真・恋姫?無双 仙人で御遣い 16話
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〜城壁〜

 

(この一月、いろいろあったな〜)

豪臣は振り返り、知らず知らずの間に顔がニヤけていた。

そんな豪臣に

「・・・気持ち悪いですよ」

と、朔夜が声を掛ける。

「気持ち悪いって・・・ヒデェなぁ」

苦笑いを浮かべる豪臣。

そんな豪臣が気に入らなかったのか、朔夜が横目で睨んでくる。

「そう言えば、昨日の朝帰りの件・・・理由を聞いていませんが?」

朔夜の一言で、豪臣の顔が引きつる。

昨日の朝帰りの件。つまり、思春と一夜を共にしたときのこと。

「ハ、ハハ・・・」

「何ですか、その乾いた笑いは?」

朔夜の眼が細まる。

(何か知らんが、凄くヤバイ!)

そう思った豪臣は、スッ、と立ち上がり

「お、俺、先に戻ってるわ!じゃ!」

ピシ、と敬礼して走って行った。

朔夜は、そんな後ろ姿に溜息を吐く。

そして、豪臣が去って行った方とは逆を向き

「そろそろ出てきたらどうです?」

そう声を掛けた。

 

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「む、気づいておったか」

朔夜の言葉に、闇が動く。

出てきたのは、男だった。

ただ、そん所そこらの男では“断じて”ない。

(・・・また、変態ですか)

顔は角ばっていて、身体は筋骨隆々。白髪を真ん中から分け、長いもみあげは半分に折り返して耳の前で結わえてある。服は、絶対にサイズの合っていない黒のタキシードの様な物を上だけ羽織り、その下は何故かブラと赤いネクタイだけ。下半身はパンティーの様なフンドシにハイソックス。貂蝉に、負けず劣らずの変態さん。

(貂蝉に引けを取りませんね。というか、何ですか、あの髪は。弥生時代の人ですか?)

そんなことを考えていると、男が口を開く。

「我が名は、卑弥呼。漢女道の前継承者で貂蝉の師よ!」

(・・・あ〜、確かに弥生人ですね。さらに、あの変態の師ですか。道理で、変態具合が似ているのですね)

「貂蝉のことは知っておるよのぉ?」

「はい。彼と「喝!!」・・・何ですか?」

突然叫んだ卑弥呼を睨む朔夜。

「彼では無い!か・の・じょ、だ!!漢女(おとめ)だからな!」

(・・・ウザいですねぇ)

白い眼で見る朔夜。

「ハァ。彼女と似た氣で、敵意もありませんでしたから攻撃をしませんでした」

朔夜は、溜息を吐き言い直す。

「うむ。そこまで察知しておったか。やりおる!ガッハッハッハッハ!」

腰に手を当てて笑い出す卑弥呼。

「で、何の用ですか?あたしの方ばかり見ていた様ですが」

「そこも気づいておったか。ならば、話は早い。お主に伝えておこうと思ってな」

急に真面目な顔になる卑弥呼。そして、その顔を見て、朔夜は黙って聞く態勢になる。

「実は、この外史に近い外史で、嫌な人物の噂があってな」

「外史?それは、この世界の様な異世界と捉えれば良いのですか?」

「まあ、そう捉えてもらっても良い。今回の問題は、そこじゃないからな」

「嫌な人物、の方ですか」

「そうだ。まだ、はっきりしたことが分かっておらぬから名は言わぬが・・・

 ただ、もしあの妖仙が、この外史に現れた場合。あの仙人見習いだけの力だけでは心許無い。

 そこで、お主にも力を与えようと思ってな」

「力・・・ですか?」

朔夜が首を傾げる。

「今、貂蝉が崑崙山(コンロンサン)に行っておる。そこで、大上老君(タイジョウロウクン)に仙桃(セントウ)を貰う予定だ」

(崑崙山に大上老君・・・封神演義?)

「・・・その仙桃とやらを、あたしが食べるのですか?」

「そうだ。そうすれば、お主は人になる。と言っても、人に変身出来るようになる、というだけだがな」

「・・・え?」

 

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【視点・朔夜】

「・・・え?」

あたしは、一瞬思考がフリーズしてしまいました。

(ひと・・・人・・・人間!!)

あたしは、表情に出さないことは成功したが、心の中では歓喜で混乱していた。

(人間・・・豪臣と同じ存在になれる・・・)

そんなあたしに、卑弥呼が話しかけてくる。

「うぬは、人の・・・お主、聞いておるか?」

「・・・・・・もちろんです」

(聞こえてはいました)

あたしは、心の中でだけ本音を漏らす。

「・・・まあ、良い。うぬは、人の姿になり見習いをサポートしてやればよい」

「人の姿になれば、あなたの言う“妖仙”とやらに勝てるのですか?」

「・・・・・・」

眼を逸らして黙る卑弥呼。

(何故、黙るのですか!)

