『舞い踊る季節の中で』 第17話
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真・恋姫無双 二次創作小説 明命√

『 舞い踊る季節の中で 』

  第17話 〜 暗闇が舞い堕ちる心に射す光 〜

 

 

(はじめに)

 

 キャラ崩壊や、セリフ間違いや、設定の違い、誤字脱字があると思いますが、温かい目で読んで下さると助

 かります。

 この話の一刀はチート性能です。 オリキャラがあります。 どうぞよろしくお願いします。

 

北郷一刀:

     姓 :北郷    名 :一刀   字 :なし    真名:なし(敢えて言うなら"一刀")

     武器:鉄扇(二つの鉄扇には、それぞれ"虚空"、"無風"と書かれている) & 普通の扇

        :●●●●

     得意:家事全般、舞踊(裏舞踊含む)、意匠を凝らした服の制作、天使の微笑み(ただし本人は無自覚)

         気配り(乙女心以外)、超鈍感(乙女心に対してのみ)

 最近の悩み:あの能天気王こと孫策には困っている。 緊急事態と称して駆り出されるのは、もう慣れた。

         問題は、あの羞恥心の無さだ。 明命達も大概だが、孫策は論外だ。あの体で抱きついて

         きたり、人の腕を引っ張る時に、人の腕を、その胸に埋め込んだり、しかもこっちの反応

         を楽しんでいるふしがある。・・・まったく性質が悪い・・・うぅぅ

         俺も漢だから、それが嬉しくないと言ったら嘘になるので、そう刺激しないでもらいたい。

         あの、俺の方が強いって忘れてません? 間違って襲ったら、どうするつもりですか?

  (今後順序公開)

 

★オリキャラ紹介:

諸葛瑾:

  姓 :諸葛    名 :瑾    字 :子瑜    真名:翡翠

  武器:"双天" 対の双剣

  武力:52(平均的な将を60とした場合)

  智力:81

  政治:89

  家事:92

  魅力:想像にお任せします(w

  焦った時の口癖:『 あうあう 』又は 『 ぁぅぁぅ 』等の類語です

  性格:基本的に温厚で、外見に反して大人の女性

     だが、焦ると地が出てしまう。(朱里と違って、自分を律しています)

     警戒心が強い性格だが、一度心を許されると、親身になってくれる。

     妹がいるため、基本的には面倒見が良く、放っておくと、食事を取るのを忘れる明命を心配してよく

     食事を差し入れていた。

     やはり、妹がいるためなのか、時折人をからかって、その反応を楽しんだり、とんでもない悪戯を仕

     掛ける悪癖もある、だが性質の悪い事に普段が完璧なだけに、周りは怒るに怒れないでいる。

     家事全般は人並み以上に出来、そこらのお店以上と自負していたが、丹陽で知り合った男性の腕を見

     て自信を喪失。 以降こっそり腕を磨いているが、全然敵わないと嘆く毎日を送っている。

     武術は好きではないが、妹達を変態共から守るため、必要最低限身に付けたもの。

     姉妹揃っての発育の悪さをコンプレックスに思いつつも、それを武器にする強かさを持っている。

     自分を子供扱いしない男性が好みだが、言い寄ってくるのは変な趣味の持ち主ばかりで、17の時、現

     実の男(変態の多さ)に愛想が付いた時に『八百一』と出会う。 以降のめり込み、妹達を洗脳する

     も、基本的には周りには秘密にしている。 そのうち執筆も行うようになり、掲載されるようになる。

     数年たった現在では、定期的な愛読者もつき『八百一』の主要作家の一人となっている。

     黄巾の乱後、作品が益々洗練され、世に愛読者を急増させる要因となった。

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明命(周泰)視点:

 

「・・・・と言う物があって、それで庶民は、自分の国の世情を知る事が出来たり、遠くの国の事を知ったり、

 劇を見たりする事が出来るんだ」

「そんな便利な物が、一軒毎にあったのですか・・・信じられないです」

「大抵が一軒に数台あるかな、庶民でも一人一台、子供でも持っている所もあるし」

「あのー、なんで、そんなに必要なんでしょうか?」

 

等と、たまたま休暇が一刀さんと同じになったため、天の国のお話をしてもらっています。

祭様のおかげで、一刀さんと、こうして元通りに、お話できるようになって、本当に良かったです。

やっぱり、一刀さんの顔を見るのは少し恥ずかしいですし、何故か落ち着きませんが、それでも、一刀さんの顔を見る事から逃げていた時の苦しさに比べたら、心地良いと言っても良いくらいです。

 

