『舞い踊る季節の中で』 第35話
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真・恋姫無双 二次創作小説 明命√

『 舞い踊る季節の中で 』

  第35話 〜 深く眠る御遣い、悲しみに舞う命 〜

 

 

(はじめに)

 

 キャラ崩壊や、セリフ間違いや、設定の違い、誤字脱字があると思いますが、温かい目で読んで下さると助

 かります。

 この話の一刀はチート性能です。 オリキャラがあります。 どうぞよろしくお願いします。

 

北郷一刀:

     姓 :北郷    名 :一刀   字 :なし    真名:なし(敢えて言うなら"一刀")

     武器:鉄扇(二つの鉄扇には、それぞれ"虚空"、"無風"と書かれている) & 普通の扇

        :●●●●

     得意:家事全般、舞踊(裏舞踊含む)、意匠を凝らした服の制作、天使の微笑み(ただし本人は無自覚)

         気配り(乙女心以外)、超鈍感(乙女心に対してのみ)

         神の手のマッサージ(若い女性には危険です)

北郷流舞踊(裏舞踊):設定の一部を公開

    神楽を発端とする流派で、その色を強く引き継いでいる。 途中宗教弾圧や権力者に利用された事も

    あり、裏舞踊の形で流派の存続を図った時期もあったが、その時代においても流派の理念は失われる

    事なく研鑽を続けてきた。 そして、その理念の下、流派や舞などに拘らず、多くのものを取り入れ、

    昇華させていき、現在では、極僅かながら、周囲の自然界の"氣"を操るに至る。

 

    舞に使うものも、鈴・扇・笹・榊・幣・帯だけではなく、剣・槍・弓等様々の物が使われる。一刀曰く

    「一つを覚えれば、後は心を知ろうとすれば、自ずと理解できる」との事で、それを言うだけの実力が

    あると一門も認めており、父を差し置いて、継承者筆頭候補となっており、主に扇子を愛用している。

    また、裏舞踊の一環として、祖父に強引に●●●●を習得させられたが、一刀は裏舞踊の色の強いこの

    道具嫌っている。 北郷流の理念に関して一刀は、「馬鹿馬鹿しい考えだと思うけど、高みを目指そう

    とするのは悪い事じゃないと思う」と語っている。

    一刀が居なくなった後、途絶えたかどうかは不明。

  (今後順序公開)

 

★オリキャラ紹介:

諸葛瑾:

  姓 :諸葛    名 :瑾    字 :子瑜    真名:翡翠

  武器:"双天" 対の双剣

  武力:52(平均的な将を60とした場合)

  智力:81

  政治:89

  家事:92

  魅力:想像にお任せします(w

  焦った時の口癖:『 あうあう 』又は 『 ぁぅぁぅ 』等の類語です

  性格:基本的に温厚で、外見に反して大人の女性

     だが、焦ると地が出てしまう。(朱里と違って、自分を律しています)

     警戒心が強い性格だが、一度心を許されると、親身になってくれる。

     妹がいるため、基本的には面倒見が良く、放っておくと、食事を取るのを忘れる明命を心配してよく

     食事を差し入れていた。

     やはり、妹がいるためなのか、時折人をからかって、その反応を楽しんだり、とんでもない悪戯を仕

     掛ける悪癖もある、だが性質の悪い事に普段が完璧なだけに、周りは怒るに怒れないでいる。

     家事全般は人並み以上に出来、そこらのお店以上と自負していたが、丹陽で知り合った男性の腕を見

     て自信を喪失。 以降こっそり腕を磨いているが、全然敵わないと嘆く毎日を送っている。

     武術は好きではないが、妹達を変態共から守るため、必要最低限身に付けたもの。

     姉妹揃っての発育の悪さをコンプレックスに思いつつも、それを武器にする強かさを持っている。

     自分を子供扱いしない男性が好みだが、言い寄ってくるのは変な趣味の持ち主ばかりで、17の時、現

     実の男(変態の多さ)に愛想が付いた時に『八百一』と出会う。 以降のめり込み、妹達を洗脳する

     も、基本的には周りには秘密にしている。そのうち執筆も行うようになり、掲載されるようになる。

     数年たった現在では、定期的な愛読者もつき『八百一』の主要作家の一人となっている。

     黄巾の乱後、作品が益々洗練され、世に愛読者を急増させる要因となった。

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明命(周泰)視点

 

