『舞い踊る季節の中で』 第29話
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真・恋姫無双 二次創作小説 明命√

『 舞い踊る季節の中で 』

  第29話 〜 策謀の渦に舞う想い -後編- 〜

 

 

(はじめに)

 

 キャラ崩壊や、セリフ間違いや、設定の違い、誤字脱字があると思いますが、温かい目で読んで下さると助

 かります。

 この話の一刀はチート性能です。 オリキャラがあります。 どうぞよろしくお願いします。

 

北郷一刀:

     姓 :北郷    名 :一刀   字 :なし    真名:なし(敢えて言うなら"一刀")

     武器:鉄扇(二つの鉄扇には、それぞれ"虚空"、"無風"と書かれている) & 普通の扇

        :●●●●

     得意:家事全般、舞踊(裏舞踊含む)、意匠を凝らした服の制作、天使の微笑み(ただし本人は無自覚)

         気配り(乙女心以外)、超鈍感(乙女心に対してのみ)

         神の手のマッサージ(若い女性には危険です)

 最近の悩み:最近二人の様子が変だ。無論二人と言うのは、翡翠と明命のことなんだけど、なんと言うか、

         よく分からないけど変なのが分かる。具体的に言うと、時折考え事でもしているのか、ボー

         としているかと思ったら、顔を赤くさせて、なにやら考えを振り払うように、顔だけでなく

         手足を慌てて振り回している事が多くなった。

         もしかして本当に病気かもと、先日のように熱を測ろうとしたら、逆に怒られてしまった。

         うーん、女心は難しい・・・・・・・・

  (今後順序公開)

 

★オリキャラ紹介:

諸葛瑾:

  姓 :諸葛    名 :瑾    字 :子瑜    真名:翡翠

  武器:"双天" 対の双剣

  武力:52(平均的な将を60とした場合)

  智力:81

  政治:89

  家事:92

  魅力:想像にお任せします(w

  焦った時の口癖:『 あうあう 』又は 『 ぁぅぁぅ 』等の類語です

  性格:基本的に温厚で、外見に反して大人の女性

     だが、焦ると地が出てしまう。(朱里と違って、自分を律しています)

     警戒心が強い性格だが、一度心を許されると、親身になってくれる。

     妹がいるため、基本的には面倒見が良く、放っておくと、食事を取るのを忘れる明命を心配してよく

     食事を差し入れていた。

     やはり、妹がいるためなのか、時折人をからかって、その反応を楽しんだり、とんでもない悪戯を仕

     掛ける悪癖もある、だが性質の悪い事に普段が完璧なだけに、周りは怒るに怒れないでいる。

     家事全般は人並み以上に出来、そこらのお店以上と自負していたが、丹陽で知り合った男性の腕を見

     て自信を喪失。 以降こっそり腕を磨いているが、全然敵わないと嘆く毎日を送っている。

     武術は好きではないが、妹達を変態共から守るため、必要最低限身に付けたもの。

     姉妹揃っての発育の悪さをコンプレックスに思いつつも、それを武器にする強かさを持っている。

     自分を子供扱いしない男性が好みだが、言い寄ってくるのは変な趣味の持ち主ばかりで、17の時、現

     実の男(変態の多さ)に愛想が付いた時に『八百一』と出会う。 以降のめり込み、妹達を洗脳する

     も、基本的には周りには秘密にしている。そのうち執筆も行うようになり、掲載されるようになる。

     数年たった現在では、定期的な愛読者もつき『八百一』の主要作家の一人となっている。

     黄巾の乱後、作品が益々洗練され、世に愛読者を急増させる要因となった。

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翡翠(諸葛瑾)視点:

 

 

雪蓮様の命で、蓮華様に一刀君を見送らせた後、私達三人は、そのまま私の部屋で、一刀君と今後の事について話し合っています。

 

「どうやら、杞憂だったみたいね」

「でも、一刀君が戦の空気に耐えられるかどうかは、別の問題だと思います」

 

雪蓮様は軽く考えているようですが、私はそのように気楽に考えられません。

 

「そうだな、だがそう心配する事ではなかろう。

 戦と言うものを一度とは言え、その目で見、空気を吸った。

 その上でのあの言葉だ。

 翡翠と明命には苦労を掛けると思うが、ああ言った以上乗り越えて見せるだろう。

 違うか?」

「・・・・・・・・はい、そうだとは思います。・・・・・・・・思いますが・・・・・・・・」

 

冥琳様の言葉に、私は頷きます。

一刀君なら、乗り越えてくれると、本当にそう思います。

以前明命ちゃんに、私が言ったように、一刀君は弱いままにして置くほど、弱くはありません。

現に、今回も明命ちゃんの件さえなければ、回復はもっと早かったと思います。

でも、それでも、一刀君が深く傷つき、苦しんだ事には違いありません。

そして、もし、明命ちゃんに何かあったとしたら、一刀君は今度こそ・・・・・・・・

 

そう思うと、

また、一刀君が壊れる様を見せられるかもしれないと思うと、

また、それを見守る事しかできないと思うと、

苦しみで、気がおかしくなりそうです。

悲しみで、心が潰されてしまいそうです。

今度こそ、私は、きっと傷ついた一刀君に、縋り付いてしまうかもしれません。

 

「北郷の選択は、お前達にとって、辛い物になるかもしれない。

 そして、それを支えてやれるのは、おまえと明命しか居らぬし、いまさら見捨てる気もあるまい」

「・・・・・・はい」

 

それでも、私は冥琳様の言葉に頷きます。

一刀君を見放す、

一刀君から逃げる、

そんな選択肢は最初からありません。

私は、本当は一刀君を好きになる資格なんて、無いのかもしれません。

一刀君が苦しむと分かっていて、こうして、孫呉のため、私の夢のため、一刀君を戦場に送る事に頷いているのですから。

 

好きな人を戦場に送るというのに、一刀君が自ら戦地へ赴く理由の中に、私が含まれている事に気がつき、一瞬とは言え、心を喜びに満たさせてしまったのですから・・・・・・・・本当に、酷い女です。

 

「翡翠、悩みすぎるのはやめなさい。

 貴女の悪い癖よ」

 

ふいに、雪蓮様から、そんな言葉が掛けられました。

幾ら一刀君のことで悩んでいても、今は大事な孫呉の行く末を話している場、顔に出すような真似はしていません。それなのに今の言葉が出るのは、何時もの勘なのか、それとも同じ気持ちなのかです。

・・・・・・・・雪蓮様、貴女はどちらなのでしょうか?

