仮面ライダー×真・恋姫†無双 呉編  第9章
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呉軍は曹操を迎え撃つために、一時建業に戻った。

 

「なあ、タツロット」

「何ですか?」

 

一刀がタツロットに尋ねる。

 

「ザンバットソード持ってない?」

「どうしたんですか? 急に……」

「いや、曹操との決戦となるとザンバットソードがあった方が良いだろうなって思ってな…。管輅からもらってない?」

「もらってますよ〜」

 

そう言うとタツロットは口から火を噴き出す要領でザンバットソードを出した。

 

「あったんかい」

「でも管輅さんに一刀さんが本当に必要だと判断した時にだけ出せと言われてましたけど……今がその時なんでしょうね〜」

「そうか……」

「おい! 一刀!」

「キバット、どうしたんだ?」

「ちょっと来てみろよ。面白いもんがあるぞ」

 

キバットが一刀を連れていく。そこは建業の城にある蔵であった。

 

「ここになにがあるんだ?」

「これだよ。これ……」

 

キバットが蔵に入ってその見つけてきた物を一刀に見せる。

 

「これって……」

「な、面白そうだろ?」

「バイオリン……」

 

バイオリンそれは弦楽器であり、欧州で作られるもの。この時代にはまだ存在しないものである。

 

「俺が見た時はこんなのなかったけど……」

「きっと管輅さんが入れてくれたんですね〜」

「管輅……すまないな」

 

一刀がそう言うと一刀はバイオリンを手に持つ。

 

「これが弾けるようにしとかないとな……」

 

一刀はその日、一日は人知れずバイオリンの練習をした。

そして翌日になり、建業から出陣をしようとする。

 

「蓮華様。全ての準備が整いました。…もはや出陣の時かと」

「…ああ」

 

亞莎の言葉に頷いて、蓮華は玉座からゆっくり立ち上がる。

 

「皆、揃っているな」

「はっ。将は全て御前に控えております」

「俺達もいるぜ〜」

「テンション、フォルテッシモ!」

 

キバットとタツロットがノリノリで答える。

 

「兵の皆さんは城門にて、蓮華様のお言葉が掛かるのを待っておりますよ」

「蓮華様。出陣の号令を」

「分かった」

 

蓮華は城壁に行き、兵の皆に号令を掛ける。

呉軍は決戦になるであろう赤壁へと向かうのであった。

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蓮華達は赤壁の城に到着。城の玉座の間で少しばかり軍議が開かれていた。

主戦場はそこから北方の所であり、船戦になるであろうと言うことであった。

それから劉備軍を迎えるために外に出て、劉備軍を迎え、外で軍議を行った。

曹操軍は四十万であり、同盟軍は合わせて十五万であるとして、策を講じようとして皆で考える。そこに……。

 

「そんなもん決まっておる! 乾坤一擲の気概で共に曹操の軍を粉砕してやれば良いんじゃ!」

「そりゃ〜さすがに無茶だろ……」

「そうですよ……」

 

祭の言葉にキバットと一刀がツッコム。

 

「黙れ北郷! 良いか? 戦というものは頭でやるもんではない。心と身体でやるもんよ」

「それはまだ仮面ライダーの俺なら出来るだろうけど……」

「それにな。戦は我ら武官の仕事じゃ。頭でっかちなの文官どもが、ゴチャゴチャと御託を並べて進むもんでもないわい」

(……うん?)

 

一刀は最初の発言はともかく、次の祭の発言に少々疑念を持った。

 

「それはどういう意味だ?」

「冥琳、怒るな。……祭とて本気で言っているワケでは無い」

「いいや、本気さね。……曹操との対戦を前に、策が何だ、作戦がどうだ、ピーチクパーチク言葉遊びをしておるひよっこ共に、いい加減腹がたっとる。

貴様ら、戦を盤上の遊戯か何かと間違えとりゃせんか?」

(そういうことか……)

 

一刀は祭が何をしたいのかがわかった。

 

「戦とはなぁ! 己の力を最大限に発揮して、敵を殺戮することじゃ!

