The way it is 第二章ー視察の旅1
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民にとっては何でもない日常の一日なのだろう。しかし、リウヒにとっては懐かしさとある種の開放感を感じさせた。

外の世界に出た一行は馬に乗って道をゆく。秋の風が緩やかに吹き抜けた。

 

視察とやらは順調に進んでいる。

村や町に三日ほど滞在し、奉行を訪ねたり、長の話を聞いたり人々の働きぶりや店を覗いた。宿泊は以前の旅では見向きもしなかった高級宿だ。あの安宿のそっけなさが好きだったのに。

王の一行と気が付いても民は恐れ入って平伏などせず、むしろわらわらと寄ってきて世間話などを話しかける。彼らには自分たちがこの少女を王座に送り届けたという自負があり、当の国王もそれを好んだ。

だが、権力におもねるのは世の常で、村や町に着けば役人やら長が総出でリウヒを出迎える。宴や何やらに付き合わされるのは正直面倒だと思わないでもなかったし、始終、王の看板を背負っていることは疲れるものだった。

とある鄙びた村の宿で、何気なく一品の料理を褒めたら、翌日、宿の入口に「王さま大好き!当店名物モヤシ炒め!」と張り紙がしてあり閉口したこともあった。

「あまり軽はずみなこともできないし、言えないな」

「それだけ陛下は注目されているのですよ」

「うう…」

だが、娘に戻ってマイムたちと夜更けまでしゃべったり、以前とは違った目線で国をみるのは楽しかった。なにより周りにいるのは、大好きなあの時の仲間だ。カガミがいないのが未だに悔やまれるが。

 

愛馬、セイランは軽快な蹄の音を響かせながら歩く。

田園に出た。農民が総出で稲刈りをしている。収穫の季節だ。

ああ、わたしの国は本当に美しい。

リウヒは誇らしげに目の前に広がる景色に胸を膨らませた。豊に実った穂がどこまでも続く。まるで黄金の原のようだ。

突然、後ろから透き通った歌声が聞こえた。

「民の収穫を祝う歌なの。躍動感があって、結構可愛いでしょう」

マイムがにっこり笑ってリウヒを見た。

「続けて」

再びのびやかな歌声が耳の中へ心地よく入ってくる。村の者だろう、数人の子供たちが笑いながら走り寄ってきた。リウヒら一行を取り囲んで、歩きながら楽しそうに踊る。

 

はるかみのるはきんのほきんのほ

だれにくわそうくわそかな

いちばんよきとこおうさまに

つぎによきとこじさまとばさまに

みっつめよきとことさまとかさまに

よっつめよきとこわれらわれらに

おうさまよきとこわかるかな

じさまとばさまはわかるじゃろ

とさまとかさまはわかるかな

われらわれらはわかるじゃろ

はるかみのるはきんのほきんのほ

つぎもきんのほくださいとおてんとさまにいのろかな

いのろやいのろうたんといのろう

 

単調な歌に単純な踊り。それでも浮足立つような、楽しげな雰囲気が伝わってくる。

「懐かしいな」

トモキが遠くを思い出す様に言った。

シシの村でも歌っていたに違いない。夜の祭りの記憶は断片にある。

晴天の澄んだ青空の下、遥か実る金の穂と歌声はどこまでも続いていた。

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目の前に広がる穂を見て、キャラは懐かしさに泣きそうになった。

シシの村でもこの歌を歌いながら、みんなで踊った。あのときは、村を離れて宮廷で働くなんて想像していなかった。そうなればいいなと思っていたけど。トモキの近くに行きたいと。

