英雄伝説〜黎の陽だまりと終焉を超えし英雄達〜
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8月28日、22:30――――――

 

〜遊撃士協会・ヘイムダル支部〜

 

「お久しぶりです、サラ教官。」

「ええ。こうして直に会って話すのは”ヘイムダル決起”を解決した直後の復興以来ね。それにしてもリムジンで来た上、”子供達”直々による護衛付きだなんてさすが”エレボニア総督”だけあって、”随分といい御身分”になったわねぇ?」

懐かしそうな表情で声をかけてきたリィンに対して口元に笑みを浮かべて答えたサラはリィンとパントの背後にいるレクターとクレアに視線を向けた後からかいの表情でリィンに指摘し

「ハハ………」

指摘されたリィンは苦笑しながら答えを誤魔化した。

「―――どうせ、この周辺には鉄道憲兵隊が警備していて、あんた達の合図があればいつでも突入してくる手筈になっているんでしょうし、もしかしたらだけど”斑鳩”の”忍び”とかいう連中もこの支部に潜んでいるのじゃないかしら?」

「………外の警備はあくまで”念の為”です。”そちら”が総督閣下達に危害を加えようとしなければ、私達も”そちら”に危害を加えるつもりはありません。」

「”斑鳩”に関しては”ノーコメント”とさせてもらうが、リーヴェルト少佐の答えと”同じ”とだけ言っておくよ。」

「そういう事を言うって事は、結局その”斑鳩”とかいう連中がこの建物に潜んでいるって事じゃない……」

「しかし自分達は彼らがここに来るまでこの建物に自分達以外の人の気配は感じられませんでしたが……」

「”斑鳩”の”忍び”とやらは”そっち方面”のプロだという噂だからな。連中にとっては俺達に気配を悟られずこの建物に潜入するなんざ、お手の物なんだろうぜ。」

呆れた表情を浮かべたサラの言葉にクレアとパントはそれぞれラヴィ達に視線を向けて答え、パントの答えを聞いたイセリアは疲れた表情で溜息を吐き、戸惑いの表情で周囲を見回しているタリオンにマーティンは真剣な表情で指摘した。

 

「で?あんたと同じ”情報局”の一員かつ”子供達”の一人で、リィンと同じ”Z組”の一員でもあって相棒(アガートラム)の性能を考えたらあんたよりも護衛に向いているミリアムじゃなくて、何であんたがわざわざリィンの護衛として現れたのかしら?」

「ミリアムは今別件で動いてもらっているってのもあるが、俺の方からも”そちら”に”交渉”したい事があるから、総督殿の護衛も兼ねて今回の件に同行させてもらっているのさ。」

真剣な表情を浮かべたサラの問いかけに答えたレクターはローガン達に視線を向けた。

「エレボニアの”情報局”が自分達に”交渉”、ですか?一体何の為に……」

「………もしかして、ケルディックの件?」

「あ…………」

「……………………」

不思議そうな表情を浮かべているタリオンにラヴィは心当たりを口にし、それを聞いたイセリアは呆けた声を出した後辛そうな表情を浮かべ、マーティンは重々しい様子を纏って黙り込んでいた。

「ま、俺の方は後でいいから、今回の面会の”本題”である総督殿が先に進めてもらっていいぜ。」

「わかりました。――――――そちらも既に知っていると思うが、改めて名乗らせてもらう。俺はメンフィル帝国軍所属リィン・シュバルツァー将軍だ。現在は”エレボニア総督”の任に就いている。」

肩をすくめて話を進めるように促したレクターの言葉に頷いたリィンは表情を引き締めてラヴィ達を見回して自己紹介をした。

 

「猟兵団”北の猟兵”所属ラヴィアン・ウィンスレット。」

「ラヴィちゃん達と同じ”北の猟兵”のイセリア・フロストよ。」

「同じく”北の猟兵”所属タリオン・ドレイクです。」

「マーティン・S・ロビンソンだ。一応この3人の上司だ。」

「ローガン・ムガート。生き残った”北の猟兵”達を率いている者だ。――――――早速ではあるが、話を始めさせてもらっても構わないな?」

ラヴィ達が名乗った後最後に名乗ったローガンはリィンに確認した。

「ああ。サラ教官から聞いた話だと、ノーザンブリアの独立の為に俺と話をしたいという事だが………」

「そうだ。だが、その前に見てもらいたいものがある。」

リィンの言葉に頷いたローガンは予め持ち込んで来た木箱から布に包まれた謎の物体を取り出し、それを床に置いて布を解いて謎の物体の姿を顕にすると何と謎の物体は老人の生首だった!

