連載小説126?130
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ぶっちゃけ、今の私は彼氏なんていらない。

でも、みんなの空気はちょっと違うようで…

 

 

「ね、ねえ、みんな仲間じゃないの?」

「う〜ん…確かに彼氏はいらないんだけど、相応のいい男がいれば、

それはそれで別だと思うんだよね〜」

 とは楓の弁。むむむ、出会いがないだけか…

「あたしはそもそも女子校だし…」

 うぐ。みーちゃんはそうか、スタートラインが…

「私…男の子には興味がないけど…いらない、ていうのとは違うから…」

「れ、蓮ちゃんまで…」

 なんか、みんな機会がないからいない、てだけなのかな…う〜ん…

「なあえりか」

「何?」

 香奈ちゃん、何か意見でもあるのかな…

「えりか、男嫌いなん?」

「えぇっ? 違うって。だって、今だって加藤君といるじゃん。それに、

嫌な思い出があるわけでもないし、特にガキっぽく映ってるわけでもないし…」

 自分からは行かないし、もし告られても、かなり厳しく吟味するだろうけど…

「それやったら、彼氏作ったらえぇ。ええで〜?」

「そ、そんなに無理に作るつもりはないんだってば…」

 なんか、私の立場がどんどん崩されてる。ホント、別に恋愛モードになんて、

なるつもりはないのに…

「そっか、つまらんなぁ」

「私で遊ばないでね。みんな…」

 まさか、まさかこんな展開になるなんて。とほほ…

 ここは、話題を変えなきゃだ!

 

 

〜つづく〜

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旗色の悪くなった私。

ここは思い切って話題を変える事にした。

 

 

「ね、ねえ。みーちゃん達はこの後、どこ回るの?」

「あたしらは下から上がって来たから、次は上の階に」

 ふむふむ、さっき言ってた通りか。

「私達とは逆方向だねー」

「あ、えりか達上から?」

「そうなんだよ。荷物持ちとして、加藤君を同伴させてね」

 ふふふ。

「ちょ! あんたら人の彼氏何小間使いにしとんねん。キモの座った奴っちゅうか…」

「まぁまぁ。事情は自己紹介の時に説明したじゃん」

「いきなり知らない男の子に声かけられたら、私でもちょっとビビるし」

「だから、その事についてはもう何度も謝ってんだろ? 荷物持ちだって、

甘んじて引き受けてるわけだし…」

 自ら言う辺りがいいなぁ。加藤君、正直かなり純朴な青年なんじゃないだろうか。

「分かってるって。だからこそ、これで貸し借りはなしだし」

「荷物持ちは感謝してるしね」

 いくらなんでも、私達はそこまで女王様じゃない。

「ま、まぁ、清隆にも悪いトコがあったみたいやし、うちも女の子として、

今回の所業には罰が必要やと思ったくらいやから、あんまとやかく言わへんけど」

「よかった〜。せっかく仲良くなった香奈ちゃんに嫌われたら、寂しいからねー」

「うんうん」

 関西美少女。なんてカテゴリーはともかくとしても、出会いは大切だ。

「もちろん、蓮ちゃんもね!」

「だ、大丈夫だよ〜。私あんまり人を嫌いになったりしないし」

 いいお嬢さんだ。

「やっぱ、育ちがいいと違うねぇ」

「そやね〜。て、えりか、あんたもええ子やん。うち、感謝感激やで?

てなわけで、この後の買い物、付き合うてええか?」

 そういえば…その辺は考えてなかったよ。

「言われてみれば不自然だよね。この後も加藤君を連れ回すのに、

香奈ちゃんだけさようならって」

「当然や。せやけど、清隆への罰は終わってへんのやろ? それやったら、

うちも清隆を荷物持ちに使うわ」

「あはは…ないすあいでぃあ」

「お、おい。香奈まで何言ってんだよ」

 加藤君…お気の毒…

「清隆。あんたうちの頼みが聞けへんの? かわいい彼女が荷物持ってくれ言ってるんや、笑顔で引き受ける器はあらへんの?」

「そ、そういう問題じゃないだろ。今でもこいつらの荷物を持ってるってのに…」

 こいつら。ふーん、私達はこいつらですか。

「こいつらで悪かったけど、一人分増えたって、株が上がるだけだと思うけど?」

「い、言いたい事言いやがって…」

 この論戦は香奈ちゃんが味方だ。関西少女がいて、負けるはずがなかった。

 

 

〜つづく〜

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時は今。

舌戦と言う名の、合戦。

 

 