一行は宿へと入った。夕暮れ時の冷たい風が緩やかに流れる。荷物を運ぶ作業を手伝った後、キャラは自分の馬に餌をやっていた。

馬などセイリュウヶ原の時に乗った以来だったが、最初はトモキが横について手綱を引いてくれた。三日で何とか乗れるようになり、今では自分の馬に愛着を持っている。

ナナという栗毛の雌は大人しく、乗馬初心者のキャラの言うことをちゃんと聞いてくれる。

「今日はお疲れ。明日もよろしくねー」

首を撫でてやると、ナナは頷くようにへこりと頭を下げた。

「よしよし」

横にいるセイランがブヒヒンと鳴いた。馬のことなど良く分からないキャラでも美しいと感嘆する立派な体躯で、獰猛で人嫌いのくせに、主であるリウヒには懐いていた。

「たまーに、もう限界ってイライラが溜まったら、セイランと遠出をするんだ」

リウヒが愛おしそうに、そのタテガミを梳いた。

「お目付け役としてシラギが同行するのが、邪魔だが」

呟いて、お前もわたしと二人がいいよな、と首を叩いた。セイランも同意するように、うんうんと頷いた。その光景を思い出し、キャラは小さく笑う。

ふと厩の戸に人影が見えた。

「キャラ」

「どうしたの、トモキさん」

あれからトモキが真っ直ぐに見られない。

「今夜、この村の祭りに行ってみないか」

懐かしいだろうと思って。陛下にはお許しをもらった。

「二人で」

「うっうん」

行きたい。とキャラが顔を赤らめて言うと、じゃ、また声をかけるからと言って、トモキは去っていった。

祭りは求愛の場でもある。年頃の男女は想いあう人と共に、こっそりその場から離れ、そしてお互いの愛を確かめ合うのだ。農作業に忙しい民の知恵なのだろう。

勿論、トモキもキャラもそれを知っている。

「どうしよう、どうしよう。こんな急展開、あたしついて行けない…!」

馬の轡を取ってガクガクと揺さぶった。ナナは迷惑そうに鼻を鳴らした。

 

祭りというものは。

キャラは踊り疲れて、酒を飲んでいる。

どうしてこんなに気分を高揚させるんだろうか。

「キャラもりっぱな酒飲みになったね」

横にいるトモキがクスクス笑った。

「多分、あの旅がなかったら、カガミさんがいなかったら、お酒なんて飲まなかった」

つられてキャラも笑う。

あの時。自分とリウヒは、大人の中に入れなかった。夕餉が終わればすぐさま階上に追いやられたし、なにより子供だった。大人たちの飲む酒や、宿の裏でこっそり交わす恋愛に憧れた。多分リウヒもそうだっただろう。

笛や太鼓の弾むような音が聞こえる。それに合わせて人々は、歌いながら大きな薪を中心として、踊り歩く。

 

はるかみのるはきんのほきんのほ

だれにくわそうくわそかな…

 

「風に当ろうか」

トモキがキャラの手を取った。そのまま森の中へと導いてゆく。

ああ、体がフワフワする。ぼんやりとキャラは思った。全く現実感がなかった。

 

これは夢かな。夢ならば覚めないでほしい。

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いきなりキャラに手を握られて、リウヒは目を丸くした。

「あのね」

その顔は、心なしか輝いている。

「あたし、トモキさんと付き合うことになった」

「そうか!」

それは良かった、リン、酒の用意を、とリウヒは嬉しそうな声を上げながら、若干淋しい。

グリグリと赤毛を撫でているマイムも、いつのまにやらカグラとくっついていた。

何だか自分がぽつりと取り残されたような気分だ。

「男共も呼ぶ?」

「この部屋が酒臭くなってしまいますわ。こちらから押し掛けましょう」

リンの言葉にみな笑った。キャラだけが、恥ずかしいからやめて、と慌てたように手を振っている。

「こんなお祝いは、ぱあっとやらなきゃね。いくわよ」

意気揚々としたマイムの掛け声に、リウヒたちはキャラを引きずって男部屋に突入した。

丁度、そこでもトモキがからかわれていたらしい。

「今回の旅に、やけにキャラに固執すると思ったら、そういうわけだったのか」

「わたしは知っていたぞ、シラギ」

その昔、マイムに「あんたら、天然?鈍感?」と馬鹿にされた二人は、低次元の言い争いをしている。トモキとキャラは、顔を赤くさせて、だが、幸せそうに目線を交わす。それをカグラやマイムが初々しいだの、可愛らしいだのからかっており、老医師は目を細めて眺めている。