主の命令一つで敵と差し違えて死ぬ! そういう気迫を胸に秘めてぶつかりあうのが戦じゃろうに。

策が何だと、小手先のことばかりに気を取られおって……。孫呉はいつから惰弱な文官風情に仕切られるようになったんじゃ!?」

「控えろ黄蓋! たかが武官風情が、両軍の軍師に対してそのような罵声を浴びせるなど無礼千万!」

(冥琳……)

 

一刀は冥琳の心境を考えて、心がざわつく。

 

「蓮華様。軍規に照らし合わせ、黄蓋を処刑します」

「な……何を言ってるのっ!? そんなこと、許すわけないでしょう!」

「そうですよ。お二人とも落ち着いてください……!」

 

タツロットが祭と冥琳の間に入って、止めようとするが二人は止まらない。

 

「はっ! わしを処刑するなど、出来もせんことを言って見せて、主君に取り入れるか。浅はかなことよの、周公謹!」

「黙れ黄蓋! 私は呉の大都督であるぞ!」

「だからなんじゃ! 戦うことも出来ん臆病者が大都督などと、片腹が痛すぎて笑ってしまうわい!」

「そこに直れ! 成敗してやる!」

 

冥琳が剣を抜く。

 

「おいおい落ちつけよ……」

「キバット、タツロット…」

「どうした、一刀」

「まさか止めるのをやめろと……」

「そうだ…。このままだと二人ともまずいからな。とりあえずは俺の言うことは聞いてくれ」

「「………わか(りまし)った」」

 

キバットとタツロットは一刀の言うとおり黙ることにした。

 

「ちょ、ちょっと待て! 落ち着け冥琳! 祭もあまり挑発するな!」

「はんっ! 挑発などはしとらん。わしは事実を言っとるまでだ!」

「祭! 一刀、見てないで止めてくれ!」

「いや……どう止めても遺恨が残る。となると冥琳の言う通り、軍規に照らし合わせるしかないな」

「なっ!?」

「穏。祭さんのこの罪状、どんな刑になるの?」

「え? あ、あの……軍規に照らし合わせれば、死罪が当然かと」

「そうか……。どうする、冥琳?」

「決まっている。即刻、皺頸を刎ね、軍神の血祭りにしてくれる」

「やれるもんならやってみろ!」

「やってやるさ!」

 

二人が本気な目になる。そこに蓮華が割って入る。

 

「待て! 待て二人とも! 祭を死罪にするなど、私が許さん!」

「では蓮華様に罰していただきましょう。…どのような罰を与えますか?」

「はっ! わしに罰を与えるのが怖くて、主君を盾にするとは、卑怯この上ないのぉ、公謹!」

「何だとっ!」

「待てというに! ……冥琳下がれ!」

「……は」

 

冥琳は言われるがままに下がった。

 

「状況がどうであれ、呉の大都督に対して暴言を吐いた祭の罪は罰する。……良いな、祭」

「ふん!」

「黄蓋を鞭打ちの刑に処す! 引っ立てぃ!」

「は、はいっ!」

 

明命は戸惑うものの祭を連れていった。

祭を連れていった後、劉備軍の将は皆、冥琳に意見を言うが、冥琳は呉内部の問題なので口を出さないで欲しいとして一刀も加わって何とか落ち着かせた。

劉備達が下がった後は、蓮華が冥琳のところに来た。

 

「冥琳っ! この大切な時に、さきほどの振る舞いはどういうことだ! お前らしくもない!」

「……今はまだ、ご説明すべきでは無いかと」

「なにっ!」

「……私はこれから、為すべきことを為さなければなりません。お先に天幕に下がらせて頂きます」

「な……」

「では。……」

 

冥琳はそう言って自分の天幕に戻って行った。

 

「はぁ」

「気落ちしてるな」

「と、当然でしょ! この大切な時に、呉の宿老と柱石が喧嘩なんて……!」

「蓮華」

「何?」

「もう少し、冥琳と祭さんを信じようよ。キバットもタツロットも……」

「……?? どういうこと?」

「さっぱりわからないぜ」

「あの二人が蓮華にとって不利になるようなこと、本当にすると思う?」

「それは……」

「付き合いが短い私でもそれは無いような気が……」

「そう。しないよ、絶対。だから今は事の成り行きを静観してくれ……」

「一刀は何か知ってるの?」

「知ってるというより、最初っから理解してるだな。と言っても間諜の事を考えると言えない。それだけだな、言えるのは……」

「信じていいんだな?」

「仮面ライダーがそんな嘘をつくか?」

「……分かった。なら信じる」

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それから夜になって、一刀が冥琳の元を訪ねる。

 