 

「「な―――――」」

「………あの顔、まさか………」

「その”まさか”に違いないな。”北の猟兵”達の首領にして”ノーザンブリアの三英雄”の一人――――――”北の雷帝”グラーク・グロマッシュ。ノーザンブリア占領時にもその死は確認できず、その後も行方知れずとの事だったが……まさかこんな形で知る事になるとはな。」

生首を目にしたリィンとクレアが絶句している中生首の顔に見覚えがあるパントは眉を顰め、レクターは真剣な表情で生首を見つめた。

「一体何のつもり、ローガン!?マスターグラークはノーザンブリアが占領された日に死んだとは言っていたけど、まさかとは思うけどあんた達が……っ!」

するとその時サラが怒りの表情でローガンに詰め寄って問いかけた。

「俺や俺を慕う部下達がこの老害をこの手で殺したかった事は否定しない。――――――だが、俺がこの老害の元に現れた時点で毒殺されていた。後でわかったがこの老害を殺ったのは別の人物だ。」

「別の人物ですって!?そいつは一体誰で、何者なのよ!?」

ローガンの口から語られた驚愕の事実を知ったサラは血相を変えて訊ねた。

「女狐――――――ジェイナ・ストームという名の女が老害の酒に毒を仕込んで毒殺したとの事だ。」

「ジェイナ・ストーム……”北の雷帝”の参謀を務めていた北の猟兵のNo.2だな。」

「俺もその名前には覚えがあります。北の猟兵達の”首領”である”北の雷帝”のように”北の猟兵”達の幹部クラスである彼女も当然手柄首としてメンフィル軍やヴァイスラントにも通達されていましたからノーザンブリア占領時に、その死を確認した事も聞いています。ただ不思議な事にメンフィル軍もそうですがヴァイスラントの関係者の誰かが彼女を討った訳ではなく、彼女を見つけた時点で何者かに殺害され事で既に事切れていたとの事ですが……」

「なっ………どうして、マスターグラークの参謀を務めていた人物がマスターグラークを………しかも、マスターグラークを殺害した彼女をメンフィルでもなくヴァイスラントでもない誰が一体何の為に殺ったのよ……?」

「……………………」

ローガンの答えを聞いたレクターとリィンはそれぞれ真剣な表情で自分達が知る情報を口にし、二人の話を聞いたサラは絶句した後信じられない表情で呟き、タリオンは目を伏せて黙り込んでいた。

 

「……話を聞く限り、北の猟兵達も一枚岩では無かったようだが………一体何の為に、この場で”北の雷帝”の生首を私達に見せたのだい?」

「俺達”北の猟兵”による”メンフィルと灰の剣聖に対する誠意を示す為だ。”」

「”メンフィルと俺に対する誠意を示す”という話に、何故北の猟兵の首領の首を見せる事に繋がるんだ?」

パントの問いかけに答えたローガンの話を聞いて新たな疑問を抱いたリィンは質問した。

「マスターグラークだけじゃない。――――――”ノーザンブリアの三英雄”の一人、ブラド・ウィンスレットの孫ラヴィアン・ウィンスレット、今は亡き祖父ブラドに代わり、私達と同じ北の猟兵達がメンフィル帝国領であるユミルで犯した罪をメンフィル帝国とリィン・シュバルツァーに謝罪する。………ごめんなさい。」

「同じく北の猟兵の生き残りを率いている”極光のフェノメノン”ローガン・ムガート、北の猟兵の生き残り達を代表して、同胞達がユミルで犯した罪をメンフィル帝国とリィン・シュバルツァーに謝罪する。――――――申し訳ない。」

