連載小説106?110
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心優しい私は、楓の暴挙をお手打ちにしてあげた。

すると、楓は叫びだした。

 

 

「ちょっと。他のお客さんに迷惑でしょ?」

「だって〜。許してくれてありがトンだから!」

 ありがトンねぇ…

「て、はずかしいからやめて!」

「ちぇ」

 私はこういう所まで楓を指導せにゃならんの?

「私は保護者じゃないんだから…加藤君も何か言ってやってよ」

「え、俺? そうだなぁ…俺としては…もっとおとなしくしろ、てくらいか?

そもそも、俺はこいつの事よく知らねーし」

 え? あ、そうだった!

「えーと、もしかして…加藤君楓の事知らない?」

「知らないも何もなぁ…一応、うちのクラスに来てたから、姿は知ってるけど」

「がぼん。私ってその程度?」

 なんだろう、「その程度」て。どの程度なんだろう。

「ま、まぁ、私も紹介してなかったからねえ」

「じゃ、紹介してくれ」

 ふむ、言われてみれば、そうだな。というか、これだけ馴染んでおいて、

紹介がまだだって。どれだけゆるいんだ、うちら。

「えーと、楓は加藤君の紹介はいいよね?」

「うん」

 クラスメイトの私だってさっき知ったくらいだしねえ。

「じゃ、加藤君。楓を紹介するよ」

 という事で、私は楓を紹介する運びとなった。

 

 

〜つづく〜

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ふとしたきっかけで、楓を加藤君に紹介してなかった事に気付く私達。

今更の紹介。

 

 

「楓のフルネームは佐倉楓。私と同じ中学出身。後は楓自身でよろしく」

「おーけー。私はえりかの隣のクラスで、運動が好き。勉強が苦手。以上!」

「なんて手短かな。でも、一応紹介してもらったし、佐倉って呼ばせてもらおう」

 私も楓も、そういうのは気にしない。好きに呼べばいいや。

「じゃ、私も改めてよろしく」

「て言っても、そんなに新たな出会い、て感じでもないよねー」

 知り合ってもう何時間? 二時間は経つ。

「確かに」

「ま、それでもいいじゃん」

 と話が結論づいた所で、注文したメニューがやってきた。

「おおっ」

 美味しそうだ!

 

 

〜つづく〜

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運ばれて来たご飯を食べる私達。

なんだろう、つい会話がなくなっちゃう。

 

 

「もぐもぐもぐ…」

 気まずくはないんだけど、微妙な空気だなぁ。

「もぐもぐもぐ…」

 かといって、この状況じゃ話す事もないし…

「んー、美味しいなぁ」

「だねー」

「ああ」

 会話、終了。くっそおぉぉぉぉ!

「もぐもぐ…」

 もちろん、無理に会話しなくたっていいんだろうけど…

「もぐもぐ」

 だめだ! やっぱりこの空気、耐えられない!

「あ、私飲み物入れてくるよ」

 いたたまれない空気から逃げるように、グラスを三つ持って立ち上がる。

「あ、じゃあ俺コーラ」

「私ウーロン茶」

「おっけー」

 普通な感じ。普通な感じなんだ! なのになんでこんなにいたたまれない!

「…」

 ま、いいか。今は飲み物だ。私はすたすたとドリンクバーへ向かった。

 

 

〜つづく〜

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食べてる時は会話が少ない。

そんな当たり前の状態に耐えられなくて、私はドリンクバーへ向かった。

 

 

