魏武ミーチョコレート 継い姫†無双 季節ネタ編
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scene-フランチェスカ校舎裏

 

 春蘭に呼び出され、一刀は校舎裏にいた。

「どうした? みんなビックリしてたぞ」

 教室にいた者たちが心配そうに見ていたのを思い浮かべながら問う。

 なにしろフランチェスカの武闘派の先輩に呼び出しをくらったのだから。

 

「そうか?」

 壊した扉の枚数や、某女生徒の婚約者を秒殺したなど、その武勇伝には事欠かない春蘭。

 だが彼女は問題児でありながら、教師たちには受けがよかった。

 元お嬢さま校であるフランチェスカの教師にとっては「バカな子ほど可愛い」のかも知れない。

 ……もしくは珍獣か。

 

「校舎裏って場所もなあ……」

「ダメなのか? 人がいなくていいと思うのだが」

「聞かれちゃまずい話なのか?」

「うむ!」

 きっぱりと即答する春蘭。

 

「漢女塾に戻ってからじゃ」

「それでは誰かに聞かれるかもしれないだろう!」

「みんなにも聞かれたくない話?」

「あ、ああ」

 春蘭は今度は少し視線を外した。

 

「じ、実はな……」

 真っ赤になって春蘭にしては珍しく……頭を使ってない時の春蘭にしては珍しく言いよどむ。

 

「ま、まさか……」

 一刀も春蘭の反応に少しドギマギする。

「こ、校舎裏って……い、いや春蘭だから……いやでもまさか……も、もしかして告……」

 多少の期待を持って春蘭の言葉を待つ。

 

「そ、そのな」

「あ、ああ」

「も、もうすぐバレンタインというのがあるらしいではないか」

 

 キターーーーーーー! そう叫ぶのをぐっと堪える。

 ぐっ、っとガッツポーズをとるのは我慢できなかったが。

「そ、そうだな」

「それで、どんなチョコを用意すればいいのか聞きたいのだ!」

「え? それ俺に聞くの?」

 間抜けな顔で聞く一刀。

 

「お前の方が詳しいのだろう?」

「いやでも、もらえればなんでも嬉しいっていうか……」

「そうなのか? しかし他の者に遅れをとるワケにはいかん!」

「遅れって」

 ちょっとジーンときてしまった一刀。そんなにも俺のことを、と。

 しかし次の言葉でどん底に落とされた。

 

「華琳さまに差し上げるのだ! 最高のチョコでなければいかんだろう!!」

 

 

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scene-漢女塾教室

 

「それで一刀、話ってなに?」

 夕食をごちそうになった後、一刀は漢女塾の皆を教室に集めた。

「大事な話があります」

 教壇に立った一刀が言う。

 

「ちぃ、見たい歌番組があったのに」

「ウチはお笑いの方がええねんけど」

 生徒たちはあまり真剣に聞いてないが教師である一刀は続けた。

「皆さんはバレンタインデーを知ってますか?」

 

「は〜い!」

 元気良く手があがった。

「はい、季衣さん」

 教師プレイを続ける一刀。

「チョコがもらえる日!」

 

「季衣、お前もか……」

 一刀は教壇につっぷした。

「にゃ? 違うの?」

 

「はいは〜い!」

 今度は沙和が手をあげる。

「はい、沙和さん」

「好きな人にチョコをあげる日なの〜っ!」

 

「半分正解。しかし大事なとこが抜けてます」

「ええ〜っ!? 50パオフなの〜?」

 バーゲンセールで覚えた言葉で驚く。

 

 

「他には」

「……」

「他にはいませんか?」

「はい!」

 みなが考える中、璃々が手をあげた。

 

「はい、璃々さん」

「女の子が、好きな男の子にチョコをあげてこくはくする日!」

 椅子から立ち上げって答える璃々。

 

「はい、正解!」

「わ〜い!」

「えらいぞ璃々ちゃん、よく知ってたね」

 教壇から離れて璃々をなでなで。

 

 

「そうだったの……」

「なんと!」

「むう」

「告白……」

 

 バレンタインの正体を知り、驚く他の者達。

 一刀も半分は予想していた。

「無理もないか……フランチェスカだもんなあ……」

 