「冥琳」

「北郷か。…何用だ?」

「色々あるけど、これからどうするんだ?」

「どうするとは?」

「祭さんが陣を抜けた後のことだ」

「ほお。見抜いていたか」

「へ?」

「はい?」

 

一緒に居るキバットとタツロットは何のことかわかっていない。

 

「これでも天の御遣いって言われてるんだ。それくらいは見抜くさ」

「そうか。……さすがだな」

「すごいですね、一刀さん」

「見直したぜ」

「そうでもないが……、どうするんだ?」

 

一刀が冥琳に聞く。冥琳によると祭はこの後陣地を抜けて、曹操の陣に行き、降伏を申し出て、内部で暴れるとのこと。しかし二人は打ち合わせをしていなかったことが冥琳の言葉でわかったのだ。

 

(まさに阿吽の呼吸)

 

一刀が二人の呼吸のピッタリさに感動していると……。

 

「ゴホッゴホッ……」

 

冥琳が突然咳きこんだのだ。しかもその口からは血が吐かれていた。

 

「冥琳!?」

「おいおい、これはまずいぞ」

「人呼んできますね!」

 

一刀が冥琳の体を支えようとするが…。

 

「騒ぐな北郷! キバット! タツロット!」

「「「っ!?」」」

 

冥琳の言葉で、一刀達が一時行動停止した。

 

「この身に巣くった病魔が蠢きだしただけだ。別に大したことではない」

「そんなわけないだろ!」

「病魔って……一体いつからですか?」

 

タツロットが冥琳に聞く。

 

「雪蓮が死ぬ少し前からさ。……私はもはや長くは保たんだろう」

「そんな……」

「悲しむ必要は無い。……もはや生に執着しようとは思っていないからな。

だが…あと少し。この戦いが終わるまでは、何としても保たせてみせる。だからこのことは誰にも言わないでくれ」

「本気かよ?」

「ああ。私はこの戦いに全てを賭けている。この戦いに勝てるのならば…命など要らん」

「何でそんなこと……」

 

一刀が冥琳を叱ろうとするが、冥琳の瞳は決意に満ちていた。それは一刀が仮面ライダーの力で人を殺さないと決意した瞳に匹敵するほどに……。一刀はその瞳を見て何も言えなくなったのだ。

 

「この命が今、燃え尽きようとしているのは、もはや天命というものだろう。

だがただでは死なん。……曹操を倒し、呉の未来への道筋を照らすまではな」

「冥琳さん……」

「覚悟の上か」

「ああ。人はいつか死ぬ。雪蓮がそうだったように。

それは良い。その現実を否定しない。だが、だからこそ私は、この世で何を為したのかを残していきたい。

呉の未来を。仲間達の将来を、輝かしいものとするために………」

「冥琳…」

「北郷。約束してくれ。私の身に何があったとしても、蓮華様を支え、天下への道を歩くと。

雪蓮の夢、私の思い……それを背負って、蓮華様と共に歩き続けると……」

「……そんなの……約束なんかしなくてもそうするつもりだ……」

「そうか……。呉を。蓮華様を。……私の大切な人達を。お前に託す」

「ああ!」

 

一刀の心は哀しみに満ちていた。そんな時、祭が自分の部下を連れて陣を脱走したと連絡が入り、その対応をする。

 

「始まったか……」

「ああ……」

 

蓮華はそのことで素早く追撃部隊を編成。そのことで一刀達はまずいとしてすぐに先陣に立ち、ギリギリ同志討ちを防いだ。

そして祭はその追撃部隊を利用して曹操の陣に駆け込み、曹操は追撃部隊を攻撃しようとし、冥琳達はすぐに陣に戻った。

もっともこれで作戦の一部は成功したに近いのだが……。このままうまくいくかはわからない。それがこの策の危ないところである。

祭が曹操軍に投降したことは蓮華の心に大きな深手が負いそうになる。それを一刀は忍びないと思い、冥琳に頼んで早いけど、ネタばらしをした。

もっともネタばらしをしたのは蓮華以外には思春、明命、亞莎と穏だけである。(ちなみに穏は気づいていたそうだ)

