『想いの果てに掴むもの 〜第7話〜』魏アフター
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真・恋姫無双 二次制作小説 魏アフターシナリオ

『 想いの果てに掴むもの 』

  第7話 〜 日々またこれ修行(前編) 〜

 

同盟国会議を終え5日

慌しかった、魏の許昌の人達も、その落ち着きを取り戻していた。

特に、城に勤める者や、警備兵達は、あの慌しかった日々の後始末を終え。

その間に溜まった仕事を、静かにこなしていた。

むろん、逆に、慌しくなった人もいる。

俺もその一人だ、なぜなら

 

「待てーーー! 北郷っ!」

 

ビュッ

 

「ひいぃぃぃぃ」

 

頭の上を横に通り過ぎる"七星餓狼"から、必死に身を避わす。

 

「避けてばかりじゃ、修行にならんぞ!」

「だぁぁぁぁぁ!

 今日は、秋蘭の予定のはずだーーー!」

 

以前とは別次元の速さで、繰り出される斬撃を必死に避け続け、

この状況に陥った理由を、春蘭に聞く

 

「ふっ、よく避わし続けるじゃないか、逃げ足だけは相変わらず速いようだな」

「と、逃げ足だけとわぁぁぁ、やべっ」

「この速さで、しゃべる余裕があるとは、少しは、腕を上げたようだなっ!

 後、秋蘭は遅れるとのことだ。その代わり私が来てやっただけということ、

 ありがたく思え!」

「む、無理、まだ春蘭の相手は俺で ひぃぃぃ」

「なんだと、私が相手では不満というのか!」

「誰もそんなこと言ってねぇぇぇぇぇ!」

 

数日毎に行うと決めた、鍛錬の初日。

秋蘭の代わり突然現われた、春蘭の猛攻によって、俺の悲鳴が、静けさを取り戻した許昌の街に、響き渡る。

 

 

 

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バシャ

 

冷水を浴びせられ、目を覚ました俺に

 

「目が覚めたか、北郷」

 

秋蘭が、声を掛けてくる。

とりあえず、この姿勢でいるのに、その服でそんなに近寄られたら、

・・・・・以外にも白か

 

ふみ

 

「ふぎゅ」

「どうやら元気なようだな」

 

あっさり、俺の視線に気がついた秋蘭は、俺を踏みつけ春蘭の元に行く。

あっ、そっか、たしか、春蘭の攻撃を殺しきれず、

吹っ飛ばされ、まともに壁に叩きつけられたんだった。

スーツは鍛錬では、必要無しと判断したので部屋だ。

だって、あれ白いから汚れやすいもん・・・

おかげで、その衝撃に耐え切れず、あっさり、意識を断たれた。

気絶する前の事を思い出し、俺も秋蘭達のところに向かう。

 

「で、なぜ姉者が、仕事をほったらかせて、北郷と仕合をしていたのだ」

「うっ、秋蘭が遅れると言っていたので、その分を見てやろうと思っただけだ」

 

秋蘭達の所に行くと、ちょうど、そんな会話をしていた。

どうやら、春蘭のことは、代わりではなく、言付けだけだったようだ。

 

「今の北郷に姉者の相手は、無理だという事が判らぬ姉者ではあるまい」

「だが、軟弱な鍛錬では、意味が無い」

「姉者よ、それは、私の鍛錬が軟弱と言っているのか?」

「うっ」

「姉者の気持ちは判るが、今の北郷では、逆効果というもの、分かってくれ」

「ふん、そこまで言うなら仕方ない。

 秋蘭、この軟弱者を、せめて半人前程度には、鍛えてくれ」

「ああ、分かっている」

 

そう言って、背を向ける春蘭に、俺は手を振って

 

「春蘭、ありがとー」

「ふん」

 

春蘭はそう言って、城内調練場から出て行く

 

「北郷すまない、私が姉者ではなく、侍女にでも伝えさせておけば良かった」

「えっ、なんで? いい経験になったよ。

 俺なんて全然たいした事無いって、叩きのめされたんだから。

 それに目標も見据えられたしね」

 

俺の言葉に、秋蘭は笑い

 

「そう言ってくれると助かる。

 だが姉者が目標とは、たのむから北郷まで、猪武者になってくれるなよ」

「・・・さすがに、それは目標にしたいとは」

「そうしてくれ、さすがに姉者みたいのが、二人もいるのはかなわん」

「酷いこと言うなぁ」

「さて北郷、私は今のお前に足りないものから、鍛えていくつもりだ。

 姉者の言うとおり、軟弱な訓練にするつもりは無い」

 

秋蘭の言葉に、俺は姿勢をただし頷く

 

「北郷、今お前が一番必要で、足りないのは、なんだと思う?」

 

秋蘭が聞いて来るが・・・・・いかん、答えられん

 

「何だ、わからんのか」

「・・・一杯ありすぎて」

「ふぅー、北郷、今お前に一番必要なのは、体力だ。

 確かに、以前に比べて体力はついているようだが、それでも、相手を攻撃し続ける体力はあるまい。

 一対一ならそれでもよいが、多数相手では話しにならん」

「う・・・」

 

俺の答えに、秋蘭は溜息をつき答えを教えてくれる。

確かに、それは言える馬岱戦なんて、体力の消耗を計算できるくらい、減りが早かったもんなぁ

前に比べ、かなり体力が付いたつもりだけど、やはり、実戦で使用する体力は、かなり違うのだろう。

その前の、蒙鋳さん達の時は、風を人質にとっていた形になっていたから、参考にはならないし、

やはり体力かなぁ・・・

 

「では、北郷、今から終わりまで、ひたすら私を攻撃しろ。

 体力が尽きてもだ。

 ただし半端な攻撃したら、こちらも反撃を加えるから、そのつもりでいろ」

 

そう言って、練習用の剣を構える。

おれは、模擬刀をかまえ、秋蘭に全力で攻撃を仕掛ける。

秋蘭は、俺の攻撃を受け弾き続ける。

そんな事を繰り返し続けていると、

10分もしないうちに、俺は地面に這い蹲り、立つ元気すらなくしていた。

 

「ぜーーー、ぜーーー」

「・・・・もう終わりか?」

 