 聖フランチェスカ学園は元お嬢様学園。つまり元女子校。

 女同士でチョコを渡すのも珍しいことではない。

「去年なんか、部長すごい数もらってたし……華琳もたくさんもらいそうだなあ」

「うん。あっちの華琳さまもたくさんチョコもらってたよ〜」

「そう言う季衣ももらったのか?」

「にゃ? そういえばボクももらったよ〜。あれ、好きって意味だったの?」

 う〜ん、と考え始める季衣。

「どうなんだろ? フランチェスカだしなあ……」

 

 

「まあ、それはともかく!」

 再び教壇へ。

「あんな辛い日はない!」

 

「?」

 一刀の告白に皆が注目する。

 

「男全てがチョコをもらえるワケじゃないんだ。なのに中には複数のチョコをもらうやつが出てくる。しかも本命を!」

「本命?」

「好きでもないけど、つきあいがあるから義理であげるチョコを義理チョコという」

 無表情で一刀は答えた。

 

「なるほど。男の価値が決まる日、というわけね」

「チョコで価値なんか決まってたまるか!」

 華琳の言葉に一刀は怒った。

 ……いや、泣いた。

 

「……義理チョコの一つすらもらえず帰宅。こんなことならせめて姉か妹がいればと両親を呪った気持ちがわかるか!?」

「いや、姉ちゃんや妹はあかんちゃう?」

「それぐらい追い詰められるんだ!」

 まだ泣いてる一刀。

 

「だからみんな! チョコ下さい! ギブミーチョコレート!!」

 両手を合わせてお願いする一刀。

 

「兄ちゃんもらえないの?」

「グサッ! ……去年はゼロ。なのに及川のやつは!」

「え? 及ちゃん貰えたの?」

「シスターに泣きついて義理をゲットしてやがった! 今年はもっと多くの義理を奪うに違いない」

「本命じゃないんだ……」

「忘れはしないあの辛さ。俺もシスターに頼めばよかったと枕を濡らした!」

 今にも血の涙を流しそうな一刀。

 

 

「いいわ一刀。あげましょう」

「華琳さまっ!」

 桂花が驚きの声をあげる。

「華琳さまがこのような万年発情男にチョコなんて! こんなやつには角砂糖で充分です」

「俺は犬か? まあそれでもバレンタインデーにくれるんなら俺は!」

 犬にでもなってやる! そう一刀が言う前に華琳が続けた。

 

「ただし、ここにいる者たち以外からのチョコは受け取らないこと。たとえ義理でも。それが条件よ」

「なんだそんな事か。剣道部の女生徒のだって部長んとこいくから俺には回ってこないって」

 

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「一刀は帰ったわね」

「は〜い。上機嫌でスキップしてたよ〜」

 一刀が帰った後も教室で話は続く。

 

「それにしても華琳さま、うまくやりましたね〜」

「そうですね。この機会に一刀殿に告白しようとしていた者たちを封じることができます」

 風と稟がそう華琳に賛成した。

 

 

「隊長、自分がモテてるの気づいてないの〜」

「鈍感やからな〜」

「……」

「凪ちゃん?」

「……あかん。固まっとる。隊長に告白すること考えたんか?」

 北郷隊の三人は一刀の鈍感を喜んだ。

 

 

「封じる? とんでもない、これは一刀が誰のものかを思い知らせるチャンス! そうでしょ?」

 地和がビシッと華琳を指差す。

 

「おおっ、学校のみんなに見せつけるのですね〜。そんなこと風は思いつきもしなかったのですよ。ちなみに新聞部の方の明日の配置はこのように」

 黒板にマグネットで地図を貼り付ける風。

 プレゼントポイント、と書かれた箇所がいくつかあった。

 

 

「しっかり準備しとるやないか」

「ぐぅ」

「……起こさへんで。寝とる間に受け渡す場所決めたるもん」

「ずるいのですよ霞ちゃん」

「起きたか? ウチは下駄箱んとこがええなあ」

 神速を発揮し、真っ先に名乗りを上げた。

 

「み、みんなの前でなんて恥ずかしぃ……」

「でも、兄ちゃん喜ばせたいし……」

 季衣と流琉は赤い顔で相談している。

 

「場所もいいけど、チョコはどうするのだ?」

 そう鈴々が聞いた。

「各自用意なさい。……春蘭のは秋蘭が手伝ってあげて」

「はっ」

 

