真・恋姫†無双〜黒の御使いと鬼子の少女〜 112
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 道中、翠、たんぽぽ、華雄は連携をするためにもできるだけ行動を共にするようにしていた。

 

「んで、どうだった俺の隊の面々は?」

「ああ。すぐにでも連携できそうだ。驚いたよ。全員があれだけ馬の扱いに慣れている隊はそうそういないんじゃないか?」

「白蓮の白馬義従にも入れそうだった奴が主立って指導してくれてな」

 

 まぁ、黄仁の事なんだがね。

 

「なるほどな。あの名高い白馬義従候補がいたんなら納得だ」

「やっぱ有名なのか?」

「……私ですら聞いたことがあるぞ」

 

 若干呆れ気味な声色で華雄に言われる。

 

「んげ、マジか」

「少なくとも脅威にはなると思っていた諸侯は多かっただろうさ」

 

 確かに、間近で見ていてもすごいとは思っていたが、ここまでとは。

 

「魚の目には水見えずって奴かね」

「玄兄さま、それ何か微妙に違くない?」

「そうか?」

 

 なんて雑談をしているときにふとたんぽぽが華雄へ向けて問いを投げかける。

 

「そう言えば、華雄ってみんなに真名預けてないのなんで?」

「唐突だな?」

 

 とは口にしたものの、俺自身も気にはなっていた。

 

「でも、確かにそうだな。預けなかったのか?」

「……その価値が私にはないと思っているからな」

 

 そう言った華雄の顔に陰が差す。

 

「価値がない?」

「……敗戦の将であり、刃を向けた私がここの面々に預けられるわけがなかろう。そもそも、ここでこうして生きて、あまつさえ戦場に出してもらえているだけで十二分というものだ」

 

 ふむ、なるほど。言いたいことは分かる。分かるが、

 

「逆にそっちの方が嫌がられるんじゃないか?」

「…………」

「星から話を聞いたが、皆お前さんの事を信用してるぜ?」

「何?」

「白装束相手に時間を稼いでくれたんだろ。全力で」

 

 白装束が雪華を狙って城に攻め込んできた時の話だ。あの悟鬼とやらに馬鹿にされながらも決して諦めずに立ち向かい続けていたと。

 

「星は特にお前さんのその“芯”に感銘を受けたって言ってたぜ」

「そ、そうか……」

 

 気恥ずかしそうに顔を逸らす華雄。

 

「それに、こんな状況で手を貸すって言ってくれた人を邪険にする奴らじゃないのはもうわかってるだろう?」

「……まぁ、な」

「なら、そんなことを気にしていること自体が無駄ってやつだ。お前が預けてもいいと思うならさっさと預けちまったほうが楽だと思うぜ」

「……それなら、最初に預けるべきはお前だな」

「へ?」

 

 と思わず間抜けな声が出てしまった。

 

「な、何故?」

「何故も何もなかろう。お前があの時とどめを刺さなかったからここにいる。ならばお前にこそ預けるのが道理だろう」

 

 そ、そういうもんなのか。と思っていると翠たちも“あー分かる分かる”みたいなことを思ってそうな表情しているし。

 

 果たして最初にもらってもよいものかと思いはしたが、ここの面々においては気にしないだろうし、そもそもここで順番を気にするのも無粋だ。

 

「……んじゃ、そうさせてもらうよ」

「では」

 

 といって華雄は背を伸ばして真名を告げる。

 

「我が真名は蘭虎(らんこ)。この名、貴様に預けよう」

「確かに預かった。俺の名、御剣玄輝も預ける」

「感謝する」

 

 と、こうして華雄改め蘭虎と真名を交わすに至った。

 

「んじゃ、あたしの真名も預けるとするよ。翠だ」

「たんぽぽの真名はたんぽぽだよ! 改めてよろしくねっ!」

「ああ、こちらこそよろしく頼む」

 

 この場にいる面々と真名交換したところで、今後の事について話す。

 