こちらは、全力で体を動かし続け、もはや瀕死状態の俺に対して、秋蘭は息を乱してすら居ない。

・・・やはり、こっちの人は化物ばかりだ

 

「北郷、今の攻撃は、お前らしくも無かったぞ」

「ぜーー、ぜーーー?(どこが?)」

 

俺は、まともに返事する事も出来ずに答える

 

「先ほどのは、まるで猪武者そのものだ」

「ぜーー、ぜーーー?(だって攻撃し続けろと?)」

「私は、攻撃し続けろとは言ったが、全ての行動において全力でと、言ったつもりは無い」

「ぜーーー?(そうなの?)」

「今までどおり、お前らしく攻撃してこれば、よいのだよ。

 ただ、私から仕掛けることは無いだけというだけだ。

 そうやって動き続けながら、長時間戦うためのコツを身に着けつつ、体力の増強を行うだけだ。」

「ぜーーー、ぜーーー!(それを先に言ってくれ!)」

「それくらい自分で考えれなくてどうする。

 手取り足取り、教えてもらえると思うなよ。

 だが、北郷のやる気が、判っただけでも無駄ではなかったな。

 さすがに、その状況ではすぐには無理だろう。

 少し休憩してから続けるぞ」

 

秋蘭の言葉に感謝しつつ、俺は手を上げてその言葉に答える。

 

 

 

 

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同盟会議後、二日たって、俺の待遇が決まった。

警備隊長の立場は、今までどおりだが、やはり、以前どおりとはいかず

俺の天の国の知識を利用した、政策や問題解決が重要という事。

そのため基本的に、三日間警備隊長、三日間文官見習いとして政務を行う。

そして、その間に武の鍛錬と休息という、不規則な職務となった。

これには、凪達三人組が不平をあげたが、ある程度警備体制も出来上がり、

もともと俺が居なくても回っていたのと、警備隊長としての仕事を減らして、

文官としての仕事を増やす事は、同盟結成前から考えられていた事なため、仕方が無い事だった。

だが、国中に今の警備体制を広げるため、それを指揮できるのが、

天の知識を有している自分しかいないと言う事もある。

その上、警備隊の仕事は、街や民の様子を知るのに都合がよく。

また風評を高めるのに、役立つという事で、ある程度の残すと確約したため、3人は渋々納得した。

むろん、何か事情があれば、そちらを優先させると言う事でもあるのだが、

また、風の件には、皆が驚いた。

何より、俺が一番驚いたと思う。

 

「風は、皆に恨まれる事も、覚悟の上なのですよー」

 

と言っていたが、

 

「お兄さんは『 風は、俺のものだ 』と言ってくれたのですよー」

 

と言う、次の一言で、俺は他の魏の娘達(霞、凪、真桜、沙和、春蘭、季衣、流琉、何故かいた天和、

地和、人和)に殺人的な視線を一方的に浴びることとなり、その日一日、生きた心地がしなかった。

いやーーー、人って、恐怖で、心臓止まるって本当だな。

あの時絶対、数十秒止まったと思う。

うん、一週間前、華琳が怒鳴り込んできた理由がよく判った。

とにかく、その日から3日間警備の任についた俺は、特に沙和達に、しつこく自分達にも言って欲しいと

強請られた。

だがその言葉は、現在華琳の厳命によって封じられ、俺は必死に皆を宥めるために、奔走する事となる。

ただ、そんな奔走も、こちらに戻ってこれたから、と思えば耐えられるのだが・・

風・・・・これ、しっかりとお仕置きじゃないですか?

 

 

 

 

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そう言う訳で、

本日は文官の日・・・・なんかゲームのターンみたいだな。

まあ文官と言っても、だいぶ慣れたとは言っても、こちらの世界の常識や知識の欠けている俺では、

あまり難しい事は出来ないため、最初は優先事項の高い問題の解決をあたりながら、おいおい、こちらの

常識や、やり方に慣れてもらう、と言った形になっている。

 

ドサッ

ドサッ

 

「じゃあ北郷、これらの問題解決案を早急に提出して、いいわね!」

 

そう言って、桂花が俺の前に、懸案事項を纏めた竹巻や木簡の束を置いて、自分の席に戻っていく。

とりあえず、適当に一つ広げてみると、

そこには以前提案した、治水工事等の公共事業の経費削減案だった。

確かこれは、大雑把にしか書く事が出来なかったため、幾つかの問題が発生し、旨くいかなかったことが

報告されている。

 

「風、これのことなんだけど・・」

「ああー、これはですね・・・・」

 

俺は、風に相談しながら、そのときの発生状況や、問題内容を詳しく聞く

それに対応した解決案を、記憶から、俺なりにこの世界にあわせて出す。

それを風が、この世界で問題ないか吟味し、次にどんな問題が発生するかを想定して、その解決案を同じ

ように出す。

ようは、俺の天の知識が使えるかどうかの、確認作業みたいなものだ。

そうやって、どんどん作業を進めていく。

無論、ただ、作業を進めていくのではなく、俺もこの世界の常識や考え方を覚える必要があるので、疑問

に思ったことを風に、どんどん質問していく。

だが風も、それを親切丁寧に教えてくれるのではなく、調べた方がよいと判断された物は、参考になりそ

うな本の束を渡されたりと、なかなかスパルタだ。

そのうえ、時折どれだけ理解しているか、確認するように、質問されたり試されたりと、油断がならない。

とりあえず、この本の束・・・今夜中に読むことと言い渡された・・・・風の鬼

 

そうやって、とりあえず、渡された仕事を全て片付け、桂花に確認してもらうと、食い入るように、

解決案を纏めた竹巻の束に目を通していたが、やがて全て読み終え・・・

 

バンッ!

 

「あ、あんたが凄いんじゃなくて、天の知識が凄いんだからね!