「一刀の容態は?」

「只の疲れから来る、疲労だそうだ。 医者は、暫らく寝かせておけば目を覚ますと言っている」

 

雪蓮様と、冥琳様の会話に、私は安堵の息をつきます。

舞の最後、一刀さんは、静かに倒れました。

そのあまりの静けさに、最初は、舞の動きの一端なのだと思っていましたが、違いました。

一刀さんは、気絶をされていたのです。

冥琳様は、舞を終えて気が抜けたのだろうと言っておられましたが、それでも、気絶した事に、倒れた事に違いありません。

 

きゅっ

 

そっと、まだ眠っている一刀さんの左手に手を重ねます。

こうして眠られていても、暖かい温もりが伝わってきます。

一刀さんの優しさが、伝わってきます。

 

こうして、倒れられる程、一刀さんは、頑張ったのです。

慣れない戦の空気を、惨状を、必死に受け止め、

私達が勝つために、力を尽くしたのです。

 

 

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『 明命、無理をさせてごめん 』

 

水関を落とし、敵の後退を見送った後、入城してくる一刀さん達を迎えた私に、一刀さんは、そう言いながら抱きしめてくれました。

分かってます。 これは、一刀さんが家族として、私の無事を確認しているだけなのだと言う事は、

それでも私は嬉しく感じてしまいます。 家族として、一人の女として、その行為を嬉しく感じてしまいます。

 

そして、その嬉しさも、一瞬の事・・・・・・

一刀さんが、私の顔を見つけた時の笑顔、そして、抱きしめてくれる時に見せてくれた笑顔、

悲しい笑顔、そして酷く憔悴した笑顔でした。

前より酷いとは思いません。

例えそうだとしても、私には、一刀さんが前より大丈夫と思えるからです。

一刀さんが私に見せた目、 其処に在ったのは、確かな想い。

その瞳に灯る意志は、前より、いっそう光を増していました。

 

そして、その光からは、一刀さんの変わらぬ優しい温もりを、しっかりと感じる事ができたからです。

今、こうして、抱き合って伝わる温もりよりも、 一刀さんの心の温もりを、はっきりと、感じる事が出来たからです。

 

一刀さんの体は、小さく震えています。

きっと怖かったのだと思います。

人が死ぬのが、

人を殺すのが、

そして、一刀さんの策で、指示で、人が殺しあうのが、

とても怖かったのだと思います。

 

優しく、温かい人、

本来ならば、こんな戦場なんて似合わない人です。

それを、私が引き込んでしまった。

そして、そんな私を守りたいと思ってくれている。

本当に、何処までも優しい人です。

 

一刀さんが、少しでも心が温まるように、

一刀さんが、少しでも苦痛が和らぐように、

一刀さんが、少しでも勇気が持てるように、

一刀さんが、少しでも救われるように、

 

優しく、そして力強く、私の想いの全てを籠めて、

一刀さんを抱き返します。

 

 

 

 

 

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一刀さんと無事再会した後も、一刀さんは、孫呉の未来のために、頭を働かせました。

雪蓮様達に、動いて貰うために説得し続けました。

私も、手伝える事は手伝いたかったのですが、雪蓮様達に、一刀さんに付いている様に言われてしまいます。

 

そして、その夜、私は一刀さんと一夜を共にしました。

 

別に何かがあったわけではありません。

私の我が儘と言う形で、私が無理やり一刀さんと手を繋いで眠っただけです。

一刀さんが少しでも、気が紛れるように、私の温もりが伝わるように、そう思っただけの事です。

ですが、そんな私の行動に、一刀さんは、苦笑しながら、

 

『 ありがとう 』

 

そう言って、あの悲しみを抱えた笑顔を向けてくれました。

私は、涙が零れそうになるのを堪えながら、そんな顔知られまいと、慌てて一刀さんの胸に顔を押し付けます。

そして、そのまま、ただ眠るだけの夜を過ごしました。

 

私は、昼間の疲れもあって、一刀さんの温もりと匂いに抱かれたまま、眠ってしまいましたが、どうやら一刀さんは、あまり眠れていないようです。 一刀さんから感じる辛さは、昨夜よりは良いようですが、疲労の色が抜けていません。