「かわええ彼女の頼みが聞けへんの?」

「そうじゃねーって。そうじゃなくてだな、すでにいっぱいいっぱいなんだよ」

「でも、香奈ちゃんそんなに色々買わなそうじゃん?」

 よし、フォロー方面で援護射撃だ。

「私は、荷物持ちの任を果たして欲しい。でも、彼女である香奈ちゃんも、

大事にして欲しい」

「うんうん、それ同意見」

「あたしらも、それは思う。ね、れんれん」

「うん。彼女がいる男の人には、彼女を大事にして欲しいよ」

 自分では彼氏がいなかったり要らなかったりしても、やっぱそうあって欲しいよねぇ。

「お前らの意見は分かった。でも、それは女子目線だろうが」

「だって女の子だしぃ〜。ね」

「そうや〜。男の子になんて、なった記憶あらへんし」

 ほほう、面白い事を言う。当然の事なんだけど。

「そういう問題じゃなくてだな…」

 どう考えても不利なこのバトル。加藤君はまだ踏みとどまるつもりなのかな。

「加藤君、いい加減素直に言う事聞きなよ。勝てないんだし」

「ちくしょう…」

 ただでさえ、女の子の方が口が立つんだ、それがこれだけの人数差じゃ、勝てないのは当然。

 加藤君も、随分と分の悪い闘いにこだわるもんだ。

「で? そっちの言い分も聞こうじゃないの」

「あれやろ? 清隆、うちに自分の荷物くらい持て、言うんやろ?」

「えー、まじで? はぁ、なっさけなー」

「情けないって言うな! 俺はだなぁ。俺は! こいつには、自分で荷物を持つくらいでいて欲しいんだ!」

 ん〜…

「それ、よく分からないんだけどさ、のろけの類なの?」

「違う!」

「違うてへんやん。せやけどなぁ、たまには彼氏に甘えたい気持ち、わかるやろ?」

 お? なんだか、甘えた目? これは効果抜群か?

「う! くそ…そんな目で見るなぁ!」

 よし、勝った。

 

 

〜つづく〜

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「それじゃあ後でね〜」

「おう!」

 

 

 舌戦を制した女の子連合は、一旦別れる事で決着した。

結局、私達は上から下に、みーちゃん達は下から上に、て回ってたから、

どうしても一緒に回るのは難しかったんだ。

「なあ、ホントに別れてよかったのか?」

「いいも何も、一緒に回るのが難しいのは加藤君も理解してるじゃん」

「せやでー。無理言うたらあかんで」

「加藤君もさ、香奈ちゃんの言う事は素直に聞き入れなよ」

 お、楓から鋭いツッコミ。多分大丈夫だろうけど、私もそこは円満でいて欲しいと思うよ。

「別に、逆らったりしてるわけじゃねーよ。香奈の言う事はいつも間違ってないわけだし」

「あら、嬉しい事言うてくれはるわ。珍しいなぁ。槍でも振るんとちゃう?」

「ぶひゃひゃひゃひゃ! そんなに普段言わないんだ!」

「そ、そんなんじゃねーって」

「でも、今の香奈ちゃんの言葉からすると、そんな感じだけど?」

 ほっほっほ、やっぱり人をからかうのは楽しいのぅ。楓も、どうやら同じのようで。

「せやな〜、やっぱ普段の態度を考えると、珍しい事やわ」

「ほら」

「おい香奈…いい加減な事言ってねーで…」

「加藤君、目が…」

 目は口ほどに物をいい。露骨に「話を合わせろ」てアイサイン出してる。

「目? 俺の目がどうしたんだよ」

「香奈ちゃん、言ってやって」

「清隆、あんたの目…嘘言う時の目や。今更何言うてもバレバレやで」

 あっはっは! 楽し〜♪ こういうやりとり、いいなぁ。

「な〜んか、昨日まで知らなかった加藤君って人がどんどん分かって来るよ。

香奈ちゃん、ありがとね」

「何言うてんの、それはこっちの台詞や。二人こそありがとうな」

「照れるって。ね、えりか」

 こくこく。

「こういうやりとりは恥ずかしいから、この辺でやめておこうよ…」

「せ、せやな…」

 ふぅ、まさか急にこんなはずかしい展開になるとは思ってなかった。

「それにしても、みーちゃん達は今頃上の階ついたかな」

 

 

〜つづく〜

-5ページ-

みーちゃん達の動向を気に掛けつつ、

私達は下のフロアへ降りた。

 

 

「さて、どこ回る? せっかくだから、香奈ちゃんの意見も欲しいんだけど」

「え、うちか? せやな〜…」

 と、少し考えてくれてる様子の香奈ちゃん。

「うち…もっとかわいい服が欲しいねん! 二人とも、見立ててくれ!」

「おおぅ、そう来たか」

「十分かわいいと思うけどねえ。私なんて普段ジャージだし…」

 楓…こんなところでカミングアウトしなくても…

「ジャージ! ええ響きや…うち、ジャージ好きやねん。なぁ、ここ、

ジャージ専門店、あらへん?」

「へ?」

「ジャージ…専門店?」

 ちょっと待ってください。この子、そういうのが好きなの?

「ジャージが好きやったら、あかんか?」

「いや〜…」

 わたしはただ、お茶を濁す事で精一杯だった。

 

 

〜つづく〜

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第126回から第130回
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