 そのあたり、勘違いしないでよねっ!」

 

と、机を叩き、俺に怒鳴りつけて、纏めた竹巻を持って部屋を出て行く。

まぁ、たしかに、俺の出した案は、俺が考え出したわけじゃなく、先人達の血と汗の結晶みたいなものだ。

それを、自分が考え出したかのように振舞う気は、さすがに沸かない。

 

「なに、当たり前のことを怒鳴ってるんだ、あいつ?」

「「「「 ぷはははははっ 」」」」

 

俺の言葉に、風、稟を除く文官、侍女が可笑しそうに笑い出した。

 

「へ?」

 

回りの出来事に、俺が戸惑っていると

 

「一刀殿、判らないなら判らないで良い事ですので、くれぐれも聞かないように」

「そ、そうなの?」

「そうなのですよー、聞けば、お兄さん桂花ちゃんに、恨まれることになるのですよー」

「まぁ、これ以上無いくらい恨まれている気もするが、分かった。

 で、今日のお仕事はこれで終わり? 皆で食事でも行かない?」

「いいですねー、と言いたいですが、お兄さん、今から、お勉強の時間なんですよー。

 お兄さんには、いろいろ覚えてもらわなければ、いけないのですよー」

 

仕事の終わった開放感あるところに、風の爆弾発言が飛んでくる。

やっぱり、世の中そんな甘くないよね

 

「・・・・風先生、お手柔らかにお願いします」

「大丈夫なのです、稟ちゃんと二人で、優しく教えてあげるのですよー」

「あの、・・・それ、絶対優しくないと思うですが・・・」

 

そして始まった勉強会

 

 

 

 

数刻後:

・・・・・勉強会を終え

 

 

白一色

 

 

 

今の俺には、その言葉がよく似合う。

なぜだ、白く燃え尽きたはずなのに、頭の中に幾つかの単語が舞い踊っている。

 

「今日は、お兄さんの百面相が楽しめたのですよー」

「確かに、あれは見ていて面白いですね」

「そうなのですよー、稟ちゃん、お兄さんの魅力に気がつきましたか」

「あれはあれで、いいものですが、私には華琳様がいますので、

 ですが、こう、考えている事が、ここまで顔に出るのは、どうかと思います」

「いえいえ、これがお兄さんの良い所ですから、

 お兄さんの場合は、本当に大事な場面だけ、隠せればよいのですよー」

「そうですね、直して直るものとも思えません」

「そうなのですよー」

 

風と稟の詰め込み教育に、

 

真っ白に燃え尽き意識が遠のく中、

 

そんな会話が、聞こえる。

 

そのかすかな声は、

 

きっと、目を覚ましたら、

 

覚えていないだろう

 

ガクッ

 

 

 

 

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ビュッ

 

シュッ、

 

トッ

 

ヒュッ

 

タッ

 

ヴォン

 

ピッ

 

「ふぅーーーーー」

 

一通り型を行い、想像の敵との模擬戦を終え、もう一度型を行う。

そんな事を終え、鞘に模擬刀を収め、俺は息を静かにゆっくりと吐く。

体内の熱を静かに吹き出すように。

 

本日は、 鍛錬日 兼 休日

朝餉も終え、食後の体操と軽くやってたら、興がのり、続けてしまった。

とりあえず、後しばらくすれば凪達も来るであろう。

一度体と心を落ち着かせようと、

模擬刀を置き、服を調え、正座をし、瞑想する。

そうして、薄眼になり、回りと一体になるように、気を静め、意識を体の内へと持っていく。

呼吸と共に、酸素が血管を通して体中に廻るように、体の隅々まで意識が廻っていく感覚になる。

そして、そのまま、意識を外に向けたまま、内へ内へと意識広げていく。

 

じっちゃんに言われて、精神修行の一つだが、最初は『できるかーーーー!』と

喚いていた事も、いざ、この段階になると、自然とできるようになってきた。

むろん、じっちゃんに言わすと まだまだ らしいのだが、それはなんとなく判る気がしていた。

 

ザッ

 

そうしていると、後ろから、誰かが近づいてきた。

俺は瞑想をやめ、後ろを振り向くと

 

「隊長おはようございます」

「ふわぁぁぁ、隊長、おはよーさん」

「おはようなのー」

「三人ともおはよう」

 

やってきた、今日の教官達に挨拶を返す。

 

「隊長、今のは?」

「ん、さっきの? ちょっと心を落ち着かせようと思って、瞑想してた」

「妄想の間違いちゃうんかー」

「そーそー」

「酷いなぁ、俺そんな事ばかり考えているように見えるか?」

「言ってもええんか?」

「・・・いえ、いいです」

 

真桜の答えに、俺が肩を落としていると。

 

「隊長、今のは立ったままでも出来ますか?」

「瞑想? 立ったままでは、やった事はないけどできると思う」

「では、やってください」

 

凪の言葉に、俺は、自然体に立ち、瞑想に入る。

真桜や沙和が、首をかしげて、覗いて来るが無視して続ける。

瞑想がすすみ、回りの音が静かになる。

俺の中に、一瞬のような永久のような空間が広がる

しばらくすると

 

「隊長、もういいです」

「ん」

「それは、どこで学んだのですか」

「いや、じっちゃんに言われて、続けてただけで、禅の一種だよ」

 

凪に問われ、俺は禅や、瞑想の状態とかを話す。

剣道や剣術を学ぶさい、禅とまでは行かないが、近いものを、子供の時からやっていた事も。

 

「そうですか、では基本は出来てる、と考えてもよさそうですね。

 では、真桜、沙和」

「なんや凪」「なになに」

「隊長と勝負してくれ、私はそれを見ながら、少し確認したい事がある」

「ええで」「ぼこすか にしてあげるのなの」

 

凪は、一人何か考えた後、とんでも発言をする。

 

「凪、いきなり?」

「鍛錬の一環と考えてください。

 大丈夫です、今の隊長なら二人と、いい勝負が出来るでしょう」

「えーーーと、手加減してね」

「では、最初は、沙和から、

 二人とも準備をお願いします」

 

いきなり、模擬戦とは・・・まぁ、現状確認って事なのかな

まぁ、胸を貸してもらうつもりで、最初から全力で行こう。

自分の警備隊の装備を身に着けながら、そう覚悟を決める。

沙和は真桜の作った "二天" の複製をいつものように構える。

 

「では、はじめっ」

「てぇぇぇぇい」

 

凪の合図と共に、沙和が突っ込んでくる。

その勢いを利用して、右手の剣を打ち下ろしてくる

 

