真恋姫無双 美陽攻略戦 第十七ターン
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美陽攻略戦

 

 

 

 

 

 

 

       (はじめに)

 

 

                  曹家の暗躍のお話です。

                  

 

 

              

 

 

 

          前回のあらすじ

 

             冥琳「雪蓮、スマン! 道に迷って羅馬に来てしまった……」

           

 

               

 

 

               

 

             ※できましたら、今後参考に致しますので

 

              本編・外伝・勉強 異伝のどれが面白かったか

 

              コメントを頂けたら幸いです。宜しくお願い致します。                       

 

 

 

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第十七ターン

 

 

 

 

 

              「常山の昇り竜……貴女が一刀が言っていた趙子龍ね」

    

             華琳の言った言葉に反応し、無言でいた趙雲は目を細め言った。

 

              「……曹孟徳殿、どうして我が名をご存知ですかな?」

                 「私たちを甘く見ないで欲しいはね」

 

 

         趙子龍、

          貴女ほどの良将が何故、名門 袁家や星の数ほどある他の名門・軍閥を選ばずに

          優秀な家臣を故意に困窮に陥れ、自分よりも凡庸な者を重用する幽州の公孫?

          の客将として赴くこと。

 

          黒山賊が公孫?の要請を受け、援軍として皇族 劉虞の軍勢と応戦すること。

          そして貴女は、劉虞の殺害に合わせたかのように公孫?の元を去ることも……

 

 

                   「ほう、私が公孫?殿の客将と?」

 

         趙雲は華琳の話を食い入るようにしながら、

                         抱えていた白銀の槍 龍牙の柄を強く握り締めた。

 

               

              司馬と春蘭は目配せをして、春蘭は趙雲の動きを見た。

 

 

                     華琳は趙雲を指差し言った。

 

            

       「十万の黒山賊と言うけど所詮、貧民・流民等の烏合の衆が、

              何故官軍を相手に組織的な戦闘ができるのか。

            

             すなわち、趙子龍、

                 貴女が黒山賊の常山の頭領であるなら全て話の辻褄が合うわ」

 

 

 

 

 

 

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              これ聞いた趙雲は椅子から立ち上がり、龍牙を握り締めた。

           しかし、

              趙雲の行動に春蘭もすぐに応戦できるように椅子から立ち

                      腰に吊るした大剣 七星餓狼の柄に手をかけた。

 

               どちらが先に動くか、両者は無言でにらみ合った。

 

                 「子龍、控えてください。まだ話の途中です」

 

      波才が言うと趙雲は軽くため息をつき、相わかったと何事もなかったように椅子に座った。

 

                  波才は机の上に、一巻の木簡を置いた。

 

         「さて、許の東城門司馬をしていらっしゃる司馬様には

                我々は色々と便宜を図って頂きました。

                 その為、今回のご依頼を受け、朝廷の高官達を

                  司馬様から頂きました阿片とやらの虜に致しました。

 

             そして、我々の報酬として司馬様からこの阿片の製造方法

                         を記したこの書簡を頂きましたが……」

 

                波才は隣にいる趙雲達に確認するかのように見た。

                趙雲達は無言で頷き、話を進めるように促した。

 

          「これは、確かに司馬様が言われたように莫大な富を生みます……

                          しかし、これは我々の義に反します」

 

                華琳は波才の話を聞いて隣にいる司馬を見た。

            司馬は無表情であったがその目は悲しそうな感じをしていた。

 

               華琳はそれを見とると司馬を咎めることはしなかった。

 

          「あら、あちこちの山間で強盗・略奪をしている貴方達に義とはね。

                           そのような貴方達の義と何なの?」

 

                侮蔑するかのような表情で華琳は波才達に尋ねた。

                波才はそれを聞いて怒気を込めて華琳に言った。

 

              「我ら朝廷の逆賊となろうと、民草の逆賊にはなりません」

 

            華琳は現在、全ての職を辞して曹一族の本拠地である許に引き篭ってい

            るが、それでも華琳の立っている側は朝廷という基盤の上にいるもので

            ある。一方で波才達の立っている側はその朝廷に怨嗟のある民達の支持

            を基盤として立っている。

               