 

そういう訳で、一刀さんは、雪蓮様より埋葬を手伝う事を禁じられ、その代わり埋葬が済むまで、虎牢関や洛陽での対策のため、穏さんや冥琳様と話し合われたり、天の知識を纏められたりしていたようです。

本当は、休まれた方が良いと思うのですが、

 

『 今の一刀に何を言っても無駄よ。

  目の行き届く所に置いて、それとなく気を紛らわせる事ぐらいしかできないわね 』

 

雪蓮様の言う事は分かります。

確かに、今の一刀さんに、休むように言っても、きっと受け入れてくれないでしょう。

翡翠様なら、何とか一刀さんを説得できるのでしょうが、私にはそんな力はありません。

ただ、ついていてあげる事しか出来ないのです。

 

そして夕刻、一刀さんの鎮魂の舞いを始めるその時まで、一刀さんに付き添う事にしました。

せめて、一刀さんの心が、少しでも安らぐように、何時かのように、手を握ります。

周りに集まってきている兵士達、そして、私達に力を貸してくださっている一族の代表者、

皆が、この埋葬に、そしてこれから行う鎮魂の舞に納得しているわけではありません。

中には、雪蓮様と冥琳様を怒鳴りつけた方もいます。

ですが、それでも雪蓮様達は説得し続けました。 それでも説得できなかった方は、この舞の後で聞くと、雪蓮様は言いました。 つまり、賀斉様を始めとする反対派を説得できるかは、一刀さんの舞いに掛かっていると言えます。 

それでも、以前に一刀さんの舞を見た兵士達が、まだ見た事のない兵士達を誘って集まってきています。

そんな兵士達の様子に、見るまでもないと、頑なだった一族の代表者も興味が引かれ、来られたようです。

そして、山に陽が掛かり始めた頃、

 

『 もう大丈夫だから、十分勇気を貰ったから 』

 

一刀さんは、そう言って、私に離れるように促します。

私は、もう一度一刀さんの手を強く握った後、一刀さんの元を離れ、雪蓮様の元に向かいます。

そして、雪蓮様の横に居るのが、曹操達である事に気がつき、私は瞬時に、心を幼平に切り替えます。

何しに来たかは知りませんが、もし一刀さんの邪魔をするようであれば、容赦する気はありません。

そう考えていると、

 

『 明命、構わないから放って置きなさい。 客でもないけど敵でもないわ 』

 

雪蓮様の命が飛んできました。

たしかに、後ろの二人はともかく、曹操がこの状況で、馬鹿な真似をするとは思えません。

私としては、雪蓮様がそう命じ、一刀さんの邪魔をしないのなら、態々こんな時に関わりたい相手ではないので、雪蓮様の言うとおり放置する事にしました。

 

そして、一刀さんの舞が、篝火の松明が爆ぜる音が響く中、ゆっくりと始まりました。

 

 

 

 

 

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静かに、呼吸を立てながら眠る一刀さん。

こうして、倒れなければ、本当に休む事が出来ないだなんて・・・・・・・・、

重ねた手から伝わる温もりが、余計私を不安にさせました。

そして、悲しみが、私の目に涙を浮かばせます。

このまま続けていたら、一刀さんは・・・・・・・・

 

「大丈夫よ明命、一刀は強いわ。 こんな事で負けるようなら、とっくに折れてるわよ」

 

雪蓮様が、そう言って私を元気付けようとします。

一刀さんが強い人なのは知っています。

でも、幾ら強くても、限界があるはずです。

 

「翡翠が言っていたでしょ。 一刀は、『弱いところを弱いままにしておくほど弱くない』って、『悲しいほど

 優しい人』だって、翡翠は一刀の本質を良く理解しているわ。 最初は分からなかったけど、今ならこの意味

 が分かる。 貴女だって、なんとなく気がついているはずよ。一刀は強いんじゃない、どうしようもなく、優

 しいから、耐えられるのだと、強くなってしまうんだって事をね」

 

雪蓮様の言葉が、私の心に入ってきます。

たぶん、そうなのだと思います。

でも、・・・・・・

 

「一刀さんは、一度壊れかけたんですっ、 闇に堕ちかけたんですっ、 そんな事信じ切れません!」

 