「で、連携の話だが、我が隊がこの中においては毛色が違うのは問題だな」

「だな。遊撃向きではないよな」

「うむ。我が隊は突破する方が性に合っている」

「確かになぁ」

 

 蘭虎たちと戦ったときの事を思い出す。

 

「……うーん、雛里たちに聞いた方がいいかね?」

 

 それに、朱里から昨日文が届いて、城の管理の算段が付いたのでこちらに合流するとのことだった。彼女が来るまでそんなに時間はかからないだろう。

 

(……ただ、心配ではあるんだが)

 

 彼女も白装束襲撃の際にショックを受けていたのもあって、城に残ってもらったようなのだが……

 

(……ここで心配しても仕方がないだろう)

 

 あれこれ考えるのは彼女に会ってからでいい。それに北郷も出る前にケアをしたらしいし。

 

「だな。休憩の時にでも意見を聞いてみようぜ」

 

 翠に言われて俺を含めた3人は頷く。

 

「しかし、玄輝よ。この先に白装束の連中はいると思うか?」

 

 蘭虎に言われて顎に手を当てて考える。

 

「……紫苑さんの所みたいな戦いはないだろうが、化け物が一人控えてる可能性が高いといった感じだろうな」

「化け物か……」

「ああ。しかも手負いだ」

 

 純粋な力だけで考えるのであれば泥鬼には数段劣るだろうが、手負いという条件がある以上、何があるかは断言しきれない。

 

「まぁ、とは言ってもだ。そいつは俺が相手をするから、他の皆は白装束の事を考えなくてもいいとは思うがね」

「ふむ」

「でもでも、みちざね? とかいうのが出てきたりしたら?」

 

 たんぽぽの問いは分からないでもないが、

 

「可能性はないわけじゃないが、ほぼないだろうな」

 

 依代の件もある。わざわざ出張って来るとは思えん。目的があるとすれば俺か雪華だろうが、犬神をこっちに差し向けたり、悟鬼や泥鬼に襲わせることから鑑みれば大体推測は付く。

 

「多分だが、あいつは今自分で動ける状況じゃない。式神を使って力の消耗をできる限り抑えようとするほどに」

「ふーん……」

「つっても、所詮は俺の頭の中の話だがな」

 

 あれが本当に特別製だとすればありえない話ではない。

 

(にしたってないとは思うが)

 

 と頭で思っていたところで、休憩の伝令が伝わってくる。

 

「さて、じゃあ軍師たちに意見を仰ぐとしましょうか」

 

 こうして軍師たちに意見を仰ぎに行っている頃、事態はジワリと滲んでいくように悪い方に傾いていることをこの時の俺たちは知る由もない。

 

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「がっ、うぅ、ふぐぅううううう…………!!!」

「堪えてくださいませっ! 意識をしっかりとっ!」

「が、ぐぅうううううう!!!」

 

 寝台で苦し気にうめく女性は目を固く閉じ自身を塗り替えんとする何かに必死に抗っている。

 

「くそっ! まだ戻られないのかっ!」

「馬鹿言うなっ! まだ城を出て二日も経ってないんだぞっ! 黄忠様の城にたどり着くまでどれくらいかかると思ってんだっ!」

「しかしっ!」

「がぁああああああああああああああああっ!!!」

 

 ひときわ大きな声で女性の体が跳ねる。

 

「っ!!!」

 

 目を見開き苦しむ女性に何もできぬことを悔やむ兵たちだが、逆に言えばそれくらいしかできないのだ。

 

 二日前、突然飛んできた何かがぶつかった直後から苦しみだして以来、墨に落ちた紙のごとくどんどん悪化していったのだ。

 

「いったい、一体なんだというのだっ! 黒の御使いが、なんだというのだっ!!!」

 

 彼女が意識を失う直前「黒の御使い」とこぼした時から、城ではすぐに動いて黄忠の所へ出立した。しかし、それが善の鍵なのか悪の鍵なのか彼らも、出立した面々も知る由もない。