シュッ

 

俺は、沙和の左に側に踏み込むことで、外に避わす。

俺は、そのまま、剣を払おうとするが、

 

ドッ

 

沙和は、そのまま横に飛び俺に体当たりを掛ける。

その衝撃に、俺は踏み止まれず後ろに後退した。

その隙に、沙和も体勢を直す。

 

「でりゃーーー」

 

ビュッ

ビュッ

 

連続して、空気を切り裂く音がする。

二本の剣を生かした舞うような剣舞が、沙和の攻撃の回転速度を上げていく。

 

「ほらほらほらーーなのっ!」

「クッ」

 

勢いづいた、沙和は攻撃の手をやめない。

攻撃を受ければ、その反動を利用して。

避ければ、その勢いを利用して、次の剣が襲うというわけか。

それにあの踊るような動きは、沙和らしい武と言えるだろう。

このままでは、じり貧だが、俺はとにかく沙和の動きを見続ける。

今の俺に、各上の相手にやれることは同じだ。

相手の 攻撃と動作と間合い、そして呼吸と状況、そこから次の手を予測するための情報を集める事。

そこから、俺は勝つための手段を構築する。

攻撃速度は勢いに乗っているために、たしかに速い。

その上、二刀流だ、勢いに乗れば、相手の防御すら吹き散らすだろう。

だが・・・・、

集中しろ

 

キーーーン

 

集中を増すと共に、色を失った世界に俺は跳びこむ。

そこでは、前より沙和の動きを、捉える事が出来るようになる。

 

シュッ

 

1本目の剣を軽く払い、続く2本目の剣が、斜め右上から斜めに下ろされる。

俺は下段のまま、少し下がってやり過ごす。

一瞬背中を見せたと思ったら、避わされた反動を利用して一回転して 、今度は横一文字に右から払われる。

それも、もう一度体を右に捻りながら下がって避ける。

そこへ二本目の剣が襲い来る。

それに合わせるように、半歩だけ下がって、左上に、沙和の剣を後押しするように、剣を払う。

 

ギッ

グイッ

 

「えっ」

 

沙和の勢いに乗った剣は、俺の剣によって更に加速される。

沙和はその勢いを処理できずに、沙和の剣は上へ払われ、姿勢を崩す。

だが、さすが沙和、それを更に利用して、体を回転させながら、斜め上から振り下ろそうとする。

だが俺は、この時すでに次の動作準備を終え、彼女の右足に向かってスライディングを掛けていた。

 

「きゃっ」

 

ベチャ

 

さすがの沙和も、あそこから、避ける事は出来なかったのか、俺に肢をあっさり掴まれて、剣を振るう

勢いのまま、顔面から地面に突っ込んだ。

 

「それまで」

「・・・沙和大丈夫か?」

 

凪の言葉に、剣を収めるが、さっきからピクリともしない沙和に声を掛ける。

 

ビクッ

 

一瞬震えたと思うと、

 

「隊長の蛆虫野郎なのーー!」

 

そう言葉を残して、後姿を見せて走り去っていった。

 

「・・・・やりすぎた?」

「ああー、気にせんでええー、鼻血出てたから、化粧を直しにいっただけやろー

 すぐ戻ってくると思うで」

 

真桜の言うとおり、沙和はすぐ戻ってきた。

その顔には、鼻血の形跡はかけらも無かった。

 

「うぅぅぅぅ、隊長に負けたなの、当分立ち直れないのなの」

「あぁ、確かに、それは立ち直れんかもなー」

「ひ、ひどっ、一応、俺君等の隊長なんだけど・・・弱いけど」

「隊長、何故あのような手段を?」

「いや、沙和は剣を二本振り回している上、あれだけ舞うよう動いているから、勢いを崩して、足元を

 攻撃したら、あっさり転ぶかなと思って」

「そうですか、その着眼点はよろしいのですが、あのような手段は、今後取らぬ方がよいでしょう」

「なんで?」

「もしこれが鍛錬で無かった場合、相手は一人と限りません。

 伏兵の存在も考慮しておくべきです。

 あのように寝転がってしまえば、避わすことすら困難になり、致命的です」

「う¨・・・」

 

そう言って、凪は、先ほどの模擬戦で気づいた事をいくつかあげる。

うん、こうやって、気がついてくれたことを、教えてくれる相手がいる、というのは嬉しいと思う。

じっちゃんの場合は、まず手が出てたからなぁ・・・

 

 

「では、真桜、準備してください」

「ちょい、まっときー」

 

真桜・・・螺旋槍か・・・・ドリルのおかげで攻防一体の重量武器。

本当、一体あの細腕で、どうやってあんなもの振り回してるのだか・・・

とにかく、俺と俺の剣では、まともに打ち合う事も、逸らす事も出来ない。

基本は避けて、引き戻される前に懐に入るしかないよな。

でも横に払われたら、あのドリルの回転に巻き込まれるだけなので、下がる以外、手が思いつかない無い。

他にも何か手を考えねば・・・

なんとか思案していると、真桜がいつもどおり、左手に片手で螺旋槍を持って、俺の前に来る。

・・・片手一本で・・・あれっまてよ

左手か・・・・・一か八かやってみるか。

俺は剣を右手に覚悟を決め、真桜と相対する。

 

「では、はじめっ!」

 

ダッ!

 

合図と同時に、今度は俺が真桜に疾走する。

 

「お、おわっ」

 

いきなり突っ込んできた俺に、驚きながらも、真桜は左手一本で、螺旋槍を横に払らう。

 

トス

ギィイイイイン

 

いち早く右手と地面に挿して固定した剣で、勢いの乗り切っていない螺旋槍を止める。

俺は突っ込んだ勢いのまま、右手の剣を軸に、左足を回転しながら蹴りを放つ。

 

ドッ

 

「い¨っ」

 

ゴトッ!