するとその時ラヴィがリィンを見つめて宣言した後頭を深く下げて謝罪の言葉を口にし、ローガンも続くように宣言してリィンを見つめて頭を深く下げ謝罪の言葉を口にし、イセリア達も続くように頭を深く下げた。

「な………あんた達、突然何を………」

「なるほどな……”そう来たか”。」

「”ノーザンブリアの三英雄”やその身内、そして現在北の猟兵の生き残りを纏めている人物が総督閣下とメンフィルにユミルの件を謝罪する事で、”北の猟兵達が行えるメンフィル帝国と総督閣下に対しての最大限の誠意を示す事”で、総督閣下やメンフィル帝国にノーザンブリアの独立を考慮してもらう為でしょうね。」

「ああ。そういう意味で言えばバレスタイン殿。北の猟兵(かれら)にとって”貴女が面会の場を用意し、この場に立ち会う事自体が貴女の養父であるバレスタイン大佐の謝罪の代わり”にしているのだと思うよ。」

ローガン達の行動にサラが困惑している中ローガン達の行動の目的を察したレクターは真剣な表情で呟き、クレアは複雑そうな表情で推測し、クレアの推測に頷いたパントはサラに視線を向けてある指摘をした。

 

「っ……!なるほどね………あたしが面会の場に立ち会う事をあたしが提案しなくても元々あんた達の方から頼むつもりだって言っていたけど、まさかパパの謝罪の代わりとして利用する為だったとはね………」

パントの指摘を聞いたサラは唇を噛み締めて厳しい表情でローガン達を睨んだがすぐに複雑そうな表情を浮かべた。

「ノーザンブリアの独立の為には”灰の剣聖”リィン・シュバルツァー。”現代のゼムリアの大英雄”と名高く、ヨルムンガンド戦役での功績によってメンフィルからも重用されている人物にしてノーザンブリアがメンフィルに占領される原因になったユミルの領主の息子であるお前の協力を俺達は必要としている。」

「………”紫電”が予想していたように故郷(ノーザンブリア)を占領し、多くの北の猟兵(なかま)達の命を奪った”灰の剣聖”を含めてメンフィルの事を恨んでいた事は否定しない。……だけど、ノーザンブリアの独立の為に”灰の剣聖”やメンフィルを調べた事で何故メンフィルがノーザンブリアを占領し、北の猟兵達を殲滅した”理由”を知ってからは色々と思う所はあるけど、北の猟兵(わたしたち)の”自業自得”だと受け止めている。そしてその償いとして、今も陰ながら故郷の独立を願って私達を支援してくれる多くのノーザンブリアの人々の為にも私達は故郷(ノーザンブリア)を独立させたい。だからどうか、力を貸して……!」

「……………………………」

「リィンさん………」

「リィン………」

ローガンの話の後に答えたラヴィの話と嘆願にリィンが辛そうな表情で黙り込んでいる中その様子をクレアは心配そうな表情で、サラは複雑そうな表情で見守っていた。

 

「……パントさん。ノーザンブリアの総督府はノーザンブリアの人々が独立を願う程ノーザンブリアの人々を虐げたり等をしているのでしょうか?」

「いや、そんな話は聞かないし、そもそもノーザンブリアの総督は君も知っての通り、エフラム・エイリーク両殿下とヒーニアス・ターナ両殿下が交代で務めていて、殿下達はノーザンブリアの人々にメンフィルへの帰属を納得させる為にノーザンブリアの長年の問題である餓死者や凍死者を出さない為にも食料や暖房関連の支援には常に気を配っているし、正当な対価での仕事も提供しているから、ノーザンブリアの人々の生活はむしろ占領前よりは豊かになっていると聞いている。………だが、公国崩壊後の自治州発足の経緯を考えれば、ノーザンブリアの人々の独立気質は自治州だった頃のクロスベルの人々にも劣らない――――――いや、もしかしたらそれ以上なのかもしれないね。」

「なんせ占領前のノーザンブリアの経済は破綻寸前とはいえ、それでも踏みとどまっていられたのは北の猟兵達――――――ノーザンブリアの民達にとっては”英雄”のお陰で、その”英雄”達を誕生させたのもまた”ノーザンブリアの三英雄”だからな。そんな所で育った人々は例えどれだけ生活が豊かになっても、総督補佐殿の仰る通り”独立”を願う人々が多いんだと思うぜ。」