「若いもんはいいのお」

三人娘が用意した酒は瞬く間になくなってゆく。

「リン、シン、シュウ。お前たちも飲め」

「いえ、御前ですから」

「今日は特別だ」

リウヒがクスクス笑うと、では、とリンが見事に飲み干した。

やんややんやと喝さいがおこる。

「リンさんは酒に滅法強くて」

「たまに飲み比べとかするんですが、いつもあたしたちは負けてしまうんです」

ほろ酔いのシンとシュウが、こっそりリウヒに耳打ちした。

「飲み比べ?わたしのいないところでは、そんなことをしていたのか」

はい!と二人は可愛らしく声を揃えた。

「ああ、お酒が無くなりましたね。下で頼んでまいります」

リンは部屋を出ると、しばらくして宿の親父どもを引き連れてきた。

「こちらへ置いていってくださいまし」

部屋の片隅に酒瓶がどんどん増えてゆく。

「あの、リン。一体何本頼んだんだ?」

「二十本」

さすがの酒好きたちも息を呑んだ。

「みなさま」

にっこりとリンが笑った。

「夜はこれからでございます」

この人、本物だ。本物のウワバミだ。

男三人は負けるものかと、対抗意識を燃やし、マイムとキャラも釣られて酒をあおった。シンとシュウは、あたしたちは大人しく飲もうね、と共同線を張り、老人はそそくさと退陣し、リウヒは黙って茶を啜った。

おつき合いおめでとうの会は、こうして壮絶な酒盛りへと発展してしまった。

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飲みすぎた。

シラギは青い顔をしてひたすら水を飲んでいる。柄杓などでは追いつかない、甕(かめ)ごと抱えて飲み干したいくらいだ。

「二日酔いの水は甘露の味、とはよくいったものですね…」

カグラも青白い顔してやってきた。

「この状態で馬なぞ乗れんな…」

「確かに…」

酒瓶は見事に全て空になった。ほとんどは三人娘が一人、リンの腹に収まったと言っていい。当の娘は、二日酔いなどどこ吹く風で、「おはようございます、黒将軍さま、白将軍さま」とにっこり爽やかに挨拶してきた。

「あの女、化け物か…」

「化け物ですね」

妖怪ウワバミだ。

「情けない」

リウヒとリン以外が、朝餉に粥を所望した。

「お前らのせいで、宿中が酒臭い」

「申し訳ありませんが、陛下。あまり大きな声を出さないでください」

「頭に響く…」

再び、情けない、とリウヒが鼻を鳴らした。

「マイムとキャラとトモキは?」

起き上がれずにまだ寝ているらしい。

「今日は、移動はできないな」

元気よく椅子から飛び降りると、リウヒは散歩に行ってくる、と言った。

「一人では危ない」

「その状態で付いてくる気か」

うっと詰まったシラギだったが、果敢にも頷いた。

「セイランを走らそうと思って」

顔から血の気を引かせた黒将軍に、リウヒがにっこりと笑った。

「その状態で付いてくる気なのだな」

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ああ、気持ちいい。

セイランの足は軽やかに走り、グングンと周りの景色が後ろへと飛んでゆく。ふと手綱を引いて、止めると遠くから蹄の音が聞こえた。シラギが追いかけてきている。

「師がきたぞ。今日もお前と二人になれなかったな」

セイランの黒い首筋を撫でると、全くだという風に首を振った。クスクス笑って軽く叩く。この馬を一目見た瞬間に、リウヒは惚れてしまった。ああ、これが一目惚れというのかと思った。ショウギの息子に贈呈された青鹿毛は、主を無くした後も気性の激しさゆえ、厩の隅に追いやられおり