ですが、そんな私の憂苦な考え等、見通すかのように、

 

厳しい目で、

だけど優しさを含んだ瞳で、

過ちなど無いが如く、強い意志で、

私に、言い放ちます。

 

「経過はどうあれ、一刀は自ら歩むと言った、乗り越えると言った。

 なら、貴女は黙って、それを信じなさい。

 戦場では、明命が一刀の心を守ってくれる。

 一刀の身体は、私を含めた皆が守ってあげる。

 なら、貴女は、一刀が帰り着く先に、港になってあげなさい。

 傷ついた心を癒せる、そして、また安心して出立できる港のような存在にね。

 それが、良い女ってものよ。

 翡翠は、一刀と結ばれたいのでしょ?

 なら、それくらい良い女になって見なさい」

 

そんな、突風のような強い意志で、言葉で、

私の暗愚な考えを吹き飛ばします。

そして、

 

「あぅぁぅ・・・・・・雪蓮様・・・・ぁぅ・・・・今は、そのような事を・・・・・・それに、そうはっきり言われると・・・・」

 

雪蓮様の言っている意味を思わず考えてしまい。

顔を耳まで真っ赤にさせて、慌てる私に、

 

「でなければ、きっと諦められない娘だっていると思うわよ。

 城の女官の娘だけで、あれだけ騒ぎになっているんだもの、ましてや一刀目的で、お店に通っている娘が、

 かなりいるって話でしょ? 半端な覚悟なら、一刀盗られちゃうわよ」

「あ゛ぅっ」

 

雪蓮様は、考えたくない事実を、容赦なく私に叩き付けます。

 

「ふっ、確かに、雄として優れているのは確かだな。

 これで戦で活躍しようものなら、英雄としての素質は十分にあると言えよう」

 

冥琳様まで、そのような事を言われます。

ぁぅぅ・・・・・確かに、一刀君に自覚はありませんが、・・・・・・・・一刀君はかなりもてます。

これで、武勇も得る事となったら、正直考えたくも無い結果が、目に見えています。

今のところ、一刀君の鈍感さと、私や明命ちゃん、そして雪蓮様や祭様が店に出入りしているため、遠慮しているのか、今程度に収まっていますが、一刀君だって何時までも気がつかないままとは限らないし、あの娘達も何時までも黙っているとは思えません・・・・・・・・

 

「まぁ私だったら、待つ女なんて真似はできないわね」

「うむ、雪蓮に良い女の資質は、皆無かもしれんな」

「ちょっ、冥琳っ、それってどういう意味かしら」

「なに、雪蓮の言葉を、そのまま当て嵌めただけだが」

「ぶぅー、何でそういう意地悪な捕らえ方するのよ。

 私だったら、どこにでも一緒に行っちゃうのに、って言ってるだけよ。

 それも良い女の資質でしょ」

 

雪蓮様の言葉に、冥琳様は小さく鼻で笑い(・・・・・・・・なにか話が変な方向に・・・・・・・・)

 

「それを相手が望めばな、でなければ只の変質者だ。

 いや、犯罪者か、雪蓮頼むから警邏の連中に迷惑掛けてくれるな」

「どこの世界に、自分の所の王を変質者として捕まえる官吏がいるのよっ」

「ふっ、それこそ冗談だ。

 雪蓮よ、もう少し自分の立場を考えて冗談を言ってくれ、王が勝手に彼方此方に行かれては、臣下が迷ってし

 まう。 それに、その役は明命であろう」

「そんな事分かっているわよ。 只の例えよっ」

「おまえの場合、冗談がそのまま現実になりそうで、冗談に聞こえんよ」

 

・・・・・・・・何時もの雪蓮様と冥琳様の脱線にしては、長い気が・・・・・・・・それに嫌な感じもします。

私は、意を決して

 

「あの、御二方とも、そろそろ本題の方に戻られてはいかがでしょうか」

 

だけど、そんな私の言葉に、雪蓮様は、目をまたたかせて、

冥琳様は、意外そうな顔をされて

 

「何言ってるの翡翠? 今話している事以外に本題ってなによ」

「あの、孫呉の今後の事について話をしているのでは?」

「翡翠らしくもない。

 北郷が快諾した以上、我等のする事はなど、すでに決まっている、今更何を話し合う事がある」

「そうそう、だから、今はこうして、翡翠と明命をどう応援するかを話あっているんじゃない」

 

・・・・・・・・・・確かに、冥琳様の言うとおりです。

一刀君の方が問題なかった以上、するべき事は決まっています。

・・・・・・・・・・でも

 

「あぅあぅ、そ・そ・そっ、そういう事は本人の前でしないでくださいっ!」

 

私は、今度こそ耳まで真っ赤にさせて、思わず怒鳴ってしまいます。

ぁぅぅぅ・・・・顔が熱いです。

 

 

 

 

 

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蓮華(孫権)視点:

 

 

「蓮華っ、貴女はそこで黙って聞いてなさいっ!」

 

私の激昂を、

姉様の声が、

姉様の覇気が、

そして、強い意思を籠めた瞳が、

私を押しとどめる。

 

姉様は本気だ。

もし此処で、私がこれ以上口を出せば、斬る事すら厭わないつもりでいる。

何故です姉様っ、この者は、今、我等の宿願を、孫呉百年の願いを穢したというのに!

我等の行いを悪と言いきったのにっ、何故、此の者を庇うのですかっ!

