彼女もまた守ろうとしただけ
説明
G.2「魔法少女覚醒」

雲母は兄がフロッグマンに吹き飛ばされるのを目の当たりにして血の気が引いた。
次はお前だと言わんばかりに、フロッグマンは鋭い目を彼女に向け、じりじりと迫ってくる。
「もうだめだ」――恐怖に震える雲母。その瞬間、不思議な声が聞こえた。

「力が欲しいかにゃん?」

確かに耳に入った声。その問いに雲母は一瞬迷ったが、「欲しい」とすがるように答えた。
すると目の前が一瞬明るくなり、気づけば彼女は車の外に立っていた。
その変化にフロッグマンも動揺し、「なにぃ」とうめき声を上げる。
雲母は自分の姿を見下ろしてさらに驚いた。いつの間にか、魔法少女のような衣装をまとっていたのだ。

「これ、なに……?」戸惑う彼女の背中には、あの「きっしょい」ピンク色のぬいぐるみが張り付いている。
「パンチを繰り出すにゃん!」再び耳に響く声。状況に困惑しながらも、フロッグマンが攻撃を仕掛けてくるため雲母はやむなくパンチを繰り出した。
その拳がフロッグマンの胸に当たり、わずかにのけぞらせた。「いいパンチだ、1ヒット」と声が聞こえた。

しかし、何発パンチを繰り出してもフロッグマンはダメージを受けているようには見えない。焦る雲母に声が続く。

「魔法攻撃を仕掛けるにゃん!」

雲母は聞こえた言葉に従い、雲母は見よう見まねで呪文を唱えた。

「吹き飛ばせ、ウィンド!」

腕に風がまとい、フロッグマンを数メートル吹き飛ばす。手応えを感じた雲母は繰り返し攻撃し、次第にフロッグマンのハードスーツが壊れていった。

ついにフロッグマンはボロボロとなり、倒れ込んだ。「覚悟しなさい」と雲母が近づくと、フロッグマンは一転してにやりと笑った。
「なーんてな」――そう言うと、何事もなかったように立ち上がり、彼女の首を掴んで顔を近づけてきた。「俺の名はフロッグマン。この町で最強のソルジャーだ。お前に負けることなんてない。」

雲母は絶望した。兄は意識を失い、きっしょいぬいぐるみも捨てられないまま、成す術もない。「最後に何か言うことはないか?」とフロッグマンが雲母に問いかけた。
その瞬間、彼の口臭の強烈さに気づいた雲母は、思わずつぶやいた。

「すごく臭い……」

その一言にフロッグマンの動きが止まる。

「精神攻撃を仕掛けるにゃん!」

再び声が響き、雲母は思いつく限りの侮蔑をフロッグマンに浴びせた。

「うぐぐ……やめろ、俺は最強なんだ……」頭を抱えて混乱するフロッグマン。
雲母は追い打ちをかけ、ついにフロッグマンは自暴自棄になり、「みんな消えてしまえ!」と叫んで左腕のランチャーを爆発させた。
巨大な爆風が町を包み込む――かに思われたが、煙が晴れると、きっしょいピンク色のぬいぐるみが風船のように膨らんで雲母を守っていた。

「今だ、必殺技を出すんだっ! に、にゃん……」声に導かれるまま、雲母は頭に浮かんだ言葉を叫んだ。
「元に戻れ、リジェクトフュージョン!」すると、フロッグマンを包んでいた邪気がすべてきっしょいぬいぐるみに吸い込まれ、フロッグマンは人間の姿に戻っていった。
そこにいたのは、疲れ切ったサバイバルゲーム帰りのような青年だった。

ようやくすべてが終わり、雲母は兄を探した。兄は意識を失い、重傷を負っているように見えた。

「お兄ちゃん、死なないで!」涙ながらに呼びかける彼女に、あの声が再び響いた。

「☆ノ兄は死なない。君には町を元に戻す力がある。」振り返ると、きっしょいぬいぐるみがそこにいた。

「今から言う呪文を唱えてごらん。町が元に戻るよ。」

雲母は信じられなかったが、この状況を変えたい一心でその言葉を受け入れた。

「チェンジ・ザ・ワールド!」

雲母は叫んだ。空間が歪むように変化し、町は元通りに戻っていった。
薄れていく視界の中、最後にキュービーは言った。

「君は選ばれし魔法少女だ。私の名前はキュービー。次に会うときは捨てないでくれ。じゃないと、お兄ちゃんが死んじゃう。」

はっと我に返ると、雲母は自室にいた。リビングでは兄が何事もなかったかのようにアニメを見ている。半信半疑のまま部屋に戻ると、そこにはきっしょいピンク色のぬいぐるみが転がっていた。

「あなた、もしかしてキュービーなの?」問いかけると、きっしょいぬいぐるみが動き出した。

「やれやれ、その名前、どこで知ったのかにゃん。」雲母がこれまでの出来事を説明すると、キュービーは満足げにうなずいた。

「やっと見つけた。最強の魔法少女を。」

雲母の新たな日常が、ここから始まろうとしていた――。

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微熱の道化師(現代編)のうた
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