 

蹴りは狙いどおり、真桜の左腕のつけ根に当たり、真桜はその衝撃で、螺旋槍を手放してしまう。

俺はそのまま剣を抜いて、真桜に突きつける。

 

「ウチの負けや」

「それまで」

 

真桜と凪の言葉に、俺は深く吐き出す。

やばかった、後一瞬遅れてたら、あのドリルまともに喰らっていた。

その様子を想像すると、背筋に寒気が走る

 

「真桜ちゃん、いいとこなしなのー」

「真桜、油断のしすぎです」

「いやー、たしかに、完全にウチの油断だったわー」

「隊長、真桜の油断をうまく突いた策は見事です」

「うーん、褒めてくれるのは、嬉しいけど、

 実際は、今の俺では、あの手以外、勝ち目が無かっただけなんだよね」

「そうなん?」

「うん、さすが真桜の作った作品だけあって、よくできている。

 攻防一体の武器に、隙が見つからなくてね」

「隊長に、そこまで褒めてもらえると、嬉しゅうなってくるわ」

「うんうん、でも、それ真桜ちゃんしか使えないもんねー」

 

まぁ、たしかに、あんなものが誰にでも使えてたら、この世界はもっと発展してただろうなぁ。

しかし、動力が"氣"って、この世界、何でもありな気がしてきた。

 

「さて隊長」

「お、今度は凪がやるんかー」

「凪ちゃんやっちゃえー」

 

凪の言葉に二人が声援を送る。

凪か、前回は結局、最初はいい勝負に持っていけたが、それだけ、

後は一方的に守りに走らざるえなかった。

あの後、あの戦乱を越えた凪に、今の俺がいい勝負が出来ると思えないが・・

 

「いえ、それもいいのですが、別のことをします」

「そうなん?」

「えぇぇ、凪ちゃん仇討ってほしいのなの」

 

凪の言葉に、二人は声をあげるが、そんな凪に、それは顔を向ける。

凪は俺の顔をいや、視線をしっかり合わせると、やがて

 

「隊長、脱いでください」

「「「 ええええええーーーー 」」」

 

凪の爆弾発言に、俺と真桜、沙和三人の驚愕の声が空を突く

 

 

 

 

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「隊長、脱いでください」

「「「 ええええええーーーー 」」」

 

凪の爆弾発言に、俺と真桜、沙和三人の驚愕の声が空を突く

 

「なー、凪、いくらなんでも、こんな昼真っから、庭の真ん中って言うのは、さすがのウチも、ひくでー」

「凪ちゃんが、隊長色に染まっちゃったのー」

「ち、違います、二人とも、昼間からなに考えているんですかっ!

 隊長も、顔を赤くしないでくださいっ!」

 

真桜と沙和の言葉に、自分の発言が、どういう誤解を招いたか気がついた凪が、顔を赤くして否定をする。

あと沙和、隊長色ってなんだよ、俺そこまで色狂いじゃ・・・・ないぞ、たぶん

 

「・・・びっくりしたー」

「当たり前です!

 なに考えているんですか、いや、今のは私の方も、言い方が悪かったです。

 私が言っているのは、上半身だけです」

「あー、そう言うことなら」

 

凪の言葉に、今度こそ、俺は、脱ぎ出す。

むろん、上半身だけだぞ。

 

「うむ」

「ほーー」

「うわーなの」

 

脱ぎ終わったところに、3人がそれそれ声をあげるが、

 

「別にみるのは、初めてじゃないだろうが」

「いやー、さすがにこんな明るい所で見るのは、初めてというか、なー」

「うんそうなの、どきどきするのー」

「いや、行郡中何度か見ているはずだけど」

「いえ、あの時とは、別段の体つきです。

 よく引き締まってます」

「まあ、そう言ってもらえると、鍛えた甲斐があったかもな」

 

俺の言葉に、凪は、真剣な顔に戻り

 

「隊長、我々や春蘭様達のような、一定の水準を超えた武将との最大の違いが、なんであるか判りますか?」

 

そんな質問をしてくる。

 

「違い・・・・女の娘が多い事?」

「「「 はぁぁぁぁぁーーー 」」」

 

俺の答えに、三人が半眼になって、盛大に溜息をつく

いや、今のは合っているとは思わなかったけど、そんな盛大に溜息をつかなくたって・・・

 

「私は、真面目に質問したのですが、仕方ありませんね」

「う¨」

「たしかに、隊長がおっしゃっている事も、当てはまります。

 少なくとも、この大陸の人間では、無意識にでも、女性の方が身に付けやすいと言うのは事実です。

 隊長、判りやすく言えば、"氣"です」

「え、"氣"って、でも、凪や真桜の螺旋槍は分かるけど、他の皆は」

「いえ、皆たしかに、"氣"を使っています。

 ただ、無意識に覚醒して、無意識に使用しているだけです。

 ですがそんな人間は、数万に一人と言われてますが、根本は、私の気となんら変わりません」

「え、でも、みんなは、凪みたいに見えないけど」

「それは、私の"氣"質が影響しているのと、意識している、いないの差が大きいな原因です。

 もともと私の武の資質は、真桜や沙和のようにありませんでした」

「えっ」

 

凪の言葉に、俺は驚愕する。

3人の中で圧倒的な強さを持つ凪が、武の資質が無かったって、

そんな事言われても、信じられないって言うのが、正直な感想だ。

そんな俺に凪は続ける

 

「それでも、皆を守りたいと気持ちは変わらず、武術を学び続けました。

 幸いな事に、良き師にもめぐり合え、"氣"を身につける事が出来ました。

 "氣"が使えなければ、私は、そこらの一般兵と大差はありません」

 

凪のそんな告白に、俺は驚愕をするしかなかった。

 

「隊長、隊長には、今から"氣"を身に付けていただきます」

「えっ、俺にそんな"氣"があるとは思えないけど」

「いえ、気は、生物全てに存在します。

 ただ、それを使えるようになるかは、先ほども述べたように、極わずかな人間しかいません」

「それは理解できるかな、凪のような力が、誰にでも扱えたら物騒だし、

 それに、"氣"が原因というなら、季衣や流琉のような怪力とかも説明が尽く」

「はい、無意識に"気”を身に付けた者の殆どは、人並み以上の怪力や速度を身に付けます。

 季衣や春蘭様はその典型ですね。

 むろん、真桜のように例外はありますが、"氣"は無意識にでも鍛えていけば、その増幅幅を増やします」

「あぁ、なんとなくわかる。

 春蘭がよく『気合だ、気合が足りん』とか言っているし」

 

