バデーニさん令和の高校生になる
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 この世の中は革新的に科学技術が進歩し、地動説は当たり前になっている。もう何百年も経っているのだから不思議はない。俺の放った秘策を誰かが伝え、そして誰かが実証した。だが、実にくだらない。そこに俺は存在しない。

 

 なので、新しい分野を探した。誰も実証できていないところでこそ、俺の存在意義があるのだ。いかん、今は授業中だ。くだらん授業だ。

 

「〇〇〇べきか〇〇べきか、それが問題だ」と先生が黒板に書いた。デジタル教科書は男の子がゲームの前で首をひねっているイラストだった。吹き出しのセリフが空欄になっている。

 

「ハムレットの名言のもじりだけど、イラストの子はどんな風に迷ってるかな?これわかる人?あ、中村くん、ちょうど目が合ったね。わかるかな?」

 俺は立ち上がった。そして即答した。

 

「課金するべきか無料分で我慢するべきか、それが問題だ、です。ハムレット元ネタは、生きるべきか死すべきか、それが問題だ、です。先生。」

「正解。」

クラスメイトからわあっという賞賛の声があがった。こんなどうでもいいクイズ、なんで授業で行うのだ。金融の授業ならもっと高度なことをやってほしい。

 俺は、早く俺だけが発見した学説を実証したいのだ。そうだ「人生を特別にする瞬間」それを求めている。

 

 

 それから放課後、たまたま歩いていた秋葉原で、聞いたことのある声がした。

「バデーニさん?いや!ほんとに?」

 

この世に生まれ変わっているオクジーに偶然出逢った。オクジーは成人していた。相変わらず、のんきなリアクションだ。

 

「オクジ―。今、何をしている?」

「いや、大学生院生です。まさか俺が大学に行けるなんて。それも博士課程になんて。」オクジ―は頭をかきながら照れ笑いした。

 

「パデーニさんこそ、高校生ですか?」

「そうだが?何か問題あるか?」

「いや、学ランよく似合いますねー。あ、そうだ。俺、この日本でヨレンタさんに会ったんですよ。」

「そうか。彼女は今どうしてる?地動説が今では揺るがしがたい真実だ。以前の記憶があれば彼女にとっても感慨深いだろう。」

「それが……。その……。会ったのは一瞬で話せていないんです。」オクジ―は言葉をにごした。

 

 オクジ―は宇宙飛行士を目指していた。宇宙から地球を見てみたいと思ったそうだ。だが何回も試験に落ち続けた。その後、大学院に入学した。

 今世で生まれた時、優秀な弟ができ、その弟が宇宙飛行士になった。

「それ『宇宙兄弟』じゃないか。」俺はつぶやいた。

「弟は、ほんと合理的な奴で。すごく頭がいいんです。」また照れながらオクジ―は頭をかいた。

 

「ちょっと待て。」俺は家電店のテレビ画面にくぎ付けになった。

そこには、前世と同じ少女姿であるヨレンタの映像と彼女がノーベル平和賞をもらった速報が流れていた。

 

「あ!」オクジ―はバツが悪そうにテレビ画面を見た。そしてわなわなと震えている俺を見て絶句した。

 

「何で……。」俺はふいに口にした。

 いやヨレンタのもらった賞は、なんなら平和賞だ。これは新たな独自の学説を実証したわけでもない。現に今、世界中で戦争が無くなっているわけじゃない。

「ヨレンタ、やるじゃないか。生まれ変わっても。」俺は顔をひきつりながらも彼女をたたえた。

 

 覆面歌手がいて、声優が積極的に顔出しする世の中だ。何があってもおかしくない。そして俺はいつのまにかオクジ―と河原べりに座っていた。これじゃ『セトウツミ』じゃないか。

 

 これがアオハルか。人生を特別にする瞬間、俺だけが発見した学説の実証に程遠い。俺は一体、何をしているんだ!

 

説明
『チ。-地球の運動について- 』ネタの文章作ギャグです。
アニメ視聴途中です。バデーニさんのキャラものすごく濃いですね。声が中村悠一さん、はまり役です。

サムネイル絵はこちらに掲載しました。https://3299obanai.seesaa.net/article/512929836.html

1月ごろに思いついたのですが、長編漫画難航したため投稿が遅れました。続きあるかも。
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チ。―地球の運動について― バデーニ オクジー 

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