「それは………」

「………………」

自分の質問に対して答えた後口にしたパントの推測とパントの推測を捕捉したレクターの説明を聞いたリィンは複雑そうな表情を浮かべ、サラは複雑そうな表情で黙り込んでいた。

「君達の目的――――――ノーザンブリアの独立に関連していくつか聞きたい事があるからまずは全員頭を上げてくれ。」

「……何を知りたい?」

パントに頭を上げるように促されたローガンはラヴィ達と共に頭を上げてパントに続きを促した。

「仮に独立ができたとして、総督府がノーザンブリアの人々が自活できるように建造した農産物のプラントもそうだがノーザンブリアの人々の国内でも仕事で生活できるように建造したメンフィル本国へ送る為の様々な物資の開発や量産のプラントはどうするつもりなんだい?」

「無論、そのままで構わない――――――というよりも、プラント関連の現状維持はむしろこちらからも強く希望している。メンフィルから独立するとは言っても、別にメンフィルと袂を分ける事までは考えていないからな。独立後のノーザンブリアはメンフィルとは友好関係を結ぶ事を望んでいる。」

「おいおい、いくら何でもさすがにそれは厚かましくないか?」

「統治の為に様々な手間をかけたにも関わらず独立をすれば、普通に考えればメンフィル帝国でなくても建造したプラントは撤収させると思うのですが……」

パントの質問に答えたローガンの答えを聞いたレクターは呆れた表情で呟き、クレアは静かな表情で推測を口にした。

 

「”普通ならばな。”だが、数十年後に異世界でヨルムンガンド戦役以上の”大戦”が勃発すると確信してその”大戦”の為に準備をし続けているメンフィル帝国だけは違うのだろう?」

「!」

「あんた達、一体どうやってその件を知ったのよ?その件はハーケン会戦後に行われた西ゼムリア通商会議に参加した各国のVIP達や護衛関係者達で、後は遊撃士協会と七耀教会の上層部クラスか一部の関係者達しか知らない秘匿情報なのに……」

ローガンの指摘にリィンは目を見開き、サラは驚きの表情でローガン達に対して訊ねた。

「レミフェリアの大公家だ。レミフェリアの領土とノーザンブリアの領土は隣接している関係で、大公家同士の親交は今でも続いているからな。」

「”大公家同士”って……まさかあんた達、”悪魔の一族”と蔑んでいた旧大公家の協力を取り付けたの……!?」

「”旧大公家”に”悪魔の一族”……?」

「”旧大公家”っていうのはノーザンブリアが自治州になる前――――――つまり、まだ”公国”だった頃のノーザンブリアを治めていた大公家の事だ。」

「ノーザンブリアが公国から自治州へと移行せざるを得なくなってしまった災厄――――――”塩の杭”による異変時、当時の大公は民達の避難誘導等せず、近衛兵達を伴って真っ先に隣国のレミフェリアへと亡命した事でノーザンブリアの民達の支持を失い、更にはノーザンブリアの自治州発足後大公国の再興の為に”ノーザンブリアの三英雄”の一人―――――バレスタイン大佐の戦死によって起こった混乱時に脱出した近衛兵団と共に州都を襲撃し、一時的に州都の占拠に成功したのです。」

「あ………」

ローガンの話を聞いてある事に気づいたサラは信じられない表情でローガン達に訊ね、サラの話から初耳である言葉を聞いて不思議そうな表情をしているリィンにレクターとクレアが説明し、二人の説明を聞いたリィンは呆けた声を出して心配そうな表情でサラを見つめた。

「……最も、”北の猟兵”達の反撃によってすぐに包囲されたらしくてね。で、バルムント大公は再度の脱出を図る為に”見せしめとして市民の虐殺を近衛兵達に命じた”そうなのよ。」

「な………」

続きを説明したサラの説明を聞いたリィンは絶句し

「そんで”塩の杭”による異変時の大公の利己的極まりない行動に加えて逃げる為に自国民の虐殺を命ずるこの暴挙に近衛兵達も大公家を見限ったらしくてな。近衛兵達の裏切りによって”北の猟兵”達に捕縛された大公は”北の猟兵”によって極秘裏に処刑されたとの事だ。」

