『舞い踊る季節の中で』 第21話
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真・恋姫無双 二次創作小説 明命√

『 舞い踊る季節の中で 』

  第21話 〜 誰が為に舞う想い 〜

 

 

(はじめに)

 

 キャラ崩壊や、セリフ間違いや、設定の違い、誤字脱字があると思いますが、温かい目で読んで下さると助

 かります。

 この話の一刀はチート性能です。 オリキャラがあります。 どうぞよろしくお願いします。

 

北郷一刀:

     姓 :北郷    名 :一刀   字 :なし    真名:なし(敢えて言うなら"一刀")

     武器:鉄扇(二つの鉄扇には、それぞれ"虚空"、"無風"と書かれている) & 普通の扇

        :●●●●

     得意:家事全般、舞踊(裏舞踊含む)、意匠を凝らした服の制作、天使の微笑み(ただし本人は無自覚)

         気配り(乙女心以外)、超鈍感(乙女心に対してのみ)

         神の手のマッサージ(若い女性には危険です)

 最近の悩み:明命達に悪影響が及ばないように、孫策を何とかしなければと、悩むが・・・どうしたら、

         良いだろうか? この間も、幾ら急ぐからと言って、人を前に乗せて馬で疾走する始末

         速度を上げる分どうしても前屈になり、俺の背中にそれをぐいぐい押し付けてくる。

         挙句に、『 気になって、乗り物酔いしなくて済むでしょ 』と言ってくる。

         あれは、絶対此方の反応を楽しんでいる確信犯に違いない。

          ・・・・・・何とかなるのかレベルなのか? これ

         及川、お前だったら・・・聞くまでも無かったな・・・誰か相談できる人いないかなぁ

  (今後順序公開)

 

★オリキャラ紹介:

諸葛瑾:

  姓 :諸葛    名 :瑾    字 :子瑜    真名:翡翠

  武器:"双天" 対の双剣

  武力:52(平均的な将を60とした場合)

  智力:81

  政治:89

  家事:92

  魅力:想像にお任せします(w

  焦った時の口癖:『 あうあう 』又は 『 ぁぅぁぅ 』等の類語です

  性格:基本的に温厚で、外見に反して大人の女性

     だが、焦ると地が出てしまう。(朱里と違って、自分を律しています)

     警戒心が強い性格だが、一度心を許されると、親身になってくれる。

     妹がいるため、基本的には面倒見が良く、放っておくと、食事を取るのを忘れる明命を心配してよく

     食事を差し入れていた。

     やはり、妹がいるためなのか、時折人をからかって、その反応を楽しんだり、とんでもない悪戯を仕

     掛ける悪癖もある、だが性質の悪い事に普段が完璧なだけに、周りは怒るに怒れないでいる。

     家事全般は人並み以上に出来、そこらのお店以上と自負していたが、丹陽で知り合った男性の腕を見

     て自信を喪失。 以降こっそり腕を磨いているが、全然敵わないと嘆く毎日を送っている。

     武術は好きではないが、妹達を変態共から守るため、必要最低限身に付けたもの。

     姉妹揃っての発育の悪さをコンプレックスに思いつつも、それを武器にする強かさを持っている。

     自分を子供扱いしない男性が好みだが、言い寄ってくるのは変な趣味の持ち主ばかりで、17の時、現

     実の男(変態の多さ)に愛想が付いた時に『八百一』と出会う。 以降のめり込み、妹達を洗脳する

     も、基本的には周りには秘密にしている。 そのうち執筆も行うようになり、掲載されるようになる。

     数年たった現在では、定期的な愛読者もつき『八百一』の主要作家の一人となっている。

     黄巾の乱後、作品が益々洗練され、世に愛読者を急増させる要因となった。

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明命(周泰)視点:

 

ザシュッ

 

"魂切"が、賊の一人の命を絶つ。

 

「誰一人、逃してはいけませんっ!」

 

私の号令に、部下達が声を上げ奮起します。

その間に、また一人、その命が"魂切"によって刈り取られます。

今のは、まだ子供と言ってもよい子でした。

でも、情けはかけません。

人に牙を向いた獣は、命を絶つのが世の理です。

彼等も、賊に堕ちれば、こうなる事は、心のどこかで覚悟していたはずです。

 

既に戦況は、終端に向かっており、後は残存する敵を、殲滅するだけとなりました。

私は、逃げようとする賊を率いる男を見つけ出し、其処に幾らかの部下と共に強激をかけます。

 

ザンッ

 

「賊将の首、この孫呉が将、周幼平が討ち取ったりーーーっ!」

 

私の高らかに挙げた声が、残った賊達に更なる絶望を与えます。

周りを見渡し、

 