「試食は鈴々にまかせるのだ!」

「鈴々さんは用意しないのですか?」

「にゃにゃっ? 鈴々もいいのか?」

 明命の問いに驚く鈴々。

 

「ここにいる者、と言ったわ。鈴々や明命ももちろんよ」

「はぅわっ! わたしもなのですかっ!? ……がんばりますっ!」

 華琳がそう言うと明命も闘志を燃やした。

 

「祭や紫苑、璃々は学校では無理ね」

「仕方あるまい」

「おむかえにいくの〜」

「なるほど、校門前じゃな」

 璃々の言葉に紫苑と祭は頷いた。

 

 

 

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scene-聖フランチェスカ

 

「っかっし〜な? なんで今年に限って」

 バレンタイン当日、一刀は三人目となるチョコを断ったのだった。

「可哀想だけれど、約束よ」

 登校してからずっと隣にいる華琳が言う。

 もっとも、可哀想、の対象は一刀ではなく女生徒に対してだったが。

「こんな紙袋持ってるから期待してるように見られるのかな?」

 手に持っている紙袋を見る。中にはラッピングされたチョコがたくさん。

「桂花が持たせてくれてよかったわ」

 全て、華琳が貰ったチョコだった。

 

 

「下駄箱選んだんは間違いやったかな〜?」

 授業をサボって下駄箱を見張る霞。

 一刀に早くチョコを渡せたはいいが、他の女生徒が一刀の下駄箱にチョコを入れないか見張る役目にされてしまった。

「貧乏クジや〜」

 

 

「こ、これ!」

 教室にやってきた凪がぎこちない動きで一刀にチョコを渡した。

「ありがとう。うれしいよ」

「!」

 一刀にそう言われて真っ赤になった凪。

「そ、それでは!」

 ガチガチのまま教室を去った。

「あ、……三人いっしょにくればいいのに……」

 

 北郷隊の三人は休み時間の度に一刀の教室へきた。

 それも三人バラバラに。

 

 

「一刀〜♪」

「聞いたわ、三倍返し。楽しみにしてるからね」

「一刀さん、どうぞ」

 三姉妹からは廊下で。

 教室よりも、多くの生徒に見せつけたかったのだろう。

 新聞部のカメラの位置を気にしながら三人はチョコを渡した。

 

 

 華琳からは昼食の時間だった。

 食堂で大きな重箱を出す華琳。

「どこにしまってたんだ?」

「あら? いらないの?」

「もらいます! ありがとう!」

 中身はチョコレートケーキがワンホール。

 

 

「うぷっ……さすがに食いすぎたか」

「無理して全部食べなくても良かったのに」

「せっかく華琳が俺のためにつくってくれたんだ。絶対に残すもんか」

 腹をさすりながら一刀は言った。

「……次は屋上よ」

 華琳は赤くなった顔を一刀に見せないように先に立って歩き出した。

 

 

 屋上にいたのは季衣と流琉だった。

 大勢に見られるのは恥ずかしい、と人目の少ないはずの屋上を選んだ。

 ……結構、人はいた。

 

「に、兄ちゃん、大好き!」

「に、兄様、大好きです!」

 緊張しながらも二人で一つの大きな箱を渡す。

「ボクたちはやっぱりいっしょがいいから」

「う、受け取ってくれます、よね?」

「当たり前だろ。ありがとう二人とも」

 

「よかった〜♪」

「けどこれも大きいな」

 一刀は受け取った箱を見ながら言う。

 一辺が五十センチはあろうかという正方形だ。厚みもかなりあり、ズッシリ重い。

「え? ちっちゃくない?」

「いや、二人の想いが伝わるぞ」

 重いに想いをかけていう一刀。

 

 

 放課後、部活に向かう途中で軍師達につかまる。

「お兄さん、どうぞなのです」

「……なんか食いにくいな、これ……でも、ありがとう」

 風からのはリボンが巻かれた透明なケースに入っており、その中身は宝ャの形をしていた。

 

「一刀殿」

 稟からも受け取る。

「ありがとう。稟はチョコ食べて鼻血は出なかった?」

「いえ、チョコレートでは……」

「そうか」

 

