英雄伝説〜灰の騎士の成り上がり〜
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ゼムリア歴1207年 3月22日――――――

 

リィン達が並行世界への移動を終えるとそこはクロスベル湖――――――エルム湖の上空であり、エルム湖の中央はリィン達の世界には無かった巨大な建造物が存在し、その周囲ではクロスベル警備隊・警察、更には数体の機甲兵や数機の飛行艇、更にはアルセイユらしき飛行艇が大多数の魔煌機兵相手に激戦を繰り広げていた。

 

〜レボリューション・ブリッジ〜

 

「おいおいおい……!これは一体どんな状況なんだよ!?」

「こちらの世界に到着した時点で、既にクロスベルで戦闘が発生しているとは聞いてはいましたが……」

「クロスベル警備隊もそうですが、警察の人達があんなにたくさんの機甲兵らしき人形兵器相手に戦闘を……!」

「そ、それに……エルム湖の中央に建っているあの巨大な建造物は一体何なの……!?」

複数の映像端末で現在のクロスベルの状況を確認したランディは厳しい表情で声を上げ、ノエルは不安そうな表情で呟き、ユウナは真剣な表情で声を上げ、エリィは不安そうな表情で映像端末に映る見覚えのない建造物を見つめて呟き

「ええっ!?あ、あの白い飛行艇って……!」

「”白き翼”――――――”アルセイユ”……!」

「あっ!山猫号もいるよ!」

「しかも山猫号まで戦っている事もそうだけど、山猫号がもう1機って事はもしかして……!」

「恐らくドルンさんとキールさんまで戦っているんだろうね。」

複数の映像端末の一部に映っているアルセイユらしき白い飛行艇を見つけたアリサは驚きの表情で、ラウラは真剣な表情でそれぞれ声を上げ、山猫号を見つけたミントは声を上げ、山猫号が2機いる事に驚いたエステルだったがすぐに察しがつき、その続きをヨシュアが口にした。

 

「って、おい!?あの赤い飛行艇は……!」

「結社の飛行艇!?」

「何で結社までクロスベルの人達と一緒に戦っているんだ……!?」

更に映像端末からクロスベルの人々や山猫号と共に戦闘をしている結社の飛行艇に気づいたアッシュとサラは信じられない表情で声を上げ、マキアスは困惑の表情で呟いた。するとその時クロスベルの敵勢力と戦っている機甲兵や飛行艇への攻撃が命中する瞬間結界らしき障壁が展開されて攻撃を防いだ。

「おいおい、あれはまさか……!」

「副長の”匣”による結界……!という事は……!」

結界に見覚えがあるケビンとリースは驚きの表情で呟き

「”天の車(メルカバ)”……という事はこっちの世界のクロスベルの戦いに星杯騎士団まで加勢しているようね。」

「弐号機どころか、参号機、伍号機、捌(はち)号機、玖号機、十壱号機まで加勢しているなんて……!」

「へえ……6機もの”天の車(メルカバ)”を加勢させるなんて、教会がそこまで大盤振る舞いする程、こっちの世界の僕達が戦っている敵勢力は相当ヤバイ相手のようだね。」

映像端末に映る6機の”天の車(メルカバ)”を見つけたセリーヌは真剣な表情で推測を口にし、1機だけでなく6機もの”天の車(メルカバ)”が出撃している事にルフィナは信じられない表情で呟き、ワジは目を丸くした後真剣な表情で推測を口にした。

「何体かの機甲兵はクロスベル側として戦っているようだけど、一体どの勢力の機甲兵なんだろうね〜。」

「あれは……!第U分校所属の機甲兵だ……!それによく見たらトールズ本校所属の機甲兵もいるじゃないか……!?」

映像端末の一部に映るクロスベル側として戦っている機甲兵が気になっていたミリアムの疑問に”リィン”が驚きの表情で声を上げ

「第Uの連中が戦っているっつー事は当然、後輩共――――――新Z組の連中も戦っている可能性は高いな。」

「それにアリサ達――――――旧Z組もどこかで戦っているかもしれないね〜。」

”リィン”に続くように”クロウ”と”ミリアム”もそれぞれ真剣な表情で推測を口にした。

 