「そして”塩の杭”による異変後もノーザンブリアに残り、今も生活を送っている大公家の親戚筋が大公の暴挙に怒りを抱くノーザンブリアの人々から『悪魔の一族』と蔑まれているのです。」

「それは………だから、サラ教官はノーザンブリアの旧大公家が北の猟兵(かれら)に協力している事に相当驚いていたのですか……」

「ええ。確かに故郷(ノーザンブリア)の独立が理由だったら旧大公家(かれら)も協力してくれてもおかしくはないけど、今まで蔑まれていた恨みとかもあったでしょうに…………――!まさかとは思うけど、”脅迫等をして無理やり協力させているんじゃないでしょうね?”」

レクターとクレアの説明を聞き終えたリィンは複雑そうな表情を浮かべた後サラに視線を向けて呟き、リィンの言葉に頷いて話を続けたサラはある事に気づくと真剣な表情を浮かべてローガン達を睨んだ。

 

「そんなことはしていません!彼らにもシュバルツァー総督閣下の時のようにローガン殿が北の猟兵達やノーザンブリアの人々を代表して謝罪した事による和解もそうですが、旧大公家の方々も同じノーザンブリア人として独立に協力する気持ちは同じである事もそうですが、バルムント大公の償いやかつてノーザンブリアを治めていた大公家としての義務という意味でも自分達に協力して下っているのです。」

「……ローガン、あんた、本当に何を考えているのよ?リィンへの謝罪の件といい、、旧大公家への謝罪の件といい、あたしが知っているあんたはそんな殊勝な事をするタマじゃないでしょうに。」

真剣な表情で否定して説明したタリオンの答えを聞いたサラは眉を顰めてローガンに訊ねた。

「北の猟兵(おれたち)と袂を分けて変わったお前のように、ノーザンブリアの未来の為にも俺も変わる必要があったという事だ。」

「あんたが変わった一番の切っ掛けはやっぱりラヴィちゃんの説得のお陰でしょ。ラヴィちゃんの説得が無かったら、ノーザンブリアが占領されたあの日ハリアスクから脱出せず、最後まで戦った戦死するつもりだったでしょうし。」

「………………………」

ローガンの説明の後に指摘したイセリアの説明に対してラヴィは何も語らず、目を伏せて黙り込んでいた。

「フム…………話をさえぎって申し訳ないが、君達が旧大公家経由でレミフェリアの大公家からメンフィル(わたしたち)が備えている数十年後での大戦を知る事ができたという話を聞いた時から気になっていたのだが………まさか、レミフェリアは既にノーザンブリアの独立の支持しているのかい?」

「さすがに今の時点では正式な支持はできないが、リベールかクロスベルのどちらかがノーザンブリアの独立を支持するならレミフェリアも支持をしてくれるとの事で、次の西ゼムリア通商会議時に議題としてノーザンブリアの独立問題を挙げてくれる事は確約してもらっている。」

「なるほどな……独立が失敗した時のリスクもそうだが他の三国――――――リベール、エレボニア、クロスベルと比べればメンフィルとレミフェリアの国家間の関係は距離が離れているからレミフェリアがノーザンブリアの独立を支持した所で、メンフィルにはあまり効果がないとアルバート大公は判断して、ヨルムンガンド戦役による敗戦でメンフィルに保護されているエレボニアは論外としてメンフィルと友好関係にあるその二国の支持を必須条件としたのだろうな。」

パントの質問に答えたマーティンの答えを聞いたレクターは真剣な表情で推測を口にした。

 

「次の質問だ。君達は独立後のノーザンブリアの経済をどうするつもりなのか等について話し合っているのかい?仮にメンフィルが独立を承認するにしても、独立を承認する条件の一つとして占領前のノーザンブリアの時のような”猟兵業による活動での外貨の取得でノーザンブリアの経済を維持させる事の禁止”は確実に出してくるはずだ。」