「・・・言い難いのだが・・・無理であろう。しかし、逃げ切れる可能性が上がる」

あたしは、その言に苛立ちを覚えた。しかし、それも表情には出さない。

「それほどの者ならば、あなた方で相手をすれば良いのでは?それとも、それが“試練”なのですか?」

(仙桃とやらは惜しいですが、豪臣を死なすわけにはいきません)

卑弥呼は、申し訳無さそうに答える。

「いや、今回のことは、“試練”とは全くの無関係。不測の事態というものだ。そして、儂らだけでは奴は倒せん。すまぬが、自力で回避してもらう他あるまい」

(・・・・・・無責任なことを)

あたしは、怒りを通り越して呆れる。

「む!この氣はだぁりんの!むっふ〜ん!!」

「え?」

卑弥呼は、いきなり訳の分からないことを言って城壁を飛び降りた。

「ちょっ・・・・・・」

あたしが城壁の下を覗き込んだときには、卑弥呼の姿は何処にも無かった。

「・・・投げっ放しですか。本当に無責任な」

【視点・終】

 

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〜城門〜

 

卑弥呼が現れて(豪臣は知らない)から二日後の朝。

豪臣と朔夜、そして孫家の将たちが集まって、各々別れの挨拶をしていた。

「紫堂。いろいろとためになる異国の話、楽しかったぞ」

「そうですね〜。治水なんかの件でもお世話になりました。どうにかお金をやり繰りして実行してみますね〜」

「役に立てて良かった」

豪臣に礼を言う冥琳と穏。

 

「紫堂よ。此方に来ることがあれば、遠慮せずに顔を見せに来い!」

「そうよ!私の標的は豪臣なんだから。絶対に逃がさないわよ!」

「は、はは・・・肝に銘じておく」

祭と雪蓮と握手を交わす豪臣。

 

「私も、豪臣さんを孫家に入れることを諦めていませんよ」

「親娘揃って・・・。またな」

「ええ。また」

青蓮とも、ガッチリ、と握手を交わす。

 

そして、豪臣は思春の前に立つ。

「豪臣様」

見上げる眼は、切なげだった。

豪臣は、そんな思春の頭に手を置き、ワシャワシャ、と撫でる。

「そんな顔すんな。別に、今生の別れってわけじゃない。必ず、また会える。

 ・・・ほら!笑え!」

思春は、泣き笑いの様な表情になる。

「必ず、またお会いします。・・・必ず」

涙を溜めた瞳で、しかし、豪臣を真っ直ぐ見詰める。

(ったく!卑怯なくらい可愛いやつだな!///)

撫でる手を、頭から頬に移す。

そして

「「「「「あ!!」」」」」

思春の唇を奪った。

「・・・またな///」

豪臣は、優しく微笑む。

そして、思春は

「・・・はい///」

頬を染めて、小さく、そして恥ずかしそうに頷いた。

 

そんな二人を見て、朔夜は

(熟れてきましたね、このすけこましは)

危機感を覚えた。

 

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〜荒野〜

 

青蓮たちの下を離れ、豪臣たちは北に向かっていた。

「後少しで洛陽だな」

「そうですね。しかし、目的地は天水でしょう?まだまだですよ」

豪臣の言葉に、肩に乗ったままの朔夜は答える。

「そんなこと言うなよ。もう少しで屋根のあるところで寝られるんだから」

「そなことばか・・・り。豪臣。前方に人です。十人ですね。その内二人が追われています」

朔夜は、途中で言葉を切って豪臣に知らせる。

「またかよ。またこのシチュエーションか」

豪臣は、右手で顔を覆う。

「どうしますか?スルーすることも出来ますが?」

「俺が見過ごすとでも?」

「まさか」

横目で見てくる豪臣に、朔夜は嬉しそうに返した。

「だろ?行くぞ」

豪臣も笑顔を作り、走り出した。

 

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【視点・??】

私たちは逃げていた。

相手は小さな盗賊だった。

5分(15分)程前。私は、賊と接触するよりも早く相手に気づき逃げ出した。

しかし、賊は私に気づき追われることになった。その折に、偶然その場に居合わせたご老人も共に逃げることになった。

(このままでは追いつかれますね・・・)

そんなことを考えていると、老人が、息も切れ切れに声を掛けてくる。

「お嬢、さん。儂を、置いて行きなさ、れ。儂、の方が、金目の、物を持って・・・おる」

「いけません!頑張って逃げましょう!」

私は即答するも、この状況を打開することは出来ないと思った。

(せめて洛陽方面に逃げることが出来ていたなら・・・)

私たちが逃げているのは南陽方面。しかも、この辺りには関所や村といった物は無い。つまり、人がいないのだ。

賊との距離が、どんどん縮まってくる。

(もう、駄目ですね)

諦めかけていた私の眼に、一人の人間が眼に入った。

(何ですか、あれは?もの凄い速さ)

その人間は、頭から外套を被っていて、もの凄い速さで此方に走って来ていた。

 