「彼らが戦っている機甲兵らしき機体。あれは確かラインフォルトと黒の工房の共同で開発していらっしゃった機体ですわよね?」

「ああ……彼らが戦っている機体は僕達の世界でラインフォルトグループと黒の工房の共同で開発し、エレボニア帝国軍に渡す予定だったけどリィン君達に本拠地を爆破された事でほぼ全てを失ってしまった”魔煌機兵”だ……!」

「……なるほど。道理で一部の機体はガルガンチェアで戦いましたから、わたし達にとっても見覚えがある訳ですね。」

「それよりもクロスベルに一体何があって、こんな状況になったのか……俺達にも教えてくれるんだよな、キーア。」

「うん。――――――”エリュシオン”。”碧の大樹”と”巨イナル黄昏”、この二つの出来事によって誕生した事が今回の件の創(はじ)まりになるんだ――――――」

映像端末に映る敵勢力の機体が気になっていたシャロンの確認にジョルジュは頷いて答え、ジョルジュの説明を聞いたティオは真剣な表情で呟き、ロイドは真剣な表情で”零の至宝”キーアに視線を向けて訊ね、訊ねられた”零の至宝”キーアは説明をし始めた。

 

 

”エリュシオン”。それはゼムリア大陸全土に存在する霊脈と現代で大陸各地に張り巡らされつつある導力ネット、この2つがクロスベルで出現した”碧の大樹”と帝国で発生した”巨イナル黄昏”、至宝の力で発生したこの異変で霊脈が急激に活性化したために誕生した機械知性であった。

 

誕生したエリュシオンはノックス拘置所に幽閉されていた”クロスベル動乱”の黒幕――――――イアン・グリムウッドにコンタクトした。イアンとの会話はエリュシオンは歴史、学問、技術と多岐に及び、目的もなくひたすら情報を集めているようであった。

 

そんなエリュシオンの存在は導力革命を起こしたエプスタイン博士の提唱した技術的特異点――――――正にそれであった。

 

更にエリュシオンには驚異的な計算能力があり、大陸全土の端末のリソースを利用して行う並列計算、それを用いることでエリュシオンは限定式収束未来演算、つまりは限定的な条件下での未来予測さえも可能としていた。

 

エリュシオンはイアンとの会話を通じて人間の思考パターンと感情を元に、擬似管理人格を形成し、イアンはその管理人格を『ラピス』と名付けた。そして、ラピスの存在によってエリュシオンは主体性を獲得し、自らの性質を観測と演算と規定した。

 

積極的に人間社会へ干渉せず、あくまで観測による人間のサポート……それによって人類の敵という最悪の可能性を回避することができた。ラピスがいる限り、エリュシオンは安全だとイアンは確信した。漠然とした不安を抱えながらも。

 

だが、イアンの不安は的中してしまった。それはエリュシオンが読み取り、完全に複製してしまった『ある可能性の存在』――――――イシュメルガに取りつかれたリィン・シュバルツァーがイシュメルガと融け合い、混ざり合いながら永遠に繰り返される『無限相克』の果てに行きついた存在――『イシュメルガ=リィン』によって、エリュシオンは乗っ取られてしまった。

 

エリュシオンを乗っ取ったイシュメルガ=リィンは本来の管理者であるラピスの排除をしようとし、幸運にも難を逃れたラピスは未来演算で見つけた、後に現れる”C”を名乗る人間――――――ルーファス・アルバレアに自身を託すことにした。

 

そして記憶を失いながらもルーファスと出会ったラピスはルーファスや記憶を失ってルーファスの元に届けた元殺し屋で、所属していた組織から逃亡t中だった少年と少女――――――スウィン・アーベルとナーディア・レインと出会い、イシュメルガ=リィンが複製し、クロスベルを支配した偽物のルーファス・アルバレアも関係しているオリヴァルト皇子夫妻誘拐事件も関わっている帝都での騒動に関わった後、本物のルーファスの手配によってルーファス達とクロスベルに潜入した。

 