「残りは任せました。賊掃討後は、何時ものとおり、警戒しつつ負傷兵の手当てに当たってください。

 私は本陣に戻ります」

 

この隊を纏めている部下に後を任し、本陣へ足を向ける事にしました。

 

 

 

 

 

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本陣に戻り、蓮華様に状況報告を済ますと、

 

「明命ご苦労さま、貴女のおかげで、賊達を逃さずに済んだわ」

「いえ、それが私の仕事ですから、・・・あの一刀さんは」

「ふん、あんな軟弱者、知った事かっ」

「あらら〜、先程は賊の伏撃を見抜いた事に、感心してたじゃないですか〜」

「穏っ、あっ、あれは」

「あのもしかして、何かあったのでしょうか」

「一刀なら外よ、慣れない戦で、まいっているから、ついていてあげなさい。

 明命の隊は、こっちで、撤収作業が済みしだい休ませるから、明命も、もう此方は良いわ」

「あっ、ありがとうございます」

 

私は、雪蓮様にお礼を述べて、一刀さんを探します。

一刀さんが心配です。

以前、少数の賊を撃退した時も、あれだけ傷ついたのです。

今回のような、戦となれば、一刀さんが傷ついていないわけありません。

翡翠様は、一刀さんは、心を弱いままにしておく人ではない、と言いましたが、それでも心配です。

それに、心の傷を治すなら、早い方が良いとも言われました。

なら、早く一刀さんを探さないと、

 

 

 

 

 

「一刀さん」

 

やっと見つけた一刀さんは、私の声にも反応が無く、

つい先程まで戦場だった場所で、地面に倒れ伏している人達を眺めていました。

遠目にも、その人達が、すでに事切れているのが分かります。

そんな人達を、一刀さんは、

辛そうに、

悲しそうに、

苦しそうに、

必死に何かを我慢していました。

 

ズキンッ

 

胸が痛いです。

一刀さんが、こんなに苦しんでいる事が、

こんなに苦しむ事に、巻き込んでしまった事が、

私の胸を痛めます。

 

でも、いつものように飛び込む事は出来ません。

だって、一刀さんは、必死に耐えて、何かをしようとしていると分かるからです。

一刀さんの優しい目が、必死に耐え、何かを決意した目をしているからです。

でも、それでも、怖いのだと思います。

私達がした事の結果が、怖いのだと思います。

自分の決めた道を歩もうとするのが、怖いのだと思います。

だから、安易に慰めようと、抱きつくわけにはいけません。

でも、一刀さんを、このままにする訳にもいけない、と言う事もわかります。

 

どうすれば、一刀さんの力になるのでしょうか、

どうしたら・・・・

そうです。

以前、翡翠様が一刀さんにしてられたように、

 

ぎゅっ

ビクッ

 

私が一刀さんの手を優しく握ると、一刀さんは驚いたように、此方を見ます。

どうやら、気がついていなかったようです。

 

「明命・・・無事でよかった」

 

一刀さんは、そう言って、笑顔を見せます。

 

ズキンッ

 

それは、とても悲しい笑顔でした。

悲しみを、苦しみを、涙を、我慢の限界が来ているのに、それに気付かないでいる、そんな笑顔です。

下手に触れれば壊れてしまいそうな、危うげな笑顔です。

翡翠様は、前に一刀さんのこの笑顔を見られたから、あんなに苦しまれたのでしょうか・・・

いいえ・・・たぶん違います。

今の一刀さんの笑顔は、見るのも辛い笑顔ですが、それでも、その目には微かに力強さを持っています。

今は、ほんの僅かですが、以前には無かったものです。

やはり、先程感じた事は、気のせいではなかったのだと思います。

 

ヌルッ

 

えっ?

一刀さんの様子に意識が行ってしまい、気がつきませんでしたが、この感触は、

 

「一刀さん手がっ」

 

一刀さんの手を引っ張りあげて見ると、

握られた拳から、血が滲み出ていました。

 

「・・気がつかなかった」

 

一刀さんは、自分の事なのに、興味がなさそうに言います。

出血具合からして、どうやら、拳を強く握り締めすぎて、爪が皮膚を突き破ったようです。

私は、手当てをするために、一刀さんの手をとると、

・・・・両手とも、爪が二枚づつ、剥がれ掛けていました。

無意識のうちにこまで・・・

とにかく、今は血止めをするのが先決です。

怪我そのものは、たいした物ではありませんから、血止めの薬を塗り、手持ちの布を裂いて手に指に、巻きつけていきます。

やがて治療を終え、私はその手の平に、そっと手を置きます。

傷を慈しむように、私の手の温もりで癒える様に、優しく手を重ねます。

そんな事出来る訳無いと、判ってはいるのに・・・

 