 

だけど、姉様は、

一瞬、此方を優しげに見た後、

独白するかのように、

この者の、北郷の言う事を認めた。

そして、思い知らされた。

 

『 悪行か、そうね。

  一刀の言うとおり、自分の利で、いいえ、そうでなくても、戦をしようなんて人間は悪人よ。

  どんな大儀を掲げたところで、民草にとっては、自分の家族を奪う憎むべき物でしかないわ。

  それを相手が無実と分かっていて、戦をしようとしている私は、とんでもない極悪人に違いないわね。

  きっと、死んだら地獄に落ちる事になるでしょうね。

  でも、それでも、今、動かなければいけないと思っている。

  私は、私の守りたいものの為に、此度の戦に参戦する決断をしたわ 』

 

姉様は、そう言われた。

それは自分の犯す大罪だと、

地獄に進んで落ちてみせると、

 

いままで、孫呉の宿願を果たす事こそ、

孫呉の旗の下、民に平和をもたらす事こそ、

正義だと、民の為だと信じてきた。

私も、民のためになろうと、今まで励んできた。

だから、民もそのためなら、戦に出る事など厭わないとばかり思っていた。

 

事実、そうだろう。

侵略されれば、民達は奪われ、犯され、殺される。

 

だから、自分を、家族を守りたいなら、

信じられる王の下、命を預けてくれている思っていた。

だけど、姉さまの独白を聞いて、

私は、その考えが絶対ではないと、思い知らされた。

まるで胸の奥深くに、剣を突き刺されたかのように、

私の心の奥深くに、姉様の言葉が喰い込んだ。

 

確かに、私の考えも間違えではない。

だけど、それは上に立つ者の考え方に過ぎない。

そうでなければ、ついて来る兵に、命令など発せられない。

国のため、家族の為に死んで来い等、命ぜられない。

 

だが、国のため、家族のため、と言ったところで、家族を亡くした者達に、取り返しのつかない傷を負った者とその家族に、そのような理屈が通るわけがない。

ただ、今の世を、家族を戦に出さねばならない身を、嘆く事しか、恨む事しか出来ない。

 

そう、姉様の言うとおり、心の底から、好き好んで家族を戦に出す者などいやしない。

それでも自分達の心を、国のため、家族のため、と誤魔化しているに過ぎない。

無論、功のため、金のため、と言う者も居る。 だがそれとて、辿って行けば、大半が家族に行き当たるであろう。

 

姉様の言っている事は、上に立つ者として、とても大切な事。

兵の、民の前では決して言ってはならない言葉、だけど、決して忘れてはいけない事。

そうして民のために、自ら地獄の炎に炙られる事で、我等は支配階級としていられるのだ。

否、民を守りたいと思うからこそ、自分が地獄に落ちようとも、民を守り導いていく、そのために、支配しているだけに過ぎないのだ。

 

民の嘆きを忘れてしまえば、必ず驕りや慢心を生み、やがて民の事を忘れ、民を絶望させ、国を荒廃させる。

失ってはいけない原初の想い。

 

『 私の後継者なら、孫呉の王族なら、その身にその事を、その想いを、しっかりと刻みつけておきなさい 』

 

そんな姉様の言葉が、聞こえた気がする。

ははっ、情けない。

そんな大事な事を、私は見失っていた。

幾ら、王族としての自覚を持とうとも、己を磨こうとも、それ失くして、何のための王族かっ!

 

分かりました姉様、

姉様の想い、王族として忘れてはならない想い、

わが魂にしっかりと、刻み込みます。

そして、

 

「北郷」

「ん? もしかして、さっきの事まだ怒ってるのかな?

 あれはその、まぁ俺も少し悪かったと思ってるから、その勘弁して欲しい」

 

目の前を歩く、北郷を呼び止めると、そんな見当違いな事を言ってくる。

 

(・・・・・・・・いったい私をどう考えているのかしら、

 もしかして、怒ってばかりの人間だと、思っているのかもしれないわね・・・・・・・・)

 

私はそう考えながら、呆れて、つい半眼で北郷を睨んでしまう。

 

まったく、この男ときたら、私の調子を狂わせる。

妙に鋭いところがあると思ったら、この察しの悪さ、

他にも、袁術の密偵を追い払うためとは言え、あのような面妖な・・・・・・クスクスクスッ

はっ、駄目、つい思い出し笑いをしてしまったじゃない。

本当に私の調子を狂わせる。

 

先程の北郷の暴言、いや苦言、そしてその後の姉様との喧嘩、思えば、何らかの意図が絡んでいる事が分かる。狙ってやっているのか、それとも偶然なのかは、まだ私には分からぬ。

それに、どちらにしても、見極めれなければ、どちらであろうと同じ事だ。

 

だけど、はっきりと分かった事もある。

この男は、本当に、翡翠と明命のために、民のために動こうとしている事、

そしてそのために、孫呉に力を貸してくれる事が、

 

「その事はもういい、ただ、これだけは言っておく、

 先程の貴様の覚悟、今度の戦で、しかと見極めさせてもらうぞ」

 

私は、今放てる覇気をすべて籠めて、目の前の男に叩き付けた。

だが、目の前の男は、私の覇気を受けても、何事も無かったかのように突っ立っている。

 

ふふっ、思春より強いというのだ、私程度の覇気で何とかなるとは思っていなかったが、こうも効果が無いとはな・・・・・・だが、面白い、その態度何時まで持つか楽しみだ。

もし、今度も明命無しに立っていられないようなら、姉様がなんと言おうと、追い出してくれるっ。

だが、逆に、情けなくとも、格好悪くても、己が力で立っていられた時は、北郷、貴様を孫呉の将として認め、我が真名を預けてようではないか、

 

「ああ、俺に何処まで出来るか分からないけど、頑張るよ」

 

北郷は、そう、温かな笑顔を、

こちらの心が温かくなる素敵な笑顔を、

私に向けて、そう優しく告げる

 

かーーーーーっ

 

顔が熱くなるのが分かる。

 

「し・死なない程度に頑張る事ね」

 

とにかく、こんな顔を見られるわけにはいかない。

私は、此処でお別れだと言わんばかりに、北郷に背を向けて、そう言い放つと、もと来た道を歩む。

そして、北郷と別れた場所が見えなくなる場所まで来ると

 

「・・・・・・本当、調子狂わされてばかりね・・・・・・」

 