最近は、よく一刀さんの事を考えます。

一刀さんだったら、どう思うのか、

一刀さんだったら、どうするだろうなとか、

一刀さんは、今頃何しているのだろうかとか、

前は、そういう事は、殆ど御猫様の事を考えていたのですが、今は同じくらいの割合で考えてしまいます。

不思議です。

ですが、悪い気持ちではありません。

逆に、そう考える事を、楽しく思っている私がいます

だから、こうして、一刀さんとお話しているのは、とても楽しいです。

 

そんな時、思春様が一刀さんを尋ねてきました。

どうやら、一刀さんと手合わせをしに来たようです。

思春様は、あの晩以来、暇を見つけては鍛錬をし続けていました。

思春様は、あの時より、確実に力をつけていると思います。

でも、それでも・・・・

一刀さんは、仕合ではなく稽古なら相手になると、言いました。

 

チクリッ

 

羨ましいと思いました。

一刀さんは、私や翡翠様が、幾らお願いしても、仕合処か稽古の相手すらしてくれません。

なのに、思春様には、引き受けたのです。

私では、稽古の相手にすらならないと言うのでしょうか・・・・悔しいです。

 

稽古は、予想通り一方的でした。

思春様得意の、気配を完全に消してからの攻撃も、一刀さんの前には無意味でしか在りませんでした。

ただ違うのは、あの晩の時のように、一瞬で終わるのではなく、

思春様に数合を攻めさせてからの反撃でした。

思春様が、そこまで強くなったと言うわけではありません。

おそらく、思春様がきちんと分かるように、相手をしているのだと思います。

その証拠に、前と違って、何をしたのかよく分かるように、ゆったりとした動きです。

ゆったりと感じるのに、その速度は速いです・・・いいえ、きっと鋭いのでしょう。

でも、そんな事より、私は一刀さんの姿を追います。

思春様の全力を前にしていても、その光景はとても稽古にはとても見えません。

思春様が、まるで一刀さんの周りに浮かぶ綿毛のように、思春様の攻撃は、全て避わされて行きます。

一刀さんは言ってました。

自分のは、武ではなく舞だと、

確かに、これは舞いです。

一刀さんのお店で見るような、暖かで、安心する舞いではなく、

いつか、深夜に見た舞いと同じもの、

綺麗で、吸い込まれるような感覚に支配される舞い、

切なさに、心を引き摺られるように、誘われる悲しい舞い、

だけど、あの晩感じた事は、錯覚ではなかったです。

怖いです。

相手の攻撃を無意味な物に変えてしまう、その舞いが、

相手すら己の舞の相手のように思わす、その舞いが、

相手の命を、自然の事のように刈り取れる、その舞いが、

何より、それでも怖いと感じさせない、その舞いが、

とても怖いと感じます。

これは、舞う相手を、その舞いで死に誘う、死の舞いです。

そして、何故でしょう。

この舞いは、凄く危うげなものに思えます。

確かに、其処に在るのに、一刀さんが、とても希薄に感じるのです。

まるで、このまま消えてしまうかのように・・・・

私は、舞いに目を奪われながら、心のどこかで、そう思うのでした。

 

やがて、一刀さんは舞うのを止め、思春様をお茶に誘います。

思春様は、お茶を飲んで気を静めた後、あの晩から自分を追い詰めている気持ちを吐露しました。

その中で一刀さんは

 

「俺は、例え稽古であっても、明命達に手を上げる気はない」

 

ズキンッ

 

胸が痛くなりました。

その前に思春様に責められた時より、胸に痛みが走りました。

一刀さんの言葉は、私達をとても大切に想っての言葉だと分かります。

その想いが分かるのに、何故か、とても悲しかったです。

理由は判らないのですが、何故か、そう思ってしまいました。

一刀さんが大切にしているのは、私だけど、私自身ではないのだと・・・・

 

気落ちする私に、嬉しい言葉が聞こえてきました。

一刀さんが、武について教えてくれるというのです。

今まで、どんなに頼んでも教えてくれなかった事だけに、私はその言葉に飛びつきました。

内容としては、呼吸と言う凄くあたり前の事でした。

私たち武人にとって、呼吸はとても大切なものです。

でも、一刀さんの話しは、それを遥かに上を行くものでした。

人間だけではなく、風や大地からも呼吸を感じて、それに合わせると言います。

それではまるで・・・・・・

とにかく、そこまで行かなくても、鍛錬をしていけば、相手の呼吸を通して、相手の動きを読み、誘導できるそうです。

その試しとして、私と思春様が一刀さんの呼吸に合わせて、咽てしまった時は、驚きました。

私は(おそらく思春様も)、気をつけていたはずなのに、一刀さんの思惑に嵌ってしまったのです。

とにかく、もっと、相手の呼吸を意識して動く練習をした方が良いとの事です。

 

