| アメリカ議会図書館は『オズの魔法使いは国内最高で 最も愛される国産のおとぎ話となるだろう』と発表し、最初の「アメリカのおとぎ話で最も読まれた児童書」の1つに認定している。その作者ライマン・フランク・ボームが亡くなったのが1919年5月6日だ。ボームは演劇にも傾倒していて、1900年の『オズの素晴らしい魔法使い』出版の2年後、同作を『オズの魔法使い』と改名した作品をミュージカル化して大ヒットしている。続いて1939年に『オズの魔法使』と改名したミュージカル映画を上映して、こちらも大ヒットした。 ボームの姪ドロシーは難病を患って、月齢5ヶ月で脳充血により亡くなった。妻のモードはドロシーを娘のように可愛がっていたので、ボームは妻の悲嘆を和らげるために、ドロシーという名をオズの魔法使いの主人公の名にしたという。 ＯＺのオズは「オージー（オーストラリア）」を意味するそうだ。そしてオズ(ＯＺ)は金の単位のオンスでもあるから、大人の世界を皮肉っているとも取れるそうだ。1900年のオーストラリアはイギリスの自治領になったばかりで、南半球のそこはアメリカ人にとって異世界といっても良いかも知れない。きっと人々の想像力は掻き立てられたことだろう。オズはオーストラリア大陸にある広大な砂漠中央の魔法の国を想定しているそうだ。ただ実際の舞台はアメリカの東西南北のようで、スタート地点のエメラルド・シティはミシガン州ホランド近くのキャッスル・パークの城のような建物を基にしているそうだ。黄色いレンガ道はボームが通学していた陸軍士官学校があるニューヨーク州ピークスキルだし、1893年に開催されたシカゴ万国博覧会のホワイト・シティやサンディエゴ近くのホテルからもエメラルド・シティの着想を得ているらしい。オズ王国はアメリカに類似しているそうだ。東西南北に4つの国があり、北部の首都はエメラルドの都で、東部は工業地帯のブルーカラーから青、南部は赤土やレッドネックから赤、西部はカリフォルニア州のゴールドラッシュから黄色で表現されている。そして北部エメラルドの都となるワシントンD.C.は紙幣の色から緑で表現される。物語の悪役は東西の悪い魔女で、悪い魔女たちは市民を魔法にかけ奴隷のように扱う。良い魔女と悪い魔女の力関係はほぼ同等で、このバランスがオズが変化なく続くか発展するかに関わってくる。この関係はアメリカの支持政党に関連付けられるそうだ。西の悪い魔女は発達した鉄道、石油王、そして自然豊かな西部に表現される。19世紀、西部は軍事色が強かったが自然が豊かでそして干ばつ被害も甚大だった。これは火事や竜巻よりも被害が大きく、その年の収穫に大きな影響が出る。そのため西の悪い魔女を殺す武器として水が引用されている。魔女の遺体の茶色の塊は大きな嵐の後の泥に類似している。ドロシーは水たまりの上を歩き、溶けた魔女の跡のある床を掃除する。東の悪い魔女は農業従事者を圧迫するウォール街など東部の経済、工業を表現しているとされているそうだ。19世紀は、東部の工業労働者が重労働を課せられていたから東の悪い魔女は国民を奴隷のように扱ったのだろう。魔女は政治家と実業家なのだ。コスプレ好きなトランプさんが魔女のコスプレをしたら受けるんだけどなぁ。 |