                 その為、両者が歩み寄ることは難しいことであった。

 

 

 

               室内の部屋の温度は、急激に下がったかのように感じた。

 

 

 

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                       「波才様」

 

            この気まずいく雰囲気を打ち破ったのは意外にも従者の少女であった。

 

            「?燕(ちょう えん)、貴女には何か視えたのでしょうか」

 

           少女は司馬にニッコリと微笑み、司馬は初めて会う少女に困惑した。

 

            「お初にお目にかかります。もう一人の天の御遣い 北郷一刀様」

                    

                    「一刀。アナタ……」

 

                     華琳は一刀を見た。

 

            当の本人である司馬は驚きのあまり目を見開き少女を見ていた。

 

            「曹孟徳様、御遣い様は私達に何も話しておりません。」

      

                   ?燕はにっこりと微笑んだ。

            「御遣い様、趙子龍様の未来をご存知ですね。それを皆にお話下さい」

                      

                      「あぁ、……」

 

 

 

 

 

                司馬の話により趙雲は目を見開いて驚いていた。

 

         「……信じられん。

               この私が劉皇叔なる輩の臣下になり、侯の地位にまで登るとは……」

 

         「ええ、趙子龍様、

               私の先見も趙子龍様がいくつかの選択をし、

                        決断をすることによりその道にいきます」

 

             司馬は波才に詰め寄るような勢いで?燕は何者なのかを問いただした。

 

      波才は少しためらったが、?燕から御遣い様に話すべきですと促されポツポツと話し出した。

 

         「?燕は、未来を視ることができる天性の見者(巫女)です。

            黒山軍の総頭領の張燕の正体とは、常山・趙軍・中山・上党・河内

                     の各頭領達とこの?燕との合議を指す隠語なのです」

 

 

             華琳は信じられない顔で、恥ずかしくて顔を赤くしている?燕を見た。

 

          あと数年経てば器量の良い娘として邑で平凡な人生を全うするような印象

          を受けたが、この少女が数十万の熱烈的信徒(ファン)を持つ大勢力の黄

          巾党に匹敵するもう一つの内患、黒山賊の頭領とは……

 

          華琳は朝廷が必死で黒山軍の総頭領 張燕に莫大な懸賞金を出しても密告

          者が出ないことにうなずけた。

 

 

 

 

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        「御遣い様、

            御遣い様は、未来で起きる結果をご存知のように、

                    私は選ぶべき道を視ることができます。

           

           例えば、曹孟徳様は 私を捨て、

                      公を選ぶなら

                       天下泰平の世を築くことが出来ます。

 

          しかし、その私の代償は曹孟徳様個人にとってとても大きく、辛いものです……」

 

             ?燕の話を聞いて司馬は詰め寄るように?燕に問いただした。

 

         「?燕殿、それなら選ぶ道が異なるなら、その結果も異なってくるのではないか?」

 

         「いいえ、

           その結果にいく過程が長くなるか短くなるかの違いで……

                結果自体は人の子である私たちには変えることはできません」

 

           「それなら、?燕殿なら、この俺の、俺の未来は視えるのか?」

                      ?燕は首を振り、哀れんだ様子で司馬に言った。

 

         「残念ながら、人ではない御遣い様の未来を私には視ることはできません。

           しかし、他の二人の御遣い様が消えたとき、

                    初めて人としての北郷一刀としての未来が動きます」

 

                     「そうか……」

                司馬は落胆の色を隠しきれない様子であった。

 

 

          二人の奇妙な話を聞いていた波才は、頃合を見計らって?燕に本来の話を聞いた。

 

       「波才様、これまで天の御遣いを語る偽者は沢山出てきました。

           しかし、曹孟徳様の元には本物の天の御遣い様がいます。

                       この存在は民を慰撫するだけにとどまりません」

 

         それを聞いて波才は難しい顔をして、指で机を叩き思案した。

          そして、華琳を値踏みするかのように見た。

 

        「曹孟徳様、我々は今の政により戦乱・重税・徴兵等により民達の怨嗟

          から各地の無頼漢が集まり、今のような黒山軍できました。

           その力を貴女が手に入れるとなるなら、我々は貴女が何を目的

            としているのかを知らなければ到底、貴女に臣下の礼をするこ

                  となど難しいものです。貴女の望みとは何でしょうか?」

 