「無論メンフィルが独立を認めるにしても、”北の猟兵”としての活動の禁止を条件にしてくることも想定した上で、独立後のノーザンブリアの在り方を決めている。」

「ノーザンブリアはエレボニアとレミフェリアに挟まれているので、クロスベルのような国際交易と金融の拠点として発展させる事を考えています。」

「ハッ、随分と考えたようじゃねぇか。確かにそれならクロスベル程ではないにしても、ノーザンブリアの経済は明るくなって、少なくても猟兵業で外貨を稼ぐ必要はなくなるだろうな。既にレミフェリアの大公家からも条件付きの支持を取り付けた事から察するに、独立後のノーザンブリアを利用しての他国との交易等の約束を取り付けているんだろうな。」

「それに加えてジュライとレミフェリアを鉄道で結ぶ要所にもなる事もそうですが、メンフィルとの交渉次第になりますがメンフィルによるプラントで生産した物資の一部を外貨を稼ぐ手段にできますね。」

パントの質問に答えたローガンとマーティンの説明を聞いたレクターは鼻を鳴らして口元に笑みを浮かべて推測を口にし、クレアも続くように真剣な表情で推測を口にした。

「これが最後の質問だ。君達は故郷(ノーザンブリア)の独立の為なら、相手がどれ程の強大であろうとも挑み、乗り越える気概はあるのかい?」

「当然ある。――――――そもそも、メンフィルを相手に独立を目指すのだから、私達の相手が強大なんて今更過ぎる話。」

そしてパントの最後の質問にラヴィが決意の表情で答えた。

 

「そうか………――――――リィン君、今までの彼らの話を聞いて君自身はどう感じているんだい?」

「…………ユミルや父さんの件はノーザンブリアの占領やその際の多くの北の猟兵達の戦死で相殺したものと考えています。ノーザンブリアの件で俺を恨んでいると思われた北の猟兵達が俺に謝罪をしてでも故郷の独立を目指しているのですから、できれば力になってあげたいと思っています。」

「ったく……総督になっても、そのお人好しな所は変わっていないわね……」

パントに話を振られたリィンは少しの間考え込んだ後静かな表情で答え、リィンの答えを聞いたサラは苦笑していた。

「……ただ、仮に俺がノーザンブリアの独立を支持した所でノーザンブリア占領の経緯を考えるとメンフィル帝国はノーザンブリアの独立をすぐに認めるとは思えないのですが……」

「そうだね、その点に関しては私も同じ考えだ。――――――ならば、北の猟兵達(かれら)も君みたいに何らかの功績を残して、メンフィルの信頼を勝ち取れば本国も独立を認めるのじゃないかい?」

複雑そうな表情で答えたリィンの懸念に頷いたパントはある提案をした。

「それはそうですが……――――――!パントさん、まさか……!」

パントの提案に頷いたリィンはパントの考えを悟ると驚きの表情を浮かべ

「ああ。―――――聞いての通り、例えリィン君がノーザンブリアの独立を支持したとしても、君達の仲間による”過去の所業”を考えればメンフィル帝国はすぐにノーザンブリアの独立を認める事は難しいだろう。だが、ヨルムンガンド戦役で活躍して10代という若さで”将軍”へと昇進したリィン君のように、北の猟兵(きみたち)がメンフィル帝国に対して多大な貢献をすれば独立を認めてくれると思うし、私自身からもリィン君との連名でそのようにすることをシルヴァン陛下達を説得しておくよ。」

「現メンフィル皇帝を説得って……そもそも貴方って何者なのよ?”エレボニア総督”の”補佐”という事は知っているけど……」

パントの話を聞いたイセリアは戸惑いの表情でパントに訊ねた。

 

「私の名はパント・リグレ。リグレ侯爵家の前当主にしてメンフィル帝国の前宰相を務めた者だ。」

「ええっ!?メ、メンフィル帝国の”前宰相”!?」

「まさかメンフィル帝国の元No.2程の大物がエレボニア総督の補佐についているなんて………」

「なるほどな………”現代のゼムリアの大英雄”に加えてメンフィル帝国の前宰相による説得もあれば前皇帝の”英雄王”もそうだが、現メンフィル皇帝や政府も間違いなく承諾するだろうが………俺達に何をさせるつもりだ?」

