5月23日は世界亀の日(World Turtle Day)だという。American Tortoise Rescueが2000年にこの日を制定している。その趣旨は、亀について知り、亀に敬意を払い、亀の生存と繁栄のための人間の手助けをするということだが、いったい亀のどこに敬意を払うのかが 僕には全くわからない。しかし、亀の日だから せめて亀の甲羅の事くらいは勉強してみようと思う。 爬虫類は脱皮をするから、カメも脱皮をする。ヘビなどのようにつるりと全体が剥けるのではなく、ぼろぼろと剥けるような感じだという。甲羅は背骨と肋骨でできた籠のようなつくりになっていて、外側はウロコが変化した甲板で固まっているそうだ。亀を外骨格とよんでも良いのか?という疑問は学会でも暫く議論されていたようだが、2009年に理研CDBの平沢達矢さん(形態進化研究グループ)らが、カメの背甲が外骨格成分を含まず、内骨格である肋骨・背骨が純粋に拡張し変形することで進化してきたことを明らかにしている。(Nature Communications2009年7月9日) 亀がカルシウムの不足やリンの過剰を起こすと、当然 骨である甲羅も変型を起こしてしまう。肉食性のカメに 精肉やハム、ソーセージ、魚の切り身などばかり与えていると、カルシウムが不足し リンが過剰になる。草食性のカメがレタスやキュウリ、果物などカルシウムの少ない餌ばかりだったり、タンパク質の多い餌でも同様の結果になるらしい。ほかに ビタミンDの不足(紫外線の照射不足)だと、骨で構成されている甲羅に障害が出てしまうそうだ。症状が進行すると、けいれん発作や昏睡を起こすこともあるらしい。亀の甲羅の病気は人間の骨粗鬆症よりも重大な病気だと考えたほうが良さそうだ。 蟹の外骨格や貝が貝殻をつくったり 哺乳動物が骨や歯をつくるのは、バイオミネラリゼーションと呼ばれている。亀の甲羅も同じだ。バイオミネラリゼーションは,生物が鉱物を作り出す現象だ。生物が作りだした鉱物は最終的にバクテリアによって分解されるが、骨を作り替える作業は骨芽細胞と破骨細胞により新陳代謝が行われている。それは亀も人も同じだという。ビルディングは壊さなければ新築出来ないのと同じで骨も壊しながら、新しい材料で作り替えているのだ。 亀は甲羅に身を隠す生き物である。甲羅に入る時、カメは肺の空気を全部出しているそうだ。肺の空気を抜くことで甲羅の内側に作った隙間に頭や手足を入れて身を隠すことができるらしい。亀は甲羅に入っている間はあまり呼吸をしていないそうだ。呼吸を止めることで心拍数(脈拍数)は少なくなり 代謝もゆっくりになるから、結果的に長生きになると考えられている。 生物学的にいうと、どの動物も心臓が20億回ドキンと心拍を打つと寿命がくるそうだ。例えばハツカネズミは、1分間に600〜700回も心拍を打つ。体の大きなゾウは、1回の心拍に3秒もかかるそうだ。この心拍1回にかかる時間を「心周期」というが心周期が違えば、呼吸のペースや食事してから消化、排泄するまでの時間など、生きるぺースが違ってくる。ハツカネズミはよく動き回るので酸素消費量が高く、1日のうち10時間以上を寝て過ごす。ゾウはゆっくりと動くため省エネだが、体が大きいので1日のほとんどを食べることに費やし睡眠時間は3時間程度らしい。ハツカネズミの寿命は2〜3年、ゾウは70年以上生きるがこの年月は、心拍数20億回という単位で考えれば、同じ長さとなるそうだ(クジラも3秒に1回の心周期で寿命は100年くらい)。ゆっくり動くカメの寿命を詳しく見ていくと、やはり大きさによってずいぶん差がある事がわかる。ミドリガメ (ミシシッピアカミミガメ):平均寿命20〜40年。クサガメ (ゼニガメ):平均寿命は10〜30年。ニホンイシガメ:平均寿命は10〜20年。小型のリクガメ30〜50年。アオウミガメやアカウミガメで70〜80年、タイマイで30〜50年と推定されている。イメージよりは長生きしないようだ。 人間にもこの考え方を当てはめて、1分間の心拍数を平均70回/分、総心拍数20億回として計算すると、54.3年となる、終戦直後の日本人の平均寿命に該当するそうだ。人間は医療や文化の発展などで長生きしている動物の例外らしい。ただ睡眠時間を削って生活している人はやはり短命のようだ。睡眠中は心拍数が遅くなっているからだろうか? 亀も寝かさなければ、早死にするのかも知れない。
きっと恋多き人はトキメキく数が多いだろうから、頻繁に心拍数が増えて寿命が縮んでいるはずだ。美人薄命? |