                

                 華琳は神妙な顔をして波才達を見た。

 

            そして、一刀、春蘭も知っておきなさいと言って話だした。

 

 

 

 

 

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            華琳の祖父がまだ宦官をしていた先帝 桓帝の治世に大秦国(ローマ帝国)

           国王 安敦(マルクス・アウレリウス・アントニヌス)の使節が入朝した。

           この使節団は単に、象牙やタイマイなど西方の珍しいものを持ってきた和平

           や友好の使節団ではなく、漢王朝の災いの使者 

 

                     宣誓布告の使者であった。

 

            この時代の大秦国は、内には民を惑わすナザレの新興宗教が盛んになり、外

           は異民族からの度重なる襲撃とまさに内憂外患の状態であった。大秦国は安

           定と秩序維持の要であった軍全体の統制を掌握しきれなくなり国家としての

           崩壊の兆しが見えていた。その為、大秦国は自国の失政による不満を、他国

           を侵略するという行為で大秦国の市民の不満を拭おうとしたのであった。

 

 

            華琳の祖父である大宦官 曹騰や高級将軍達は、今までのように漢王朝の

           周辺異民族五胡の襲撃に応戦する程度ではなく、西方の大帝国からの襲撃に

           備えられる大規模な軍を駐留する必要があると考え、西方地域には名だたる

           武家が駐留し何時でも応戦できるようになっていた。

 

              しかし、先帝が崩御してから今に至るまで大秦国の侵攻はなく、

                          代わりに別の災いが漢王朝に起こった。

 

 

            この西方の武家は度重なる内紛により、幾つかの軍閥ができた。これらの

           軍閥は大秦国を想定した為に強大な軍事力を有しており、これを背景に幾つ

           かの軍閥は朝廷の命令を無視して暴走するようになった。

 

            そして、現在の今上陛下の治世になるとその軍閥の抵抗も酷くなり、強大

           な軍事力を持つ西方軍閥に対して、同じ強力な軍事力をもつ董家を懐柔して

           西方軍閥を壊滅させることを画策した。

 

 

 

 

 

 

 

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          「しかし、

            西方軍閥や董家の軍閥が共倒れしたとしても陛下の威光に

              恐れない輩は、これからも出る。そこで、これらに睨みを

                         きかせる陛下直属の常備軍が必要なの」

 

 

          確かに王直属の禁軍(王宮警護の近衛)はあるが、大規模な常備軍ではなく。

         通常の兵は必要に応じ地方から徴集して軍を編成していたのである。しかも地

         方から徴集される兵の大半は、農民から徴兵した兵士であったため質も低かった。

         そのため「戦闘を専門とした質の高い近衛軍」を編成し常駐させ、宦官や外威

         に左右されない絶対的な力を持った帝位が必要である。

         それには、この戦では新興軍閥の頂点である何進大将軍や門閥貴族の頂点である

         十常待達のどちらの発言力を高められず、戦が泥沼化することが望ましい。

 

         そして、両者の発言力が低下したことを見計らって、

              

              ある朝臣から

 

                    『陛下直属の常備軍設立』

                              

                                  が奏上される。

 

     そして、この曹孟徳の願いは、劉家によって統率された百年先までの世の安定と秩序を求める。

 

           目を閉じて華琳の話を傾聴していた波才は、華琳を見て言った。

 

            「このお考えは曹孟徳様のお考えでは ない のですね」

 

           華琳は波才との暗黙の会話をいかにも楽しむようにな顔で言った。

 

          「ええ、無上将軍を頂点に

            西園の八校尉と呼ばれる8人の将とその下には各々一万の将兵がいるの。 

            ……それと、売官をしていたのは近衛軍編成のための費用に充足させるためよ」

 

 

             売官、波才は華琳からこの言葉を聞いた瞬間、目を細めた。

 

          そもそも、官位は功績があったものに贈られるが、どんなに功績があったと

         しても重農業政策を挙げる今までの王朝では商人は罪人と同じように官位に就

         くことができない。しかし、今上陛下の治世では多額の賄賂をやれば商人でも

         官位を得ることができる。

          そして、その窓口は何進大将軍や十常待の一派ではなく大長秋(だいちょうしゅう)