パントの自己紹介を聞いたイセリアは驚きの表情で声を上げ、タリオンは信じられない表情で呟き、マーティンは溜息を吐いて呟いた後真剣な表情を浮かべて続きを促した。

「ヨルムンガンド戦役の終結や”ゼムリア連合”の締結によってゼムリア大陸は平和になったとはいえ、その”裏”は平和とはまだまだ言えなくてね。君達にはその”裏”を落ち着かせる手伝いをして欲しいのさ。」

「……要は暗闘の類か。具体的には何をすればいい?」

パントの説明を聞いて事情を察したローガンは続きを促した。

「”表の世界”にも影響が出ている程の裏の勢力の鎮圧や裏が関わる事件解決への大きな貢献を3回達成して欲しい。それが達成できれば、ノーザンブリアの独立を承認する事を陛下達を説得しておく。」

「つまりは”メンフィルの3つの大きな依頼に対する報酬がノーザンブリアの独立の承認”?」

説明を聞いてパントの考えを悟ったラヴィはパントに確認した。

 

「ああ。それと、独立の承認時にリィン君からもノーザンブリアの独立を支持する声明を出してもらうように手配しよう。北の猟兵達に襲撃されたユミルの領主の息子でもあり、”現代のゼムリアの大英雄”との知名度があるリィン君がノーザンブリアの独立を支持すれば、各国も北の猟兵(きみたち)の償いは終わったと認めるだろうからね。構わないかな。リィン君。」

「はい。」

「―――――それで、答えはどうする?」

そしてリィンに確認した後のパントに問いかけられたラヴィ達は互いに視線を交わして頷いた後ローガンが代表して答えた。

「答えは当然”了解”だ。」

「”契約成立”だね。早速ではあるが明日に”一つ目の大きな依頼”についての詳細な説明をするから、連絡先を教えてくれないか?」

「わかった。………俺の連絡先はこの番号だ。」

パントの要求に頷いたローガンはメモに連絡番号を書いた後千切ってパントに手渡した。

「確かに。こちらの仕事の関係もそうだが依頼に関する資料の準備も必要だから、連絡は明日の13時過ぎにするつもりだが、もし連絡が遅ければこの番号に連絡してくれ。」

(”一つ目の大きな依頼”……状況を考えれば、パント卿は恐らく北の猟兵(かれら)も”A”の捜査に協力させるつもりなのでしょうね……)

ローガンからメモを受け取ったパントもローガンのようにメモに連絡番号を書いてローガンに手渡し、その様子を見守っていたクレアはパントの考えについて推測していた。

 

「さて、めでたくメンフィルとの交渉を無事終えた所で悪いが………今後は俺との交渉に付き合ってもらおうか、北の猟兵――――――いや、マーティン・S・ロビンソン?」

パントがローガンにメモを渡し終えるとレクターが拍手をしながら意味ありげな笑みを浮かべてマーティンに視線を向け

「ローガン殿ではなく、管理官にですか?」

「何で今の北の猟兵(あたしたち)の纏め役のローガンじゃなくて、管理官に交渉するのよ?」

「……………………」

レクターの言葉にタリオンとイセリアが不思議そうな表情で首を傾げている中、マーティンは真剣な表情で黙ってレクターを見つめた。

「何でも何も、エレボニアがそいつに用があるのは当然だ。――――――何せ”内戦時のケルディックを焼き討ちした部隊の一員”だった奴なんだからな。」

「……………………」

「な―――――」

「”内戦時のケルディックを焼き討ちした部隊の一員”って事は、あんたもあたしがオーロックス砦でやり合った連中の一人だったの……!?」

真剣な表情を浮かべたレクターの口から語れた驚愕の事実に、予めレクターから知らされていたクレアは複雑そうな表情で黙り込み、リィンは絶句し、サラは厳しい表情でマーティンを睨んだ。

 

「クク、随分と懐かしい話だな。ま、あの時の俺はヘルメットを被っていたし、あんたに一瞬で制圧されたからわからなかったのも無理はないがな。」

「マーティがケルディックを焼き討ちした部隊の一員だったなんて………」

「嘘でしょ………」

「管理官………」

「…………それで、エレボニアはその昼行灯に何の用だ?ケルディックの焼き討ちの”報復”か?」

口元に笑みを浮かべて瞳を暗くして笑って呟いたマーティンをラヴィとイセリア、タリオンがそれぞれ信じられない表情を浮かべている中、真剣な表情で黙っていたローガンはレクターに訊ねた。