私は、ついに叫んでしまった。

一刀さんがやっと、ぐっすり眠れているというのに、雪蓮様の言葉を否定するように、叫んでしまいます。

私の叫びに雪蓮様は、一瞬驚いたような顔をされましたが、直ぐに元の冷静な顔に戻られ、それでも何処か優しげな目で、

 

「でも、乗り切ったわ。 そして成長した。 人の心を保ったままね」

「でも、これからがそうとは限りません」

「乗り切るわよ、貴女達二人が居ればね。

 一刀はね、貴女が思っている以上に強く、強かな人間よ。 それが翡翠には分かっているから、あの娘は一刀

 が戦に関わる事を強く反対できなかった。 あの娘は一刀の事に関して感情的になっても、やはり思考は冷静

 よ。 どんな時でも、すぐに冷静な思考が出来る、翡翠はそんな自分を嫌っているけど、私はそんな翡翠を頼

 もしく思っているわ」

 

雪蓮様は、もう一度翡翠様の名前を出して、私を落ち着かせようとします。

・・・・・・・・そして、私は出立する前の、翡翠様の言葉を思い出します。

 

『 明命ちゃん、一刀君をお願いします。 そして明命ちゃんは、絶対生き残る事を優先してください。

  そうすれば一刀君はきっと大丈夫ですから 』

 

そう、心配そうに私に伝えました。 最初は私の身を心配してだと思っていました。

そして雪蓮様の言葉に、あれは、一刀さんを心配しての言葉だったのだと、理解しました。

もちろん、私のことも心配していると信じれますが、そう言う事なのでしょう。

翡翠様は、理解していたのです。 私と翡翠様が一刀さんの傍に居れば、一刀さんは乗り切って見せると・・・・・・

 

私より翡翠様の方が、一刀さんを信じている。

 

その事が、すごく悔しく、悲しかったです。 そして、自分が情けなかったです。

その思いに、私は雪蓮様から目を逸らし、一刀さんの手の温もりに、意識を向けてしまいます。

情けないと、卑怯だと思っていても、そうしてしまいます。

 

「心配するなとは言わないわ。 ただ信じてあげなさい。 それが言いたかっただけ、それと、今夜は一刀に付

 いていてあげなさい。 これは命令よ」

 

雪蓮様はそう言い残して、冥琳様達を引き連れて、水関に宛がわれた一刀さんの部屋から出て行かれます。

命令という形で、私の背中を押してくれます。

 

翡翠様だけでなく、雪蓮様も一刀さんを信じている。

なら、私はもっと信じなければいけません、例え辛くても、一刀さんを信じて一刀さんを支えて見せます。

一刀さんは、もっと苦しんでいるはずなのですから・・・・・・・・

 

 

 

 

 

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でも、少しだけ、そのための勇気が欲しいです。

この手に伝わる温もりだけではなく、他の何かが、・・・・・・・・

私はそう思いながら、一刀さんの手を握る手を見詰めます。

 

大きい手です。

剣を握り続けてきた私と違って、ゴツゴツしていない柔らかい手。

私の頭を撫でてくれる優しい手、

私の心ごと暖かく抱きしめてくれる暖かい手、

一刀さんが、私を心の支えにしてくれている事を教えてくれた手、

 

手と言えば、いつぞやお猫様に引っかかれた時は、一刀さんは消毒だと言って、私の手に口付をしてくれた事がありました。

その時の事を思い出し、私は心に暖かいもの思い出しながら苦笑します。 あの時は、一刀さんに想いを伝えようとして、雪蓮様に邪魔をされてしまいました。 そして、今回はもう当分、想いを伝える機会はありません。少なくともこの遠征を終え、一刀さんが元通り笑える日までは、・・・・・・

 

今回の遠征は、一刀さんに想いを伝えるいい機会でしたが、こうなっては仕方ありません。

一刀さんが、笑顔を取り戻してくれる方が大切です。

だから、あの時のお礼も籠めて、一刀さんから勝手に勇気を貰う事にします。

 

私は手を繋いだまま、一刀さんの寝顔を見詰めます。

胸の鼓動が、はっきりと聞こえます。

今からしようとする事を考えると、顔が熱くなります。

 

私は一刀さんの顔に、顔を近づけ、

早鐘のように鳴る胸の鼓動を無理やり抑え、

目を閉じて、そっと顔を前に突き出します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「北郷さん、大丈夫ですかぁ〜?」