私と思春様は早速、練習しようと鍛錬場に向かう事にしました。

ですがその時、思春様が一刀さんに真名を預けました。

思春様は、本当に認めなければ、自ら真名を預ける方ではありません。

それはつまり、一刀さんが思春様に認められたと言う事です。

一刀さんも思春様を認めたようで、私と翡翠様以外で、初めて真名を呼びました。

私は、その事がとても嬉しかったです。

だって、一刀さんが本当に、私達の仲間になろうとしていると思ったからです

 

 

 

 

 

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シュッ

 

ボスッ

 

私の拳が、相手の腹に決まり、そのまま相手は地面に蹲ります。

 

「この程度で、膝を付くとは、首を斬り落されたいのですかっ。

 次の方っ」

 

ガッ

カランッ

ゴッ

 

練習用の剣を弾き飛ばし、そのまま相手の、腕に軽く剣を叩き込みます

 

「脇が甘いです、それでは簡単に剣を弾かれてしまいます。

 剣を失って、どうやって戦場で生き残るつもりですか、もっと必死になりなさいっ、

 次の方」

 

今ので、いったい何人目でしょうか、一刀さんの言うように、相手の呼吸を意識するように動いています。

確かに、何時もより意識しているせいで、相手の攻撃しようとする意思は良くわかります。

でも、それだけです。

意味はありますが、たいした効果があるとは思えません。

相手の意思を、思考を、間合いを、読み取り、此方の呼吸に巻き込む・・・とてもこれで届くとは思えません。

何かが違うのでしょうか?

一刀さんは、確か、何か言っていました・・・・・何でしたっけ?

・・・そうでした、気配を消して動く、それと根幹は近いと言っていました。

なら早速・・・

 

「ちょっ、周将軍っ! 本気を出されたら、我等が相手になるわけありませんっ」

 

五月蝿いです。

 

ドスッ

 

完全に気配を消したため、私を認識できなくなり、喚く兵の脇腹に蹴檄します。

 

「本気でこないと言う油断した心で、修練になると思っているのですかっ、次ぎっ」

 

やっておいてなんですが、相手が此方を認識できないのでは、鍛錬の意味が無い気がします。

それに、そもそも、一刀さんは気配を消していませんでした。

似て非なる物って事なのでしょう。

・・・・・気配を殺さず、でも近い事・・・

・・・・気はそのまま、ただし、細く、薄く、広げる・・・

・・・そして意を殺し・・いいえ、それだけでは駄目です・・・

・・相手の呼吸を呼んで、自分の中に映し込むように・・・

 

スー

 

ダッ

ピタッ

 

相手の足を払い、その眼前で突き込んだ剣を止める。

 

今のは!?

 

私は、兵に注意するのも、もどかしかったので、視線で次を促します。

 

ドスッ

ガッ

ゴスッ

 

スーーー

 

ボスッ

 

何人目でしょうか・・でも確かに、今っ!

心の中に、相手の動きが映りました。

予測を視覚化した感じでしょうか・・確かに凄いですが、一刀さんの舞が、この程度の物のはずがありません。

これと似たような、体験はした事があります。

一刀さんは言ってました。相手の動きを支配すると・・・なら、まだ先があるはずです。

私は、今の感覚を忘れないように、さらに相手の呼吸に、思考に、意識を集中します。

 

あれから、何人を相手にしたでしょうか、

そんな中、やがて、変な感覚にとらわれました。

息が乱れていると言うのに、とても周りが、心が、静かになります。

何も音を感じません。ですが不安ではありません。

そして、さらに進み、まるで、自分を空から見ているような感覚に捉われました。

自分の状態が、

自分との距離が、

目に映っていない、相手の動きも、

向かってくる相手の動きの先が、

心の中に映像として捉えます。

だから、私はその映像に合わせるように、

静かに、そっと

 

ドスッ!

 

「・・・・・・うごぉっ・・」

 

私が思った以上に、相手の腹深くに、拳がめり込み、相手は悶絶します。

今、一瞬でしたが・・・今までの感覚とは別物・・・あれはいったい?