凪の言葉に、俺は、この世界の武将達の能力の高さの秘密を知った。

たしかに、あの細腕や細い足で、あれだけの筋力や速度が出るって、おかしいいと思ってはいたんだよね。

 

「むろん、"氣"が使えなければ、強くなれないというわけではありません。

 現に、隊長は、武芸でもって沙和や真桜を下しました。

 ですが、やはり、それでは"氣"を扱う相手に対して、限界があるのも事実です」

「じゃあ、俺も気が使えるようになれば」

「はい、少なくとも、真桜や沙和に、そう苦戦する事はなくなると思います」

 

おぉぉぉぉ、"氣"ってすげー、

たしかに、"氣"で増幅された力なら、あの螺旋槍も止められるかもしれないし・・・

俺が、興奮していると

 

「むろん、使えるようになるかは、別の話です」

「へ?・・・ここまで、盛り上げといて、それですか?」

「当たり前です、誰にでも、簡単に使えるようなら、それこそまだ戦乱の世でしょう」

「・・・・じゃあ、"氣"を身につけるというのは」

「隊長が言っていた天の御遣いとしての力です。

 隊長はこの世界に来て、筋力と速度が少しだけ上がったと言っていました」

「ああ」

「もしそれが、私の考えているようなものなら、今の隊長は、その資質がある可能性があります」

「"氣"に近いものだと?」

「 はい、根本は違うのでしょうが、そのあり方は、酷似していると思われます。

 隊長、今から私がやることを、むやみに人に教えたりしないと誓えますか」

 

そう言って、まっすぐ俺の眼を見る。

俺はそんな凪の信頼に答えるように

 

「ああ、約束する」

「判りました。

 体を楽にして立っていてください。

 私が何をしても、驚いたり抵抗しないでください」

 

凪の言葉に俺は頷く。

俺が頷くのを見て、凪は手袋を外し、その手に"氣"を浮かび上がらせる。

それはやがて、突き出した両手の二本の指に収束していく。

凪はそのまま、俺の息がかかるほど前に来ると、

 

トットットットットットッ

 

その指で、顔や体の至る所を、突いていった。

そして俺の背に回ったと思うと、その手で俺の首を軽く掴む。

 

「今ので、隊長の"気門"を開きました。

 今から、隊長の"氣"を無理やり、沸かし誘導します。

 隊長は、沸き出た"氣"を制御し、留めてください」

「えっ、どうやって」

「隊長の言う、瞑想が一番近いと思われます。

 ですがこれは隊長の"氣"ですから、隊長自信が見極めてください」

「ええー、ちょ」

「時間がありません、では行きます。

 はぁぁぁぁぁっ!」

 

俺の制止声も無視し、凪が気合を入れる

 

ドクンッ

 

そんな鼓動が、俺の中から大きく聞こえたと思ったら、

体中から、薄く光る白い靄のような物が凄い勢いで吹き出てくる。

光の靄・・・これが俺の"氣"なのか? 凪とは違う色だ。

"氣"は、暖かく薄く軽い羽衣のように俺を覆っている。

その一方で、"氣"は俺の体から離れると、どんどんと大気に霧散していく。

・・・なにか、やばい気がする

 

「なぁ、凪、これなにか危険じゃないか?」

「はい、吹き出ていく"氣"を押し留める事が出来なければ、隊長は死にます」

「ちょ!」

 

凪の発言に俺は、本日一番の驚愕の声をあげる

 

「隊長、"氣"を意識して、制御下においてください。

 体中に廻るように循環させていくのです。

 もう始めたら、停める事は出来ません」

 

凪の、必死な言葉に、俺は心を鎮める事ができ、覚悟を決める。

いつもの瞑想の手順で、ただ違うのは、呼吸と一緒に"氣"を体中に巡らせる様に意識していく。

 

やがて、吹き上がっていた"氣"は、体中を循環するように、俺の周りを循環し出す。

こうなると、"氣"は大気に溶ける速度を、大きく落とし始める。

俺はそれを意識し、更に"氣"を意識して体内に循環させる。

意識とすると共に、体の中から外へと掛かる圧力のようなものが、軽く体中に掛かると同時に、体外に

吹き出ていた"氣"の量が減る。

やがて、洩れでる"氣"は無くなり、見えなくなる。

だが、体に掛かる内圧で、"氣"は確実に俺の中を廻っている事が、認識できた。

 

「ふぅーーーー、

 隊長、おめでとうございます」

 

凪のそんな言葉と共に、首から手を放した凪が正面に立つ

凪は滝のように汗を流していた。

それだけ俺の"氣"を無理やり引き出し、誘導する事が、いかに困難な事かが判る。

凪には感謝してもし足りないな・・・・

だが、今は、この"氣"の感覚の方が大事だ。

凪の想いを無駄にしないためにも

 

「これが"氣"?」

「はい」

 

俺の質問に、軽く微笑み答えてくれた。

 

「では、隊長、一度そのまま剣を振ってみてください」

 

そんな凪の言葉に、俺は剣を振る

えっ

 

「軽い・・・」

 

振るった剣は、いつもより軽く感じられ、その分速度が増した。

 

「はい、では今度は、私が"閻王"にして見せているように、剣を体の延長として意識して"氣"を意識して

 ください」

 

武器は体の延長のように使うと言うが、俺にそれが出来るかな

とりあえず、手に体にかかる圧が行くように、意識してみる。

たしかに手に"氣"が、わずかに集まるのが感じられる。

では、それを剣に押し出してみる。

すると、スッと簡単に入ったかと思うと、剣が薄く光り出す。

 

「あれ? うまく、剣から洩れでる"氣"を抑えられない」

「いえ、理由は分かりませんが、どうやら隊長の剣は、"氣"を通しやすく、増幅する作用があるようです」

 

凪の言葉に、俺は驚く

・・・普通の刀のはずなんだけどな、世界を跨いだ影響かな・・・

 

「ということは」

「はい、少ない"氣"で、強度や威力を増す事が出来るという事です」

「おぉぉぉぉ、すごい!」

 