 

「あああああああああああああああああっ!!!!!!!」

 

 城に響く苦悶の叫び。それを聞きつつ彼らは祈るしかなかった。どうか、どうか善の鍵であってくれと。苦しんでいるあのお方を救う者であってくれと。ただそれだけを。

 

「ぎぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」

 

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「さて」

 

 軍師の面々とも相談をして、蘭虎の隊の位置を今回の戦においては鈴々と共に先陣において切り込みとして動いてもらうことになった。で、俺と翠、たんぽぽについては前後中とそれぞれ警戒をするという形で落ち着くことになった。

 

「…………」

 

 俺は周囲を警戒しつつ、久しぶりに合流した隊の面々と馬を進める。

 

「御剣様、現状異常はなさそうですね」

 

 黄仁が俺に近づいてそう報告する。

 

「馬超様、馬岱様の隊からも同じように連絡が来ております」

「ああ。分かった」

 

 と、返事をして黄仁の顔を見る。

 

「……あの、何かついていますか? 顔に」

「いんや、だいぶ隊長らしくなったなぁと」

「……まぁ、あなた様がいない間色々ありましたので」

 

 それもそうなのだが。

 

「ん〜、何というか、それじゃないんだよな。どこか“覚悟”のような、“芯”がよりはっきりしたというか……」

「……そう、ですね」

 

 黄仁はそう言って左肩に手を当てる。その表情には、どこか悲壮的な色が見えた気がした。

 

「……だ」

 

 “いじょうぶか”、と声にしようとしたところで顎下にチクリと痛みが走る。

 

「いてっ!」

 

 気を付けて視線を下に向ければ、

 

「……お前さぁ、せめて逆向きになってくれねぇか?」

「やっ!」

 

 むっすぅ! とした表情の雪華が子猿のように俺に抱き着いている。

 

「…………やっ」

「いや、さっき言ったよな?」

 

 どうにも帰ってきて来てからあんまり構えていなかったことにご立腹らしい。

 

(桃香の護衛に付くって自分から言ったときは成長したなぁ、と思ったが)

 

 どうにも複雑な感情だ。そう思いつつも頭を撫でると嬉しそうに頭をぐりぐり押し付けてくる。

 

(複雑だなぁ……)

 

 まぁ、寂しかったのだろうというのは容易に想像できるし、時間が取れてなかったのも事実。こればかりは仕方があるまい。

 

「……角には気を付けてくれよ」

「んっ!」

 

 と、短い返事を返してグリグリ続行。正直、角がちょっと痛い。

 

「……くくっ」

「おい、押し殺した笑いをこぼすな」

「失敬。しかし、それは酷というものですよ」

 

 黄仁の言葉に近くにいた隊員は一様に頷く。

 

「……はぁ」

 

 思わずため息が漏れるが、悪い気はしないのがなんとも言えなかった。

 

 と、その時ざわめきが前方から聞こえ始める。

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「……雪華」

「んっ!」

 

 さっきとは毛色の違う短い返事と共に雪華は素早く姿勢を反転させる。

 

「俺が下りた後、馬を頼む」

「分かったっ!」

 

 伝令が俺の元へ近づいてくる。

 

「伝令っ! 前方に敵影っ! 各々戦闘準備との事っ!」

「何っ!?」

 

 敵だと? こんな平原で?

 

「敵の旗はっ?」

「厳ですっ!」

「厳、ってことは……」

 

 確か、紫苑さんが言ってた厳顔?

