極楽幻想郷(仮)
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遠くで聞こえていた蝉の鳴き声が聞こえなくなった。

何処まで続くのかと、長い階段を一歩一歩進みながら、流れる汗を腕で拭う。

既にペットボトルの水も空になり、この先に井戸があることを祈りながら夏の日差しの中、男はただ階段を上り続ける。

「一体、何の意味が……あってこんな長い、階段なんか、作りやがったんだ……」

息が途切れ途切れになりながらも、途中で止まらないように愚痴を呟く。

階段下の鳥居を潜ってからもう何時間も経ったんじゃないか、と疑いたくなるほど気が遠くなる道程だ。

背中に背負う自身の身の丈よりも倍の大きさのリュックを背負い直し、喝を入れる。

もうすぐ神社に辿り着く、その思いが再び男の身体を動かす。

やがて、最後の鳥居が近くへと見えてくると同時に足の速度を速める。

最早、急な階段である事を気にせず、ただまっすぐに突っ切る。

「もうすぐ、もうすぐや……」

終わりが見えてきて、自然と顔がにやけてくるのを根性で止め、最後の鳥居を通過した。

そして鳥居を通過したその先に、目的の物が――

「水をくれぇっ――あれ?」

「……はぁ?」

右手を大きく天へと突き出し、その場で停止する。

パチパチと瞬きしながら全方向を確認すると、怪訝な表情を向ける少女を発見する。

この神社の娘さんだろうか、と思いつつもとにかく喉の渇きを潤すため即土下座。

「……すいません、水と塩ください」

「素敵な賽銭箱ならそこよ。用意してあげるから参拝でもしてなさい」

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「神隠し、ッスか?」

「そうよ。この辺りで頻繁に起こっているらしいわ」

何時も通りに美神除霊事務所へ顔を出した横島に待っていたのは熱烈なキス……ではなく依頼書との睨めっこだった。

顔面に叩きつけられた依頼書を受け取り、内容を確認するとふと疑問に思ったことがあり、それを口に出す。

「そもそも、美神さんが神隠しの依頼を受けるって何か変スね。

そんなにギャラが高くなさそうですし」

「失礼ね! 私だって良心というものがあるわよ!」

「で、本音はおキヌちゃん?」

「昨日電話があったんですよ。依頼書に書かれた報酬の3倍払う、って」

おキヌへと問いかけるとあっさりばらされジト目を美神へと向ける。

横島の視線に美神は顔を背け口笛を吹く。

「……美神さん、隊長に言われて改心したんじゃ……」

「私がママの説教くらいで悔い改めるような女に見える?」

「ですよねー」

その豊満なバストを揺らして胸を張る姿に横島は釘付けになりながら、チラリと横を向く。

二コリ、と彼女は笑い、そのまま人差し指を立てて唇へと当てた。

続いて視線をおキヌへと向けると、多少の怒りのオーラを見せながらも頷いた。

とりあえず目の前で笑っている美神に非情な現実を教えようと横島は声を掛ける。

「あの、美神さん?」

「何よ、横島クンの報酬は2割よ、2割!」

「……隊長いらっしゃってますよ?」

「え″」

瞬間、先ほどまでの強気の表情は一気に凍りついた。

ギギギ、と錆びついたブリキの様な音を立てながら首を横へと向けると、そこには隊長と呼ばれている女性――美神美智恵がワラッテイタ。

滝の様な汗を流す美神の肩に、優しく手を置く美智恵は、そのまま強く握る。

「い″い″い″い″っ!?」

「令子、少しあっちへ行きましょうか?」

腕に抱いたひのめをおキヌへと預け、悲鳴を上げる美神の肩を掴んだまま奥の部屋へと指差す。

それと同時に天井からアームが現れ鍵を美智恵へと渡される。

「じ、人工幽霊一号!? う、裏切ったわね! ママと同じく私を裏切ったわね!?」

『親子のじゃれ合いを邪魔するほど、無粋な真似はしたくありませんので』

天井を恨めがましく美神が睨むがズリズリと美智恵に引き摺られ、奥の部屋へと連行される。

後に残されたのはいやぁぁぁぁぁぁぁぁという断末魔の悲鳴と、そんな親子に手を振るおキヌに抱かれた次女の姿だった。

「……さて、俺は依頼地に行って来るよ、おキヌちゃん」

「はい、行ってらっしゃい。

今回は私やシロちゃん達が付いて行けなくてすみません……」

「いいって、いいって。人工幽霊一号、隊長に程々になって伝えといてくれ」