ぎゅっ

 

「えっ・・・・」

 

今度は、一刀さんの方から、手を握ってきました。

今まで、一刀さんから、こういう事を、して来た事が無かっただけに、驚いて見上げると、

さっきの、痛々しい笑顔で、

 

「・・・ごめん、迷惑だと分かっているけど・・・しばらくこうしていて欲しい」

 

そんな一刀さんの願いを断るなんて出来ません。

ましてや、今の一刀さんを放っておく事なんて、

だから、私は、返事の代わりに、此方から優しく握り返します。

傷に響かないように、そっと・・・

一刀さんが、頑張って乗り越えようとしています。

なら、少しでも勇気が沸くように、

また、歩く事が出来るように、

握った手から、想いを伝えるように、

優しく手を握ります。

 

やがて、一刀さんは、あちこちを歩き回ります。

多くの死者を、その目に焼き付けていきます。

まるで、己が罪をその胸に刻むように、

何かに必死に耐えながら、

一刀さんは、死者を、負傷者を、

己が歩む道を、その心に刻み込んでいるようです。

 

だから、私は口出しできません。

・・・見ているだけなのは二度と御免だと、思ったのに、

私は、見ている事しかできません。

こうして、一刀さんに望まれるまま、手を握る事しかできない自分が、悔しいです。

でも、それを一刀さんに悟られる訳にはいけません。

一刀さんは優しいから、それに気がつけば、

今、一刀さんを繋ぎとめているこの手すら、

あっさり手放してしまいます。

そんな事をさせる訳にはいけません。

そんな優しい一刀さんだからこそ、私は・・・・なんなんでしょう、よく分かりません。

でも、分かるのは、この手を離してはいけない事、

そして、一刀さんが、また笑えるよう祈りながら、この手にその想いを篭める事です。

 

どれくらい回ったでしょうか、一刀さんは、相変わらず辛そうではありますが、

その目には、少し前までは微かだった力強さが、段々強くなっているのが分かります。

 

 

 

 

 

「明命、孫策達の所に行く」

 

突然力強い声を出した一刀さんは、私の手を握ったまま、力強く歩いていきます。

そこには、先程の触れれば、壊れそうな雰囲気も、すでに無く。

その目は、辛そうな中にも、確たる力強さを、持っていました。

その一刀さんの変化に、私は驚愕すると同時に、少し安心しました。

一刀さんは、翡翠様が言われたように、心を弱いままにしておくほど、弱い人ではなかったのです。

翡翠様は凄いです。

一刀さんの事を、本当によく理解していられます。

 

ズキンッ

 

何ででしょう。

一刀さんが乗り越えかけているというのに、

喜ぶべき事なのに、

胸が痛いです。

心が切なくなります。

何で・・・・・?

 

 

 

 

 

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雪蓮達の天幕に入るなり、一刀さんは、とんでもない事を言いだしました。

 

『 賊に堕ちてしまった人達を、何で弔わないで、そのままにしておく 』

 

その言葉に、握られていた手を離され、何故か寂しくなってしまった事など、吹き飛んでしまいました。

一刀さんが考えている事はわかります。

でも、そんな事は出来ません。

私も彼らを許す気はありませんし、そのような事をすれば・・・・・

予想どおり、一刀さんの言葉に蓮華様は、激怒されます。

思春様は、その刺す様な眼差しと、発せられる殺気からして、真名を預けた一刀さんに、自分の想いが裏切られた、と思っているのでしょう。

一刀さんの優しさは、美徳だと思いますが、こればかりは聞くことは出来ません。

雪蓮様は、王として、一刀さんの言葉を諭すように 断ります。

周りの将達の事を考え、流儀が違うからの言動だと、言い聞かせます。

その事に安堵する暇も無く、一刀さんは、更にとんでもない事を言い出しました。

 

『 俺の世界、天の国では、病気や疫病の原因って言うのが、ある程度特定できているんだ。

   あの人達を、埋葬しなければ、疫病の原因になるよ 』

 

「っ!」

 

い・いけませんっ。

そんな恐ろしい事を言ってしまえば、一刀さんでも、ただではすみませんっ。

疫病は恐ろしい呪いです。

国一つや二つ、滅ぼす事すらある強力な呪い。

下手に触れれば、王ですら断罪される最大級の禁忌です。

それが特定できているなど、

埋葬しなければ疫病の原因になるなど、

そのような事ができるはずありません

何とかしなければ・・・

雪蓮様も、流石に、これは黙っていられないようです。

一刀さんに問いただします。

幾ら、天の国の知識が凄いからと言って、そのような嘘、無茶が過ぎます。

本当に何とかしなければ、此処まで話を大きくされては、雪蓮様でも一刀さんを庇う事は、もう出来ません。

ですが、何も良い手は浮かびません。

 

・・・・こんな時翡翠様なら

 

・・・・私は無力です

 

 

 

 

 

一刀さんが話を終えると、雪蓮様は一刀さんの言を、本当の事だと判断しました。

よく分かりませんが、穏さんも同じ結論を出した事が後押しになったようです。

もし、一刀さんの言う事が本当だとしたら凄い事です。

確かに、それで、疫病を少しでも減らしてくれるなら、やる価値は在ると思います。

ですが、今のような荒唐無稽のお話を、豪族達が、民が信用してくれるでしょうか?