とにかく、今はあの感覚をっ

 

「次ぎっ!」

 

しーーーーーーーーーーーーーーーーーん

 

私の声も虚しく、誰も返事をしません。

・・・・あれ? どうしたのでしょう

そう思い、周りを見ると

いつの間にか、兵で立っている人達はいませんでした。

みんな、地面で呻いています。・・・・何人かは、死んだ振りをしているようですが・・・

更に周りを見ると、思春様の周りも似たような感じでした。

思春様は、自分の右手を見つめ、口の端を上げて力強い目で微笑んでいます。

どうやら、思春様も何かを掴んだようです。

もっと続けたいところですが、相手がいないのでは仕方ありません。

 

かくっ

 

「へっ?」

 

今日は引き上げようと思った所で、何故か膝が崩れてしまいました。

どうやら、思春様も似たような感じです。

 

「おぬし等、休みも無しにあれだけ動き回れば当たり前じゃ、ほれ、受け取れっ」

 

いつの間にか来られた祭様が、そう言って水の入った竹筒を投げ渡してくれます。

今まで気が付いていませんでしたが、どうやら思ったより疲労していたようです。

私と思春様は、水を総て飲み干したところで、やっと一息つけました。

 

「おぬし等の鍛錬が厳しいのは、何時ものことじゃが、今日は一段と厳しくないかのぉ?

 それに、明命おぬしは、確か休暇のはずだったはず。

 休めるべき時に、体を休ませるのも、将の大切な仕事じゃぞぉ」

「あっ、いやその・・・」

 

 

 

 

 

「なるほど、それで、夢中になって、二人して兵達を実験台にしていたわけか」

「・・・・実験台などではありません」

「馬鹿もんっ、ここまでやっておいて、そんな言い訳が通用するかっ!」

「・・・・ぐっ」「・・うっ」

「まぁ、偶には将の実力を、その身に体験するのも、あやつらにとって、良い経験じゃろ」

「すみません」

「だが、その様子だと、何かつかめたようじゃな」

「・・・・はい、本当に最期でしたが、自分を空から見ている感じがしました。それと・・・」

 

どうやら、思春様も私と同じ経験をされたようです。

 

「その感覚を確かなものにしようと思った時に、この軟弱者共が(キッ)」

「止さんか思春っ、気持ちは分からんでもないが、そう焦っても身に付くものではないぞ。

 それに、さすがにこれ以上は、本当に兵達が壊れかねん。

 後片付けは、わしが兵達にやらせておく、今日は帰って体を休ませるが良い」

「・・・・分かりました」

 

祭様は、私達の体の疲労具合を心配して、言ってくれました。

最近は、本当にお世話になってばかりで・・・そうです、良いことを思いつきました。

 

「祭様」

「ん? 心配せんでも、きちんとやらせておく、安心してとっとと帰るが良い」

「いえ、今日は、一刀さんが天の国の料理を作ってくれるそうなんです。

 思春様も誘われているのですが、祭様もご一緒にいかがでしょうか」

「うむ、確かに、それは興味がそそられるが・・・・・突然行っても良いのか?」

「元々思春様も誘われましたから、祭様一人増えても、さして問題ないと思います」

「ならば、さっそく」

「えっ?」

「おぬし等、わしらが居ないからと言って、後片付けに手を抜く出ないぞっ

 もし手を抜いたら、今度は、わしが今日の鍛錬など、生温いと思えるくらい扱いてくれる」

「「「「「 わ・わかりました 」」」」」

 

祭様は、まだ地面に倒れている兵達に、そう言い放つと、

私と思春様の背を押して、歩き出します。

えっ、えーと良いのでしょうか?

隣を見れば思春様は、諦めた様に溜息をつくと、自ら歩き出します。

 

 

 

 

 

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「だぁぁぁぁぁ、自分のを食えっ、自分のをっ、何で人が焼いたのを、横から掻っ攫って行くんだよ」

「いいじゃない。一刀の焼いたのが、食べたかったのよ。

 うん、美味しい、この表面が熱くて、中は ふわふわ とろとろ の感触が面白いわね」

 

一刀さんが、串の先に刺して焼いた"ましゅまろ"を、食べようとした所を、雪蓮様が横から直接食べてしまわれました。

夕食会は、雪蓮様を始めとする呉の重臣達が集まり、ちょっとした宴会となり、雪蓮様と一刀さんを中心に賑わっています。

 

一刀さんは、雪蓮様にだけは、何故か乱暴な扱いと言葉を使います。

雪蓮様も、それを嫌がっている様子は無く、逆に楽しんでいるようです。

(孫権様と思春様はその件で、一刀さんに文句を言いたいみたいですが、雪蓮様と冥琳様で問題ないと言われ

 ては引き下がるしかないようで、今の所問題になっていません)

一刀さんは、口では、あれだけ文句言ってますが、とても楽しそうです。

あんなに生き生きした顔は、雪蓮様にしか見せていません。

一刀さんの、そんな一面を引き出す雪蓮様を、凄いと思う一方で、それができない事が悔しいです。

私達の前では、一刀さんは自分を出してくれないように、思えてしまいます・・・・

・・・・一刀さんは、私の前では、心が安らがないのでしょうか・・・・・

 

 

 

ドンッドンッ!

