ヤンデレな知人に狙われる社会人 01
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彼の名は、アイギス・ィエク。年齢は25歳。

とある町の一般企業で、営業を担当しているごく普通の会社員だ。

 

父と母に、社会を経験して来いと家を追い出されて早4年。

一人暮らしを余儀なくされ、死ぬ気で仕事を探し勤め上げて約4年。

 

一時はどうなる事かと思ったが、真面目に勤め上げた成果が認められ1年前に正社員として雇用が決まった。

最初の1年は怒涛の1年と言ってもいいだろう。

 

バイトとは比べ物にならないほど、仕事量や責任が増えた。

四苦八苦しながらもこなし、今では遣り甲斐も感じ後輩も出来て充実している毎日を過ごしている彼だが、一つだけどうしようもない悩みを抱えていた。

その悩みとは──。

 

「アイギスお兄ちゃん、お帰りなさい!」

 

今年中学2年になる隣人、高町なのは嬢にあった。

 

栗色の髪をツインテールにまとめ、大人の階段を上っている途中の彼女は美少女と評判で、そんな彼女と交流があるのは嬉しいのだが。

色々と押さえが利かない様な、スキンシップを行なってくるのだ。

 

妹の様な存在なので今更邪険にする事もできず、アイギスは今日も溜め息を付きつつ自宅のドアを潜った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

思い起こせば4年前。

 

バイトながらも、本格的に仕事を始め慣れない所為か疲れ切っていたある日の事。

いつもの様にコンビニで遅い夕食を買って帰ってみると、アパートの前で泣いている少女を見つけたのが始まりだった。

 

足元にはランドセルがあり、近くの小学生だという事が伺える。

普通であれば、ここは無視するのが一番だろう。

犯罪が多発している昨今、誰であろうと気軽に話しかける事ができないくらい世知辛くなっている。

 

当然大人である自分が子供、それも小学生の女の子に話しかければ現行犯逮捕される可能性は否定できない。

 

── ごめんな。

 

心の中で謝りつつも、通り過ぎようとした瞬間。

不意に、少女がこちらを向いた。

 

目を赤く腫らし、溢れ出る悲しみを歯を食いしばり必死になって止めようとしている表情に、何故かアイギスは足を止めてしまった。

 

見つめ合う事、数分。

結局の所、周りの人からなんと言われようと泣いている子供を無視できるほど人間が腐ってなかったアイギスは、その子を家に上げてしまった。

 

「… ほら」

 

ちょうどあったココアの粉末と牛乳を使い、温かいミルクココアを2つ用意し一つを少女に渡す。

お腹が空いていたようでチビチビと、しかし貪欲に飲み干し、おかわりまでして見せた少女に苦笑しつつアイギスは少女の頭を撫でた。

 

アイギスに疚しい気持ちは決してなく、なんとなく手の置きやすい位置に頭があったものだからつい撫でただけ、なのだが少女は突然大声で泣き出した。

女性とまともに話した事がないアイギスに、訳も分からず泣く女の子をどうにかできるはずもなく、せめて声が響かないようにと抱きしめる事しかできなかった。

 

少女が泣き始めて、どのくらい経っただろうか。

やっと落ち着きを取り戻した少女は、不安気にこちらの様子を伺っている。

 

しかし、そんな表情とは裏腹に手はしっかりとアイギスの服を掴んで離そうとせず抱きついたままだ。

 

このままでは拉致があかない。

そう思いアイギスは、少女が泣かないように注意を払いながら話を聞いた。

 

少女曰く、父親と母親が喫茶店を経営しており忙しい毎日を過ごしているらしい。

そして、兄や姉も学校から帰ると手伝う為、滅多に家に居らず一人ぼっち。

 

何もしなければいい子と褒められ、いつの間にか我が侭を言うのが怖くなり我慢していたとの事。

 

それだけならまだいい、我慢できる。と、少女は続ける。

最近学校の授業について行けず、家族に勉強を教わりたいのだが迷惑をかけるからそれもできず、かと言って仲のいい友達はいない。

 

極めつけは、この前あったテストの答案が今日返ってきて見た所点数が下がっていた。

これでは家族に迷惑を掛ける。

 

少女は全てを吐き出す様に、泣きながらアイギスに語った。

 

少女の話を聞き、他人のプライベートに踏み込む事があまり好きになれないアイギスも、この時ばかりは憤りを感じていた。

 

幸い、近所には喫茶店は一軒しかない。

あまりの剣呑に身の危険を感じて大人しくなった少女の手を引き、アイギスは喫茶店へと足を運んだ。

 

はたして、店の前では両親と兄姉と思われる4人の人物がキョロキョロと辺りを見渡していた。

 

父親と思える男性がこちらを見て、続いて残りの3人もこちらを見る。

周囲の建物は明かりが灯っておりこちら側でも向こうの様子が見えるから恐らく向こうもなのはに気付いたのだろう。

 

少女の家族と思える人物達に声をかけようしたアイギスは、目を見開いた。

数十メートルは離れていただろうと言う距離があったのにも関わらず、目の前には男性が立っていたのだから無理もない。

 

何がなんだか分からないで混乱しているアイギスを他所に、男性は腕を振り上げる。

その瞬間、アイギスの意識はプツリと途絶えた。

 

目が覚めると、iいつの間にか布団jに寝かされていた。

 

「知らない天井だ…」

 

ゆっくりと上体を起こし、周りを見渡す。

ぬいぐるみが数点と、小学生用の学習机やタンスがあるごくごく普通の部屋だ。

 

淡いピンク色のカーテンや壁紙の色からして、女の子の部屋なのだろう。

という事は、今寝ているベッドは女の子の…。

 