でも、雪蓮様は、実行しました。

それはつまり、疫病を減らせるかもしれないなら、民や豪族に説得して回る苦労を背負う事を、決断されたと言う事です。

もしかすると、また離反する者達が、出て来るかもしれないと言うのに・・・・

民の信を失うかもしれないのに・・・・

それでも、一刀さんの言を信じる事を決めたのです。

 

 

 

 

 

陽も、まもなく沈もうとしています。

陣のあちこちには篝火が、暖を取るための焚き火が、あがり始めます。

天幕では、つい先程までいた部隊長達を、穏さんが、何とか納得させ一息を入れたところです。

案の定、部隊長達が賊達の屍を埋葬した事に、不満と怒りを持って押しかけてきました。

雪蓮様の直令と言う事で、埋葬はしたものの、それで不満が無くなる訳ではありません。

かと言って疫病の事を話しても、信じてもらえないだけならいざ知らず、最悪混乱を引き起こしかねません。

そんな事情もあって、穏さんは、

 

「此処は国境近くの砦のすぐ傍です。

 しかも主要な街道のすぐ近くにあります。

 つまり、多くの商人さん達が使用しているのです。

 もし、国境を超えてすぐに、沢山の屍が転がっていたら、商人さん達はどう思うでしょうね〜」

「「「「 ぐっ・しかしっ! 」」」」

「皆さんの言いたい事は、十分判っています

 ですから、ああやって、誤解しないように、分かりやすく、まとめて晒しているのです〜

 それに、商人さん達が来なくなってしまえば、困るのは民達だけではありません。

 それによって税の収入が減れば、皆さんにお支払いする御給金も、減りかねない事になるんですよ〜」

 

そう言われれば、生活のある彼等は納得せざる得ないのでしょう。

恨みを晴らしたいが、生活が成り立たなくなる危険は、冒したくは無いのでしょう。

 

「姉様、今回は何とか誤魔化せましたが、毎回このような事で誤魔化せる訳ありません」

「分かってるわよ、帰ったら冥琳達に、良い手を考えてもらうわ」

「姉様は、まだあの者の言う事を、真に受けるつもりなのですかっ!」

「受けるわよ〜、だって、一刀は嘘をついていないのだから」

「嘘をついていないからって、このままでは・」

「蓮華、貴女は、恨みや見せしめの為に、民を疫病の危険に晒せと言うつもり?」

「そ・・・それは・・・」

「じゃあ、この話は帰るまでお預け、良い手が無かったら、一刀にも手伝わせるわ、言葉の責任は取ってもら

 わないとね」

 

そこへ、兵の一人が新たな知らせを持ってきました。

 

「北郷様が、陣の離れで舞いを舞われ、多くの兵が北郷様を取り囲んでいるようです」

「なっ!」

「あらら、ちなみに聞くけど、貴方はそれを近くで見たの?」

「いいえ、自分は遠目にしか」

「そう、一刀なら心配ないわ、折角だから貴方も見てみるといいわ、行きなさい」

「はっ」

 

雪蓮様の言葉に兵は、天幕を出て行きます。

それを見計らって、

 

「姉様っ!」

「なによ〜、蓮華。 私達も一刀の舞いを見に行くわよ」

「止めるべきですっ。

 あの者の考える事など決まっています。

 きっと、賊達を弔う舞いを舞っているに、決まっているではないですかっ!」

「あら、判っているじゃない。

 なら問題ない事も判るわよね」

「何処が問題ないというのですか、せっかく先程の問題を回避できたと思ったら、これでは穏の苦労が水の泡

 になるではありませんかっ」

 

蓮華様は、ああ言われましたが、一刀さんの事です。

きっと何かお考えが在って、やられているのだと思います。

それは雪蓮様も同じようで

 

