連載小説101?105
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メニューを眺める私達。

さて、何にしようか。

 

 

「楓、何がいい? 先に選びなよ」

「いいの? 済まないねえ」

 私は過去にも来た事があるから、メニューは大まかにだけど把握してる。

ここは楓に先に見てもらうのが一番だ。

「ふぅむ。多国籍な感じなんだね? どれにしようかな〜」

「加藤君は決まった?」

「いや、まだ。色々あるんだな。種類が多いと、かえって選びにくいよな」

 その意見はごもっともだ。私だって、最初は迷ったし。

「ま、なんでもいいけど、決まったら教えてね」

「うん」

「おーう」

 さて、私はどうしようかな。とりあえず水を一口飲んで…

「…」

 脇に置かれた『当店のこだわり』という小冊子を眺める事にした。

「?」

 前、こんなのあったっけ。ま、いいか。どれどれ。

「…」

 そこには、雰囲気作りに対するこだわりだけじゃなくて、

料理に対するこだわりもたくさん書いてあった。

「ほうほう」

 産地直送でコスト削減とか、契約農場で品質管理とか、色々…

今時、こういうのが大事なんだなぁ、としみじみ思うよ。

「えりか〜、私決まった〜」

「お、ホント? じゃあメニューを見せてくれ」

 どうやら、加藤君より楓が先に決めたらしい。

まぁ、それはどっちでもって感じで、先に決まった方にメニューを見せてもらう、

てだけの話だ。

「じゃ、私も選びますかな」

 どれどれ。

「ん?」

 あれ?

「あれ、メニューって、こんなに多かったっけか…」

「そうなの?」

 なんかおかしい。私の知ってるメニューと、なんか違う。

 

 

メニューが盛りだくさんになってるじゃん!

 

こりゃ、選ぶの難航するかも…

 

船室をイメージした店内だけにね。

 

〜つづく〜

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メニューを手に何を頼もうか選ぶ私。

でも、前に来た時より大幅にメニューが増えてて、さあ、何を頼もう。

 

 

「えっと…」

「ん、えりか、どうしたの?」

「だな。倉橋、顔が変わったけど、どうかしたのか? もしかして、

体調でも悪くなったか?」

 え? 体調不良?

「ううん、そういうのじゃないよ」

 まさか、体調不良を気遣ってもらえるなんて、意外だわ。

「ちょっとびっくりしただけだから」

 メニューの多さにね。

「んー、何にしようかな…悩むなぁ」

「これだけあればねー」

 とはいえ、楓も加藤君ももう決めたんだ、早く決めなくちゃ。

「ねえ、二人は何にしたの?」

「え、わたしの意見を?」

「気になるのか…俺は海賊ピザだけど」

 海賊ピザ? あぁ、これか。うげ、ボリューム多い!

「で、楓は?」

「私はイカスミリゾット」

 く、黒い!

「じゃあ私はそれ以外のにしようかな」

 えぇと…決めた!

「楓、決めたから呼び出しボタン押してくれる?」

「いいけど、早いね」

「ああ。びっくりしたぜ」

 私の即決、そんなに驚くポイント? 人にはそれぞれきっかけがあるっていうのに。

「二人の選んだメニューを聞いて、これにしようって決めたんだよ」

「ふむ。まぁ、それはそれとして、店員さんは呼んだから」

 お、指示通り。よい手際だ。

「じゃ、店員さんが来るのを待とうかね」

 

 

〜つづく〜

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なんとかメニューを決めた私。

店員さんを呼んで、さあ頼みましょう!

 

 

「えっと…海賊ピザと、イカスミパスタと、ドルチェリゾット、

後は生ハムサラダを。後は…」

 私は二人の顔を見て、

「ドリンクバー、どうする?」

「俺はどっちでもいいけど?」

「私も」

 ふむ。

「じゃあドリンクバー三人分」

「はい。では、メニューを確認させて頂きますね…」

 

              ********

 