「えーっと…まずは二人のリクエストをこなさないと…」

 それぞれのリクエストした飲み物を入れると、今度は自分の分だ。

「何飲もうかな…」

 うーん、紅茶でも飲もうかな。紅茶を入れて、レモンを浮かべてっと。

「よし戻ろう」

 っとと、グラス三つは持ちにくいな。

「きゅ、給食当番で鍛えた腕、見せてやる!」

 えい! 気合い十分でグラスを持つ。

「ところでさあ、午後どこ行く?」

「このまま上がって行けばいいんじゃない?」

 え? この声って…

「みーちゃん?」

 多分、この声はみーちゃんだ。私はきょろきょろと辺りを探してみた。

「あ、やっぱりだ」

「ん? おやえりかじゃないの。久しぶりぃ!」

 そこにいたのは中学で一緒だった友達のみーちゃん。隣には、知らない女の子。

「こんなところで会うなんて奇遇だねー」

「ホントじゃのぅ。一人?」

 みーちゃん、たまに出る変な言葉遣い、相変わらずだなぁ。

「ううん、三人。楓と、クラスメイトと。みーちゃんこそ、その子は?」

「あぁ、高校でできた友達」

 ふむ、やっぱり。高校が別だから、そういう事だろうとは思ったけど。

「それにしても、楓もいるんだぁ。じゃ、挨拶してもよい?」

「いや、構わないけど、クラスメイトもいるよ?」

 加藤君について、勘ぐられると困るけど…どうかな。

「クラスメイトって、そのよそよそしさ、男の子?」

「一応。彼女持ちらしいから、そういう相手じゃないけどね」

 そもそも、楓といるわけだし。

「ふ〜ん。ま、その辺は先々どうなるか分からないよねえ」

「変な言い方はよして。て、お友達さんごめんね。みーちゃん取って」

「いえ、どうぞゆっくりしゃべってください」

 おお! さっき聴こえた時とは違う話し方だ…

「じゃ、テーブルに案内するよ」

「かたじけない。てわけで、ちょい待っててね」

 友達への通達は終わったわけだ。

「じゃ、コレ持ってくれる?」

「い、いいけど…相変わらずじゃのう」

 コップを一個みーちゃんに渡して、テーブルに戻る。

 楓も喜ぶなぁ。

 

 

〜つづく〜

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偶然 ばったり 中学時代の友達のみーちゃんと出会った。

せっかく楓といるわけだし、楓とも会わせよう。

 

 

「ね、そのクラスメイトって、イケメン?」

「うーん、よく分からん! 私あんまテレビ見ないじゃん?」

 やっぱ加藤君の事が気になるのか。

「世間のイケメンには疎いのじゃったね」

「まぁね。ていうか、彼女持ちなんだから関係ないって!」

 もちろん、彼女がいなくても対象外だけど…さて。

「お待たせー」

「おかえりー。って、なんでみーちゃんがいるの?」

「ん? そこの子、誰?」

「ほうほう。コレが例のクラスメイト…ていうか、楓、久しいのぅ」

 やっぱ、みーちゃんらしい。

「あ、加藤君にも紹介するよ。中学で一緒だったみーちゃん」

「どもー。みーちゃんっす」

「あぁ、どうも。加藤清隆です…」

 ん?

「加藤君、どうかしたの?」

 まさか、加藤君の彼女がみーちゃんとか!

「い、いや…なんていうか…俺、男一人で肩身狭いなぁ、て思ってな」

「それは仕方ない…」

 偶然ばったりは加藤君も同じだし。

「ほうほう。君は肩身が狭いんだね? じゃ、女装したまえ」

「ちょ! みーちゃん何を」

 面白い。面白いけど!

「みーちゃん、相変わらずだねぇ。発言が突拍子もない!」

「あっはっは、人間がそんな簡単に変わりませんて」

 あー、そういえばみーちゃんはこんなだっけ。言葉遣いだけじゃなくて。

「なあ、俺は女装したくないんだけど」

「いや、そんな個人意見、当たり前だから」

 加藤君、まじで気にしてる?

「気にしないでスルーしてよ」

「あ、あぁ」

 こんな所で悩まれてもこっちが困るわい。

「みーちゃんも変な事言わないで。楓も、悪ノリしないでよ?」

「へーい」

「へーい」

 この二人、こんなに波長が合ったっけ…

「加藤君ごめんね。まさかこんな悪ノリコンビになるとは思わなくて」

「いや、いいよ」

 ふう…

「ところでみーちゃん、友達待たせてていいの?」

「うーん、その辺は大丈夫。そういうのは理解し合えてる相手だから」

 そっか。私と木谷さんみたいな感じか?

「でも、あんまり待たせても悪いし、私呼んでくるわ」

「え? いいの?」

 すたすたとドリンクバー方面に消えて行くみーちゃん。

 

 

どうなる事やら。

 

 

〜つづく〜

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