         と呼ばれる皇后府の侍従長、すなわち大長秋・皇后の口を借りているが、その

         背後には今上陛下がいる。

 

 

 

 

 

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       それに、曹孟徳の祖父は先代の大長秋であるから、この話を知っていてもおかしくない。

 

 

         今上陛下が多額の売官をする理由は、常備軍を設立し、陛下自ら無上将軍とし

         権勢を振ることが目的であったか……

         この世で、このような壮大な計画を立案できるのは、現在の皇帝を擁立し隠居

         した大功臣 陳蕃しかいない。あの人物なら千里の先どころか、未来までを謀

         る程の老獪と聞く。

 

 

 

            そして、この曹孟徳は全ての官職を辞意して、許の曹家の館に引き

           篭っているが、館には全国から智謀の臣・武勇の豪傑等かこぞって訪

           れている。まるで下級士官の選定をするかのように……

 

           波才はあたかも万金の秘宝を値踏みをするかのように華琳の顔を窺った。

 

            華琳は状況次第では死地となるかもしれない

 

                この会席で臆することなく、

                     逆に王者の風格を漂わしていた。

 

                

                      奇貨おくべし

 

          波才は豪商 呂不韋が秦の始皇帝の父帝 子楚を見たように内心喜んだ。

          しかし、商売の鉄則は相手にこちらの腹を悟らせず高値で売りつける。

          波才は商売的な笑い顔で、華琳達に交渉にはいりましょうかと言った。

 

 

 

 

 

 

 

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                       数刻後、

 

           屋敷の下男に導かれ退出した華琳達の提示した条件を波才達は協議していた。

 

         「まさか、たかが長安への補給物資の襲撃を止めるだけの条件に、

                      このようなものを寄越すとは……はてさて……」

 

           星はもはや緊張の場から開放されたことから、華琳達が残したメンマを肴に

          チビチビと酒を飲み出していた。その一方で真剣な表情で波才は、華琳が置い

          ていった雅な一巻の巻物を穴が開くほど見ていた。

 

           その巻物には紙に鮮やかな朱でただ一字 

 

                        『勅』 

                             と書かれ、

 

            多分、これが皇帝の権威の象徴である玉璽(ぎょくじ)が押印され、

                   さらに皇帝御自から筆を取った花押が書かれていた。

 

 

           これの意味することは、黒山賊は単に夜盗等の類ではなく、皇帝から

          黒山賊に私掠免許(しりゃくめんきょ)を下賜され、これから起こる軍事

          行動に参加する見返りに拿捕した敵の兵站物資を受け取ることができる。

           そして、これを黒山賊が持つことは 国賊 公孫?への助力したことの

          黙認、皇族 劉虞を殺害した場合の朝敵にはならず罷免されることすらも

          含まれる。

 

 

         「……何故、曹孟徳様がこれを持っていたかの詮索はあとにして、

                                ?燕貴女はどう見ます?」

 

        波才はもはやこれ以上考えることはできず、?燕の示す道筋に一塁の望みを託した。

 

         「確かに、曹孟徳様はまだ現在の漢王朝という呪縛をうけております。

           そして、曹操様がお話になった無上将軍を頂点とした西園八校尉が実現、

            その校尉のお一人に曹孟徳様は就かれます。

 

          しかし、更にこの先には曹孟徳様は皇子の御一人を擁立し朝廷を掌握します。

 

            そして民と朝廷を支配し天下に号令をかける御方になります

 

          黒山軍は曹孟徳様の覇道を歩む中で

                   表の力となる青州兵に対して、

                        裏の力となる存在になります」

 

 

             波才は苦渋の表情で?燕の予言を聞いたが、

                 それでも華琳の側に付くか決断ができなかった。

 

 

 

 

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            「波才 深く考えても運命はなるようになるものですぞ。

                さて、そろそろ私も隠蔽できる適当な隊商か、

                           旅仲間を探し幽州に向かうかな」

 

                    「ええ、子龍、ご武運」

 

            「ところで、波才はこの混乱に乗じて商(あきない)をするのか?」

 