一刀がそのことを知っていたのに亞莎は悔しがった。

 

(ごめんね)

 

一刀は心の中で亞莎に謝った。

その後、冥琳の推薦により亞莎が全軍の指揮を執ることになり、その補佐は穏がすることにした。

亞莎は穏と冥琳に励まされ、兵達に命令を出し、号令をかけて、思春達は自分の部隊に戻った。

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それからしばらくして、蓮華と冥琳と一刀だけになった。

 

「亞莎も立派に成長してくれたようだな」

「私と穏が手塩に掛けて教育しましたからね。立派な後継者となってくれるでしょう」

「そうだな。……」

「……」

「冥琳」

「はっ」

「…もう少しで全てが終わる。だから…あと少しだけ、私に力を貸してくれ」

 

蓮華が意味深な事を言う。

 

「御意」

「頼んだぞ」

「はっ。…では蓮華様。部隊の準備がありますので」

「ああ。……」

「では。……」

 

そう言って冥琳は自分の部隊に戻る。そこに一刀とキバットとタツロットが声をかける。

 

「蓮華、お前もしかして……」

「わかっているのか?」

「冥琳の身体のこと?」

「知ってたのですか?」

「少し前からね。……でも今、冥琳を戦線から離脱させては全軍の士気が落ちる。…私には冥琳の苦痛を無視し、戦場に立たせるしか方法がないの……。

ひどい王様よね、私……」

 

蓮華は悔むように言う。

 

「まあ……普通ならね……。でも冥琳も望んでいるんだ」

「だけど……だけどこのままじゃ冥琳は……」

 

蓮華はそれ以上の言葉を言わず、悲しみの瞳を一刀に向ける。

 

「そうかもしれないけど、そうじゃないかもしれない。

もう俺達がどうこう出来る状況じゃないし、全ては天命。そう考えて、今は勝利を目指すしかないと思う……」

「……強いのね、あなたは」

「いや、全然……」

 

そう言うと一刀は適当に置いてあったバイオリンを手に持つ。

 

「それがバイオリン?」

「ああ……。それとさっきの言葉の続きだけど…。俺は雪蓮や冥琳と知り合って、蓮華とつながりを持って、一つだけわかったことがあるんだ」

「分かったこと?」

「人は事を為すために生まれて、為し終えた後死んでいくってこと……。事がなんなのかは人それぞれだけど、冥琳が病気で倒れてもその事を終えていれば満足できると思う。

だから……俺は決めた。俺は泣かない。全力で冥琳の夢、目的、目標を叶えてやりたい。残り少ない時間の中で。

仮面ライダーの俺が出来る…精一杯の手向けだと思うから…」

「私だって……そうしてやりたい」

「なら今は悲しみに堪えよう。今日の夜、曹操との決戦に勝利して、笑って冥琳を見送ろう…。

でも俺は戦う直前にこれを使おうと思っている」

「バイオリンを何に?」

「冥琳に曲を……安らぎを捧げるために……」

 

その様子を冥琳は遠くから見ていた。

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それからしばらくして曹操軍の内部が鎮まったのを機に祭の部隊が動き出す。

何をするのかと言うと、曹操軍内部に火を放つというものだった。

そしてその火計は成功し、曹操軍の船が燃える様子が呉の陣営からも見えていた。

 

「前方の空に火が見えます!」

 

明命がその様子を報告する。

 

「始まったか……! 祭はどうしたっ!」

「ええと……あ! 曹操の陣より船が出ました!」

「それが祭だな。……よし! 全軍に通達! 黄蓋の投降は裏切りにあらず! 周公謹、一世一代の策だったとな!」

「わかりました!」

「御意!」

 

タツロットと伝令が全軍に通達しに行く。

 

「呂蒙!」

「はっ!」

「甘寧、周泰と共に黄蓋を守れ! 必ずや無事に連れて帰ってこい!」

「御意! 行きますよ、思春さん、明命!」

 