そんな私の独り言が、溜息と共に、小さく零れ落ちるものの、

不思議と、嫌な気分ではなく、暖かな気持ちでいる事に気がつき、苦笑してしまう。

 

 

 

 

 

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明命(周泰)視点:

 

(あっ、見つけました)

 

各地に散っている部下達からの報告を纏めたものを、祭様に報告しにいったら、祭様の執務室はもぬけの殻、

祭様付きの文官に聞いたところ、城下に出られたとのことで、探しに出た訳ですが、思ったより早く見つけることが出来ました。

 

「お帰りなさいませ、お嬢様」

 

お店に入ると、何時ものように、迎えられますが、今日は客としてきたわけではないので、そのまま奥に席に座る祭様の所に向かいます。

 

「祭様、此処に居られましたか」

「ん、何じゃ明命、おぬしも此処で休憩か」

 

祭様の当然のような発言に、溜息を吐きたくなる気持ちを抑え、

 

「いえ、報告するため、お探し申しておりました。 此処ではなんですので、お城に」

 

そう祭様を催促し、その場を去ろうとしましたが、祭様は一向に動かれません。

それどころか・・・・・・・・、

 

「この者に同じものを」

 

等と、店員に私の分を注文してしまいます。

 

「祭様、どういうつもりでしょうか?」

「べつに、どういうつもりも、報告ならここでも構わぬだろう。

 ほれ、分かったら、早く座らねば、他の客に迷惑であろうぅ」

 

そんな祭様の言葉に、今度こそ、でも小さく溜息を吐きながら、祭様に促されるまま席に座ります。

 

「何じゃ、報告はしないのか? そのために、儂を探して居ったのであろう」

「祭様お戯れが過ぎます」

 

そんな私の苦言も、祭様は、小さく笑い。

 

「おぬしも相変わらず固いのぉ、此処なら、そう心配要るまい」

『それに、近くに密偵が居らぬのも確認済みなのであろう。

 ほれ、とっとと小事は済ませてしまおうぞ』

 

そう、後半は、誰の耳にも入らぬよう、唇だけを動かされました。

 

『幾ら声に出さないからと言って』

『おぬしの席なら、儂以外誰にも見られる心配はあるまい。

 ほれ、とっと話さねば、それこそ不審に思われてしまう』

 

私は強引な祭様に、心の中で大きな溜息を吐いて、

 

『兵達の準備は、明日中には終え、明後日朝には出立できます。

 穏様の準備された輜重隊も、同日の昼には出れるそうです』

『うむ、それで』

 

私の報告に、祭様は頷き先を促します。

そう、此処からが重要です。

 

『各地に散らばった旧臣達の中に一部寝返る者も出ていますが、大方の者達は、雪蓮様や祭様達のお声次第で、

 我等の力になってくれるでしょう。 ですが、気をつけなければいけない一族もおり・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

私は、気をつけなければいけない氏族、豪商達と、

今味方についてくれる一族達の名と、その一族の現状をあげます。

無論、その間、周りへの警戒は怠りません。

幸い、今のところ、祭様の言うとおり杞憂に終わっていますが、このような事、密偵に出ている時ならともかく、あまり気持ちの良いものではありません。

 

「あい分かった。 明命御苦労じゃった」

 

報告を終え、祭様からそんな言葉が口に出ると、私は小さく安堵の息を吐きます。

 

「何じゃ、普段出ている時は、先程以上の事を、空気を吸うが如くやっておるのじゃろぅ。

 あの程度で、何を疲れる事があるというのじゃ」

 

そう言って、小さく笑いながら、可笑しそうに茶を口に含みます。

 

 

 

 

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「そういえば祭様」

「なんじゃ?」

「祭様が、城下に来て、その・・・・・・お酒ではなく、お茶を嗜まれる等とは、こう言っては何ですが意外です。

 それに、このお店は・・・・・・・・」

 

私は、祭様に会ってからの違和感を口にすると、祭様は、面白そうなものを見つけたような目をされて、

・・・・・・・・あっ、祭様のこの目は、危険な感じがします。

 

「なんじゃ、明命は儂に北郷が盗られないかと心配なのか」

「ち・ち・ちっ、違いますっ!」

 

祭様の言葉に、

からかっていると分かっている言葉に、

私は、それでも顔を朱に染めて、そう大きな声で否定してしまいます。

自分の声の大きさに気づいた、私は、慌てて口を手で押さえ、身を小さくさせてしまいます。

うーー、恥ずかしいです。

せめてもと、私は恨みがましい目で、祭様を見つめますが、

 

「はははっ、あの愚直なまでに真っ直ぐだった、明命も成長したのぉ」

 

そう、大きすぎない程度声で、豪快に笑われてしまいます。

やはり祭様には勝てません。

 

「確かに儂は、北郷目当てで来ておるし、おぬし達と違って、溢れんばかりの大人の色気も持っておる」

「う゛っ」

 

祭様の言葉に、私は、祭様の余りある、零れ落ちる程の色気の元であるものを凝視しながら、自分のそれに手を当ててしまいます。

あはぅぅ、やはり私は色気不足なのでしょうか・・・・・・だから、一刀さんは気がついてくれないのでしょうか?

 

「ふふふっ、大人の色気と聞いて、そこを気にする辺り、まだまだじゃのぉ」

 

祭様はそんな私の行動を、楽しげに仰られると、

 

「良い事を教えてやろう、明命の気にするそれだけが、大人の色気ではない。

 其の証拠に、ほれ、おぬしより持っていない翡翠とて、多少なりとも大人の色気を醸し出せておる」

「はぁぅっ」

 

祭様の言葉に、私は新たに、少なくない衝撃を受けます。

確かに翡翠様は、見た目は私より、色々足りませんが、私より大人な感じがされます。

うぅぅ・・・・・・私の努力不足なのでしょうか、でも、大人の雰囲気を身に着けるにはどうしたら・・・・・・

 

「なあに、無理に背伸びをする必要は無い。

 それにのぉ、お主の一番の魅力は、そのまっすぐな心根じゃ。

 お主は、お主のまま、まっすぐ北郷に、想いのまま向かってゆけばよい。

 ほれ、よく言うじゃろう、『当たって砕けろ』と」

 