「どれでも好きな馬を選んでください」

遠駆けがしたい、と我儘を言ったリウヒを厩に連れていったシラギは、セイランを差した途端に顔を顰めたが、セイランが大人しくリウヒに従ったのも驚いたらしい。

「馬は主を選ぶというのは本当なのだな」

その馬術を教えてくれた師は、ぶっすりとした顔で青毛を駆ってきた。

「もう気分は良いのか。黒将軍」

からかうように言うと、おかげさまで、とそっけなく返された。

「陛下をお守るのがわたしの役目ですから」

「万一、襲われてもセイランが助けてくれる」

なあ、セイラン、と声をかけると、ブヒヒンと鳴き、シラギに向かって愚弄するように歯を剥いた。

それにしても、わたしはいつもそうだ、とリウヒは思う。初めて外の世界に出た時は、あの大好きな仲間が守ってくれた。兄の船に乗っていた時は、キジに助けられた。

「シラギ」

「どうしました」

「わたしは守られてばかりだな」

小高い丘の上でリウヒは馬の歩を止めた。ひんやりとした風が、髪やセイランの鬣をそよがせる。

「当たり前でしょう、国王なのですから」

すぐ横にシラギも並んだ。黒い瞳でじっと目線を注がれているのが分かった。

「どうしたのです、いきなり」

「なあ、シラギ」

顔を上げると、かなり近くに男の顔が合った。目が合う。

「わたしが…もし、王女でもなく、王でもなくても、みんな一緒にいてくれただろうか」

「勿論」

頬に手がかかった。大きな手だ、とリウヒは思う。

「分かりきったことを聞くものでありません」

そのままゆっくり撫でられた。優しい手だ、とリウヒは思う。

その時、セイランが鼻を鳴らして勝手に歩いた。頬からシラギの手が離れる。

「お前…」

眉を顰める黒将軍を、青鹿毛ははっきりとせせら笑った。

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マイムは真っ青な顔して寝台に突っ伏している。気持ち悪―い。

カグラが持って来てくれた水を一気に飲み干して、杯を差し出した。

「おかわり。なんなら甕ごと持ってきて」

「あなたが下にいけばいいでしょう」

「歩いたら眩暈がするのよ。頭痛ーい」

カグラは文句を言いながらもお代りを持って来てくれた。

「…ねえ、昨日のこと覚えている?」

水に口をつけながらちらりと恋人を見る。

「覚えています。何を話したのかも」

「嬉しかったの」

小さく笑うと、カグラは黙ってマイムの体を引き寄せた。その肩に凭れかかりながら、もう一度言う。

「嬉しかったのよ」

昨夜。リウヒはとっとと部屋に下がり、トモキとキャラは仲良く身を寄せ合うように寝ていた。シラギは三人娘の格好の餌となり、散々肴にされていた。

「多分、おれはあの男に憧れているんだ」

いつもの気取った言葉使いはどこえやら、カグラはシラギを睨みつつ呟いた。

「ずっと認めたくなかったし、あの時までは軽蔑すらもしていた」

あの時。ああ、黒が白を抱きしめたときね、とマイムは思い当たった。

「全てを手にしているくせに、気が付いていない間抜けな男だと思っていた」

「隣の芝生は青くみえるものよねえ」

「お前ですらおれを見ていない」

マイムは一瞬硬直して、それから柔らかく微笑んだ。

「馬鹿ね」

ああ、この男は気が付いていたのだ。

「そんなことあるわけないじゃない」

あたしは自分を誤魔化して生きている上に、とてつもない臆病者だ。

カグラの肩は、一見細いくせに筋肉がしっかり付いていて逞しい。安心して頭を預けられる。

「あなたもあたしも、臆病者なのよ。傷つくのが怖いの」

人を信じて裏切られることが。だからこそ、嬉しかった。本心を打ち明けてくれた。

「酒の席での戯言です。忘れてください」

「ほらね…うっ」

クスクス笑って頭痛に顔を歪めた。

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これは笑ってもいいものだろうか。

クロエと名乗ったシラギとよく似た少年は、真摯な目でこちらをむいている。

「御前試合提案書」

海軍から宮廷軍に、勝ち抜き式で試合を申し込むという提案だった。

「白将軍さまと、黒将軍さまで話し合いをされた結果だそうです。あくまでご提案なので、まだ陛下はご存じではありませんが。書が遅くなって申しわけありません」

タカトオが手にしている書類を覗きこみながら、モクレンは口に手を当てた。そうでもしなければ、つい、言いそうになってしまうのである。

「軟弱海軍がずいぶんと見上げた真似をするもんじゃ」

モクレンが必死で堪えていた台詞を、タカトオが感心するように言った。

ティエンランの宮廷軍と海軍は、お互いをよく思っていない。むしろ嫌いあっている。

軍は弱肉強食の世界で、実力さえ伴えばすぐさま上に登ることができ、右将軍に心酔しきっている者が多い。

片や海軍は、ティエンランの汚点といわれるほど、弱かった。代々の左将軍はお飾りだったし、当の兵士たちはやる気も心意気も全く無かった。貿易が盛んで豊かな国は、海賊たちの格好の獲物だったのだ。