そう言って、亞莎は思春と明命を連れて船を出して、祭の救出に向かった。

 

「陸遜!」

「はーい!」

「後曲の本陣をいつでも動かせるようにしておけ。祭を迎え入れたあと、すぐに動くぞ!」

「御意です♪」

「周瑜、劉備陣営の動きはどうか!」

「我らと同じく、すでに動き始めておるようです。……さすがは諸葛孔明」

「敵としては恐ろしいが、味方としては頼もしいか。よし。すぐに作戦主旨を告げる使者を出せ」

「御意!」

「全軍に告ぐ! この戦いによって曹魏を完膚なきまでに叩き、孫呉の未来を手に入れるのだ!」

「おおおおおおおおおおお!!!」

 

それからしばらくして祭が戻って来た。

 

「良く……良くぞしてのけてくれた……ありがとう、祭」

「ふふっ、この老躯の賭けどころ、どうやら間違いでは無かったようですな」

「ええ……! 祭のおかげでこの戦いに勝機が見えた。後は曹魏を叩くのみ!」

「敵は大混乱に陥ってます。今こそ我らの力を見せつける時。蓮華様! お下知を!」

「ああ!」

 

亞莎の言葉により、蓮華は全軍に号令をかける。

そして劉備軍もそれに乗って、曹操軍に突撃をかける。

 

「さてと……」

 

一刀はバイオリンとバイオリンの弓を持つ。

そして一刀はその場で音楽を奏でる。その曲は一刀が適当に考えたものだが、どこかしら悲しいものを感じる。

皆はそれを分かっていないが、蓮華には分かっていた。

 

(一刀……悲しんでいるのね……)

 

そのバイオリンの音に引き寄せられるかのようにキバットとタツロットが一刀の体について、一刀は仮面ライダーキバエンペラーフォームに変身。

キバエンペラーフォームになりながらも一刀は音楽を奏で続ける。

そして奏で続けて、キバの体が光り出し、バイオリンと弓が船の床に落ちる。

そして光が消えると共にキバの姿は翼竜のようなものに変わっていた。それはキバ飛翔態……。一刀の「想い」が最高潮に達したのだ。

 

「キシャアアアアアア!!」

 

キバ飛翔態が叫びをあげて、飛んでいく。曹操軍の陣のところに……。

 

「一刀……」

 

蓮華は飛んでいくキバ飛翔態をただ見ていた。

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「うわぁああああああ!!」

 

曹操軍は火計により混乱をしていたところにキバ飛翔態による攻撃により、さらに混乱を大きくしていた。

キバ飛翔態は口から火の玉を放って、曹操軍の船と焼き払い、撃沈をしていた。

もっともキバ飛翔態になっても一刀の意思は残っているので、可能な限り人が死なないように攻撃をしている。

キバ飛翔態が空を飛んで曹操がいる船まで飛んでいく。

 

「なに、あの竜?」

 

曹操の近くにいる荀ケや郭嘉や程cが驚く。

そしてキバ飛翔態は曹操の前に降りようとして、キバ飛翔態からエンペラーフォームに戻って船の上に降りる。

それと同時に……。

 

「ザンバット!」

 

タツロットからザンバットソードが出され、キバエンペラーはそれを手に持って、曹操の前に着地する。

 

「お前は……」

「曹操……お前と決着をつけるためにここに来た」

「華琳様!」

 

そこに夏侯惇、夏侯淵がやってくる。

 

「貴様ーーーー!」

 

夏侯惇が己の剣でキバに斬りかかるが、キバはその剣をザンバットソードで防ぐ。

 

「なっ!?」

「俺は曹操と決闘をしに来た。余計なことはするな!」

 

キバエンペラーから放たれるすごい闘気が夏侯惇を襲い、キバエンペラーは夏侯惇の腹を手加減して蹴る。

 

「ぐっ!」

 

夏侯惇は蹴られた勢いで後ろに吹き飛び、夏侯淵が夏侯惇を受け止めた。

 

「姉者! 大丈夫か?」

「まあな……」

「どうする?」

 

キバエンペラーが曹操にザンバットソードを向けて問う。

 

「いいでしょう。受けて立ちましょう」

「華琳様!?」

「華琳様! それはなりません。ここでそんな勝負を受けては……」

「黙らっしゃい!」

 