ドンッドンッドンッドンッ!

 

そんな中、楽しい宴の席に、突如の賊の襲撃の知らせが飛び込んできました。

・・・・・まだ、残っていたのですね。

賊に堕ちた境遇には同情しますが、頑張って生きている人達の為に、殺さなければいけません。

 

「明命、今すぐ兵200を連れて、本隊が到着するまで、獣共を足止めしておきなさい」

「はいっ」

 

次々、指示を飛ばされる雪蓮様ですが、最期に一刀さんに、軍師として参戦するように言い放ちました。

 

ガタッ

 

誰が出した音なのでしょうか、ですが今はどうでもいいです。

だって、一刀さんが、雪蓮様の言葉に、青い顔をされているからです。

きっと、以前の事を、思い出されているのだと思います。

一刀さんは、この中の誰よりも強い方です。

ですが、私達ほど、心の強い方ではありません。

きっと、賊に堕ちたとはいえ、

人を殺すのが怖いのでしょう

人が死ぬのが悲しいのでしょう。

一刀さんは、優しい方です。

だから余計、辛いのでしょう。

でも、一刀さんなら、きっと大丈夫です。

一刀さんは、私が信じた人です。

怖くても、辛くても、悲しくても、

優しいからこそ、選ばないといけない道がある事に、

きっと、気が付き、選んでくれるはずです。

もし、また、笑えなくなったなら、私が笑わせて見せます。

翡翠様とは違う、私しか出来ないやり方で、

もう、知らずに見ているだけなのは、二度と御免です。

だから、今は・・・

 

「大丈夫です。私達が一刀さんの所まで、一人だって敵なんて通しません。

 だから、安心して、私達を見守っていてください」

 

やさしく一刀さんを抱きしめながら、一刀さんに伝えます。

今は、これしかできませんが、私の精一杯の気持ちを籠めて、伝えます。

 

「明命、何をしているっ!」

「はいっ!」

 

そうでした。

ゆっくりしては、いられません。

こうしている間にも、泣いている人達がいるはずですからっ

民を守るため、

その民を守る孫呉のため、

孫呉という名の、家族を守るため、

私は、戦います。

 

 

 

 

 

 

 

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翡翠(諸葛瑾)視点:

 

こきっ

こきっ

 

この年で肩こりなんて・・・・・

長時間集中して、執務をしていたため、凝り固まった体を、解しながら、少しばかり憂鬱になる。

一刀君に"まーさーじ"とか言う、体を解す按摩をやってもらえば、一発で直るのでしょうが、

・・・・・・・ぁぅぁぅ、あれは、少し効き過ぎます。

 

 

 

【一月ほど前】

 

「んっ」

「翡翠どうしたの?」

「此処の所、忙しかったから、どうにも肩や首が凝ってしまって・・・お恥ずかしいかぎりです」

「じゃあ、良かったらマッサージしてあげようか? これでも、上手い方だから」

「"まっさーじ"ですか?」

「ああ、按摩みたいなもんだよ。 やると次の日、体が楽になるから」

 

なら、せっかくだからと思い、

(この時に気が付くべきでした。

 あれだけの家事全般の腕前を見せながら、控えめに言う一刀君が、強気に言った事の意味を)

一刀君の言われるまま、寝台にうつ伏せに寝転がると、布を掛けられ、その上に一刀君が跨ぎます。

まぁ、一刀君が、ここで邪な考えを持つとは思えないので、力を抜いて待っていると、

 

「じっちゃんの言い付けで、女性にする場合は耳栓をする事になっているから、もし痛かったりしたら、俺の

 体の何処でも良いから、叩いて合図してほしい」

「・・・・えっ?」

 

あの、それってどういう事・・・・

 

「・・ん」

 

すぐに一刀君の手が、私の首から背中と、背中全体を、ゆっくりと解していきます。

・・・これは、なかなか、気持ち良いです。

一刀君の手から与えられる感触と、凝りが解されていく感触が程好く気持ち良いので、身を任せていると・・

 

「うん、大体判った。 じゃあ本番に入るから」

 

え? ほ・本番って、今までのは・・

 