様々な経験を得てようやく記憶を取り戻したラピスはエステルを始めとした”空の至宝(オーリオール)”による”動力停止現象”を解決する為にリベル=アークに突入したリベールの遊撃士達、特務支援課、そして新旧Z組、更にはそれぞれの”協力者達”の助力を得てイシュメルガ=リィンに乗っ取られたエリュシオンの奪還を試み、その為に現在イシュメルガ=リィンに乗っ取られたエリュシオンによって建造された巨大な建造物にしてジュノー海上要塞を容易く消滅させる程の凄まじいエネルギーを超長距離を放つ事ができる兵器――――――”逆しまのバベル”を攻略中である事を説明した。

 

 

「”技術的特異点”………まさか、それが二つの”奇蹟”の存在によって誕生するなんて……!」

「それも”未来を演算できる機械知性”って、滅茶苦茶過ぎるよ〜!?」

「それに”碧の大樹”と”巨イナル黄昏”が原因で誕生したという事は、私達の世界でもエリュシオンが誕生する可能性は十分に考えられるという事にもなりますね……」

「そんでこっちの世界のような大事件を発生させるとか、マジで勘弁してほしいぜ……」

「しかも未来演算によって自分の行動等による予測もできるでしょうから、相当に厄介な事件になるでしょうね。」

事情を聞き終えたセティとシャマーラは信じられない表情で声を上げ、ある事に気づいたエリナは複雑そうな表情で呟き、レクターは疲れた表情で呟き、クレアは厳しい表情で推測を口にした。

「そ、その話も滅茶苦茶驚いたけど………」

「まさかあのルーファスさんが”エリュシオン”とやらに関連する事件の解決の為にこちらの世界のオレ達と共闘関係なっている話にも驚いたな。」

「”黄昏”後って事は当然わたし達と戦って敗北した後って事にもなるから、一体何を考えてるんだろうね、ユーシスのお兄さんは。」

「兄上………」

「……………」

「お兄様………」

ある事が気になっているエリオットとガイウス、フィーは戸惑いの表情でそれぞれ呟いた後複雑そうな表情を浮かべているユーシスに視線を向け、目を伏せて黙り込んでいるリィンに気づいたセレーネは心配そうな表情でリィンを見つめ

「それにしても”オリヴァルト皇子夫妻”という事は、こちらの世界のお兄様は既に結婚されているという事ですわよね……!?こちらの世界のお兄様と結ばれた女性はわたくし達の世界のお兄様と結婚される女性の最有力候補という事にもなりますわよね?お相手は一体どなたなのでしょう……?」

「姫様………時と場所を考えて発言してください。」

「ア、アルフィン。今は”そこ”を気にしている場合じゃないよ。まあ、正直な所僕も気になっているけど……」

興味ありげな表情で呟いたアルフィンの疑問を聞いたその場にいる多くの者達が冷や汗をかいて脱力している中エリスが呆れた表情で指摘し、セドリックは困った表情で指摘した後苦笑を浮かべた。

 

「そ、そんなことよりもそのエリュシオン?っていうのが読み取って複製した『イシュメルガ=リィン』って……」

「俺達の方のリィンも、並行世界の連中が救ってくれなければ、そうなっていたかもしれねぇって事かよ……」

「……ッ!」

一方ある事に気づいた”ミリアム”と”クロウ”は複雑そうな表情で”リィン”に視線を向け、”リィン”は唇を噛みしめた後ブリッジから走り去り

「リィン!?どこに行くつもりだ……!?」

ブリッジから走り去る”リィン”の行動を目にしたその場にいる全員が驚いている中ラウラは声をかけたが、”リィン”は無視して走り去り、リィン達も急いで”リィン”の後を追った。

 

〜格納庫〜

 