 

「なんでこんなところで……?」

 

 いや、それを考えるのは後だ。

 

「黄仁っ!」

「はっ! 燕張っ! あと数人は御剣様と共にっ!」

 

 と、指示された隊員たちがすぐさま動く。

 

「…………」

 

 あまりの手際の良さに一瞬呆然とする。

 

「御剣様?」

「……ああ。すまん、頼んだっ!」

 

 俺は馬を雪華にまかせ、指示された隊員を連れて前線の様子を確認しに行く。前線にはたんぽぽ、鈴々、蘭虎がいるはずだ。

 

 と、俺が前線に付くと他の面々も集まっていた。

 

「桃香っ! 北郷っ!」

「あ、玄輝さん」

「どうなってる?」

「とりあえず、鈴々ちゃんが使いとして行ってくれたみたいだけど、そこからは」

「なるほど」

 

 戦闘の空気はまだないのか。

 

「しかし、何だってこんなところまで出張ってるんだ?」

「うむ、ちょうど我らもその話をしていたところです」

「城を出て野戦を仕掛ける理由がありませんからね」

「まぁ、野戦かどうかはまだはっきりしないがな」

 

 そう。わざわざ城を出て仕掛ける理由がないのだ。どう考えても籠城したほうが楽なのだ。

 

「いえ、仕掛けるのであれば一応理由は、あります……」

「雛里?」

「おそらくですが、民の声を制御することをしたくなかったのではないかと」

「民の声……?」

「はい。紫苑さんの城に入った時、民衆から歓迎されたのを覚えてますか?」

「……ああ、なるほど。そういう事か」

 

 腑に落ちた。要は民衆からの圧を避けるためか。

 

「まぁ、あの歓迎を戦闘中にされたたまったもんじゃないな」

 

 士気が上がるはずもない。

 

「それもあると思いますが、それだけではないでしょう」

 

 そう言って話に入ってきたのは紫苑さんだ。

 

「って言うと?」

「彼女は人望も人徳も厚い領主です。ですが、その前に戦と酒、それらを楽しむ生粋の武人なのです」

「つまり、城に籠るのは性に合わないってか?」

「端的に言えば」

 

 うーむ、分からなくはないが、と思ってると紫苑さんの顔が曇ってるのに気が付く。

 

「何か気がかりでも?」

「厳顔の傍には、常に魏延が控えていたのですがここにいないのが気になって」

「気になるほどに当たり前の事だったのか?」

「ええ。それはもう母娘と思えるほどにあの二人の絆は深いものです。その彼女かここにいないのが」

 

 いつもであれば戦略か何かと疑うが、大きな懸念が俺たちにはある。

 

「……まさか、白装束に?」

「……可能性は、高いと思います」

 

 状況から言えば、そう言わざるを得ない。と、思っているところへ伝令がやってきた。

 

「張飛様より伝令。敵将厳顔が御剣様に会いたいと言っているとのことです」

「俺に?」

 

 この言葉を聞いて周りを見渡す。

 

「……行くべきだろうな」

「頼める?」

「ああ」

 

 いよいよ可能性が高くなってきた。俺は気を引き締めて鈴々たちの元へ足を進める。

 

 彼女たちの元へ着くと、そこには薄めの青髪の女性がいた。

 

「玄兄ちゃん」

「鈴々、もしかしてこの人か」

「そうなのだ」

 

 確認を取れたところで他の面々よりも前に出る。

 

「お主が黒の御使いとやらか?」

「ああ。そう呼ばれている」

 

 “ふむ”と言ってから厳顔は名を名乗る。

 

「我が名は厳顔。この先の巴郡を治める者だ」

「で、そんな人物が何故俺を呼んだ?」

「単純な話よ。貴様を知りたいだけだ」

 

 そう言うが否や、厳顔は担いでいた武器を構えて、

 

「はあっ!」

 

 ぶっぱなした。

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「って、うぉおおおおおお!?」

 

 ぎりぎり回避はできたものの、その得物を見て思わずツッコんだ。

 

「それ時代錯誤にもほどがあるだろぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 なにそれっ!? パイルバンカーかっ!? いや、打ち出してるから厳密には違うかもしれないがっ!!! それどころじゃないっ!!!