「ぁっ・・・ん・・ぅぁっ・・あっ・うんっ・・△☆◇※っ・・・○□っ!」

 

先程とは比べ物にならない感覚が、体を襲い、私は知らずに嬌声を上げてしまいます。

それに気がつき、手で口を慌てて押さえるのですが、体を襲う感覚はますます強くなり、

そのあまりの気持ちよさに(変な意味ではないです)体の力は勝手に抜け、一刀君に合図を送ろうにも送れません。

私は、一刀君にされるがままになり、その内に、口を押さえる事もできなくなり・・・・・あうあう

半刻近く、"まっさーじ"によって、襲われる感覚に、その・・・・あぅぅ、声を上げ続けさせられてしまっただけでなく・・・・・ぁぅぁぅ・・・何度も・・・・・・してしまいました・・・・ぁぅぅぅ・・

 

覚えているのは此処までで、気がつくと、朝になっていました。

確かに体は、羽が生えたように軽いのですが・・・私の心は、とても重いです。

・・・幾ら聴こえていないと言っても、一刀君の前で、あんな声をあげ続けた、なんて・・・ぁぅぁぅ

しかも、あんなに凄い感覚なのに、本当に按摩なのが怖い所です。

 

 

 

 

 

あれ以降、一刀君の前では、体が凝っている所を見せないようにしているのですが(流石に、『按摩が気持ち良過ぎて危険だからやめてください』とは言えません)、そろそろ、休みでももらって、何とかした方が良いですね。

それとも、一刀君に本気は出してもらわないで、最初の段階の力加減のみで、やってもらえるようにお願いするかですね。

そう考えながら、首を回して凝りを解していると

 

「翡翠、入るぞ」

「お邪魔しま〜〜〜す」

「これは、冥琳様に穏ちゃん、二人揃ってどうされたのですか?」

「なに、今日は珍しく二人とも、仕事に早くきりがついたのでな」

「そうなんですよ〜、北郷さんの例の政策案を、読ませていただいていて、天の国のお話を聞かせてもらえたら

 と思いまして。

 生憎と北郷さんを、お城にあまり呼ぶ事は、諸事情で出来ないので、此方から翡翠様のお宅に赴いてはと、

 冥琳様とお話していたのです〜」

 

そう言えば、一刀君に色々知ってもらう(誤解を解く)ために、冥琳様達と何度か話す機会を設けた事はありましたが、茶会という形を取らざる得ない事もあって、そこまで踏み込んだ話をした事は無かったですね。

それに、今日は確か明命ちゃんが、一刀君と天の国の話をしてもらうとか言っていましたし、一刀君も嫌がる事は無いでしょう。

 

「私の方も、きりが付いた所なので、問題ありません」

「ふむ、翡翠、急遽押し掛ける様ですまないな」

「いえ、構いません。

 せっかくですから、そのまま夕食を召し上がっていってください」

「ほぇ、いいんですか〜?

 あれだけの菓子を作られるのですから、楽しみで無いと言えば、嘘になるのですが〜」

「一刀君の事ですから、二人くらい増えても、さして問題ないと思います」

「ふむ、では馳走になるとしよう」

「いえ、冥琳様こそすみません、一刀君がいつも雪蓮様達にあのような態度で・・・」

「別に気にする事ではない、元々そう言う約束だし、雪蓮はあれで随分楽しんでいる。

 今まで、あのように気軽に対等に扱ってくれる者等いなかったからな、それが嬉しいのだろう。

 そのおかげで、最近はもっぱら、仕事を抜け出して、北郷を騒ぎに巻き込んでいるらしい。

 謝らねばならないのは、此方の方だ」

「いえ、此方こそ・・・」

 

何時もの事とは言え、雪蓮様にも困ったものです。

実際、そのおかげで、此方の仕事が増えているのも、事実ですから・・・・

でも、雪蓮様らしいですし、民の風評を上げているのも事実なので、文句はあまりありません。

自由奔放な雪蓮様の行動に、最初は一刀君も驚いたようですが、今では慣れたようで、冥琳様が言うように、雪蓮様と対等に話して(怒鳴って)います。

一刀君の乱暴な口調と態度には、最初こそ驚きましたが、一刀君も本気で嫌っているわけではないようです。

口では色々言っていますが、雪蓮様と一緒にいる時の一刀君は、とても自然に見えます。

おそらく、あれが一刀君本来の姿なのだと思います・・・いいえ、どちらも一刀君なのでしょうね。

雪蓮様は本当に凄いです。

一刀君のあんな自然な姿を、簡単に引き出してしまうのですから・・・・私では出来なかった事・・

・・・・・私では、一刀君の本当の家族に、なれないのかしら・・・・

 