            「いえ、私はこれから張三姉妹、

                数え役満熱烈信徒長安地区支部長としての使命があります」

 

             と言って波才は先程、侍女が持ってきた背中に黒字で

 

                    『非常喜歡!! 天和命』

 

                  と書かれた黄衣を着て、頭に黄色い頭帯を結んでいた。

           

             趙雲は、あまりにも似合わないいでたちに苦笑していた。

        「波才は、金儲けに精を出していないときは何か陰謀を企んでいる御仁だからな。

                                      それより……」

 

             「ご安心を子龍、すでに牛車八千乗を幽州に向かわせました」

 

           「ふむ。長安の民にメンマの素晴らしさを普及させることに成功し、

                            次に幽州と異民族に普及すれば……」

 

       「我らの大願の一つ、万民にメンマを食するという黒山軍の大いなる

                                   野望実現まであと一歩です」

             

                 「大願成就まであと一歩だな、ふっふっふっ」

                     「ええ、ふっふっふっ……」

  

       

   

          こうして、魔都 長安に

                 メンマに魅入られた魔人達の哄笑が鳴り響いたのであった……

 

 

 

 

 

 

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            屋敷を出た華琳達は無事に交渉が終わり、軽い足取りで歩いた。

 

 

         春蘭が右手を挙げると、

           黒衣を着た女性達が遠巻きに華琳を中心にその回りを取り囲こんだ。

 

                       黒衣兵

 

              春蘭の虎の子である女性だけで編成された精鋭部隊である。

 

        華琳が言うには、

         春蘭と黒衣兵、神算鬼謀の軍略家がいればこの長安すら陥落することが出来る

                    と豪語する位に華琳が信頼する歴戦の兵達であった。

 

            今回の交渉で波才達が阿片という目先の利に飛びつき、華琳達が屋敷

            から出ない場合には屋敷内で動くものは全て殺すように春蘭は黒衣兵

            に命令を下していた。

            彼女らは春蘭の命令に迷うことなく、淡々と命令を遂行する鉄の意志

            と並外れた武力を持って波才達の頸を切り落とし、屋敷にいる連中を

            皆殺しにしたしたであろう。

 

 

                       「一刀」

 

               屋敷から離れると華琳は一刀に近寄るように指示した。

                  そして、華琳は一刀の頬を叩いた。

 

            いきなり華琳に頬を叩かれ一刀はその場にしゃがみこんでしまった。

 

         「一刀、アナタ私の街を、民を守るものが、何故黒山賊などと関係をもったの?」

 

              一刀は華琳の目を逸らすかのように地面を見て言った。

         「……華琳、理想を追うにはまず、現実を直視する必要がある。

          そして、華琳は王道を歩むものとしてこのような世界を見る必要はないんだ」

 

         これを聞いた華琳は横にいた春蘭の腰に吊るした大剣を取り一刀を斬ろうとした。

 

 

                       「華琳様!!」

                     春蘭は慌てて華琳を押えた。

 

           春蘭はあたりを見た。遠巻きに周囲を警護していた黒衣兵達は

             一刀を敵と認識して抜刀して駆け寄ってきた。

 

          春蘭はあわてて、駆け寄ってくる黒衣兵達に散るように命令を出しに行った。

 

 

 

 

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          その場には、しゃがみこんだ一刀とそれを見下ろす華琳だけが残された。

 

          「答えなさい。北郷一刀、

              王道を歩む者は光だけではなく闇をも知るものよ。

                         この曹孟徳はそれに値しないのか」

 

 

        一刀は華琳が自分が独断専行をしたことに激高していたのではないことを悟った。

 

 

           「……いいや、俺の知る曹操 華琳はそのような人物ではない」

 

         華琳は微笑みながらしゃがみこんでいる一刀の手を取り立ち上がらせた。

 

        「わかればいいのよ一刀。 

            何も貴方一人だけがドロをかぶる必要はないのよ。

                   貴方は一人ではない。

                   私や春蘭や秋蘭、桂花が貴方のまわりにはいるのよ」

 

 

                    一刀は目を閉じた。

 

      

         一刀はこのまま目を開けていたら涙が出そうなのを華琳に見られたくなかった。

 

       そんな一刀を見て苦笑した華琳は男の矜持を守ってやるのか別の方向を見た。

 

