2.ある家主とメイドの回想
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〜シラナミ〜

 

 

穏便な仕事というのも善し悪しだ……

妖精の国での経験からこちら、何度か思ったことをまた繰り返す。

 

あの人探しの合間、良い条件の交渉に一度戻ってきたわけだが。

家柄だけで評価しないのはまだマシな相手だったが

では理解しあうには酒の席、などと。古くさい!

ビジネスだぞ? 酒でしかわかりあえないのが無能なんだ!

この条件を捨てるのはと先方に合わせて呑んでやったが、まさか

あんなに呑ませられるとは……自分も呑むし……うわばみか?

仕事の話などしたか? 記憶があいまいだ……

 

だがしかし。僕はどうしても昨日のあいまいな記憶を思い出さなければならない。

宴席ののち、酔いざましに町を歩いた所から、もう記憶があいまいで、

今朝は自宅の僕の部屋のソファーで寝ていた。

 

その間に。

あの人と、会った……ような気がする。

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〜ミツノ〜

 

 

今朝はどうにも仕事にならない。

メイド長にも怒られてしまったわ。

「いくら昨夜残業させたからといって

 今日はきちんと遅番にしたんですからね、

 集中してもらわないと困るのよ!」

……今日も忙しいし、メイド長のお怒りももっともなのだけど。

 

昨夜。遅くに、町を歩いて帰ってこられたらしい

お酒の臭いしかしないシラナミさまをお迎えして

メイド長に介抱を言いつけられた。

使用人の男性が一緒に来てくれたのだけど

「床で寝てしまわれたとかで、運ぶとか

 着替えが必要になったりしたら呼んで下さい」

と、ドアの外で待機されて、

ふ、ふ、ふたりっきりに……!

 

お酒に酔ったシラナミさまは、臭いこそお酒!でらしたけど

ソファーにしなだれかかる力の抜けたお姿、上気した頬、

いつものきりりと切れ長の目と印象の違ううるんだ瞳……!

どうしても思い出しては仕事の手が止まる。

 

それにしても。

昨日のお言葉はなんだったのかしら……

 

----------

 

「み、みず……」

 

「はい! お水ですね

 あ、窓もあけますね、新鮮な空気で少しは……」

 

「まど……いえのなか……?

 ここどこなんだ……?」

 

「あの、お屋敷のお部屋です!

 無事にお戻りになれてようございました

 あっお水、こちらです、こぼされませんよう……」

 

「おやしき? どこのだ……

 ……きみはなんで僕にみずをくれる?」

 

「……え、ええと……メイドですし……」

 

「めいど? やさしいんだな!

 ……まてよぉ? きみのその眼……」

 

……そうだわ、そう言ってシラナミさま

私の顔を覗き込むようにされて、

あのうるんだ目でそんな見つめられて距離、距離が……!

 

「あの!あの! 近い近いです距離、

 あああ……こ、こまります……」

 

「こまるのか……? そうか……」

 

「え、あ、の個人的には困りませんけどその」

 

「だってその眼の色、にてるんだ……」

 

「何にでしょうか……?」

 

「……きみ、もしかしてだんごをつくれるか?」

 

「あ、はい。

 ですが、今の体調でお団子は召し上がらない方が……」

 

「……だんごが作れて、その色!

 みつけた! やっとみつけたぞ!」

 

シラナミさま、お酒に酔われると

子供みたいにしょんぼりしたり喜んだりされるのね……

と思っていたら、急にあらたまって、お手を差し出されたり。

 

「こうしてあいさつするのは、初めて、ですが!」

 

「いえあの、」

 

「あらためまして!シラナミです!」

 

「存じ上げておりますが……」

 

「もうかおなじみみたいなおへんじをくれるとは!」

 

「……どなたかと勘違いされておられます……?」

 

「かんちがい? そんなわけない

 やっとみつけた! やっとだ!」-

 

この時、私は気がついた。……と、思った。

シラナミさまが探し歩かれている何か、どなたか、

その方と会えたと思われているのではないかしら、と。

そして、その方を、シラナミさまは……

 

「すまない、こんな、さけによって会うなんて、

 なにから話したらいいのか、あたまも、まとまらない、

 僕はずっときみをさがしてたんだ、きみを、」

 

肩をつかまれて、また見つめられる。

焦点のさだまらない、でも必死な目線。

 

私はもう黙ってしまった。黙って、シラナミさまの

要領を得ないお話をただ聞いた。

世界じゅうをめぐり歩いたこと、手がかりが少なくて

ちゃんと探せているのかもわからず、それでも

諦めずに探して本当によかったと、会えたからと。

そう言われているようだった。多分。

 

そんなに想ってらっしゃる方が

世界のどこかにいらっしゃるんだ。

そう思ったら、人ちがいだからと止められなくなった。

だって、

 

「きちんとはなせてないのにこんなこと、

 言ってはまずいか、でもせっかく会えたんだ、

 僕はきみのことばがうれしくて、それで、その、

 

もしその方が本当に見つかって、想いを伝えられて、

お幸せになられて、

 

そうしたら。この目線を、万感の想いを、

私が受けることは万にひとつもないんだ。

そう思ったら、止められなかった。

 

肩をつかんだまま、シラナミさまがもう1歩こちらに……

と、思ったら、頭をおさえてよろよろとされて。

本当にお酒がまわってしまったのね。

 

「……危ないですシラナミさま。

 ソファーへどうぞ、倒れてしまいます。」

 

シラナミさまの勢いにあてられすぎていたことに気づく。

いけない、介抱のためにお側にきたんだから。

 

ソファーにどさりと倒れ込むようにされるシラナミさまは

とろんとした目をされていて。

このまま眠ってしまわれたら、きっと今夜のことは忘れて

明日からまた元気に探されるのね、……その方を。

 

「シラナミさま。

 きっといつか、ちゃんとした形でお会いになれます。

 あなたの幸せが叶うこと……願っております。」

 

そんなふうにお伝えして、シラナミさまは

そのあとすぐに眠ってしまわれたのだけど。

 

眠られる寸前、一瞬しっかり目をあけて

こう言われたのよね。

 

「……そうだったのか、ミツノ。」

って。

説明
【ネタバレ他】 DQXジューンプライドイベント
酒のシーンがあります。
シラナミがエルフのため人間年齢換算は不明ですが
仕事を持ち(成り上がり)財界の超新星と呼ばれるまでのひと財産を築いているため
飲酒で問題が ということはまず無い前提です。ご了承ください。

【その他】 数字は時系列 各ページ冒頭のキャラ名視点で進行します
お互いそうだと知る前のもだもだで何とかいちゃいちゃさせられないものか
という願望をどうにかしようと筆をとりました(言い方)。
・あるフレンドさんの誕生日時期記念作品

※pixivさんから引きあげて来ました
※少なくともtumblrさんにも同じ話が上がる予定です
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