「蓮華、貴女まだ、一刀の事判ってないのね。

 思春だって、そう怒っていないわよ」

「・・・・お言葉ながら、呆れ果てているだけです」

「し、思春? お前ともあろう者が、あの男のやる事を信じるというのか」

「・・・蓮華様、あの男は、軟弱で、へらへら笑う軟派者で、どうしようもなく甘い考えの持ち主で、常識知

 らずで、馬鹿ですが・・・・阿呆ではありません」

「そうね、少し言いすぎだけど、確かに一刀は甘い、でも間違いなく頭は回るわ。

 さっきだって、本音は賊共の弔いよ。

 でも、それでは此方が要求を呑む訳無いと判っているから、此方から情報を引き出し、此方が要求を呑まざ

 る得ない物を提供する。

 やり方は、まだまだ甘いけど、私や穏に、納得させるだけの論戦をして見せた。

 あんなもの、私にしか通用しないけど、それを承知の上で仕掛けていたわ、自分の命を賭けてね。

 どうやら、一刀は何かを守る事で、力を発揮するようね。 一刀らしいわ」

「だからと言って、鎮魂の舞などを許せば・」

 

蓮華様の言葉を遮るように、雪蓮様は大きく深く息を吐き

 

「言葉で言っても無駄ね。

 蓮華、貴女一刀の舞を見た事ないでしょ」

「当たり前です。 そのようなものに時間を掛けている暇はありません」

「そう、なら今から、最後まで見なさい。

 貴女に任せるから、その上で判断しなさい、一刀の舞いが、問題があるものなのかをね。

 こんな事やっている間に、一刀の本気の舞が終わっちゃうかもしれないわ、急ぐわよ」

 

そう言って、雪蓮様は天幕を出られます。

確かに、一刀さんの舞いなら、見てみたいです。

私達は雪蓮様の後を付いて行きます。

 

 

 

 

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黄昏のなか、

 

松明が燃える灯火のが照らす中を、

 

その光を受け、白く輝く扇子が、舞っています。

 

夕闇に浮かぶように、

 

一刀さんが舞っています。

 

・・・・これが、一刀さんの本気の舞い、

 

なんて言ったら良いのでしょう。

 

確かに、これは鎮魂の舞いです。

 

逝ってしまった者を、いえ、見送る者も含めて、

 

その想いに、胸が溢れます。

 

それは、まるで命其の物を見ている感じです。

 

最初は、大樹、

 

そして、蝶、

 

動物

 

次々と変わっていく中

 

それは、

 

儚く、

 

切なく、

 

脆く、

 

脆弱、

 

生きる事での悲哀

 

だけど、だからこそ

 

強く、

 

逞しく、

 

希望に溢れ、

 

力強く生きる、

 

大地の、生命の息吹、

 

そして、生きている事こそ、

 

何よりの喜びだと、

 

逝ってしまった者の為にも、

 

より生きなければならないと、

 

頭ではなく、心が、いえ魂が、

 

私の中から訴えているのです。

 

 

 

 

 

どれだけ時間が過ぎたのでしょうか、陽は完全に落ち、

辺りを夜が、支配しています。

そんな中、一刀さんは、舞いを終えるのでした。

ですが、誰も声をあげません。

多くの者が黙って涙を流しています。

私もいつの間にか、流していたようです。

確かに、悲しい舞いでした。

ですが、それだけではありません。

それ以上に、心が凄く落ち着いています。

いえ、自分の中の大切なものを、強く意識させます。

上手く言えません・・・

でも強く生きる喜びみたいなものが、胸に溢れているのは分かりました。

 

やがて、兵達は、一人、また一人と、黙って己の居場所に戻っていきます。

勝ち戦とは言え、必死に生き残り、戦いに疲れ、果てていた彼等は、

しっかりとした足取りで、明日をしっかり生きるために、今は体を休めるために、戻って行きます。

その中に、蓮華様達の姿もありました。

 

私は・・・自分の天幕には戻りません。

ただ、私が戻る場所は、そこではないと、感じたからです。

私が戻るべき場所は・・・

 

 

 

 

 

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時折音をたて、燃える焚き火、

その火が大地を、空気を暖めています。

そしてそれを囲むように、兵士達が、在る者は座り、在る者は横になって、体を、心を、休ませていました。

そして、そこから少し離れるようにして、一刀さんが、黙って座っています。

将である、私や一刀さんには、自分の天幕が用意されています。

でも、一刀さんが此処にいる気持ちは判るから、何も言いません。

一刀さんは、きっと今夜だけでも、彼等の傍にいたいのだと思います。

 

「・・・・一刀さん」

 

私は、すぐ隣に座り、肩を寄せます。

昼間のように、手を優しく重ねます。

だって、一刀さんは、あれだけ凄い舞を舞えるほど、心が傷ついたのだと思えるからです。

だから、その傷が、これ以上広がらないよう、そっと塞く事ができたらと、願わずにいられません。

 