祭様の言われる事は分かります。

確かに色気でいったら、一刀さんに思いを寄せる人達は、お客の中にも沢山おります。

ですが、一刀さんは顔を赤くするものの、その方達の気持ちには全然気が付いていないようです。

でも、そんな一刀さんに、向かっていっても・・・・・・・・・・

 

「く・砕けたくないです・うぅぅ」

「馬鹿もん、それくらいの勢いで行けと言うだけじゃ、それが嫌なら、黙って引き下がる事じゃ」

「それはもっと嫌です」

 

翡翠様にも言いましたが、もう一刀さんを諦める気にはなれません。

私には、あの人達のような色気もありません、なら祭様の言うとおり、私らしく向かって行くしかありません。

そうやって、もう一度自分を奮い立たせたのが、祭様には分かったらしく、いつかのように優しい目で私を見ています。

私は、その目を見て、自分の考えが、間違っていない事に安心します。

そうなると、次の疑問と言うか、先程の疑問が再び頭に浮上します。

 

「祭様、先程、この店に来るのは、一刀さん目当てとおっしゃっていましたが」

「ああ、そのとおりじゃが、安心せい。と言うか、儂をその辺りの小娘と同じと考えるでない」

「あっ、いえ、その、すみません。

 あの、では何故でしょうか? 私にはその分かりかねますので」

 

祭様に一喝され、私は再度聞きなおすと、祭様は小さく苦笑され、

 

「なに、最初は策殿の件で、一方的に手玉を取られたのが悔しくてのぉ、

 それで、隙を見て一泡吹かせてみせるつもりだったのじゃ」

「さ・祭様っ!」

 

祭様の発言に、私はつい声を上げてしまいます。

だって、祭様が、ずっと、このように付け狙うなど、とても信じられないことだからです。

そんな私の気持に気がつかれたのか、

 

「驚くでない、言ったであろう、最初はと、

 そのような勘違いは、幾らなんでも儂に無礼と言うものだぞ、

 まぁよい、勘違いさせるような物言いをした儂にも非がある」

 

一瞬祭様は、不機嫌な顔をされましたが、すぐに表情を戻され、

 

「まぁ、そんなわけで、北郷の隙を狙っておったのじゃが・・・・・・・・、呆れた事に、隙だらけじゃった。

 あれだけの武を見せておきながら、最初は罠かと本気で疑ったものじゃ、 だが、二日通っても一向に

 変わらぬ」

 

祭様の仰られる事は分かります。

私もそれで丹陽の街で、一刀さんは、ごく普通の人と思ってしまったのですから。

あの時、こちらが、殺気を放った時ですら、一刀さんは一向に変化を見せませんでした。

でも、今思えばそれは・・・・・・

 

「そこで、幾らなんでもおかしいと思うてな、あれ程の使い手が、儂から洩れる敵意に、気づかぬはずが無い。

 そこで三日目とうとう儂は、思い切って、あやつめに聞いてみた。

 じゃが、あやつは涼しい顔で、

 

 『 お嬢様と争う理由が、何もありませぬ 』

 

 とか抜かしおった」

 

そう、言って、豪快に笑われます。

祭様の言葉に、私は、一刀さんらしいと、祭様につられて笑みが浮かびます。

 

「あやつは、儂の事などとっくに気がついておったのじゃ、 もし、北郷が反応を見せたら、儂が動くと分か

 っておったのじゃろう。

 必要としない限り、戦う状況を避ける・・・・・・、兵法として最高の策じゃ、それに、しっかりと釘を刺されたわ」

 

そう言って、祭様は自分の茶杯を、私の茶杯の横に置かれます。

 

「あの、これは?」

「よく見比べて見よぉ」

 

祭様の言葉に、二つの茶杯を見比べると

 

「あっ、祭様の茶杯の方が、小指一本分ほど、高さが低いです。 それに飲み口がありません。」

「ふむ、そのとおりじゃ」

 

私の出した答えに満足そうに頷かれながら、祭様は懐から、布に包まれた小さな陶器製の輪っかを、そっと出されます。

 

「それが低くなった原因じゃ」

「えっ!」

「おそらく、あやつがその時に斬った物じゃろう。

 あやつが机の前から去ってから、儂が茶杯を持ち上げると、それがずり落ちた。

 どうやったか未だに分からぬが、儂に一切気づかれずに、これだけのことをやって見せた。

 そこで儂はようやく気がついた、あやつは隙だらけなんかではない、自然体からいつでも動ける自信があっ

 たのだとのぉ。

 そしてこれは、もし儂から動いて、何の罪も無い客を巻き込むような真似をすれば、儂の首はこうなってお

 るとなぁ、そう無言で警告されたわい。 無論、今思えば只の脅しだったことは分かるがのぉ」

「そ・そんな事が・・・・・・」

 

祭様のお話に、驚愕させられます。

祭様と一刀さんの間に、そのような事があったなんて・・・・・・、

それにこの切り口、とても滑らかです。 陶器をこのように綺麗に切る程の事を、祭様に気づかれる事なくするなんて・・・・・・、まだまだ私は一刀さんの事について、知らない事ばかりです・・・・・・・・

 

「それで、あやつが、優しいだけの男では決して無いと、思い知らされたわい。

 で、肝と一緒に頭を冷やされ、我ながら下らぬ事をしていたと反省をしてのぉ、そうなると、どういった人物

 なのか、俄然興味を持ってのぉ。

 後はこうして見ての通り、この茶杯を儂専用にしてもらって、こうして通っているしだいじゃ」

 

そう言って、他より背の低い茶杯を手にとって、茶を一口啜ります。

 

「ふむ、やはりあやつが淹れんと、数段味が落ちるのぉ、

 いや、これでも十分美味いには美味いのじゃが、やはりもの足りんのぉ」

 

祭様のその様子に、もう、一刀さんと祭様の間に、もう何も確執が無い事が分かり、安心します。

 

 

 

 

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「あの、祭様から見て、一刀さんはどう見えるのでしょうか?」