「今みんなが戦っているんだ!頼む――――――俺を中に入れて、俺と戦ってくれ、ヴァリマール!」

「並行世界とはいえ、”相棒”であるリィンの頼みには応じたい所ではあるのだが………すまぬ。我もお主を我の核(ケルン)の中に入れようと試みたが、不可能だ。」

「そんな……!同じ存在なのに、どうして……!」

自分の頼みに対して残念そうな様子で答えたヴァリマールの答えを聞いた”リィン”は悔しそうな表情を浮かべた。

「リィン………」

「同一存在とはいえ、私達の世界のリィンさんとこちらの世界のリィンさんが経験した”因果”は相当異なりますから、その関係で騎神に並行世界の同一存在の起動者(ライザー)を乗せる事は不可能なのかもしれませんね……」

「そうなると……俺達の世界の時と違って、”相克”でヴァリマールに負けていない事もそうだがヴァリマールの眷属になっていない並行世界の俺と俺自身が経験した因果も異なるから、当然、俺の方も無理か、オルディーネ。」

「うむ、残念ながらそのようだ。」

”リィン”の様子を”ミリアム”は心配そうな表情で見つめ、エマは複雑そうな表情で推測し、エマの推測を聞いた”クロウ”は疲れた表情でオルディーネに確認し、確認されたオルディーネは”クロウ”を乗せられない事を肯定した。

 

「くっ………!だったら、せめて機甲兵を貸してくれ……!そちらの世界もそうだが、そちらの俺にとっての祖国――――――メンフィル帝国にとっては関係ない戦いだから、本来は俺達に機甲兵を貸す筋合いもないと理解しているが………――――――頼む!」

「それを理解しているなら、ヴァリマールに声をかける前に俺に許可を取って欲しかったんだが………仮に機甲兵の貸し出しの許可を俺が出したとして、どうやって戦うつもりだ?どうやらこちらの世界の機甲兵は空中戦が可能になっているようだが………俺達の世界の機甲兵は空中戦を行う事は不可能――――――というよりも、騎神達のように空を飛ぶ機能もないが。」

唇を噛みしめた”リィン”は周囲を見回し、騎神達と共に待機状態になっている機甲兵達を見つけるとリィンを見つめて頭を下げて嘆願したが、対するリィンは呆れた表情で呟いた後真剣な表情で”リィン”にある指摘をした。

「え………それじゃあ、そちらの世界は機甲兵を飛行可能にする”ブースター”の開発はまだされていないのか……!?」

「”ブースター”はZCF(ツァイト中央工房)との共同開発でできた部品で、それも内戦の1年後に完成したものだから、内戦から僅か数週間後に”巨イナル黄昏”が始まった上リベールとも戦争勃発寸前の状態になったんだから、そっちのリィン達の世界じゃまだ試作品どころか設計図すらもできていないと思うよ〜。」

「あ………」

リィンの話を聞いて驚いている”リィン”に”ミリアム”が複雑そうな表情で推測を指摘し、”ミリアム”の推測を聞いた”リィン”は呆けた声を出した。

「……レン皇女殿下。先程の零の御子殿の説明にあった現在クロスベルの解放の為にクロスベルに協力している”アルセイユU”――――――こちらの世界のオリヴァルト殿下達に音声のみの通信でこう伝えてくれませんか。『”全ての元凶”を滅ぼす為に犠牲になったが、奇跡的に助かった3人のトールズの出身者達を今から転位でそちらの甲板に送り届ける』、と。」

「へえ?こちらの正体を隠して並行世界のリィンお兄さん達をオリビエお兄さん達の元に送り届けるという事は、こちらの世界のクロスベル解放の為の戦いに加わらず、さっさとレン達の世界に帰還するつもりのようね。」

少しの間考えたリィンはレンに視線を向けてある要請をし、リィンの要請を聞いてリィンの考えを悟ったレンは意味ありげな表情を浮かべてリィンに確認し、レンの推測を聞いたその場にいる全員は血相を変えた。

 