そして、その者はその速さのまま私たちと擦れ違い賊の前に立った。

「何だ、テメっぶほっ!!」

「なっ!貴様ぁぁ!・・・ぐぅ!!」

外套は、賊を問答無用で二人殴り倒した。

そして

「お前ら。この二人を連れてさっさと失せろ。でないと・・・殺すぞ!」

後ろに居る私たちにも分かるほどの殺気を放った。

賊は、その殺気に当てられて脱兎の如く逃げ去っていた。

私とご老人は、危機が去ったことに安堵の溜息を漏らした。

外套は、フゥ、と息を吐き、頭に被っている部分を払い除ける。

顔を露出させた者は青年だった。

青年は、私たちを振り向き

「爺さん、姉さん。大丈夫か?」

優しい笑顔を見せた。

 

その笑顔に

(何でしょう。もの凄く体が熱いですね///)

私はその熱に、何故か喜びを感じた。

 

これが、私と彼との最初の出会いだった。

【視点・終】

 

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「爺さん、姉さん。大丈夫か?」

豪臣がそう聞くと、老人が返す。

「どなたか存じませんが、この老骨の命を救ってくれたこと、深く御礼申し上げる」

老人が深く頭を下げると、豪臣は笑う。

「いいって。それより、怪我ねぇか?」

「はい、怪我は負っておりませぬ。

 儂の名は衛慈(エイジ)。字は子許(シキョ)と申す商人でございます。

 何卒、名を教えて頂きたい」

「そう畏まるなよ。俺は紫堂豪臣。ただの旅人だ。身分のある者じゃない」

頭を下げる衛慈に、困ったように豪臣が肩に手を置く。

そして、今度は女性の方に眼を向ける。

女性は豪臣の方を見ていた様で、豪臣と眼が合う。

(綺麗な人だ・・・ん?顔が少し赤い様な・・・)

そんな感想を思いながら、豪臣は声を掛ける。

「あんたは、怪我無いか?」

「え、ええ。ありませんよ」

女性は、少し赤みの差した笑顔で答える。

「私も自己紹介をしておきます」

そう言って背筋を伸ばす女性。

女性の茶髪が太陽の光を浴びて綺麗だな、と豪臣は思う。

 

そして、女性が口を開く。

「私は、姓を荀(ジュン)。名を――――」

 

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あとがき

 

どうも、虎子です。

予定期日に、何とか間に合いました〜(-_-;)

最近、忙しくなってきてます。予定を守って行けるか心配な虎子です。

 

さて、作品の話ですが・・・

遂に終わりましたよ、孫堅軍編!

読者に人気?のデレ思春ともしばらくお別れなので、彼女だけちょっと贔屓してみました。

 

コメントで出ていた朔夜人化計画を実行に移すために、本来、名前すら出る予定の無かったモノまで出して布石を置いておきました。いつ実行されるかは未定です。

 

新たに登場したキャラが二人。

一人は衛慈 子許。さて、もう一人は誰でしょう?

分かりますよね?

 

 

それから、ちょっと質問です。

「青蓮の絵が見たい」と言うコメントがありました。

私は、一応キャラを作るときに簡単にキャラを描いています。絵を描いてから本文に書いていくので、本文のイメージとは違うかも知れません。

それでも良ければ投稿します。どうしましょうか?

コメントを見て判断させて頂きます。

 

 

次回投稿は、早ければ29日。遅くとも30日終了までにと予定しています。

 

作品への要望・指摘・質問と共に、誤字脱字等ありましたら、どんどんコメント下さい。

 

最後に、ご支援、コメントを下さった皆様。お気に入りにご登録して下さった皆様。

本当にありがとうございました。

 

ではでは、虎子でした。

 

説明
最後に質問(アンケート)があります。
応えていただけると幸いです。

拙い文章ですが、よろしくお願いします。
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コメント
マジかいな!?(杉崎 鍵)
見たいです。姉さんですか?それとも妹?それとも大穴で母ですかW(ブックマン)
青蓮の絵を見たいに一票(大うつけ)
謎ばかり放り投げて逃走するとはなんて変態な漢女なんだ…しかし良い事を言っていたな…貂蝉よ!早く仙桃持ってきてくれ!!それに茶髪で綺麗なお姉さんで荀…誰なんだ?気になりますねぇ。イラストは興味があるので見てみたいです。(自由人)
アンケ−トを忘れていました。『青蓮の絵が見たい』に一票で。それから己のコメントが間違いでした。『家計』は『家系』でしたね。(レイン)
思春は今頃皆に・・・ガクガクブルブル(ヒトヤ)
ぶっちゃけジュンイクじゃないな(rababasukan)
呉のみんなとの別れ…特にデレた思春さんは貴重でした…って、しみじみしてたのに、つ・い・に読んでいる八割がお望みな『朔夜さん人化計画』のフラグがキターーー!!!貂蝉さーん!急いで下さーい!しかし、『妖仙』の正体も、最後の人も気にかかる…彼女は一体?姓が荀なら『彼女』の家計なんでしょうけど…私には分からない…次回を楽しみにしておきます。(レイン)
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オリキャラ 真・恋姫?無双  卑弥呼 衛慈 

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