「はあぅっ!」

 

穏さんの突然の声に、私はあと少しの所で、

悲鳴を上げながら、一刀さんから離れてしまいました。

 

(穏さん、酷いです、あうぅ・・・・・・)

 

 

 

 

 

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雪蓮(孫策)視点:

 

 

一刀の部屋を出て、自分の部屋に戻ると、其処には賀斉が待ち受けていた。

 

「雪蓮殿、勝手ながら待たせてもらった」

「かまわないわ、要件は埋葬の事? それとも、暇をくれとでも言うつもり?

 それにしても、貴女一人とは思わなかったわ」

 

賀斉の雰囲気に、用件の内容に察しが付き、此方から話を振る。

回りくどいのは好きじゃないし、賀斉もその辺りは心得ている。

 

「他の連中なら、私に最後の判断を託すと言ってな、面倒じゃが皆の代表として来た」

「そう、兵の半数が孫呉を離れるも、残るも貴女しだいって事なのね」

「いや、雪蓮殿の返答しだいじゃ」

 

賀斉の言葉に、伝わってくる覇気に、私は改めて気を引き締めるように、一度深く息を吐き、

 

「それは重要ね。 で何を聞きたいのかしら」

「まず、あれが例の噂の人物かどうか、問いただしたい」

 

賀斉の言葉に、私は、とっさに周囲の気配を探り直す。

どうやら、今の所は、何も感じないけど、一刀の例があるから、あまり過信はできないわね。

それでも、例え聞かれたとしても、此処でその問いに答えないわけには行かない。

そうしなければ、孫呉の夢は断たれてしまう可能性が出てくるからだ。

 

「そうよ。 一刀が天の御遣い、本人よ」

「そうか、 少々想像とは違ったが、あの舞を見た後では、否定は出来んな」

 

まずは、一つ

 

「では、最近私の所も含めて、他の一族が抱えている医者が、妙な知識を仕入れてきて夢中になっておるが、

 その事について、聞かせてもらおうか」

「ある程度は分かっているんでしょ? 一刀の天の知識の一部を民に広めるための一環よ」

「やはり雪蓮殿達の仕業であったか、うちの医者が、理に適っているが、どうやって原因を知りえたのかを不思

 議がっていたが、天の知識ならば、不思議でもなんでもないな」

 

まずは、二つ

 

「何故戦につれてきた? 幾ら知識があろうとも、舞が素晴らしくとも、あのような凡庸な人間に、指揮を執ら

 せるなど、害悪でしかあるまい。 ましてやこの程度で倒れる等と、 雪蓮殿は一体何を考えているのじゃ」

 

痛い所を突いてきた。

でも、この程度はなんとでもなる。 どちらかと言えば運が向いてきたと言えるわね。

 

「倒れたのは、彼がまだ戦に慣れいないからよ。 その上、初めて指揮を執れば、誰だって緊張するものよ。

 それに、凡庸って言うけど、 賀斉、貴女は自分より強い人間を、冥琳や翡翠が認める程の才を持つ者を凡庸

 と言うのかしら?」

「 なっ! 」

 

私の言葉に、賀斉は信じられないと言った顔をする。

 

「昨日の策は、劉備が行った挑発も含めて全て一刀の考えたもの。

 張遼が虎牢関に退くのを見抜いたのも彼よ」

「・・・・・・戯言も大概になされよ。

 軍師としての才は分からぬが、あの者が私より強い等、我が武に対する侮辱以外の何物でもないぞ」

 

私の言葉に、賀斉は怒鳴るでもなく、静かに、怒りを露わにする。

もはや私に向けているのは、覇気ではなく静かで、一方的な殺気、

まぁ気持は分かるけど、本当の事なのだから仕方がない。

 

「別に、侮辱しているつもりはないわ、本当の事よ。 私を含めた将五人掛かりで、手も足も出なかったわ。

 一刀の武はね、私達の目で測れるものではないわ。 なんなら、一刀の目が覚めたら一度戦ってみる?」

「・・・・・・信じられん話だな、だが嘘を言うとるようにも思えん」

「当たり前よ。 私だって武人の誇りがあるわ、こんな事で嘘を言ったと思ったのなら、そんな人間此方から願

 い下げよ」

 