「しかし、そうして心配している所を見ると、まるで夫婦だな」

 

ぼっ

 

「め・冥琳様っ あうあう・・・私と一刀君は、そんなのではなく・・・姉弟みたいなものです・・ぁぅ」

 

まったく、冥琳様は、いきなりなんてことを言うのでしょう。

一刀君には、明命ちゃんが居るの・・・です・・・・・ぁぅぅ・・まだ顔が熱いです

 

 

 

 

 

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・・・・・これは予想外でした。

まさか、孫呉の王を始めとする重臣全てが、揃ってしまうとは・・・

急な来客に奔走される一刀君に、悪いと思いつつ、今気にすべき事は、城外でこれだけの主要人物が集まっている等と、袁術の耳に入ったら、今後が動き辛くなる可能性が・・・と思いましたが、ここは下手に警戒するより、袁術の"目"の前で、逆に普通に騒いでしまえば、只の偶然による宴会と安心してくれるでしょう。

冥琳様達も、どうやら同じ考えのようです。

此方には、思春ちゃんや明命ちゃんが居るのは、判っているはずですから、そう迂闊に近くには来ないはずです。

その事で一刀君が、家の外に気配を消した不審な人物が三人いる、と教えてくれましたが、そのまま放置するようにお願いしました。

それよりも、一刀君の存在を、まだ袁術に知られる訳にはいきません。

ですがそれも、思春ちゃんが、一刀君に追加の食材と酒を買いに行かせてくれたので、只の使用人と映ってくれたと思います。

 

そういえば、その思春ちゃんが、一刀君に真名を許し、一刀君も真名を呼んでいる事には驚きました。

もし、そうなっても、最期の方だと思っていたからです。

話を聞く限り、どうやら思春ちゃん達が一刀君に、武の事で師事したようです。

一刀君に、どのような心境の変化があったか、分かりませんが、良い事なので黙って見守る事にします。

(私には、教えてくれなかったのに・・・・)

 

問題を抱えつつも、楽しかった宴も、突然の報告に、一気に冷めてしまう事となりました。

賊が集落を襲い、近くの砦まで襲ったと言うのです。

賊は、早急に討伐しなければなりません。

そうしなければ、民は雪蓮様を王として認めてくれなくなってしまいます。

歯を食いしばって、平和に暮らしている民を、これ以上危険に曝すわけにもいきません。

でも、今回はおそらく・・・・

 

「一刀、今回は貴方にも軍師として出てもらうわ」

 

・・・やはり

雪蓮様は、一刀君に現実を見せるつもりです。

そんな事、分かっていた事です。

これは、もう決まっていた事。

私も覚悟を決めていた筈です。

それでも、やはり怖いです。

また、あの時の一刀君に、戻ってしまわないかと、

いいえ、現実に耐えられず、自分を失ってしまわないかと、

 

ガタッ

 

そんな音が足元から聞こえました。

いつの間にか、椅子を引っ掛けてしまったようです。

ですが、今はその音がありがたいです。

一刀君の前に、私の方が恐怖に飲み込まれてしまう所でした。

しっかりしなさい、翡翠っ! 私は覚悟を決めたはずです。

もし一刀君が、ぼろぼろになって、また心が暗闇に囚われてしまうなら、

私がどんな手を使っても戻すと決めたはずです。

立ち直るために勇気が必要なら、私の心と体が必要なら、幾らでも差し出します。

引っ叩く必要があるなら、幾らでも叩いて、目を覚まさせてあげます。

たとえ一刀君に嫌われても、そうすると決めたはずです。

一刀君は、大切な家族であると同時に、孫呉の未来のために、欠かせない人です。

そのためにも、一刀君には、成長してもらわねばなりません。

今回の事は、一刀君にとって、大きな試練となるでしょう。

兵の前で動揺し、吐いてしまうかも知れませんし、

もしかしたら、気絶してしまうかもしれません。

兵の士気に影響が出るかもしれません。

最悪、心が潰されてしまうかもしれません。

ですが、一刀君を成長させる機会は、今しかないんです。

黄巾党討伐の時、孫呉の臣を集める許可を出した袁術は、此方を警戒している筈。

ですが、今回の一刀君の事は、有力諸侯や豪族を散り散りにされて、離反する者達も出ている中、孫呉は素人を軍師として迎えないといけない所まで、力を失くしていると、袁術には映るでしょう。

そうなれば、一刀君に注意が行く事も無く、袁術に油断もさせる事ができるはずです。

 