 

「お、おま、おまぁああ!?」

「なんだなんだ。我が豪天砲をずいぶん恐れておるではないか」

「恐れるとかそんな話じゃねぇしっ!!!」

 

 完全にオーパーツじゃねぇかっ!

 

「しかし、あれを避けるとは。やるではないか」

 

 と言ってると両側から刃が厳顔に迫る。

 

「ぬっ!」

 

 それをしゃがんで避けて間合いを取る。

 

「いきなり何するのだっ!」

「貴様っ! 武人として恥はないのかっ!」

 

 鈴々と蘭虎が俺を庇う様に立ちはだかる。

 

「……あれが避けられぬのであればそれまでよ」

 

 そう言った彼女の顔に陰が差す。

 

「……一つ聞きたい。魏延とやらはどうした?」

「っ!」

「紫苑さんから付かず離れずの将がいると聞いた。彼女もこの場にいないのを気にしていたが……」

「……紫苑が真名を預けるか」

「色々あったんでね。で?」

「お主に教えてどうする?」

「……もし、そいつの身に何か起きているのであればその原因を知っている」

「っ!!!」

 

 驚きの表情を見せる厳顔。

 

「……なるほどの」

「それで、教えてもらえないか?」

「聞きたいのであれば」

 

 そう言って武器を構える。

 

「こいつで語ってもらおうか」

「いや、そんな時間は」

「ないだろうな。だが、お主が本当に信じられる存在かどうかはこいつでしか語れん」

 

 分からないでもないが……

 

「構えよ」

 

 だが、彼女の顔を見て悩むことこそが時間の無駄と考えを切り替える。

 

「……わかった」

 

 ならば、速攻で終わらせるしかない。刀を抜いて構える。

 

「ただ、覚悟はしてもらうぞ」

「っ!」

 

 その圧を感じたのか厳顔はさらに腰を落として力を籠める。

 

「……通り名は伊達ではないか」

「怖気づいたか?」

「ふっ! 抜かせぇっ!」

 

 厳顔はその言葉を言うな否や素早く狙いを定め引き金を引く。

 

 爆発音に近い発砲音が響き、音を超えた金属の塊が飛び出してくる。数秒もせず迫るそれの先端を刀に当てて軌道を逸らし、受け流す。

 

 ヂィインッ! という金属音が響いた後に轟音を響かせ地面に突き刺さる。

 

「ぬっ!?」

 

 驚きを見せるが、すぐに引き締めて連射する。

 

「ふっ!」

 

 それをさっきと同じようにすべて逸らす。4発撃ったところで弾が無くなったようで、下部に取り付けられた刃で斬りかかるために後ろの持ち手を掴んで間合いを詰めてくる。

 

「せりゃああああああああっ!」

「シィッ!」

 

 刃を受けつつ、腰の鞘を抜き喉元へ向けて突き出す。

 

「くっ!」

 

 それを首を横に回して寸での所で躱して、首の回転を全身に広げ勢いを乗せて斬撃を放つ。

 

 厳顔の斬撃を鞘の手首を返して防ぎ、刀で首を狙って振るう。対し、彼女は短い息と共に持ち手で防ぐ。しかし、勢いは殺せず間合いが開く。

 

「……お主、全力ではないな?」

「……なら、見せようか?」

「上等よっ! と言いたいところだが」

 

 彼女はそう言うと武器を下ろす。

 

「力量の差に気が付かぬほど耄碌はしとらんよ」

「そうか」

 

 厳顔の言葉を聞いて俺も刀を鞘に納めた。

 

「んで、信用してもらえたのかな?」

「うむ。貴様の剣に陰りはない。試すような真似をしたこと、切に詫びよう」

 

 言葉を言い終わると同時に彼女は頭を下げる。

 

「てことらしいから、二人もそろそろ刃を下ろさないか?」

「いくら何でもそんなにすぐに信用はできないのだ」

「鈴々の言う通りだ。先ほどの無礼はそうそう許されることではないぞ」

 