俺は、感嘆の声と共に何度も振り回し、動いてみる。

おぉ、体も軽い、

なんか、こう、かっこいいなぁ

 

「あっ、隊長あまり調子に乗られては」

 

そんな凪の言葉と共に、俺は脚をもつれさせる。

 

「へ?」

 

俺は、そのまま地面に倒れこむ。

立とうとするが、どうにも体が重く、さっきまで発していた"氣"もわずかな圧力しか感じられなくなった。

 

「隊長、早く、"氣"を意識しないようにして"氣"を止めてください」

 

そんな言葉に、俺は、"氣"の意識をやめる。

それと同時に、体に掛かる圧力が無くなる。

 

気がつけば、俺の体は汗で ぐっしょり と濡れていた。

俺は、重い体でなんとか体を起こし、胡坐になると

 

「凪、今のは」

「"氣"の枯渇する一歩手前です。

 "氣"は生命力や体力に近いものですから、下手をすれば、そのまま命を失う事もあります。

 ですが、だいたい今のように、体の方から停止命令が働きます。

「そうなんだ」

「最初は、その体の制御を無理やり外して"氣"を無理やり引き出しました。

 また意識して使う術、これを操気術と言いますが、これを身に付けている者は、

 この事に気をつけなければいけませんが・・・だいたいは、気絶します」

「へぇー、うまく出来てるんだ」

「はい、先ほどのは、隊長の"氣"を無理やり引き出したさいに、その殆どが消耗していました。 そこで」

「俺が調子に乗って無茶をしたから、ああなったと」

「はい、申し訳ありませんでした。

 もう少し、隊長の性格を考えて、説明しておくべきでした」

 

そう言って、俺に謝ってくるが・・・

 

「いや、調子に乗った俺が悪いだけさ、いい教訓になったよ。

 それに、凪には感謝しても、それを恨む理由は無いよ」

「はい、ありがとうございます

 しばらく、そのままお休みください、体力の回復と共に"氣"も回復するでしょう」

 

そう言って、俺に手ぬぐいを渡す。

それで汗を拭きながら

 

「じゃあ、今後は"氣"の扱いの鍛錬って事かな」

「はい"氣"は、扱えば扱った分、鍛えられていきます。

 むろん、武の鍛錬も行いますが、今は"氣"の扱いに慣れる事を優先させましょう」

「えーと、凪そうなるとウチらは?」

「真桜と沙和は、"氣"を意識して扱う事が出来ませんから、"氣"の鍛錬には役に立ちません。

 隊長が"氣"の扱いに慣れるまで、鍛錬に付き合う必要はありませんよ」

「そんなー、凪ちゃんと隊長を、二人っきりにさせておくなんて出来ないなの」

「そやそや、二人っきりになった隊長が、凪を襲わんともかぎらんからなー」

「・・・・自分は、隊長を信じます」

 

3人の会話に俺は

 

「するかーーーーーーー!」

 

俺の声が今日も、城内に響く

 

 

 

 

-7ページ-

 

【 閑話休題 】

 

 

 

 

「華琳様、問題に上がっていた あれの 政策による問題の在った案件ですが、

 その解決案の一部が、ある程度纏まりました」

 

執務室で政務を片付け終え、お茶を楽しんでいるところに、桂花が報告に来た。

 

「はやかったわね」

 

そういって、私は渡された竹巻に目を通す。

内容は、今までに無い発想や既存の発想で、柔軟に考えられたものだった。

また、問題に上がったものだけでなく、今後発生しそうな問題に対する解決案や、回避するための案が

盛り込まれていた。

おそらく、風が一刀の知識をうまく掬い出したのだろう。

風が一刀の能力を引き出し、一刀はその事で無自覚ながらも器を磨く。

たしかに、風が一刀の臣下付いたのは、正解かもしれない。

風好みに教育される恐れもあるが、一刀がその器を効率よく磨かれる事実には代わりが無い。

 

「すばらしい内容だわ」

「・・・認めたくありませんが」

「一刀が嫌いでも、そこは認めておきなさい、目を曇らせる事になりかねないわ」

「・・・・」

 

私の言葉に、悔しげに頷く。

困った娘ね。

一刀の能力を認めていないわけじゃない。

むしろ、認めているからこその態度なのだろう。

もし、一刀が知識しか持たない凡才ならば、桂花も、ここまで悔しがらず、一刀を他の漢共のように再起

不能まで罵り、無視していただろう。

むろん私も、ここまで重宝したりしてはいない。

知識があるだけならば、それは本と変わらない。

知識は、それを生かすための知恵と発想と行動力が必要だ。

それが未熟ならば、一刀はここまで役に立たなかっただろう。

あちらの世界の話を聞いて、適当に役に立ちそうな事だけ聞き出して、軟禁していただろう。

だが一刀は違う。

自分思っている常識や知識を、こちらの世界で、どうすれば良くなるのか?

自分なりに考え、現実にするだけの目も知恵も発想も行動力もある。

これは、一刀の世界の教育と一刀自信の資質であろう。

そして、それは鍛えれば、まだまだ伸びる可能性を秘めている。

桂花は、それが判っているから、一刀を認めたくないのだろう。

彼女は、今まで、漢共に負けたくないと、頑張り、力を身に付けた。

そこへ、方向性は違えど、自分と同等となるかもしれない一刀の登場に、焦り、苛立っているのだろう。

もし、認めてしまえば、自分はと・・・

可愛い娘、でもそう思いもするし、成長もして欲しいと思う。

なら、私に出来る事は、彼女の壁を崩す手助けをしてやるだけ

幸いにも、きっかけは、彼女自身が持ってきてくれたことだし

ふふふっ

 

「桂花」

「はい、華琳様、何でしょうか」

「この報告、随分多いのだけど」

「はい、私は、あれ に華琳様に迷惑掛けたのだと言って、頑張らせましたので」

「そう、なら、桂花と一刀に褒美を上げないとね」

「いえ、華琳様、あのような者に そのような温情はいりません」

「そう?」

「はい」

「でも、桂花、この量、それでも多いと思うのだけど、何か私に言い忘れている事はないかしら」

「は、風の手助けもあり、思ったよりも作業がすすんだようです」

「そうね、それに一刀もこの二年遊んでいたわけじゃないみたいね」

「そのようです」

「貴女としては、前の一刀の能力から仕事を振ったのでしょうけど・・・

 これ何日分の仕事の予定だったの?」

 