思考をめぐらしながら、回りを確認すると、

明命ちゃんが、一刀君を励ましています。

なら、きっと、最悪の自体だけは避けられるでしょう。

戦場では、明命ちゃんや雪蓮様達が居ます。

きっと、一刀君を守り、支えてくれるはずです。

なら、私は、私の出来る事をやるだけです。

 

 

 

 

 

早朝、雪蓮様達は出立しました。

一刀君も、やや疲れた顔をしてましたが、意思をはっきりして出かけました。

おそらく夕べは、眠れなかったのだと思います。

でも、今は一刀君を心配して、立ち止まっている場合ではありません。

一刀君を、みんなを思うなら、

私は、私の戦いをするだけ、

 

「諸葛瑾様、後発の兵糧隊、あと一刻程で出立できます」

「なら、並行して、もう一度荷の確認を、帳簿から漏れが無い事を徹底してください。 見落としがあれば、

 その分、仲間が死へ追いやられると思ってください。

 私は、半刻程、無理を通してくれた商家や長老方に、礼を述べに巡ってきます。

 其処の二〜三人、私についてきてください」

「「「はっ」」」

 

一刀君、みんな、どうか無事で・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

-7ページ-

あとがき みたいなもの

 

 

こんにちは、うたまるです。

  第17話 〜暗闇が舞い堕ちる心に射す光〜 を、此処におおくりしました。

まず、賊討伐シーンを期待されていた方申し訳ありません。

今回は、明命と翡翠シナリオとなりました。

最初のお茶会以降の二人の心の成長が、伺えるような内容になったと思います。

しかし、この二人に比べて、我等が主人公の一刀は、二人の胸なみに成長しないなぁ〜〜(汗

 

翡翠視点で出てきた、一刀君のマッサージですが、スタジオD・○『 家族●画 』が元ネタです。

とりあえず、明命がシリアスだったので、翡翠を虐めて ほんわか させておこうかと(違w

 

まぁ冗談は、おいといて、とりあえず、これで翡翠は、賊討伐から帰ってくるまで、出番がありません。

そして次回こそ、賊討伐の話に入ります。

さぁ、一刀を心を、何処まで追い詰めよう♪

 

どうか最期までお付き合いの程、お願いいたします。

説明
『真・恋姫無双』の二次創作のSSです。

明命√の作品となります。
平穏な日々が壊れる最後の日、二人はどう想って一刀を見守っていたのか・・・・・
拙い文ですが温かく見守ってください
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コメント
対女人最強決戦兵器何でも超人一刀君ww(☆チノレノ☆)
折角教えてもらった戦闘方法ですが、明命ちゃんも思春さんもやり過ぎですよ…幾らか実感できたから良いようなものの一般兵からしたら生贄にしか見えない(笑)そしてまた出陣することになった一刀君。明命ちゃんと翡翠ちゃん、一刀君を『守って』あげて下さい。(レイン)
まさにゴッドハンドですね。代々家に伝わっているのかな。(ブックマン)
一刀……キケン(対女のみ)。(鐵 恭哉)
これで一刀が壊れるか乗り越えるかの兆しが出てくるとは思うんですが、次回が楽しみです(サイト)
御報告 6p:民は雪蓮様王として→雪蓮様を王として 大切に扱われているが故にもどかしく思ってしまう二人…さらに一刀君の自然な姿を引き出せる雪蓮が羨ましくもあり、そう出来ない自分たちが歯痒くもあるのでしょうね。なんとも儘ならぬものですね・・・(自由人)
ふむ、一刀の優しさがかえって明命には辛くある、と。中々うまくいかないもんですねぇ・・・・・(峠崎丈二)
大切だからといって明命や翡翠に稽古ですら手を出さないのは、明命や翡翠からしてみれば寂しい感じなのでしょうね。(零壱式軽対選手誘導弾)
本当に微妙なずれ、ですが無視できないずれが今の三人の関係にはある感じがしますね。一刀くんが何のために二人を大切にしたいのか、その答えが見つかればきれいな絵が完成する気がします。(tomasu)
さすが一刀、どんな形でもたねうm(ry(よーぜふ)
追い詰めるのでしたら、”逝く寸前”まで・・・・その後。翡翠と明命の一刀甘やかし放題ということで、些少でありますが・・・つ【山吹色のお菓子】(nayuki78)
明命も翡翠もかわいいなぁ…すぐ次が見たくなるよw(GLIDE)
誤字報告 P6・明命ちゃんが居るいるのは→居るのは かと(風の旅人)
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