「……華琳さまへのチョコの失敗作でよければ、あげるわ」

 桂花はそう言いながら渡した。

「ま、マジ? くれるの? やった。ありがとう」

「失敗作よ」

 

「華琳さま、どうぞ」

「華琳さま、こちらは失敗作ではありません!」

 稟と桂花は華琳にもチョコを渡すのだった。

 

 

 更衣室前で春蘭と秋蘭が待っていた。

「スマンな部活中、すぐにすます」

「北郷、受け取れ」

 秋蘭が謝り、春蘭が箱を渡す。

「これは、秋蘭がつくったものの形をわたしが整えたものだ」

「うむ。しかし姉者は恥ずかしいのかできた形を見せてくれぬ。北郷よ、見せてくれぬか?」

「しゅ、秋蘭〜」

 春蘭が赤くなったが、一刀も好奇心から箱を開けてみた。

 チョコはハートの形をしていた……ある意味。

 

 

「ど、どうだ?」

「し、心臓!? もしかしてハート?」

「ああ。わかったようでよかった! こちらは妙な形を喜ぶのだな!」

「あ、ありがとう……」

 喜ぶ春蘭に勘違いを正せず、一刀は箱を閉じた。

 

「姉者、もしかして華琳さまに渡したのも?」

「さらに見事な出来だぞ。華琳さまの分は!」

 誇らしげに言う春蘭。

「そ、そう」

 華琳もそう言うしかできなかった。

 

 

 道場には明命が待っていた。

「一刀様!」

 猫柄の紙でラッピングされたチョコを渡す。

「今は部活中……部員ではない?」

 とがめようとする部長。

「はぅあ! 気づかれたのです!」

 明命は音もなく消えた。

「忍者?」

「はははは」

 一刀は笑って誤魔化した。

 

 

「遅いのだ、お兄ちゃん」

 校門で鈴々が祭、紫苑、璃々と待っていた。

 鈴々が一人で渡さなかったのは、食べてしまうのを我慢できそうにない、と紫苑に相談したからだ。

「お疲れ様です」

「ご苦労じゃったな」

 紫苑と祭の帰宅した時の妻のような反応に一刀も喜んだ。

「はい、お兄ちゃん、チョコなの」

「鈴々もあげるのだ! とってもおいしいのだ♪」

「ありがとう、鈴々、璃々ちゃん」

 受け取って二人の頭をなでる。

 

「儂らからはほれ」

「どうぞ」

 そうチョコの箱を胸の谷間にはさむ二人。

 

「な、なんですとッ!? ……ぶ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!」

 チョコの食べすぎもあってか一刀は、稟ばりに鼻血のアーチを大きく描いて倒れたのだった。

 

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<あとがき>

 華琳や秋蘭は、フランチェスカじゃなくてもチョコもらってそうです。

 タイトルは”ギブミー”の変換一発目があれだったので。

 

説明
継い姫†無双番外編でバレンタインネタです。

この時期だと春蘭たちが3年生だったら大変だとかは思いますが、そこは考えない方向で。
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コメント
萌将伝発売より前だから「この外史では」妹がいない事になってるのか。(朔夜)
レインさんありがとうございます。最近おませになってきたそうですから、璃々は色々と知っているんです、たぶん(こひ)
フランチェスカで百合空間……(思考中)……あれっ?某漫画やアニメの図が目に浮かんでくる…なんで一番年下なはずの璃々ちゃんが詳しく知ってるの!?…と言うツッコミが出るのは私だけでしょうかね?一刀君はどの『外史』でも『超鈍感』スキルデフォルトですし、下手したらフランチェスカでハーレムだなんてことに(良く考えたら、既にややハーレム?)(レイン)
ブックマンさんありがとうございます。大人というより乳の破壊力?(こひ)
最後は大人の魅力に撃沈ですねw(ブックマン)
ゲストさん。ありがとうございます。魏武の大剣、とか変換したことがあるのでそのせいかと思います(こひ)
ヒトヤさんありがとうございます。おおっ、出ましたか(こひ)
truthさんありがとうございます。一瞬、スピードワ〇ンかと思いました。あま〜〜〜〜〜い(こひ)
ギブミー・・・なに、自分のPCでは変換出来ない・・・だと!?(ゲストさん。)
魏武ミー・・・本当だ!!変換これだ!!!(ヒトヤ)
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