うむ、何かに似てるんだよねぇ。」

  桜子 「うん。 ・・・これは私の力に似てるのよ。」

 

 

彼女は桜吹雪を起こす能力を持っている。

しかし、その正体はただの桜吹雪では無く、花びらに乗せた小さな幽霊なのだ。

神社に現れた季節外れの花びらにも、幽霊こそいないものの同じ力を感じた。

 

 

  桜子 「この花びらの出所は幽霊みたいだけど・・・どう?」

  奏 「いんや、幽霊なんて見当たらないねぇ。」

 

  件 「どう? 何かおもしろい事でもわかったの?」

 

 

春風に乗って色々な花びらが境内に流れ込んでくる。

発生源は幽霊だという事くらいしかわかることは無かった。

 

 

  件 「どこかに幽霊付きのお花畑でもあるのかしらね。」

  桜子 「そんなお花畑・・・そういえば何かで見たような。」

  奏 「そんなに幽霊がいるなら、少しくらい出てきてくれても良いのにねぇ。」

 

−−−−−−−−−−

 

  桜子 「まあ、この神社絡みじゃ考えても無駄ね。」

  件 「よくわかんない事ばっか起こるしねー。」

 

しばらく花の舞う境内を眺めていると、他の妖怪達の姿も見え始めた。

満開の桜に加えて、季節外れの花吹雪。 さぞかし良いお酒が呑めるだろうと思った。

 

 

  奏 「ところで主よ。」

  桜子 「何よ。」

  奏 「今こそ主の力の見せ所では無いのかい? 宴会芸的に考えて。」

  桜子 「これだけ桜が咲いてるんだから別に無くても良いじゃない。

      どうしてもって言うのなら良いけど・・・あんたが桜吹雪になりたいなら。」

  奏 「なんと。」

 

  桜子 「・・・なんてね。 また今度また今度。」

 

 

 

 

 

また今度 〜 Next Tea Time.

説明
・オリキャラしかいない東方project系二次創作のようなものです。
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妄想

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