曹操の怒鳴り声で魏の将が皆、静まり返る。

 

「この者はこの覇王、曹操に決闘を申し込んできた。ならば覇王たる私がその挑戦を受けないときたら笑われ者だわ」

 

曹操はそう言って、自分の武器である鎌を持って構える。

 

「さあ、どこからでもかかってらっしい!」

「……その前に……」

 

キバエンペラーはザンバットソードを船の上に刺して一度変身を解く。

 

「どういうつもり?」

「お前とはこれで決着をつけたい」

 

キバットとタツロットが一刀から離れる。

一刀はクウガのベルトを取り出す。そのベルトは以前のアルティメットフォームに変身した時と同じ状態であった。

 

「変身!」

 

一刀がベルトの変身ボタンを押して、仮面ライダークウガアルティメットフォームに変身する。

しかしその瞳の色は以前の黒色ではなく赤色であった。

クウガが船の上に刺したザンバットソードを取る。

本来ならクウガが持った物はクウガのフォームに合わせて武器の形や姿を変えるが、ザンバットソードは姿を変えなかった。

 

(これってやっぱり管輅のおかげかな……)

 

きっとザンバットソードをクウガが持っても変化しないようにしたのだと一刀は思う。

それから二人はしばらく硬直状態になる。そして二人は同時に走り出した。

 

「「はあ!」」

 

二人は同時に武器を振り、お互いの武器に当てる。

 

「同時のようね」

「ああ……」

 

そして二人は距離を少しとって、また武器を振り当てる。

それがしばらくの間続く。その様子を夏侯惇達はただ見守るだけしかなかったが、そんな時曹操軍の伝令が来て、もう戦線が崩壊した事を伝える」

クウガと曹操が戦っている間にも同盟軍は攻めているのだ。

 

「これ以上、奴らの勢いを止めることが出来ない!」

 

郭嘉は悔むように言う。

 

「もはやこれまで。そういうことでしょう」

 

クウガと武器のつば競り合いをしていた曹操がそう言った。

 

「ですが華琳様!」

「聞きなさい、桂花。…相手の数倍に匹敵する兵力を持ち、十分に戦いうる有能な将達が居て、それなのに一敗地にまみれるということ。

これはもはや、天命が私から去ったとみるべきでしょう」

「……天は覇王ではなく、均衡を求めた、そういうことでしょうか」

「天意などもはや知らず。……天が私を求めないのならば、私ももはや天を求めず、よ……」

「………そうか………」

 

そう言うと、クウガはつば競り合いを止めて、武器を置いて、丸腰になる。

 

「どういうつもり?」

 

曹操がクウガアルティメットに尋ねる。

 

「何。もう天下を求めないのなら、俺の敵じゃない。だったら戦う意味もないってことだよ」

「そう………」

 

曹操は少し黙ってまたクウガアルティメットに尋ねる。

 

「あなた最初っから本気で戦ってないでしょ?」

「え?」

「戦っているうちに分かったわ。あなたが本気ならば私は一太刀で殺されていたと……。あなた……私がこう考えることを分かっていたの?」

「いや……ただ殺したくないと思っていただけだ」

「甘いわね……」

「甘いのは俺の……仮面ライダーの特徴だから……」

「わかったわ……春蘭」

「は、はい!」

「この戦場を放棄し、撤退する。可能な限り兵をまとめ、一点突破で戦場を脱出するわよ」

「はっ!」

「桂花」

「はっ」

「本城に伝令。曹操は本城に帰らず。後のことは自由にせよ、と伝えなさい」

「え?」

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その事は魏の将達だけでなく、クウガも驚く。

 

「本城に帰らないのですか?」

「これほどの損害を受けた以上、本城に籠っても孫権達に抵抗して勝ちを得ることは難しい。それにこの男もいる上ね……」

 

曹操がクウガの方を見る。

 

「このまま本城で戦えば、兵ならばいざ知らず、民を巻き込んでしまう。それだけは避けなくてはいけないでしょう」

「曹操……」

 

一刀はこの言葉で気づいた。曹操もまた雪蓮や蓮華のように民のことを思って戦っていたのだと……。

 