「ふむ、正直底が知れぬのぉ、

 だが、確かに、翡翠や明命が惚れるのも、無理はないと言う程の男と言う事は分かる」

「はぁぅっ・・・・」

「あやつの持つ雰囲気は、周りの者を自然体にさせる。

 あやつの笑顔は、周りの者を暖かな気持にさせる。

 あれだけ気がつくのは、人の心の傷が分かる、優しい心根があるからじゃろうてぇ」

 

あぅ、祭様の言葉に、一刀さんを褒める言葉に、私は嬉しくなってしまいます。

 

「じゃが、それ故に、女心にあれだけ鈍いと言うのは、もはや、哀れみを通り過ぎて、笑いしか浮かばぬぞぉ」

「はあうっ!」

 

祭様の言われた事実に、

改めて、確認させられた事実に、

私は、悲鳴の声を挙げてしまいます。

其処へ、

 

「その癖に、無自覚に女心を掴むのだけは、長けているのだから、ほんに性質が悪いのぉ」

「ぁぅっ!」

 

追い討ちを掛ける様に、しみじみとおっしゃられます。

 

「以前、あやつに

 

『 儂のような年寄りまで、お嬢様とは、ちと無理がないか? 』

 

 と聞いたら、

 

『 いいえ、お嬢様はお嬢様です。 お嬢様は大変魅力的な上、女性として可愛いらしいところをお持ちです。

  故に、私は、お嬢様と呼ばせていただきます 』

 

 などと、あの笑顔で言いおった。

 さすがの儂も、あれには年甲斐も無く、頬を朱に染めさせられたものよ。

 まったく、そこらの小娘と同じように見られるなど、久しく無かった事ゆえ、不意をつかれたわい」

 

最後の悔しげな言葉とは裏腹に、残った茶を飲み干す祭様は、優しい笑みを浮かべ、その瞳に浮かんだ感情は、とても嬉しそうなものでした。

あうぅぅ、一刀さん・・・・・・

分かっています、一刀さんのその言葉に、他意はないと思いますし、一刀さんの良い処なのは分かります。

分かりますけど・・・・・・・・やっぱり面白くありません。

 

「ふはははっ、子供子供と思っていた小娘がヤキモチとは、成長したものよ・・・・・・

 なに、二人が狙っている獲物じゃ、盗りはせんから安心せい」

「さ・祭さまぁーっ」

 

あぅぅ、からかわれていると分かっていても、つい声を上げてしまいます。

 

「そう怒るでない。 どうやら今日は北郷は休みの日だったようじゃし、そろそろお暇するかのぉ」

「あっ、一刀さんなら今日は、雪蓮様に呼ばれていますから、きっと今頃雪蓮様のところだと思います」

 

 

 

 

 

-7ページ-

席を立とうとした祭様は、私の言葉に、再び腰を下ろし、店員に代わりの茶を頼みます。

やがて、新しい茶が注がれ、それを熱そうに一口すすってから、

 

「・・・・・・そうか、となると用件は、此度の一件であろうな・・・・・・、おそらく公謹めは、北郷が賛同しなければ、

 あ奴を将の枠から外し、天の知識のみを役立てようと、思うておるじゃろう」

「そ、そんなっ」

「当たり前の事じゃろう、幾ら武があり智があろうとも、戦場で役に立たぬのなら、それ以外で役に立っても

 らうしかあるまい。それに、その方が奴にとっては苦しまずに済むというもの、違うか」

 

確かに、祭様の言うとおりです。

冥琳様辺りは、そう考えてもおかしくありません。

それに、確かにその方が、一刀さんにとって幸せだと思えます。

一刀さんは幾ら強くても、頭が回っても、戦に出るには優しすぎます。

 

「もっとも、儂はあやつが、今回の話しを断るとは思えぬがな」

「えっ?」

「なんじゃ、お主もそんな不思議そうな顔をしおってからに」

「あの、何故そのようにお考えになられるのでしょうか?

 一刀さんは好戦的な方ではありませんし、此度の一件に自ら賛同するとは考えにくいです」

 

祭様は、私の言葉に、小さく溜息を吐いて

 

「その様子だと、おそらく翡翠も同じように考えているのかも知れんな・・・・・・、

 まったく、一人前の顔をしておるが、公謹同様、まだまだ穴の青い小娘という事か、まだまだ隠居は出来そ

 うも無いのぉ」

「えっ、あの?」

「人を見る目が、まだまだ足りんと言う事じゃ、

 まぁ子瑜の奴は、北郷が罪の意識に苛まされている姿を、間近で見て来ているからのぉ、目を曇らせていて

 も仕方ないとは言えるが、策殿をはじめ、小娘共はまだまだじゃな」

「う゛っ」

 

祭様の言葉に、思わず呻いてしまいます。

色々問題もある方ですが、孫呉の生き字引と呼ばれるだけあって、こう言った事に、嘘はお付になりません。

 

「言ったであろう、優しいだけの男ではないと、

 あやつは強くなろうとしておる。 それも、お主等二人の為にのぉ・・・・・・・・、

 気がついておるか? お主達二人を見る目と、他の者を見る目が全然違う事に」

「ぁぅ・・・・その義妹みたいに見られていると言う事でしょうか?」

「馬鹿もんっ!

 確かにお主を見る目には、それも含まれておるかもしれんが、儂が言っておるのは、その奥にあるものじゃ、

 暖かく優しげな目をしておるが、あれは己より大切な者を見る目じゃ、ああいう目をしている者は、己が身

 に代えても大切な者を守り抜くじゃろう、男にあのような目をさせるとは、お主等もなかなか罪作りよのぉ」

「・・・・・・ぁぅぅぁぅ・・・・・・」

 

あぅ・・・・・・祭様の言葉に、今度は頭の中まで熱く、意識が白くなっていくのが分かります。

一刀さんが私達を大切にしてくれているのは知っていましたが、祭様に此処まで言わせる程のものとは知りませんでした。

そしてその事が、私の心の中を、暖かく、優しいもので満たしていきます。

お日様を浴びたお猫様に、いっぱいモフモフ出来たときの感覚に似ています。

でもあれより、心の奥まで・・・・・・・・、私の心の闇の部分まで暖かくしてくれます。

・・・・・・あぅあぅ、

 