賀斉の態度に、私は憮然と怒ってみせる。

その甲斐もあって、賀斉は殺気を放つのを止めてくれる。 そして、三つ、

 

「成る程、諸侯の前に立たせたのは、擬態と油断を誘う意味もあると言うわけか、本気で孫呉を復興させると考

 えていると見ても良さそうじゃな」

「当たり前よ。 まさか疑っていたの?」

「何処まで本気かを確認したかっただけじゃ」

 

私の言葉に、賀斉は息を吐き、張り詰めた気を緩めてくれた。

どうやら、上手くいったようね。

 

「最後に、これは個人的な質問なのじゃが」

「なによ、まだ聞き足りないの?」

「なに、ただの興味本位なのじゃが、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・惚れておるのか?」

「な゛っ」

 

たっぷり間をおいた賀斉の質問に、何故か顔が熱くなるのが分かる。

一体この女、何を聞いてくるのよっ!

 

「返事はもう要らぬわ、雪蓮殿が誰の事を思うたかは知らぬが、このような事に引っかかるようでは、まだまだ

 心配じゃ、堅殿との盟約もある事じゃし、もう少し面倒を見てやる事にするわい」

 

そう、にやけた笑みを浮かべて、部屋を出て行こうとする。

 

「とっとと出てけ、この色呆け老人っ!」

「わっはっはっはっはっ、負け犬の遠吠えが心地良いわっ」

 

私のそんな怒声を、祭に似た豪快な笑いで返しながら、部屋から遠ざかっていく。

まったく、油断ならないわね。

 

 

 

 

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「雪蓮お疲れ、おかげで、猜疑的だった一族の信を得られる事ができそうだ」

「最後のは、むかついたけど、代償と思えば安いものよ」

「北郷の策もある。 商人に扮した兵達が彼方此方で、我らの武勇を伝播してくれれば、賀斉達が此方に就い

 た事も手伝って、人も金も集まってきてくれよう」

「そうね」

「北郷が心配か?」

 

私の気のない返事に、冥琳が何故かそう聞いてくる。

まったく、賀斉にしろ、冥琳にしろ、私を一体どう見ているのかしら

 

「一刀の心配は、明命と翡翠の仕事よ。 私の心配する事じゃないし、その資格もないわ。

 そう言えば、曹操が来ていた筈だけど、どうしたのかしら?」

「門兵の話では、舞が終わるや否や、早々に出て行ったと報告があった」

「はぁ? もう暗くなっていたはずなのに、一体何を考えているのかしら・・・・」

「きっと、忙しいのだろう、 それより、雪蓮、北郷をこのまま使うつもりか?」

 

私の問いに、興味がないとばかりに答えると、せっかく話を逸らしたのに、一刀の話を振ってくる。

 

「そのつもりだけど、冥琳は反対?」

「いや、あれは使える。 今回倒れたのは痛いが、場数をこなせば何とかなるだろう」

「厳しいのね」

「雪蓮に言われたくはないな。 あれだけの働きを見せて、私は袁術に疑われないかを心配している」

「心配無いでしょ、賀斉だって一刀の能力を見抜けなかったんだもの、昨日だって見方を変えれば、戦場に取り

 残されて突っ立っていただけに見えるわ」

 

私の言葉に、冥琳は苦笑を浮かべながらも、納得してくれたようだ。

 

「でも意外だったわ、私の知らない間に真名を呼ばれるようになっているから、心配しているとばかり思ってい

 たわ」

「なんだ、やきもちか?」

「違うわよっ! なんとなく面白くないだけ」

 

私の言葉に、冥琳は意地の悪い笑みを浮かべ、馬鹿な事を言ってくる。

まったく、なんで今日は皆して、こういう質問ばかりしてくるのよ。

 

「お前のは、そういう約束だ、それを怒るのは筋違いというものだ。

 それに、北郷に関しては、倒れた事を心配はしても、それ以上ではない。

 あれは、一見優しくても、その本質は違う。 翡翠とは逆になるが、冷徹な部分を持っている。

 人殺しを嫌い、嫌悪感を抱こうとも、あれは人を殺す策を考え、その手で冷静に指揮を執ってみせた。

 必要とあれば、非情になれると言う事だ。 己が傷つこうともな」

 