「明命、御免、また迷惑掛けちまった」

 

そう私に、微笑みかけながら、謝罪してきます。

その笑顔は、とても優しく、暖かなもの、そして、悲しみと慈愛に満ち溢れたものでした。

その瞳は、苦しみも、悲しみも、怒りも、嘆きも、全て受け入れた上で、何かを決めた強い光が灯っています。

痛々しさは消えてはいませんが、それでも、一刀さんの心が、想いが伝わってきました。

 

「俺、勘違いしてた」

「・・・・何をです」

「孫策に、襲撃を受けた集落を見せられた時、許せないと思った。

 でも、それ以上に、皆を守りたいと思った。あんな事させちゃいけないと思った」

「・・・・違うんですか」

「違いはしないよ。

 今もそう思っている。

 でも、こうして戦に勝つって、皆守るって事は、此方も相手を殺しつくす事なんだって、

 頭では理解できていた事だけど、その意味を判っていなかったよ。・・・・全然ね」

「・・・・辛いですか」

 

そう言いながら、私は、頭を一刀さんの肩に凭れさせます。

少しでもその辛さを、忘れられるように、

 

「そうだね、辛い・・・・でも、受け入れなくちゃいけないって分かる。

 ・・・と言っても、何度も挫けそうになった、道を間違えそうになった。

 その度に、明命と翡翠が俺を守ってくれた。 陸遜が、道を正してくれた。

 孫策が・・・道を教えてくれた、かなり厳しかったけどね」

「・・・・それは」

「分かっているよ。

 彼女が王だから、そうせざる得ないって事は、

 でも、分かるよ、あれが、彼女の優しさだって事は・・・・」

「はい」

「彼等についてだって、自分達が不利になるのに、俺の言う事を聞いてくれた」

「・・・・やっぱり、分かっていたんですね」

「ああ、なんとなくね。

 それでも、俺は彼等の魂を守りたかった。

 少しでも救いたかった。

 自己満足でしかないと分かっていてもね。

 そのために、孫策の優しさにつけこんだ・・・・酷い男だろ」

「・・・・違います。

 一刀さんは優しい人です。

 私には難しい事はわかりませんが、あの人達は、救われたと思います。

 私達には理解できない気持ちですが・・・ああやって、一刀さんに弔ってもらえたのですから」

「明命は優しいな」

「・・・・一刀さんには負けます」

「ありがとう、明命

 ・・・・もう自分の天幕に帰るといいよ。疲れているんだろ」

 

一刀さんの言葉に、私は首を横に振ります。

こんな一刀さんを、一人にしておけないと思えるからです。

 

「・・・ありがとう・・・でも、せめて横になって寝ると良い、少しでも疲れを取らないとね」

 

そう言って、一刀さんは、私を強引に横にしようとします。

私は、せめてと、、

一刀さんに、私の温もりが伝わるように、

想いが伝わるように、

一刀さんの足を枕に、横になります。

そんな私の頭を、一刀さんは優しく撫でてくれます。

・・・それは、本来なら、私が一刀さんにしなければいけないこと、

でも、一刀さんから伝わる温もりに、感触に、私は安堵感を覚えます。

・・・・駄目・・・一刀さんの心を・・・温めて・・あ・げ・・な・・・きゃ・・・

 

 

 

 

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一刀視点:

 

 

俺は、自分の足の間に、静かに眠る明命の髪を、優しく撫でながら、感謝する。

情けないな・・・・俺、

自分でしっかりと立つと決めたのに・・・

本当に、明命と翡翠には、守ってもらってばかりだ・・・救ってもらってばかりだ。

昼間も、今も、こうして明命の温もりに、優しさに触れていなければ、心を潰されていたに違いない。

 

パチッ

 

火番が、時折入れる薪のおかげで、そう寒さは感じない。

でも、夜遅くなれば、そうも行かないだろう。

どうしようかと思っていると

 

「こんな所で、外套も無しに一晩過ごすつもり?」

 

外套を纏った孫策が、手に俺と明命の分らしい外套を持って、近寄ってきた。

そして、孫策は明命を起こさない様に、そっと外套を掛けてやると、そのまま俺の肩にも掛けてくれた。

 

「すまない」

「いいわよ、今回一番頑張ってくれた明命に、風邪なんか引かせられないもの」

 

そう言って、俺の隣に座り、

 

「これが無いと、弔いって感じじゃないでしょ」

 

そう言って、俺に木の湯のみを渡し、酒を強引に注ぐ

 

「・・・べつに、酒が無くても、弔えると思うけど」

 

そう言いつつ、俺は湯飲みの中身を、口に流し込む。

 

