弱者太郎、覚醒するってよ
説明
3.「正義の雄叫び」

太郎はベッドで目覚めた。
体は特に変化なくコスプレの状態を保ったままだ。
周りを見回すが初めて見る部屋だということだけ太郎は理解できた。
ベッドから起き上がると“ここはどこだろう”と部屋の窓から外を見てみる。 よく実った畑とその周りで遊ぶ子供たちの光景が太郎の目に映った。

部屋のドアが開く音がした。 ドアから顔をのぞかせたのは貫禄のある作業着を着たおっさんだった。
太郎はおまえは誰だ!?”とファイティングポーズをとっておっさんを警戒する。
おっさんは苦笑しながらまあまあという動作で太郎をなだめていた。

「体は大丈夫だったかい?」

おっさんは太郎に尋ねる。 そして太郎は大丈夫であることを告げた後、 あなたは誰なのかとおっさんに尋ねた。
おっさんはどうやら孤児院を営んでいて、 太郎が川でおぼれていたところを 孤児院に運んできたとのことだ。
太郎は混乱していた。 明らかにいつもの景色と違っていたからだ。
太郎はしばらく考えておっさんにここは日本のどこだと尋ねるがおっさんは

「ニッポン、ナニソレ」

と太郎を憐みの目で見ていた。
太郎はおじいさんの言葉を思い出した。

「異世界 ヘルニア 旧国王に会え」

太郎の思わず口に出していた。

おっさんはその言葉を聞くとジロジロと太郎の身なりを観察しながら

「旧国王に会え?」

と太郎を疑う表情を見せた。 しかしすぐにニコニコと表情を戻し、しばらくは安静にしていろよと太郎を気遣った。
しかし太郎は明日も仕事があるのでとこぶしで抵抗したがおっさんの腕の中で眠るには数秒とかからなかった。
そして数日が立ち太郎は考えることをやめて孤児院の子供たちと遊んでい
たが、ある日その子供の一人であるTS・ケータ(30)が行方不明になる


孤児院の子供たち総出でTS・ケータ(30)を捜索することにした。 しかしなかなか 見つからない。 太郎はTS・ケータ(30) もついに独り立ちしたのかと思い始めたその時
太郎の耳に“助けて”という声が聞こえた。 太郎は急いで声のする方向へ向 かう。孤児院のはずれの森で太郎が見つけたのはTS・ケータ (30)だった。
太郎は近づこうとするが、 “近寄ってはいかん”と拒絶される。
TS・ケータ(30)の奥にいたものは、 太郎が今までゲームとかでしか見たことのない巨大生物だった。
早く逃げようとTS・ケータ (30) の腕をつかむ太郎だったが巨大生物に太郎は吹っ飛ばされた。

地面にたたきつけられる太郎。 手足が動かない。 ここで太郎は人生の終わ りを悟った。
巨大生物に腕を引っ張るよう持ち上げられる太郎。 それを体に取り込もうと する巨大生物。 絶体絶命である。
その時不思議なことが起こった。

「叫べ」

太郎の脳内に直接言葉が届いた。

「叫べ」

再び太郎の脳内に直接言葉が届いた。
太郎は満身創痍だったが、 今出せるすべての力を“ンアーッ”と声に出した。 すると巨大生物は太郎をつかんでいた手をぱっと離し、 太郎から数メートル 距離を離した。

合間にTS・ケータ(30)が太郎に駆け寄り体を支えながら何とか太郎を立たせる。

「叫べ、呪文を。 その名は・・・」

太郎はまた脳内直接届く声を頼りに一か八か呪文を叫んだ。


「ダイセイオン(大声の名称)!!」

太郎のヘルメットが激しく光った。ロ部はシュッと開きエネルギーのような見える球体を発生させた後に衝撃波とともに真っすぐ巨大生物に向かって飛んで行った。
弱者太郎が放つ咆哮は大地を揺らし、 巨大生物の体を吹き飛ばした。
巨大生物は驚くような様子ですぐに暗闇の中に逃げて行った。

太郎はこれで脅威が去ったと思ったのもつかのま、再び暗闇からこちらに近づいてくる人影が見えた。

「おやおや、これは珍しいものを見ました。」

拍手をしながら人の形をした影が太郎とTS・ケータ(30)の目の前に現れた。

「おまえは誰だ?!」

満身創痍の太郎に代わってTS・ケータ(30)が影に叫ぶ。

「初めまして私はリン国の幹部。コ・イカゲと申します。
  あなたのご友人は素晴らしい素質を持っていますね。ペットに食べさせるには惜しい。」

それを聞いたTS・ケータ(30)は"太郎には指一本触れされない"とコ・イカゲの前に立ちふさがるが、不思議な力で眠らされてしまう。
意識がもうろうとする太郎。コ・イカゲはそんな太郎にマーキングと称して膝に光の矢を突き刺した。

「これであなたの冒険は終しまい。これからは私のペットとして強くなりなさい」

コ・イカゲはそういうと巨大生物とともにゆっくりと暗闇の中へ消えていった。

太郎はベッドで目覚めた。
体に少し痛みを感じるがコスプレの状態を保ったままだ。
周りを見回すが孤児院内の部屋だということだけ太郎は理解できた。
部屋のドアが開く音がした。作業着のおっさんだ。話を聞くとどうやら太郎は3日程寝ていたらしい。

「TS・ケータを見つけてくれてありがとう。大変なことに巻き込まれたようだな。」

おっさんはそういうと太郎の体調を気遣いつつ手に持っている紙を太郎に手渡す。
太郎が"これは?"と尋ねるが口に人差し指を近づけて

「俺が国王だったということは内緒だぞ☆彡」

と太郎におどけて見せた。紙を確認すると何やら見慣れない直筆の文字が書いてある。
おっさん曰く"お前は強くなる素質がある。ヘルニア国に行け。この紙を持っていけば通れる"と言う。
太郎は今の自身のおかれている状況を知るきっかけにもなるだろうと思い出しおっさんにヘルニア国に行くことを伝えると
教えてもらった方角へ旅を始める。

出発するとき孤児院のみんなが見送ってくれる中、精一杯手を広げて漢泣きをして太郎を見送るTS・ケータ(30)の姿も見えた。

太郎はTS・ケータ(30)に合図を送ると肩に下げていたプラスチックの大剣をTS・ケータ(30)に向けて放り投げた。

「これは友情の証だっ!またどこかで会える時まで大事にとっておいてくれっ!」

太郎はそういうと背を向けて歩き出した。

友情の証を手に持ったままTS・ケータ(30)は叫んだ。

「俺、絶対強くなるからなっ!」

「フォロワーが増えたら、お前のスピンオフも書いてやるよ(未定)」

だぶまんが心の中でふわっと言い残した。

弱者太郎のヘルメットの開口部からはツーっと流れる小粒の雫が差し込んでくる光に反射してキラキラと光っていた。

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微熱の道化師

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