『善処します』

助ける気は毛頭無い、と言うかあの親子の間に入ると命の危険が伴う。

奥の部屋から聞こえてくる悲鳴を無視して横島は荷物を担ぎ事務所を出て行った。

それが数日前のことである。

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「で、それがアンタがここに来た経緯?」

「おう。神社を調べようと階段を上ってここに来たんだ」

あの後なけなしの財産から数枚ほど50円を取り出し泣く泣く参拝を決行した横島。

奥に行った筈の少女が遠くからジーっと賽銭を入れる様子を見ているような気がして震えながらも50円とお別れした。

そして50円とお別れする瞬間を見図るかのようにお茶を持って登場した少女に、横島は恐怖の片鱗を味わった気がした。

「そういや、君の他に人はいないのか?」

「居ないわよ。ここには私一人しか」

そっぽを向いて答える少女に、ふーんとそのままお茶を啜りながら横島は呟く。

「そっかー、お姉さんとかいないのかー……いたら美人なんやろーなー」

「美人、ねぇ……アンタそう言うのにしか興味無いの?」

「男だったら美人美女美少女に興味があるのは当然のことやろうが!」

あっそと力説する横島を無視して少女はお茶を啜る。

無視ですか、そうですかと意気消沈した横島も力説して喉が渇いたのでお茶を啜る。

「……にしても変な話ねぇ。結界もちゃんと張ってあったはずなのに、破られた様子も無いし通過した様子も現れないなんて」

「へ? 結界?」

何やら雲行きが怪しくなるような単語が聞こえ、恐る恐る少女の方へと顔を向ける。

「そうよ、結界。

……まさかおかしなことしたんじゃないでしょうね……?」

「ち、違う! ワイは何もやってない!

ただ結界の弱いところを見つけて『勝手口』を作って入っただけ「それがおかしなことだって言ってるのよ!」ぎゃほーぅ!?」

目で追えない程の鋭いアッパーが横島の顎を捉え、そのまま上空へきりもみ回転しながら横島は地面へと突き刺さった。

「ぐふ……いいパンチだったぜ……」

生まれたての小鹿のようにブルブルと身体を震わせながら立ち上がる横島に冷ややかな視線を浴びせながら少女は溜め息を吐いた。

「……全く、ホントどうしてくれるのよ……」

頭痛の種が増えたと言わんばかりに米神抑える少女――博麗霊夢はそう呟いた。

これが幻想郷の異変を解決する『博麗の巫女』と、あらゆる意味で規格外の男の初めての出会いだった。

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初めまして、てゐがーと申します。

GS美神と東方のクロスオーバーが殆ど無い→なら書いてみよう!という単純な行動で書き始めこのまま倉庫入りするのもアレだと思い、投稿してみました。

文章構成とか内容とか酷いと思いますが出来れば続けていきたいです。

こんな雑な文章を読んでくれてありがとうございました。

説明
GS美神と東方のクロス物に憧れて自分で書いてみました。
矛盾している点もあると思いますができれば気にしないで頂けると助かります。
続くかどうかは…未定です。
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コメント
>GS美神と東方のクロスオーバー 凄いドンピシャで嵌りました!どうも初めましてm(__)m横島君の親切心が空回る微妙な位置と霊夢の小庶民的な金銭感覚が微笑ましいですね♪(兼六)
>yhさん 応援ありがとうございます!横島が横島っぽく見えるように頑張ります!(てゐがー)
期待しています。頑張ってください。(yh)
>ちゃあさん 応援ありがとうございます!(てゐがー)
>ii-koさん ありがとうございます。ご期待に添えるよう頑張ります!(てゐがー)
GSと東方のクロスは確かに少ないんですよね〜。応援しています!!(ちゃあ)
おぉ!原作っぽい横島ですね。GSと東方は意外と相性が良さそうですね。続き楽しみにしています(ji-ko)
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GS美神 東方 横島忠夫 

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