「・・ケホッケホッ・・なんだよこれ、凄いきついじゃないか」

「何よ〜、この程度普通でしょ?」

「少なくても、俺には十分きついよ」

「明命や翡翠だって、これくらい平気なのに、家で飲んでないの?」

「翡翠は、偶に部屋で飲んでいるみたいだけど、明命は家で飲んだのを見た事は無いよ」

「結構つまんない毎日を送っているのね」

「二人を、孫策と一緒にしないでくれと言うか、二人を馬鹿な事に巻き込むのも、出来ればやめてくれ、

 そもそも、酒なんて無くても、俺は十分楽しんで毎日を送っていたよ」

 

俺の言葉に、孫策は、一気に酒を飲み、また二つの湯飲みに酒を注ぐ。

・・・・あの、俺にこのきついのを、もっと飲めと?

 

「まったく、一刀は二人を本当に大切にしてるのね」

「当たり前だろ。

 情けない話しだけど、こうして守ってもらってばかりだからな、感謝してもし足りないさ」

「ちゃんと自覚しているんだ」

「あのね、俺そこまで鈍感じゃないぞ」

「・・・・・・・」

「何でそこで黙るんだよ」

「でも、何とか、乗り越えたみたいね」

「・・・・・別に乗り越えてやしないよ。

 正直、今でも、喚きたいし、逃げだしたい気持ちで一杯だよ」

「・・・・」

「・・・・でも、それは出来ない。

 二人を守るって、決めたのは俺自身だし、こんな俺を二人は支えてくれた。

 その二人の想いを裏切る事はできない。

 それに、この悲しい現実を何とかしたいって、想えるようになったからね・・・」

「・・・そう」

 

俺は、なんとか湯飲みを空け、今度は俺が、孫策に酒を注ぐ、むろん俺のは注がない。

だが、孫策はそんな俺から徳利を奪うと、俺の湯飲みに酒を強引に注ぐ・・・あの俺の意思は無視ですか?

 

「一応、孫策には感謝しているよ」

「一応なんだ」

「ああ言うやり方されたら、多少恨みもするさ、

 でも孫策の言いたい事は分かったし、そのおかげで、こうして潰されずに済んでいる。

 それに、俺の我侭も聞いてくれたしね」

「本当よー、あれから、部隊長達を宥めるのに、大変だったんだからね」

「どうせ、陸遜が全部片付けたんだろ?」

「ぶーーーっ、一応私も頑張ったんだからね」

「その事は感謝している」

「その割には、真名を呼んでくれないのね」

「孫策の事はそれなりに認めてはいるよ、良い所も、多すぎる駄目な所もね」

「・・・一刀の意地悪」

「孫策が自分を改めれば良い事だろ」

「そんな冥琳や蓮華みたいな事、言わないでよね」

「やっぱ、言われてるんだ」

 

俺の言葉に、頬を膨らませていた孫策(あの、貴女は一体幾つなんですか・・・)だが、真面目な顔に戻ると、

もう一度、俺と孫策の湯飲みに、今度は、なみなみと酒を注ぎこむ。・・・いい加減そろそろ限界なんですが

だが、その思いも、孫策の顔を見て吹き飛んだ。

孫策は、王の貌で、俺を真っ直ぐ見つめていた。

 

「一刀、もう一度、改めてお願いするわ。

 私のためとは言わない。

 二人のため、そして、孫呉に住む民の為に、貴方の力を貸して欲しいの

 貴方は自分の事を過小評価しているけど、

 貴方の知識は、想いは、孫呉の民に明るい未来をもたらせてくれる。

 ああ言う悲しい人達を作りたくないし、民が笑って過ごせる世の中にしたいの。

 そのために貴方に、力を貸して欲しい、

 でも、そこまでの道のりはとても厳しいものになるわ、

 血塗られた道になるわ。

 貴方の嫌う戦を、何度もする事にもなるわ。

 そうしなければ、民を守る力なんて手に入らないから、

 一刀みたいな、優しい人には、それは苦痛でしかないかも知れない。

 それでも、貴方の力が要るの。

 私にできる事なら、なんでもしてあげる。

 だから、一刀、私達に力を貸して頂戴」

 

孫策は、王として、私人として、そう願い出た。

頭は下げない。そうだろう、王たるものは、そうそう頭を下げれないし、

今は、対等の者として願い出たのだ。

頭を下げる以上に、その瞳に、想いの全てを込めて、真直ぐ俺を見詰め、願い出た。

なら、俺も、それに答えなけばならない。

 

俺は、扇子を地面に置き

 

「一つだけ約束して欲しい。

 必ず、民が笑って過ごせる国を作り守る事を・・・むろん、その中に、明命達や孫策も居る事」

「わかったわ、必ず守る」

 