「安心しな。そもそもそいつ一人の命でケルディックの焼き討ちと釣り合うなんて最初から思ってねぇし、ギリアスのオッサンが生きていた頃ならともかく、オッサンも死んだ上結果的には北の猟兵やノーザンブリアもケルディックの件を含めた”報い”をメンフィルやヴァイスラントが行ったから、そいつに危害を加えたりノーザンブリアの独立に支障が出るような事は考えてねぇよ。」

「………なら、何の為に俺に用がある?」

レクターの話を聞いたマーティンは続きを促した。

 

「メンフィルがユミルの件に対する償いの代わりとしてメンフィルの平穏の為に北の猟兵(あんたたち)の協力を求めたように、あんたにはケルディックを焼き討ちした部隊の一員としての償いとして今の情報局(おれたち)の方針に協力してもらいたい。」

「今の情報局(あんたたち)の方針ってミリアムから聞いた話だと確か………」

レクターの話を聞いてある事を思い出したサラはその場で考え込みながら呟き

「ああ、『ゼムリア大陸の安定』だ。――――――ヨルムンガンド戦役でメンフィルの暗部によって情報局(うち)の関係者達が半数近く殺られた事で今も人員不足でな。ヨルムンガンド戦役での情報局のゼムリア大陸への償いの為にも常に猫の手も借りたい状況なんだよ。――――――例え、エレボニアの領土を焼き討ちした奴の手であろうともな。」

「レクターさん………」

「………要するに”ケルディックの焼き討ちの償い”として、俺に情報局(あんたたち)の協力者になって、『ゼムリア大陸の安定』の為に各国をスパイしろって事か?」

レクターの説明を聞いたリィンは静かな表情で見守り、マーティンはレクターに訊ねた。

「そっちにとってもエレボニア政府の関係者との繋がりができることは悪くない提案だろう?ノーザンブリアの未来の為にも、ヨルムンガンド戦役での敗戦やゼムリア連合の調印によって”併合を狙ってくる心配がなくなったエレボニア”を”ノーザンブリアの善きパートナー”として付き合いたいんじゃねぇのか?」

「……………チッ…………――――――いいだろう。だが、勘違いするなよ?俺がお前達に手を貸すのは俺の”ケジメ”をつける為であって、お前達に魂を売った訳じゃない事をな。」

レクターの指摘に少しの間黙った後舌打ちをしたマーティンはレクターを睨みながら答え

「ああ。――――――ま、詳しい話は明日総督殿達から説明される”メンフィルによる一つ目の大きな依頼”についての話が終わった後にでもしようじゃねぇか。」

対するレクターは不敵な笑みを浮かべて答えた―――――

 

 

 

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お気づきかと思いますが、灰の騎士の成り上がりでレクターはセリカによって片腕を失いましたが、この時期の時点で既にジョルジュが開発した生体義手を装着しているので一応両手は使えるようになっています。なお、OPは仲間が次々と映る所の時にアニエスが映った時にアニエスの背後にメイヴィスレインが映り、アラミスの制服を纏ったアニエスをレンが待っているシーンにはレンと同じようにアラミスの制服を纏ったレジーニアとアンリエットが追加され、エレインが映った後はエースキラーの面々とラヴィ達、リタが次々と映り、サビの部分ではルファディエルとメイヴィスレインが何かに向けて同時に力を放っているシーン、アルマータの幹部達と戦うエースキラーの面々やラヴィ達の場面、ヴァリマールと共闘して原作のあるボスと戦うグレンデル、メイヴィスレイン、ルシエル、レジーニアが対峙している相手に向かって次々と攻撃を放つシーン、リタとアンリエットが協力して攻撃を放つシーンが順番に映ると思って下さい♪

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外伝〜北とメンフィルの契約〜


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エウシュリーキャラも登場 ディル=リフィーナとクロスオーバー 他作品技あり 空を仰ぎて雲高くキャラ特別出演 黎の軌跡 

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