でも、もし祭様の言う事が本当なら、

 

「なら一刀さんが、今度の話を受けた場合は、私と翡翠様のためだと?」

「他に理由はあるまい、まぁあやつの事じゃ、民を守ると言う理由も含んでおるのじゃろうが、決め手にはな

 らぬ、あやつが幾ら心優しくても、此度の様な戦に出る程の義理はあるまい。・・・・・・明命、あやつが心配か」

「・・・・・・・・・・・・・・はい、此度の戦、一刀さんにとって大儀はありません。 一刀さんの気持は嬉しいのですが、

 そのような気持で戦に出ては、今度こそ、戦の現実に耐えられないのではと・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・まぁ、心に傷は負うじゃろぅ、またお主達に負担も掛けるじゃろう。 じゃが、そこは信じてやるが

 良い」

「・・・・・・ですが・・・・・・」

「お主が、あやつを信じてられなくてどうする。

 あやつは、お主達があそこまで強く育てたのじゃ、そのお主達が、あやつの心の強さを、成長を信じられな

 くてどうするのじゃ」

「・・・・・・私達が育てた?・・・・・・」

「そうじゃ、あれ程心の病に陥ろうとも、そこから立ち直ったのは、お主達がいたからじゃ、

 今までは、依存に近かったが、それがお主達と言う巣で守られ、育ち、自らの力で、羽ばたこうとしておるの

 じゃ、・・・・・・なら、温かく見守ってやるべきではないかと、儂は思うとるぅ」

 

祭様の言葉が、私の心の奥に、静かに、自然と溶け込んで行きます。

それはたぶん、祭様の言葉が真実だと感じられたからです。

確かに祭様の言われるとおりです。

今はまだ危なっかしくても、一刀さんは、歩み始めました。

それは、賊討伐の時、一刀さんが見せ始めていた事。

一刀さんは、今大きく成長しようとしている時なのかもしれません。

なら、不安を表に出して、一刀さんの足枷になるべきではありません。

 

「明命、おぬしは、あやつが安心して羽ばたけるよう、道を照らす灯火になってやればよい。

 あやつは、まだまだどう転ぶか分からぬひよっこじゃ、お主の真っ直ぐな心根で、お主の力で、あやつが

 道を間違えぬよう、道を照らしてやるが良い」

「はいっ」

 

そうです、私に出来るのは、一刀さんが闇に落ちてしまわないように、道を踏み外してしまわないように、近くで、見守る事です。

無論、一刀さんのところまで敵をやったりはしません。

やっぱり一刀さんは、笑っている方が似合いますから、私は、私のできることで一刀さんを守るだけです。

一刀さんの力になれなくても、一刀さんが落ち込んだ時、手を繋いであげる事くらいは出来ます。

たぶん、それが一番大切な事だと、思えるからです。

 

 

 

 

-8ページ-

「ふふふっ、戦から帰ってきたお主等の仲が、どう進んでおるか楽しみじゃわい」

「はぁぅわっ!」

 

そ・そうでした、それがありました。

・・・・・・でも

 

「あの祭様、行軍中にそれは不謹慎では・・・・・・・・」

「何を言うとる、男と女の色事に、戦中も何も無いわっ

 それに、ここで攻勢に出ねば、ほれ、それこそお主より色気のある連中に盗られてしまうぞ。

 色事自体が戦のようなものじゃ、此処で怖気つくような者に、孫呉の女の資格なんぞ無いわっ!

 うむ、決めた。 お主達が此度の戦から帰ってきた時に、少しでも仲が進展しておらぬようであれば、儂自

 らあやつを、誘惑してくれよう。

 なに、あれ程の男、そうは居らぬし、明命が勝負せぬのなら、儂が誘惑しても文句はあるまい」

 

祭様は、そう言って、面白げにこちらを見つめ、私の反応を楽しんでいます。

あうぅ、祭様の事ですから、きっとからかっているだけなのでしょうが、もし何の進展もなければ、本当にやりかねません。

そして、そうなったら、きっと祭様の豊満な体を武器に、無理やり押し倒したりしそうです。

きっとあの豊満なお胸で、一刀さんの・・・・・・・・

 

ぶんぶんっ

 

思わずその光景を具体的に思い浮かべ、落ち込んでしまいそうになる自分を、首を振って強引に振り払います。

これは祭様なりの応援です。

私が一刀さんと少しでも進展すれば、手を出さないと言っているんです。

それに、私と一刀さんが、もし、む・む・む・結ばれれば、それは一刀さんにとって、この世界で生きる力になってくれると思います。

 

翡翠様には、抜け駆けするようで悪いですが、此処は任務上の役得と言う事で、先に一刀さんに、想いを告げてみせます。

真っ直ぐ、私の想いの全てを、一刀さんに告げてみせます。

 

一刀さんが私の思いを受け止めてくれるかは、分かりませんが、望みが無いわけではありません。

 

そう思った時、

 

『おぬし等も、いつかは好きな男が、出来るやも知れん。

 もし本気に好いた男が出来たなら、決して逃すな、とにかく、押して押して押しまくれ、』

 

ふと、昔、祭様の言われた言葉が頭を過ぎります。

 

祭様の言うとおりです。

 

気づかれなくたって、

 

たとえ想いが叶わなくたって、

 

何度でも一刀さんに挑んでみせます。

 

そして、必ず振り向かせてみせます。

 

孫呉の女は、一途なのですから、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

-9ページ-

あとがき みたいなもの

 

 

こんにちは、うたまるです。

  第29話 〜 策謀の渦に舞う想い -後編- 〜 を此処にお送りしました。

今回は、中編の裏側を舞台にしてみました。

例の如く時間系列は無視しまくった演出ですが、私的にはこういう演出は結構好きです。

さて、今回二人は、雪蓮と祭に励まされ、更なる覚悟を決めました。

まぁ一刀とは、覚悟を決める方向性が違いますけど(w

 

そして、書き終えて、まず最初に思ったことが、蓮華・・・・・・二人に喰われてしまったな、哀れな・・・・・・

 

さて、ついに、一刀のもう一つの武器が、ほんの少しだけ出ました。

どのような武器なのか、そして、今後いつ出てくるのか、また、今回の話だけで正解を出す方がいるのか?