俺と孫策は、そう約束し、酒を一気に飲み干した。

・・・・あっ、いかん、こんな強いのを一気に飲んだら・・・

俺は、状況に酔って、飲み慣れない酒を一気に呷った事で、酔いが回り、意識が遠のくのが分かる。

 

「あらら、・・・しょうがないわね、そのまま寝たら風邪引くわよ」

 

そう言って、俺に近づき、俺の空いている脚を枕に寝転がる

ちょっ、なにをっ

 

「こうしてくっついていれば暖かいでしょ、今日頑張った御褒美よ」

 

いや、これ褒美じゃないから・・・あっ、いかん、本当に限界が・・・・ぁ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

-8ページ-

あとがき みたいなもの

 

 

こんにちは、うたまるです

  第21話 〜誰が為に舞う想い〜を、此処におおくりいたしました。

 

今回で、賊討伐編は終わりとなりました。

一刀が、この戦を通して、いえ、その前から、いろんな人達の想いに支えられて

曲がりなりにも、決意と覚悟を決める事が出来た話となりました。

乱れた世の中と戦は、一刀の想いや意思等に関係なく巻き込んでいきます。

そんな中で、一刀を支えようと、明命達が自分が傷つきながらも、出来る事をしていく姿を書いたつもりです。

(上手く伝わらなかったらごめんなさい)

 

一刀も、乗り越えたように見えたかもしれませんが、やはりその傷は深いものです。

ただ、関わった人達の想いが、一刀を支えているのも事実です。

私的には原作も含め、一刀は何かを守る事で、力を発揮するタイプ、いえ強くなれるタイプだと思っています。

これから、一刀がどう成長していくのか、

明命と翡翠の思いがどう変わっていくのか、書いている自分も楽しみにしております。

・・・・でも、この時点だと、翡翠の決意がまたスルーされている気が・・・・(汗

 

しかし、17話を投稿した時点で、この21話は、この2/3以下だったのに、見直していたら、此処まで増えてしまった(汗

 

 

頑張って書きますので、どうか最期までお付き合いの程、お願いいたします。

説明
『真・恋姫無双』の二次創作のSSです。
明命√の作品となります。

戦の惨さに心を痛める一刀、
明命は、そんな一刀をどう見守っているのか・・・・

拙い文ですが温かく見守ってください
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コメント
鎮魂の舞踊の光景が目に浮かんでくるようでした(☆チノレノ☆)
多くの恋姫SSで蔑ろにされがちな「人の生き死に」「殺し合い」に関して、作者さんなりに踏み込んで書かれているので、とても嬉しいです。一刀、現代人ですもんね。葛藤や苦悩があって然るべきだと思います。(ネコの足音)
孫権はやっぱり初期はクソだな。(ht84)
明命ちゃんはまだ自身の『想い』にまでは気が付いていない様子。彼女も鈍いと言えば鈍いんですけど、ここまでくると、やっぱり祭さんあたりに発破をかけてもらわなくてはいけませんね。雪蓮さんとも少々和解の雰囲気がちらちらと。孫呉の一員となった一刀君、はたして『ココロ』が擦り切れたりしなければ良いのですが…(レイン)
大きな峠は越えましたね。これからの活躍期待してます。(ブックマン)
真名で呼ぶいい状況だと思ったけどやっぱりそのままか…作者さんがどこで呼ばせるか期待(Orcinus orca)
更新お疲れさまです。今回の戦で一刀はもちろん、明命の心情的な部分の成長も見られたかと思います。これで翡翠といい勝負ができるのではないでしょうか。孫策も最後の締めとして、らしさがでていたと感じました。(Dominique)
無理やり、覚悟完了か・・・(tokitoki)
一刀の考えを軟弱扱いとは、孫権よ、賊もそうだが軍も人の心をなくしているぞ(ヒトヤ)
一刀君の苦痛を和らげ支える明命にようやく翡翠と並んだかなと思います。そしてこの鎮魂の舞いを機に蓮華や呉の兵士たちの一刀君を見る目が大きく変わるのだなと…そして一刀君が覚悟を決めた今、改めて雪蓮の願いに応えた一刀君、シリアスの締めは明命と雪蓮に囲まれてほんわかとしましたね。(自由人)
p5の「白い純白の扇子」は「白い」か「純白の」の内片方だけでよいのでは? 仕様でしたらすいません。(鐵 恭哉)
更新お疲れ様です。思春が素敵過ぎる・・・(Night)
お早い更新乙です 本編と悩みの差はいったいなんだろう もう一刀、あきらめて楽しめ(よーぜふ)
死の舞踏とは対極にある鎮魂の舞踏ですか。なかなか美しいものですねー(闇羽)
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