 まぁ、もっともではあるんだが。俺自身もかなり驚いたし。なんて思っていると厳顔は真剣な表情で口を開く。

 

「なれば、すべて終わった後で儂の首をくれてやる」

「“なに”“にゃっ”!?」

 

 この発言に驚く二人。

 

「だが、そのかわりこの件に関しては最後まで力を貸してほしい」

 

 彼女の目はただ真っすぐに俺たちを見ている。そこに曇りなど一点もない。それが分かったからこそ、二人も切っ先を下げた。

 

「なら、話だけは聞いてやるのだ」

「感謝するぞ、童」

「童じゃないのだっ! 鈴々は張飛なのだっ!」

「我が名は華雄だ」

「うむ、すまなんだ。張飛、華雄」

 

 とりあえず、簡素な自己紹介が済んだのを確認してから俺は彼女に問いかけた。

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「で、厳顔。さっきの様子から鑑みるに、魏延に何かあったってことでいいのか?」

「……ああ」

 

 厳顔は頷いてから話し始める。

 

「今から3日前、突然空から儂目掛けて何かが落ちてきよったのだ。魏延は落ちてくる物から儂を庇ってそれにぶつかったのだが、その時から意識が曖昧になるほどひどく苦しみだした。その中で“黒の御使いが”と呟いたのだ」

「……なるほど」

 

 嫌な予想が当たったようだ。

 

「順を追って話をしよう」

 

 俺は紫苑さんの所であったこと、そして、白装束がどんな存在なのかを彼女に話した。

 

「……てなわけだ」

「……聞くだけで胸糞悪くなる」

 

 “そんなやつらに魏延が苦しめられているのか”と彼女の表情は分かりやすいほど怒りに満ちていた。

 

「それで、お主は治すことはできるか?」

「それに関しては分からないのが現状だな。ただ取り付かれているだけ程度なら切り離せばいいだけだ」

 

 少し悩むそぶりは見せたものの、他に手がないと分かっている以上、彼女が出す決断は一つだった。

 

「……わかった。儂が城まで案内しよう」

「頼む」

 

 厳顔の話を聞いて、俺は蘭虎に話しかける。

 

「蘭虎、悪いが北郷たちに事情を説明しに行ってくれないか?」

「分かった。お前はどうする? 先行するか?」

「……そうだな。一刻を争うような状態ならできるだけ早く着ける方がいい」

 

 “構わないか?”と厳顔に聞けば肯定の返事が返ってくる。

 

「むしろ願ったりだ」

 

 こうして俺とついて来てくれた兵数名で厳顔の城へと先行する。そして駆けること3日、城へたどり着いた俺たちを待っていたのは異様な空気を放つ城だった。

 

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はいどうもおはこんばんにゃにゃにゃちわ。作者の風猫です。

 

つい先日ですが、ラウンジに恋姫無双という単語が見えたので覗いてみると、「今も活動しているクリエイターはいるかーっ!?(作者フィルター)」という感じだったのでたんぽぽ張りに「ここにいるぞっー!(作者フィルター)」と返してしまいました。

 

もし、このお話を読んでいる方でクリエイターの方がいたら書き込んでみてはいかがでしょうか?

 

さて、話は個人的なやつにいたしましょう。

 

いやぁ、ついに11月も終わり12月へ入りますねぇ……

 

早い……

 

この作品も来年11月で書き始めて10年目に入るという事実。

 

流石に完成させねばと気持ちを新たに頑張ろうと思った次第です。

 

……がんばろっ!

 

てなところでまた次回といたします。

 

皆さまも体調管理をお気をつけてください。ではでは。

説明
オリジナルキャラクターが蜀√に関わる話です。

大筋の話は本編とほぼ同じですが、そういったのがお嫌いな方はブラウザのバックボタンをお願いします。
































ちゃんとオリジナルの話もありますよ?(´・ω・)
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