「しかし……我らはどうするのです?」

「我らはこの大陸を脱し、新しき天が広がる大地を目指す」

「新しい天の土地…新天地ですか」

「ええ。天は大陸だけにあらず。大陸の天を孫呉と劉備で二分するというのなら、私は違う天を独占してみせましょう」

「曹操……」

「西方、東方……天は果てを知らず、よ」

 

曹操が笑い顔をしながらクウガに言う。

 

「そうだな……」

「ではわしが先導仕ろう。貴君を新たな外史の礎とするために……」

「お前は!?」

 

クウガが突然現れた男に驚く。

 

「お主が北郷一刀か。なるほど、その仮面のせいでよくは分からぬが、管輅の言った通りの男だな」

「管輅……やはりお前は……管輅の仲間……」

 

一刀はこのマッチョな男が「外史」と言った時点で管輅の仲間か何かだと気づいていた。

 

「そうじゃ」

「お前は曹操達を先導すると言ったが……」

「それ以上のことは外史を知ったお主でも言えん。じゃが、これだけは言えよう。

わしはこの者達を悪いようにはしないとな…」

「………」

 

一刀はどうしようかと考える。そして答えを決めた。

 

「わかった。曹操の事は適当に言っておく。あんたは曹操達を……」

「任せよ。では、曹操殿。行こうではないか……」

 

マッチョの男は先導して曹操達を戦場から離脱させ、クウガはその様子を黙って見ていた。

 

「あの男……どんな外史に連れていく気なんだ?」

 

クウガはそう思いながら、曹操達の戦線離脱を見守り終え、自分は蓮華の元に帰って行った。

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おまけ

 

 

作者「どう? 仮面ライダー×真・恋姫†無双 呉編  第9章」

一刀「赤壁でも簡単に終わるんだな」

作者「それは俺の筆力の問題だな。それに一刀が関わらないところを書いてもただの長文になりそうだからな」

一刀「しかしアルティメットフォームでの武器が変わらないって…」

作者「本当ならタイタンソードみたいなのに変わるんだろうけど、俺はザンバットソードで戦って欲しかったんだ。最初はキバエンペラーのままだったけど、クウガアルティメット(赤目)の活躍を期待してる人が多かったみたいだから、あえてこんな形にした。だが私は謝らない」

一刀「またそれか」

作者「次で終わりです。長かった仮面ライダー×真・恋姫†無双シリーズも次で一端幕を下ろします。と言っても超外伝や超番外編に拠点の話を投稿したいと思っています。

それでは次回まで…。と言っても夕方頃には終章を投稿しようと思っています」

説明
基本的には真・恋姫†無双の呉ルートの話ですが、もしも北郷一刀が仮面ライダーの力を手に入れたらという妄想から生まれました。
そして流れも基本的に原作のままですが、仮面ライダーの力があるためセリフや一刀の態度が違うところや話そのものが大きく違うところも出てきたりします。
そのためそんなの嫌だという方は閲覧をご遠慮願います。
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コメント
次回で最終回ですか。ちょっと寂しいですね。(ブックマン)
一刀・・・1日でバイオリンをモノにするなんて・・・www(仮面ライダー天皇)
面白かったです。6pなんですが華琳が「黙らっしゃい!」っていってるのですが、なんとなく「黙りなさい!」のほうがしっくりくるような気がしましました。(tomasu)
7pキバに言う・・・え?何時キバになったの? (スターダスト)
アルティメットの活躍が見れて良かったです。(pandora)
俺的にはファンガイアの王VS魏の覇王が見てみたかったな〜そして次でもう最終回ですか戦いが終わったのでライダーは出ないと思いますが、どう終幕するのか楽しみです^^(アキエル)
ライジングフォームは全く出番なしなのかい? 飛翔態の登場はうれしいですねぇwwwwでもあれは龍というよりは不死鳥ではないかと俺は思っておるんですが・・・・どうなんでしょう? (峠崎丈二)
うむ、赤壁は赤く燃えているからこその赤壁ですね(そうかな?)一刀君もアルティメットフォームを扱えるようになっていて本当に良かったです。それにキバットとタツロットが会話に参加すると、いかにも原作との『違い』が見れて楽しいですよ。(レイン)
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