「ちょ、ちょっと、リィン君!?まさかとは思うけど……!」

「今起こっているクロスベルの戦いを無視して、あたし達の世界に帰還するつもりなの!?」

我に返ったエステルは信じられない表情で、サラは厳しい表情でリィンに問いかけ

「事前に乗船嘆願の申請をしたエステル達もだが、俺達に内密でレボリューションに同行できるようにレン皇女殿下達に交渉した教官達も事前に説明されているはずです。――――――こちらの世界の戦闘に参加するのは、あくまで”巻き込まれた時”のみ――――――つまり、”正当防衛”の為です。こちらの世界にとって”部外者”である俺達には本来こちらの世界で今起こっている戦いに参加する”資格”がなく、こちらの世界の事はこちらの世界の人々に任せる事が”筋”で、俺達はどちらにも肩入れする事なくこの世界の人々に俺達の存在を気づかれる事なく元の世界に帰還すべきです。俺達の目的はあくまで俺達の世界に迷い込んだ”この世界のリィン・シュバルツァー達を元の世界であるこの世界に送り届ける事”なのですから。」

「正論ね。本来この世界にとって並行世界の存在に当たるアタシ達はアタシ達の存在によってこの世界に何らかの改変をしてしまう事は、”世界の理”から外れた行動になる事でこの世界に何らかの悪影響を及ぼす事も十分に考えられるからね。」

「それに彼はこの船の運用を任された責任者としても、皆を無事に元の世界に帰す”義務”もあるのですから、こちらの世界の両勢力にまだ我々の存在を悟られていない現状こちらの世界の戦いに参加せず、元の世界に帰還する事がこの船の責任者としての最適な選択です。」

「並行世界のリィン君達を転位で地上じゃなく、アルセイユU――――――オリヴァルト殿下達の元へ送り届ける事を考えたのは、アルセイユUになら予備の空中戦可能な機甲兵が待機している可能性がある上、機甲兵が無くてもオリヴァルト殿下達の元でならリィン君達にも何か手伝えることがあると思ったんだろうね……」

「それが現状の総督閣下にとって皆さんもそうですが、並行世界の総督閣下達にできる最大限の配慮ですわね。」

「シュバルツァー………」

「それは……ッ!」

「…………………」

リィンの説明を聞いたセリーヌは納得して静かな表情で呟き、リアンヌはリィンの意図をその場にいる全員に説明し、トワとミュゼは複雑そうな表情でリィンの考えを推測し、セリーヌ達の話を聞いたデュバリィは複雑そうな表情でリィンを見つめ、ロイドは声を上げたが反論の言葉は出ず悔しそうな表情で唇をかみしめ、エリィは複雑そうな表情で黙っていた。

「……………セリーヌ達の言う通り、俺達の世界の戦いにそちらの俺達に協力して欲しいと頼む事は間違っている事は俺達も理解したし、本来ミリアムとクロウは消え、イシュメルガに呑みこまれるか融合化してしまうはずだった俺達を救ってくれた上元の世界に帰してくれた”恩”もあるそちらの俺達にこれ以上の負担を頼むべきじゃない事も理解している。………さっき、”転位”で俺達をオリヴァルト殿下達の元へ送ると言っていたよな?ならせめて”転位”で俺達を新旧Z組が戦っているあの場所へ――――――”逆しまのバベル”の中へ送ってくれ……!」

「アハハ、やっぱりリィンの事だからみんなの元に向かう事を希望すると思っていたよ〜。」

「ま、それがお互いにとっての”妥協点”だな。」

”リィン”は落ち着いた様子で呟いた後リィンを見つめて頭を下げてある頼みをし、”リィン”の決断に”ミリアム”と”クロウ”はそれぞれ苦笑していた。

「………仕方ない。そういう事だから、すまないが、頼めるか、ベル――――――」

頭を下げ続ける”リィン”を見て軽く溜息を吐いたリィンがベルフェゴールを呼ぼうとしたその時、艦全体に衝撃が起こった。

 

「今の衝撃は一体……!?」

「まさか、どちらかの勢力による流れ弾がこの船に被弾した……!?」

衝撃が起こった後にガイウスは真剣な表情で声を上げ、ヨシュアは推測を口にし

「こちらルシエル!ブリッジ、今の衝撃は一体何なのですか!?」

「クロスベル解放勢力が戦闘中の敵勢力によるものです!敵勢力の機甲兵の一部がこちらに砲撃を行いました!」

「こちらレン!被害状況はどうなっているの!?」

ルシエルは天井を見上げてブリッジに対しての報告を要請すると、艦内全体にブリッジからの報告が入り、それを聞いたレンはルシエルのように天井を見上げてブリッジからの報告を促した。