ピクリッ

 

私の言葉に、彼女が動揺する。

 

「桂花」

「今回の政務期間の3日分でございます」

「そう、風が力を貸したこともあるのでしょうけど、見誤ったという事ね」

「・・・はい」

「では、貴女には、お仕置きが必要ね。

 今夜私の閨に来なさい。たっぷりお仕置きしてあげるわ」

「はい」

 

私の言葉に、桂花は顔を染め嬉しそうに返事をする。

ふふっ、可愛い娘

 

「では、一刀は二日間、予定が空いてしまったのね」

「はい、ですが遊ばせて置くのもなんですので、簡単な仕事を与えておこうと思います」

「そう、それと、風に言って勉強もさせなさい。

 覚えさせる事は、山程あるのだから」

「分かりました」

「では、下がっていいわよ」

「はい」

 

そう言って、桂花は部屋から出て行く

一刀が戻ってきて、城や街はいろいろ活気付いてきている。

たった一人の存在で、こうも変わるものだろうか・・・

一刀の武と知、共に目を見張るものではないが、目を離せるものでもない。

それに何より、私や雪蓮と違った 人を寄せ付ける 気質。

あれは、どちらかと言うと 桃香に近いものがある。

人を引き付け、民のためその力を振るう事を躊躇わず。

一刀を中心に、皆が笑顔になる。

身分にとらわれず、必要とあれば、王である私を引っ叩く。

政策においても、その知識と知恵で、方向性を決め、問題も解決していく。

私とは真逆となるが、ある意味、王としての資質を持つ。

だが、桃香同様、甘い所が多すぎる。

だが、その甘さゆえ、人を引き付けるのも事実だ。

もし何かの歯車が狂っていたならば、彼が王になっていたのかもしれないだろう。

そんな世界も見てみたい気もしたが、現実は、私が王で彼は臣下だ。

そう思い、下らない考えを切り捨てる。

さて、今夜は一刀も呼んで、桂花でどう楽しもうかしら、楽しみだわ

 

 

その夜

 

華琳の部屋から、

 

桂花の淫らな声が

 

一晩中続いた。

 

 

そして次の日

 

顔を腫らした一刀が、政務に励げみ

 

桂花がそれを見るたび、

 

顔を赤くして怒る姿を

 

文官達は目撃していた

 

 

 

 

 

 

つづく

 

-8ページ-

 

あとがき

 

どうも、うたまるです。

帰還編を、終え、ついに本編に入り出しました。

今回の話は、一刀の能力の一端が伺える話となりました。

"氣"については、ハンター×2 等の多くの漫画から、自分なりの解釈の存在となります。

まぁこれが無いと、『 柔よく剛を制す、剛よく柔を断つ 』とあるように、一刀くん、あのままでは、

あまりの彼我戦力の差に ボコスカ にされて終わりなだけですから、

まぁ、"氣"を身に付けても、一刀は ボコスカ にされる運命を変える予定はありませんが(笑

 

作中の各キャラクターの"氣"質は

凪 :放出・強化系

真桜、秋蘭:操作系

春蘭、季衣、流琉、霞、沙和:強化系(流琉はやや操作系が混ざる)

   (剛力・速度 かのバランスは、本人の性格と資質と言う事で)

 

と言った感じです。

他の国の武将は想像にお任せします。

一刀の"氣"質はどうなるのか?

それは今後のお楽しみです。

 

また、今回で一刀の剣の能力が出る事となりましたが、まぁ、これは皆様の予想通りの力だったと思います。

 

 

ちなみに、作中の

 

キーーーン

 

の擬音と共に入る色の無い世界は、某OVAレースアニメの "ゼロの領域"を参考にしています。

まぁ、あそこまでは凄くはありませんが、集中する事により、体力の引き換えに、各認識力、判断力が上

がるものとお考えください。

小説、魔術師オーフ●ンの"過去視"に近いものがあるかもしれません。

 

【 閑話休題 】は、正直、桂花と一刀の絡みを出したいと言う理由で書きました。

さて、桂花は一刀の攻めに耐え切る事が出来るのでしょうか(笑

 

次回は、今回出てこなかった面々や、次の進展へのお話となる予定です。

では、また次回お会いできる事を

 

説明
『真・恋姫無双』魏END後の二次創作のショート小説です。

今回から本編へ突入します
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コメント
p6 行郡→行軍では?(零壱式軽対選手誘導弾)
初めまして、興味をひかれましたので、閲覧させてもらってます。サイバーですか、なつかしいですな・・・同義語にゼロシス○ムとか種○れとかあるあれですなw まぁ、あれは結構リスクあるものなので、ここの一刀君のように、早々使えないのが難点なんですがね。(部長)
楽しく拝見しております。 『ゼロの領域』・・・、「アスラーダ、ブーストON](龍神 神威)
一刀いきなり周使ってましたね。(ブックマン)
2p:本郷 → 北郷、攻撃してこれば → 攻撃してくれば・・・? 顔を腫らした一刀・・・やっぱり桂花にガォーでしょうか( ´艸`)(Nyao)
この時代の気はオ〇ラですか?ほら、六つの系統があると言う(サイト)
そんな世界も見てみたいか・・・なら見せようじゃありませんか!2の話を!寝返って!(ヒトヤ)
華琳が”おしおき”と称して。一刀に桂花を食べさせたのですね その後は、華琳が一刀を貪ったのでないかと・・・w(nayuki78)
桂花との絡みをもっと見たいですが、気の修得で身体能力・攻撃力UPした一刀がどのようにボコスカにされるのか…なども含めて今後の活躍に期待!(自由人)
更新お疲れ様でした。一読者としては早く後編が見たいところではありますが、焦らず急いで下さい。年齢制限無しなら、桂花さんのくだりが詳しく見れたのかと思うとちょっと、ほ・ん・のちょっとですが残念だと思ったり思わなかったり…気にも目覚めてますます魅力(?)が増した一刀君の次回も楽しみにしています。(レイン)
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恋姫無双  

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