ところが小娘陛下になってから事情は変わってきた。

やむを得ない事情があったにしろ、宮廷軍はその小娘陛下に剣を向けたし、リウヒが海賊に浚われた時、救出したのは軟弱海軍だった。

そして猿犬の仲であるはずの双方の頂点に立っている二人の将軍は、友人同士である。

「恐れながら、軟弱の汚名はこれから晴れてゆきます。あの件で我が海軍の結束力は桁違いに上がりましたから」

「貴公も剣術をたしなわれているのか」

「腕はあると自負しております」

微笑んだクロエに、二人の副将軍たちもにっこり笑った。

そう言われると、鼻っ柱を折ってやりたくなるではないか、小僧。

「半年後か。楽しみじゃの」

「合い分かった。わざわざ御苦労さま。なんなら、今、手合わせしてゆかれるか」

「嬉しいお申し出ですが、これからスザクへ向かわなければなりませんで。陛下が視察で我が船に乗られるのです」

嬉しそうに顔を赤らめた。思わずいらっとした。

この小シラギもあの小娘陛下に夢中なのだ。どこがいいのだ、あんなチビ。

失礼いたします、とクロエが退出してからも、モクレンは眉をひそめていた。

「そんな尻尾を踏まれて餌をとられたような顔せんでもいいじゃろ。皺が増えるぞ」

皺が増えるぞ。二十八には痛いお言葉だ。

「なあ、タカトオ殿」

眉間を揉みほぐしながら、自分の机に浅く腰掛ける。

「どうして陛下は、あんなに男を虜にするのだろう。今のクロエとやらの顔を見たか」

「そうじゃなあ」

書類を捲りながら、老人は考えるように言った。箱入り娘でシラギを見てから剣術一筋のモクレンは世間からずれている所がある。同年代の友達などいなかったし、年頃の娘が興味を持つ、身を飾るものにも興味がなかった。男衣に波打つ髪を結ってもいない女は、たまに頓珍漢な質問や、驚くほど素直なことをタカトオに聞いてくる。タカトオはそれを好ましく思っていたし、モクレンも真摯に応えてくれる老人に感謝していた。

「男は大抵、守ってやりたくなる女が好きだからのお」

「ふうん」

リウヒが弱い女だとは思わない。認めたくはないが、小娘ながらに立派に王の務めを果たしている。民を味方にし、長年魔窟だった宮廷を清掃しようとしている。

「外見で得しているのか」

白い肌、華奢な体、そして愛でたくなるような身長。日に焼け、剣を振る為筋肉は付き、長身の自分とは大違いだ。

「男は単純だからの」

「ふうん」

守ってやりたくなる女、か。

それでもわたしは。

気を切り替えて仕事に戻ろうと椅子に座りなおしながら、モクレンは思った。

わたしは守られる女であるより、愛する男と共に戦う女でありたい。

 

説明
ティエンランシリーズ第四巻。
新米女王リウヒと黒将軍シラギが結婚するまでの物語。

わたしは守られる女であるより、愛する男と共に戦う女でありたい。

視点:リウヒ→キャラ→リウヒ→シラギ→リウヒ→マイム→モクレン

*三人娘が一人、リンは昔の上司をモデルにしました。ウワバミになってしまいました。ごめんなさい、リンさん。
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コメント
天ヶ森雀さま:コメントありがとうございます。いい相手は…その内にうふふふ(笑)。(まめご)
色々微笑ましいですね。モクレンにもいい相手が見つかると良いのだけど。(天ヶ森雀)
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