「艦自身に被害はありませんが、障壁がダメージを受けました!」

「こちらプリネ!念の為に確認しますが、流れ弾が被弾した訳ではなく、相手が明確にこの艦を狙って攻撃したのですね!?」

「ハッ!殿下の仰る通り、敵勢力の機甲兵の一部がこちらに砲口を向けた為こちらも障壁を展開し、敵勢力の砲撃を防ぎました!」

「フフ、”並行世界の存在である私達がこの世界の戦闘に参加する資格”――――――”この世界の戦闘に巻き込まれた際の正当防衛”が発生してしまいましたね♪」

「エ、エイドス……嬉しそうに言う事ではないじゃないか……」

「本当にこの子はもう………」

ブリッジからの報告を聞いた後念の為に確認したプリネの確認に対して返ってきたブリッジからの報告を聞いたエイドスは嬉しそうにリィンを見つめながら指摘し、エイドスの発言にその場にいる全員が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中アドルは疲れた表情で、フィーナは呆れた表情で頭を抱えて呟き

「アハハ……それにしても”ハーケン会戦”でも使ったリベールとの共同開発による最新のステルスシステムでこの艦の姿もそうですが、あたし達の生体反応も完全にわからないようにしていたはずなのに、どうしてあたし達の存在がバレたんでしょうね……?」

「相手は未来演算を備えた技術的特異点――――――まさに”人が手にするには早すぎる技術そのものの塊”だからな。恐らくその驚異的な未来演算や技術でこちらの存在を把握したのだろうな。」

苦笑した後気を取り直したツーヤの疑問にレーヴェは静かな表情で推測を口にした。

 

「クロスベル解放勢力はまだこちらには気づいていないだろうが、先程の敵勢力によるこちらへの攻撃で我々の存在に気づいたのかもしれない。どうする、リィン様?」

「…………………………ハア…………零の御子殿、”こうなる事がわかっていて、俺達に予め戦力を集めておくように忠告した”のですね?」

ベアトリースに判断を委ねられたリィンは少しの間黙って疲れた表情で溜息を吐いた後”零の至宝”キーアに訊ね

「わたしはあくまで、貴方達の為に”戦闘に巻き込まれた際に備えてある程度の戦力を揃えておいた方”がいいって言っただけだよ。」

「答えを誤魔化していますよ、キーア。それとわたし達の未来の方のキーアもこの展開も当然識(し)っていたんでしょう?」

「ア、アハハ………」

リィンの問いに対して答えを誤魔化した”零の至宝”キーアにジト目で指摘したティオはキーアにも指摘し、指摘されたキーアは苦笑しながら答えを誤魔化した。

「うふふ、メンフィル所属であるこの船に喧嘩を売った以上、メンフィルとして今までメンフィルに喧嘩を売った愚か者達のように売られた喧嘩は相手が喧嘩を売った相手があまりにも悪すぎたと後悔する程、高く買ってあげないと駄目よね、リィンお兄さん♪」

「まさかとは思うけど、ここで尻尾を巻いて逃げるみたいな、メンフィルの軍人として失格な事はしないよね、キャハッ♪」

「二人とも、そこでわざと煽らないでくださいよ……」

小悪魔な笑みを浮かべたレンと不敵な笑みを浮かべたエヴリーヌの言葉を聞いたプリネは疲れた表情で二人に指摘した。

「お二人の意見に同意する訳ではありませんが、襲い掛かる火の粉は振り払わなければなりませんね………そしてその為にはこの戦闘の”元凶”――――――”敵勢力の総大将”を叩く必要がありますね。」

「リィン、それじゃあ……!」

静かな表情で呟いたリィンの答えを聞き、クロスベル解放の為の戦闘に加わる事を決めたリィンの決断にアリサは明るい表情を浮かべてリィンを見つめた。

 