 メニューの確認が終わって、店員さんが去って行く。

「ドリンクバー、頼んだんだな」

「うん。ま、そんな大した額でもないしね。さ、みんな好きに飲んでくれい」

「おう」

 私は荷物の番をする。楓と加藤君には、先に飲んでもらおう。

「じゃ、楓と加藤君、先に行って来てね。私は荷物番するから」

「悪いな」

「じゃ、行って来るね。あ、それか、えりかの分も持ってこようか?」

 ふうむ、私の分か。

「じゃあコーラ持って来て。海賊コーラ」

「海賊コーラ? 何それ」

 ふっふっふ、楓は知らなくても良いのだ。ふっふっふ。

「ま、行けば分かるから、よろしく」

「ういー」

「悪いな」

 はっはっは。なんて心のの広い女なんでしょ、私ってば。

「さて、何をどうしよう。このわずかな時間が暇なんだよな」

 経験上、楓はここで迷う。迷ったあげく、毎回同じものを頼む。それが楓。

「ふむ…」

 ま、こういう時はケータイを見るわけだけど。

「なんか面白いニュースでもないかな…」

 とケータイを開いてみるも、面白いニュースはない。

「ううむ…」

 さて、どうしようか。ちらり、とドリンクバーの辺りに視線を送った。

「あ、楓の奴!」

 視線の先では、楓が…楓が!

 

 

〜つづく〜

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暇を持て余してドリンクバーの辺りを見た私。

そこでは、楓が驚くべき行動に出ていた。

 

 

「楓! なんでジュースをミックスしてるのさ!」

 分からない。楓の行動が分からない。

「???」

 しかも、加藤君を連れて笑顔で戻って来る。

「お待たせ〜♪」

「い、いや、大して待ってないけど…」

 はい、と渡されたジュースはコーラ色をしてるけど、妙に濁ってる。

「??? 楓、これ、何?」

「何って、ご所望の品じゃが?」

 所望?

「海賊コーラ。よもや頼んだものを忘れたわけじゃないよね?」

「いや、忘れてないけど…これ、明らかに謎の液体じゃん」

「お、俺は悪くないからな? 俺は止めたんだから…」

 ほう、加藤君には要らない苦労をかけたのか。

「いやいや、説明不足の私が悪かったよ。楓、海賊コーラっていうのは…」

「ミックスコーラでしょ?」

 なんて間髪を入れない言葉。

「いや、そうなんだけど…作り方、見た?」

「作り方? ただミックスするとしかあそこにはなかったけど…」

「そんなのあったのか…」

 げ、見てなかったの? なんて事!

「じゃあ、これは?」

「んー、フィーリングで適当に…」

 て、適当って、そんな! なんて危険な!

「楓〜!」

「まぁまぁ」

「お、俺は止めたんだ! 俺は!」

 ぐぐぐ…私は拳を握りしめた。

「と、とりあえず、この謎のジュースには罪はないからね、飲まなきゃ…」

 飲まなきゃ次のジュースがいられない…

「っ!」

 ぐぐいっと! 飲み干してやる!

「!」

 こ、これは!

 

 

〜つづく〜

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謎のドリンクを飲んだ私。

その味たるや!

 

 

「っ! 〜〜〜っ!」

「ごくり。…どう?」

「ど、どうだ?」

 こ、これは…

「意外と美味しい!」

「え? 本当?」

「まじかよ…」

 見た目はコーラ+濁り気。でも、味はコーラベースのさわやか風味。

「これは意外。まさか意外と美味しいだなんて…」

「作った私も意外だったよ〜」

「作った本人も、て。それを言うのかよ…」

 でも、「意外と」てレベルなのも事実なんだけどね…

「一応、美味しそうな物を選んで混ぜたんだけどねー」

「そこ、自慢げに言わない」

 本当の海賊コーラはもうちょっと美味しいんだ。

「いや〜、結果よければ全てよし、じゃだめ?」

「上手くまとめようとしないでくれる〜?」

「いや、でもまぁ、激マズじゃなくて良かったよな」

 加藤君のフォローが、妙に心強い。

「ま、ちょっと変な飲み物だろうけど、一件落着って事で…いいじゃねえか」

「うーん…」

 私は軽く腕組みをしたけど、確かにそうかも。

「じゃ、意外と美味しかった事でお手打ちにするよ」

「ホント? やった〜!」

 楓の声は、お店中に響き渡った。

 

 

〜つづく〜

説明
第101回から第105回
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コメント
コメントありがとうございます。日常を描いていますから、平凡すぎても突飛すぎても良くないのですが、色々仕込んで行きますので、コレからもよろしくお願いします!(水希)
とりあえず、飲めるミックスジュースでよかった。さて次はどんなビックリが待ち構えてるのかな。(華詩)
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