私自身も楽しみにしているところが在ります。

 

さて、次回は、いよいよ反董卓軍集結場所に、舞台を移す予定です。

では、頑張って書きますので、どうか最期までお付き合いの程、お願いいたします。

説明
『真・恋姫無双』の二次創作のSSです。
明命√の作品となります。

一刀の覚悟を聞いた翡翠と雪蓮達は何を思う・・・・・・、
そして、祭が明命に語る一刀との出来事とは・・・・・・
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コメント
メッセ様、……すみません。どうも私には、その言葉のイメージが強くて(汗 そして、それは祭さん相手に禁句です(ぉ(うたまる)
祭のセリフにやけに「のぉ」が多い気がします。これじゃおばあちゃんのようだ(メッセ)
NEKO様、はい√は決まっていますが、一刀から種馬スキルは外せないでしょう(w さぁこれからどれだけの人間がその犠牲になるか見守って下さればと思います(うたまる)
祭さんの言葉は深いねぇ。流石って感じですね(^^)しかし、√があるとは言えそこは「〇〇の種馬」のスキル全開ですね(笑)(乾坤一擲)
レイン様 「孫呉の父」ですか、 それを言ったら、一刀のポテンシャルは「大陸の父」になれますよ(w あっ、そういえば無印は殆どそれでしたねぇ(うたまる)
今はまだ辛うじて翡翠ちゃんと明命ちゃんルート…でもなぁ…一刀君だしなぁ…『孫呉の父』になっても可笑しくないような気が…現に蓮華さんにもフラグ付いたっぽいし、やっぱりどこまで逝っても一刀君は一刀君と言ったところでしょうか?祭さんが…『あの』祭さんが茶を!?それだけでも他の『外史』では見られない光景!?(レイン)
血染めの黒猫様 一刀の成長を、現段階で、何処まで持っていくのか、見極めの難しいところですが、面白い作品に出来たらと思っています(うたまる)
ブックマン様 明命がどのような頑張りを見せてくれるのか、そしてそれが叶うのかは、今後の展開を、ぜひお待ちください。(うたまる)
積極的な明命の頑張りも楽しみですが、一刀の心の成長が楽しみです。(血染めの黒猫)
積極的な明命もいいですね〜♪(ブックマン)
自由人様 はい、やはり私のイメージ的には、孫呉の女は情熱的というイメージがあるので、それを出してみました。さぁ、一刀は貞操を守る事が出来るのか(違w       何時も誤字報告ありがとうございます。(うたまる)
田仁志様 はい、主人公とヒロイン達が共に成長していく姿を、これからも書けたらと思います。(うたまる)
Night様 はい明命の目を通して、祭らしい大人の部分を出せたらと思い描きました。た(うたまる)
ヒトヤ様 早速は意見させていただきましたぁ。素晴らしいイラストでした。今後のネタに使えそうです(マテ(うたまる)
kyowa様 本当にそうなるかは、今後の展開次第になっています。どうなるかお楽しみください(うたまる)
jackry様 ショートメールありがとうございます。 解答はそちらにて(w(うたまる)
御疲れ様です。どうやらすでに蓮華との関係は良好…ちょっとしたデレも垣間見れて、明命の恋の指南役も名乗りを上げようとする(かもしれない)とあって前途多難ですね(汗 そして『孫呉の女は、一途』の締めにグッときました。(自由人)
御報告 5p:際様に一喝され→祭様 祭様のお話に、驚愕されます→驚愕させられます 7p:おそらく翡翠も同じように/まぁ子瑜の奴は→どちらで統一? あやつを信じてられなくてどうする→信じてやれなくてor信じられなくて ではないかと?仕様でしたらすみません。(自由人)
更新お疲れ様です。人物たちの心の成長が伝わってきて、いつもながら面白いです♪♪次回の更新も楽しみにしています。     明命の口癖は「はぅぁ」ではないでしょうか?わざとでしたら本当にすみません(>_<)(ペンギン)
お疲れ様です。心の成長が見える、そんなお話でした。祭さんがかなり魅力的に書かれていた今回、次回も楽しみです(Night)
心配ないよ明命、天空太一さんの明命のイラストを見れば十分色気あるよ。(ヒトヤ)
やっぱり祭さんは良い女ですなぁ。しかし、女心に鈍感な一刀。惚れさせるだけ惚れさせて、後は正ヒロインのとこに行ってしまうんですからね(笑)(kyowa)
ジョージ様 祭は冥琳とは違った大人の魅了を見せてくれるので、書いてて楽しいですが、反董卓連合でも参戦しないので、当分お預けになってしまいます(うたまる)
ワカンランカ様 コメントありがとうございます。 声援を糧に頑張って執筆したいと思います(うたまる)
gmail様 蓮華は、まだいい方ですよぉ。 登場しているのに、視点があるだけましだと思います。 まぁ冗談はさておき、蓮華をどう成長させるかも、楽しみの一つとなっていますので、温かい目で見守ってやってください(うたまる)
ふ〜む、相変わらずここの一刀は物凄いですね・・・・祭さんも非常に魅力的で、とてもよかったです。(峠崎丈二)
更新お疲れ様です! 次の更新楽しみしております!(ワカンタンカ)
明命の口癖に異変がっ!!この作品での蓮華の空気っぷりは最高ですね。(gmail)
司 葵様 はい、祭は愛すべき孫呉の宿将です。 困った人ではあっても憎めない方ですよねぇ(うたまる)
truth様 誤字報告多謝。 明命も翡翠も孫呉において、マスコットキャラである事には違いありませんね。 えっ、自称マスコットキャラがいると? まぁまだ出てきていない娘の事を言っても仕方在りませんので(ぉw(うたまる)
samidare様 コメントありがとうございます。 期待に応えれるよう精進していきます(うたまる)
う〜〜む さすが呉の宿将貫禄が違いますなぁ(司 葵)
更新お疲れ様です。これからの展開に期待しています。(samidare)
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