「レン皇女殿下。”敵勢力の総大将”がいる”逆しまのバベル”にハッキングをかけてこの艦ごと突入できるかどうかと、現在”逆しまのバベル”攻略中のクロスベル解放勢力の位置を調べる事は可能ですか?」

「可能だけど、相手が相手だからさすがのレンでも”黒の工房”の本拠地の時と同じ……いえ、下手すればそれ以上の時間がかかるわ。――――――ティオ、キーア、手を貸してもらってもいいかしら?」

「合点承知です。」

「キーア、この世界のロイド達やクロスベルの為にも、がんばるね!」

リィンにある要請をされたレンは真剣な表情で答えた後ティオとキーアに助力を頼み、頼まれた二人はそれぞれ真剣な表情で承諾の答えを口にし

「リィン君、君がよければ僕もハッキングに協力させてくれ……!」

「是非、お願いします。”逆しまのバベル”への突入するまでのこの艦での戦闘の指揮はプリネ皇女殿下にお願いしても構わないでしょうか?」

ジョルジュの申し出に頷いたリィンはプリネにある要請をした。

「構いませんが……リィンさんはどうされるのですか?」

「自分は敵勢力によるレボリューションへの攻撃頻度を下げる為に、ヴァリマールと現在こちらが出撃できる飛行戦力と共に魔煌機兵の数を減らします。――――――ベアトリースとルシエルはそれぞれの部隊の出撃準備を早急に始めてくれ!」

「「仰せのままに(イエス)、我が主(マイロード)!!」」

プリネの疑問に答えたリィンはベアトリースとルシエルに指示を出し、リィンの指示に二人は敬礼をして答えた後出撃準備の為にその場から離れ

「へっ、お前が戦うんだったら、俺達も”正当防衛”の為に一緒に戦う事に文句は言わせないぜ、リィン!」

「僕はこの世界の僕が犯した罪を償う為……そしてこの世界の兄上やアルフィンの為にも、どうかテスタ=ロッサと共に戦わせて下さい、リィンさん。」

「勿論、私達も共に戦います、兄様。」

「兄様もそうですが、並行世界の兄様の為にも私達の力、存分にお使い下さい。」

「並行世界とはいえ、クロスベルの戦いなんだから当然俺も加勢させてもらうぜ。」

「陛下達より、もし貴方達が並行世界の戦いに巻き込まれた際は貴方達を守るように言われています。貴方達が戦場に出て戦うならば、私も共に戦いましょう。」

リィンがヴァリマールを駆って戦場に出る事を知るとクロウを始めとした起動者達が次々と参戦の申し出をした。

 

「みんな…………わかった、こうなってしまった以上、遠慮はしない。――――――ミュゼ、クレアさん、そしてレクターさんの3人はそれぞれの”異能”で敵勢力の動きを分析して戦闘の指揮を担当するプリネ皇女殿下をサポートして下さい。」

「はいっ!ふふっ、例え相手が未来演算であろうと、相手にとっても私達の存在は想定外(イレギュラー)なのですから、その隙を突いて”盤面”を読み取ってみせますわ。」

「イエス・コマンダー!!」

「ったく、ホントに遠慮しねぇな………――――――総督殿の仰せのままに。」

クロウ達の申し出に目を丸くした後申し出を受ける事を決めたリィンはミュゼ達に指示をし、リィンの指示に答えたミュゼは意味ありげな笑みを浮かべ、クレアは敬礼で答え、レクターは苦笑した後恭しい動作で頭を下げた。

 

こうして……”逆しまのバベル”突入の為にクロスベル解放勢力に協力する事を決めたリィン達は行動を開始した――――――

 

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予想以上に長くなった為一端切りました(汗)なお、お気づきの方もいると思いますがロイド達バベル突入メンバーはリィン達を欠いた状態で”逆しまのバベル”に突入、攻略中です。次回はレボリューションやヴァリマール達の登場によるお待ちかね(?)のノーマルエンド後のオリビエ達の反応、そして最後はバベルへの突入になると思います。なお、今回のBGMは創の”Stake Everything Strategy”、次回のBGMは創の”The Destination of FATE”だと思って下さい♪

説明
第163話
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