冥琳の言葉を、私は素直に受け入れる。

それは私も感じた事、明命はその辺りを分かっていないけど、あれだけ兵の損失を考慮した上で、名を得れるような策を考え、指揮を取れると言う事は、命の勘定が出来ると言う事だ。

名を得るため、力を得るため、成果を得るために、どの程度兵を犠牲にしてもよいかを、考えられるという事。

そして、華雄への挑発するための数々の策、 意外と、天然の悪人かもしれないわね。

昨日の一刀の腹黒い一面を思い出し、そう思ってしまう、 そして、そんな一刀の笑顔を思い出してしまう

 

・・・・・・・・前言取り消し、あの笑顔と鈍感さだけとっても、立派な悪人よね。

 

 

 

 

 

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一刀、今は休みなさい。

 

辛くても心を休ませるの、

 

貴方が選んだ道は、とても厳しいものだけど、

 

その先にあるものを目指して歩きなさい。

 

貴方は一人じゃないのだから、きっと、最後まで歩めるわ。

 

翡翠と明命が、貴方の心を支えてくれる。

 

私達が、貴方が歩みやすいようにしてあげるわ。

 

だから、貴方は、私達の目指す先を照らして頂戴。

 

そして、皆で一緒に夢を掴みましょう。

 

皆が、笑って暮らせる世の中を、国を作るために、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

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こんにちは、うたまるです。

 

 

  第35話 〜 深く眠る御遣い、悲しみに舞う命 〜を此処にお送りしました。

 

今回は、前と違い、多くを知った明命の苦しみと、孫呉に属する氏族達との決着を題材としました。

明命には、この苦しみを乗り越え、真っ直ぐ一刀へ思いを伝えれる日が来てくれれば思っています。

 

さて、32話でも少しだけ出てきた賀斉ですが、字は公苗です。 チョイ役のオリ伽羅で、史実にも出てくる、孫呉の武将です。

性格的なものとしては、祭と桔梗を足して二で割ったような感じをイメージして居ます。

立場的には、孫呉の氏族の中でも強い発言権を持っている一族ですが、今後出番があるかどうかは、演出しだいですね。

 

では、頑張って書きますので、どうか最期までお付き合いの程、お願いいたします。

 

 