非常に気不味くなったアイギスは、そそくさとベッドから起き上がる。

寝ていたおかげか、体は軽い。

 

寝起きにありがちな倦怠感を吹き飛ばそうと軽く伸びをしていた所、カチャリと音を立てドアが開いた。

 

「お兄ちゃん!」

 

そう言って入ってきたのは、さっきまで一緒にいた少女だった。

アイギスが起きたのがよほど嬉しかったのか、勢いよく抱きついてくる。

 

あまりにも勢いがよく頭から少女が抱きついてきたため、アイギスの鳩尾に綺麗に入ったのは余談である。

 

 

 

 

 

その後、ごめんなさいと何度も謝る少女を宥めつつ、アイギスはリビングに案内された。

手を引っ張られながらリビングに入ると、若い女性に土下座をしている男性と中々見られない光景が目に飛び込んでくる。

 

「ああ、目が覚めたんですね。御免なさい家の者がご迷惑をかけました」

 

こちらに気づいたのか、微笑みながらも謝る女性。

どうやらここの家族は、この女性がイニシアチブを握っているらしい。

 

この女性だけには逆らわないで置こうと思いつつ、アイギスは自分が気絶した後の話を聞く事にした。

どうやら、アイギスの事を誘拐犯と勘違いした男性、高町恭也が妹の高町なのはを助ける為に気絶させたとの事。

 

その後、警察に通報しようと言う話になった際なのはが止めたとの事だった。

 

「「「ごめんなさい!」」」

 

一家全員で謝る姿勢に溜め息を付きつつ、改めてアイギスは少女を保護した経緯を洗いざらい話す事にした。

なのはが必死になって止めようとするが、知った事ではない。

 

なのはがどれだけ寂しい思いをしているのか、目の前で泣かれたアイギスとしては見過ごすわけにはいかなかったのだ。

同情、とまではいかないが、少女を見ている内に居ても立ってもいられなくなったのは事実。

 

全て話し終えると、なのはの頭を撫でてこの場から去った。

後、は家族同士で解決する事なのだから──。

 

それから一週間後。

高町なのはに会う事もなく、無事に解決したと思っていたアイギスに来客があった。

 

「こ、こんにちわ!」

 

顔を真っ赤に染めながら、満面の笑みを浮かべる高町なのは嬢である。

追い返すのも悪いと思いアイギスはなのはを迎え入れたのだが、それからと言うもの休日になると高町なのははアイギス宅に入り浸るようになった。

 

高町夫妻からもよろしくと言われ、勉強などを見ているが何時警察に通報されないかと内心ビクついていたアイギスだが半年も経つとなのはがいる事にも慣れ事前に飲み物等を用意するのも当たり前になってきた。

中学生となった今では、合鍵まで作り掃除洗濯料理と身の回りの事をしてくれるので助かっている。

 

しかし、大切にしているパソコンを触るのだけは簡便して欲しかった。

どんなに長いパスワードや、フォルダロックを掛けてもいつの間にかファイルが削除されているのだ。

 

それら全てが、エロのつくデータだからいいものの…いいやよくない。

男性特有の生理現象も解消できない毎日を悶々と過ごすのはさすがに堪えるなと思ってた矢先、なのはからA4サイズの封筒を渡された。

 

彼女が帰ったので、気になり開けてみると一冊のグラビア雑誌が入っており、中を見るなり唖然とした。

グラビアアイドル全てになのはの顔写真が貼っており、さながらアイコラの様になっていたのだ。

 

──こ、これでどうしろと…。

 

大胆なのか、アホなのか、なのはの行動に空いた口が塞がらないアイギスだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お兄ちゃんと出会ったのは、忘れもしない小学4年生の時。

今でこそ、アリサちゃんやすずかちゃん、フェイトちゃんにはやてちゃんと言った友達がいるけど、あの時は友達なんて誰もいなかった。

 

家にいたら家族に迷惑を掛けてしまう。私はいい子だから、そんな事をしちゃいけない。

お父さんやお母さんの困った顔が、グルグルと頭の中で回ってどうしたらいいか分からず泣いていた時、一人の男の人に出会った。

 

その人は泣く事しかできない私に、温かいココアを飲ませてくれて優しく抱きしめてくれた。

困った顔をしていたけど、不安になる事はなかった。

 

だってそれは、私泣いてどうしていいか分からずに困っているって分かったから。

その後も、私の為に家族の皆を叱ってくれた。

 

赤の他人なのに、悲しませるなと怒ってくれた。

 

あの日から、無色だった私の世界に色が付いた。

色を付けてくれたのはお兄ちゃん。

 

お兄ちゃん。

 

私のお兄ちゃん。

 

私の大好きなお兄ちゃん。

 

私だけのお兄ちゃん。

 

これからもずっとずっと私のもの。

 

私だけのもの。

 

だから、私から遠ざける全てのモノは─────許さない。

 

お兄ちゃん、だぁぁいすき。

説明
ブラコンでヤンデレな姉達に狙われる義弟のパロディ作品。
中学生のなのはさん達が社会人のオリ主に全力全壊で病んデレ予定な第一話。
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コメント
理系ヤンデレってコエェーーー!(BX2)
この世界では、魔砲少女になるのかもしなったとしたら・・・ガタガタブルブル(BX2)
流石は白き魔王、高町家の機械系専門娘ですなゲ−ムの腕もさることながらPCのセキュリティ-突破もやってのけるとは・・・病デレしたらここまで・・・でもなのは萌えの人には羨ましいかもwww(brid)
どんなに長いパスワードもフォルダロックもものともしないとは、それどこの鷹? しかし、これはいいヤンデレですね。うん、コエェ……(地方妖怪)
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ヤンデレ 魔法少女リリカルなのは 高町なのは オリ主 

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