                そして、小声で照れくさそうに一言

   

             

                    「一刀、ありがとう」

 

 

 

 

 

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         話題を変えるつもりか、あさっての方向を見ていた華琳は一刀の手を引いた。

      

        「あら、こんなところに辻占いなんて珍しいわ。

            今日は色々なことがあったから冷やかしに占いでもしていきましょう」

 

         占い師と言うよりは、流民が物乞いをしているかのように

           ただ地面にゴザを敷いただけで、ボロ布をまとった老婆が座っていた。

            華琳は薄汚れた茶碗に小粒の銀を投げ入れ、私達の運でも占ってと言った。

 

            老婆はボロ布で覆われた顔を上げ華琳の人相を見て、

                   ところどころ歯ない口でモゴモゴと言った。

 

                    「清平の奸賊、乱世の英雄」

 

                   この話を聞いて、華琳は大爆笑した。

 

           「私が乱世の英雄ね。

             今日一番の余興の締めくくりにはピッタリだわ。貴女名前は?」

            

                老婆はボソボソとした小声で「……許子将」

 

          「面白かったわ、許子将。春蘭が戻ってきたことだから一刀いきましょう」

      

               一刀は華琳に言われ、その場を去ろうとした。

             一刀は視線を感じ見ると、許子将と名乗る老婆が見ていた

 

 

        「……あんた…大局の示すまま、流れに従い、逆らわぬべし。

            ……待ち受けるは身の破滅のみ……

             ……多分あんたは……それでも、選んじまうのだろうね……」

 

 

                  一刀は怪訝な顔で老婆を見た。

           次の瞬間にはその場にいたはずの老婆は消え、跡形も無くなっていた。

 

         

     

               「一刀、何しているの早く行くわよ」

 

 

 

 

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 (あとがき)

 

 

 

       はじめまして、この度は 真恋姫無双 美陽攻略戦 第十七ターン

 

        をご覧になって頂きましてありがとうございました。

 

         久々のマジメモードの本編です。最近お笑い読み物ばかり書いていた

         ので「あれ、何故かお笑いの方向に……」となり何度も書き直しました。

 

         さて、今回出てきた星が黒山賊の一員という話ですが、一応フィクション

         ですが、もしかしたら星も黒山賊の一員だったのではという感じがあります。

                    (黒山賊のお話は、いつかお勉強で書くつもりです)  

      

         黒山賊の本拠地は常山(星の出身地)であり、同郷のものが多いこと身を立てる

         なら近くの名門袁家ではなく、何故遠方で才能のある人を妬むハム様に仕官に言った

         か、またハム様と黒山賊との協力関係、星が劉備に仕官すると精強を誇ってい

         た黒山賊が負けまくる等色々想像できます。

 

           まあ、黒山賊の一員ではないにしても知り合いはいたかもしれません。

        

 

      最後まで、本編を読んで頂きまして大変ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

      

 

 

 

 

 

説明
第17回目の投稿です。
読みにくい点や日本語がおかしい部分があるかもしれませんが、宜しくお願い致します。
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コメント
>ブックマン様 コメントありがとうございます。最近お笑い重視にしていたら本編でも影響がでて・・・星の背後には王朝を転覆させる程のメンマ同志(料理人・パトロン等)が全国におります。なおその団体は「竹馬の友」ならず「魔竹の友」と言います。(thule)
>四方多撲様  コメントありがとうございます。短いネタなら色々と出るのですが、現在それらの断片的を話を一つにまとめられないのです……困ったな(TT)(thule)
星いくところメンマありですね。(ブックマン)
華佗√はネタ次第ですもんねw 本編が基本、ネタが出たらお勉強・外伝・異伝を投稿、が宜しいのではないでしょうか。ネタって出ない時は出ないッスから…今の私のように(T T)(四方多撲)
>jackry様誤字報告ありがとうございます。ヤベーすぐ修正します!! 華佗√ですか…一応○斗の拳のように五斗米道に対抗する勢力とか色々設定考えていますが、う〜んお笑いの神が降臨しないです(笑)(thule)
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三国志 真恋姫無双 恋姫無双 一刀 華琳 春蘭  黒山賊 

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