PS:可愛そうな明命を、応援してあげてください。

説明
『真・恋姫無双』の二次創作のSSです。
明命√の作品となります。

鎮魂の舞の後、倒れた一刀、そしてそんな一刀を心配するあまり、明命は悲しみを爆発させる。
そしてそんな明命の悲しみとは別に、一刀の事で雪蓮に詰め寄る孫呉の氏族、いったいこの先どうなっていくのか・・・・・・・・
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コメント
レイン様 もちろん、明命と翡翠の二人には幸せになってもらいたいとは思っています。 でもいっそのこと一刀以外の方が幸せになりやすい気がしないまでもないですけどね(汗  賀斉さんですが、通りすがりの伽羅ですので大丈夫です(濃いけどね(゚∀゚ ;) )(うたまる)
Night様 そうして馬鹿ップルが誕生するのですね(w  ・・・・・公衆の面前で馬鹿ップルする二人・・・・・・異次元過ぎて想像できません・゚・(ノД`)・゚・   猫馬鹿ップリなら幾らでも想像できるのに(w(うたまる)
明命ちゃん…貴女は良いんですよ。ただ傍に居るだけでも、一刀君にとって『救い』となるのですから。そして今回も明命ちゃんはご愁傷様です(笑)でも、いつかきっとうたまる様が機会を下さいますから(予想では…)もう少し待ってあげて下さいね。そして賀斉さん。祭さんのようなオリキャラ…(思考中)…大丈夫ですか?(レイン)
お疲れ様です。がんばれ明命。逆に考えるんだ明命、見られてもいいや、そう考えるんだ。(Night)
kyowa様 姉のような立場で、一刀を見守り、明命を後押しする・・・・・・そのまま行ったら、某三姉妹の長女と、同じ運命を辿ってしまうではないですかぁ(w (うたまる)
darktodark様 何時も早いわけではありませんが、これからもご声援いただけたら嬉しいです。(うたまる)
ジョージ様 間違いなく陸遜は、気がついても、無視して行動しそうですよねぇ(w 後は面白がってて見守るかかも(w(うたまる)
ヒトヤ様、 一刀の弓の腕は、少なくとも近くで見ていたなら、確実に見抜いたでしょう。 ですが、祭はこの場におらず、秋蘭もかなりの遠目でしか成り行きを見ておりません。 そして、秋蘭はその遠目でどう移ったのか、私も気になるところです(うたまる)
一刀を傍らで見守る明命の葛藤がすごく伝わってきます。それに、姉のような立場で一刀を見守り、明命を後押しする雪蓮も見ていて笑みがこぼれてしまいます。(kyowa)
投稿お疲れさまです。いつも楽しみにさせてもらっていますが、最近は投稿ペースが速いので、とてもありがたいです!(darktodark)
皆、複雑な心境でしょうね・・・・明命、君は何も悪くない。悪いのは空気を読まない周囲だwwwww(峠崎丈二)
一刀の弓の腕前を見て素人ではないと気づいたのはどれほどいるのだろうか、弓を使う秋蘭なら分かると思ったのだが(ヒトヤ)
jackry様 さすがにそれは、言われるまで想像すらしておりませんでした(汗 一応賀斉はチョイ伽羅ですので、そういう予定はまったくありません。(うたまる)
みっちー様 今後も、明命と翡翠を応援してあげてください。 まだまだ二人の不幸は続きますので(w(うたまる)
gmail様 惚れた相手が悪いというのは、確かですね(w  空気を読んでくれない人間ばかりでは無いはずなのですけどね。 純粋に運が悪かったのと、やはり軍事行動中という点が大きいと思います。 周りの兵からしたら目の前でいちゃいちゃされてる方が堪らないかと(w 誤字報告ありがとうございます(うたまる)
320i 様 早くそんな日が来ると良いと、作者の私も思っております。(うたまる)
明命・・・(;つД`) ファイト!w(みっちー)
7pの上手く言ったようねは上手くいったようねでは(gmail)
明命、君の不運は惚れた相手と周りの孫呉の空気を読んでくれない所に在るよ(gmail)
truth様 二人の葛藤は書いていても切ないです。 それ故に感情が先走り暴走することも(汗  賀斉の性格ですが、2で割ってくださいって、(w さすがに割らないと、最強すぎますって 某覇王様より強いと思いますよ(w  誤字報告ありがとうございます。 (うたまる)
司 葵様 翡翠の明命への牽制に関しては、物語を一つ予定しております。 お楽しみください(うたまる)
血染めの黒猫様 これからも明命と翡翠を温かい目で見守りください。(うたまる)
八神 祐一様 明命にしろ翡翠にしろ、幸せな明日があると良いなと思いますよね(うたまる)
リョウ様 猫の着ぐるみですか、明命が猫なら、翡翠はなにが似合うでしょうねぇ?(w なんにしろ一刀の理性の防波堤の危機には違いないわね(うたまる)
ブックマン様 一刀の唇は誰が奪えるのか 明命なのか、それとも翡翠か、はたまた第三者なのか、見守りください。・・・・・・・・・・第三者だったら、二人が黙っていないだろうなぁ(汗(うたまる)
jack様 明命への声援ありがとうございます。これからも彼女を見守りください(うたまる)
samidare様 どうなっていくのでしょうねぇ 二人の恋が適う事があるのか見守りください(うたまる)
宗茂様 明命への応援ありがとうございます。 これからも、よろしくお願いいたします(うたまる)
今回のミッション失敗は、翡翠のチェックが穏を通して入ったんでしょうねw(司 葵)
明命残念ですね〜、めげずに頑張ってほしいです。次の更新楽しみにしています。(血染めの黒猫)
明命の明日はどっちだ!?(サワディー(・ω・))
明命頑張って〜、次こそは…もしくは猫の着ぐるみでも着て猫語でせまれb(マテコラ(リョウ)
明命ガンバ?次は成功するってwww(ブックマン)
更新乙です!明命 明命がんばれ明命!!(>w<)b(jack)
それと明命がんばれ!がんばれ明命!(samidare)
更新お疲れ様です!今回の話はちょっと感動してしまいました!これからどうなっていくのかそれが楽しみです!(samidare)
お疲れ様です。   がんばれ明命!(宗茂)
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