真・恋姫†無双  星と共に 第7章
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真・恋姫†無双  星と共に  第7章

 

 

盗賊殲滅を終え、桂花と季衣が正式に仲間になってから数日が経っていた。

 

「皆遅いな」

 

一刀は星と二人で、城の中庭で華琳達を待っていた。

 

「遅いな、華琳達」

「準備に手間取っているのでしょう」

「星は準備が早いな」

「まあ、特にこれと言ったものは無いので……」

 

一刀と星が待ってどのくらいか経って春蘭と桂花がようやくやってきた。

 

「何だ北郷、星、随分早いな」

「集合よりも前にいるのが俺の決まりでね。華琳と秋蘭は? まだ昼か?」

「いや、食事は済んだのだが、髪のまとまりが悪いとかでな。今、秋蘭に整えさせている」

 

一刀は華琳の髪を考えて、その整えの様子を想像し、隠れてクスリと笑った。

 

「あなた今、化粧や髪型なんて大して変わらない…なんて思ったでしょ」

 

桂花が一刀の笑いを察知したかのごとくそう指摘してきた。

 

「いや、そうは思ってないさ。髪型はともかく、俺は化粧とかはしない子の方が好きな派なんでね」

 

一刀は自分の本音をあっさり言いいながら、星の方を見る。

 

「………照れるではないか、一刀殿」

「褒めてるのとは違うけどな……」

 

すると春蘭が呆れたように返してきた。

 

「やれやれ、だから男は馬鹿だというのだ。州牧ともなったお方が、だらしない格好で公の前に出てみろ。臣下たる我々どころか、主の品格まで疑われるわ」

「……なるほどね……」

 

春蘭の言う事を聞いて、一刀は思い出す。

前の世界でよく愛紗にきちんとした格好をしろと言われていたことを……。

 

(愛紗はいつもきつかったですからな)

(今となってはいい思い出だよ)

「あら、珍しく意見があったじゃない」

「当然だ」

 

珍しく春蘭と桂花の意見があった。桂花が正式に華琳の下で働くようになってから春蘭と桂花は犬猿の仲のようにお互いを敵対視しているのだ。

 

「しかし華琳も今は、刺史じゃなくて陳留の州牧ってやつになったんだよな」

「何よ、問題あるの?」

「ないさ、ただそこまで出世するのはすごくないかっと思ってな」

「華琳様には既に陳留刺史としての十分な実績があるだろう。州牧など、ごく正当な評価……いや、むしろ低いぐらいだろう」

 

春蘭の言ってることはかなり納得できる。確かに華琳の今までの事っと言っても一刀達は華琳の所に来てからそこまで経ってはいないが、華琳のやって来たことは確かに十分な実績であると思う。

そうこう考えているとようやく華琳と秋蘭がやってきた。

 

「その髪、大丈夫か? さっき春蘭に髪がまとまらないとか聞いたが……」

「雨でも降るのかしらね? いつもと違うようにしかまとまらなかったのよ。どう? あなたから見て変じゃないかしら?」

「うん、大丈夫だよ」

 

正直な話、一刀にはそのいつもと違うと言われてもその違いがわからなかった。

 

「ならいいわ。それに州牧になったおかげで季衣との約束を守ることができたわけだもの。言うことないわね」

「で、その季衣はどこ?」

 

皆で街に行くというのに季衣がいない。

よく見てみたら永琳と光琳もいない。

すると秋蘭が一刀に伝えた。

 

「今朝、山賊の拠点がわかったという報告が入ってな。討伐は永琳様と光琳様、それに私か姉者が出るから街を見てこいと言ったのだが、聞かなくてな」

「なるほど、それは仕方ないか」

 

季衣の村は盗賊に襲われていたのだ。なら同じような目にあってる村を見過ごすわけにはいかない。

季衣はきっとそう思ったのだろうと一刀は考えた。

 

「だったら土産くらい買ってやるか」

「考えることは同じか…」

「うん?」

 

どうやら春蘭も同じことを考えていたようだった。

 

「あんたたち、観光に行くわけじゃないのよ?」

「え!? そうなの!? ってのは冗談で……、視察はちゃんとやるさ。季衣の土産はそのついで。いいだろ? 華琳」

 

冗談交じりの一刀に華琳は少々呆れたように答えた。

 

「仕事をちゃんとするならね」

「はい!」

「返事だけにならなきゃいいけどね」

 

桂花は春蘭の返事に多少不安があったようだ。

 

「さて、揃ったのなら出掛けるわよ。桂花、留守番、よろしくお願いね」

「?」

「華琳様ぁ。何でこれは連れて行くのに、私はお留守番なんですかぁ?」

 

桂花は一刀を物扱いして指を差す。

一刀はそんな事よりも桂花が一緒に行かないことに驚きがあった。

 

「何だ、桂花はいかないのか」

「一刀に非常時の判断はできないしょう」

「いやいや、俺そんなに判断力は無いわけじゃないぞ」

「それとも、補佐で一刀も残したほうが良い?」

「邪魔だと思って切り捨てて良いなら」

 

一刀はその答えに苦笑いした。

 

「邪魔ってどういうときだ?」

「視界に入ったとき」

「切り捨て前提か……。(本当に変わらないな……桂花)」

「当たり前じゃない」

「ともかく、何かあったときの判断は桂花に任せるわ。一刀を斬り殺してもかまわないから、あれは連れて行く。いいわね?」

「はぁい、……残念」

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その頃陳留の門前ではある少女達三人が立っていた。

まじめそうな少女とやる気が少々なさそうな少女とおちゃらけみたいな少女とそれぞれ個性があった。

三人は遠い村から竹かごを売りに来ていたのだ。三人は最近陳留にやってきた州牧の事もあってここなら売れると思い、陳留へと入った。

 

 

 

街に来た一刀達は街の様子を見てみると、旅芸人であろう三人の美人三姉妹が歌と演奏を披露していた。

 

「旅芸人も来ているのか」

「そんなに珍しいのか?」

 

一刀が旅芸人の様子を見ていた秋蘭に尋ねる。

 

「芸人自体はさして珍しくはないが、あれは南方の歌だろう。南方からの旅人は今までこちらまで来なかったからな…」

「これも華琳様のおかげってやつか」

「そういうことになるな」

「特に彼女らは女だけのようだしね。武芸に相当の自信があるか、安全な道がなければこんなところまでは来ないでしょうよ」

「まあそうだよな」

 

その彼女達の歌が終わって、お金を貰おうとする。しかし集まりはさほど良いわけではなく一刀の予想より少なかった。

 

「まあ、腕としては並という所ね。それより、私達は旅芸人の演奏を聴きに来たわけではないのよ?」

「わかってるって」

「狭い街ではないし、時間もあまりないわ。手分けして見て行きましょうか。ああそれと一刀と星は私に付いてきなさい」

「はい?」

「うん?」

「えーーーーーーー」

 

春蘭が思わず不満の声を上げる。

秋蘭の意見により秋蘭は右側、春蘭は左側を見て回り、突き当りの門の所で落ち合うことになった。

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華琳と一刀と星は中央の通りを見ていたが、華琳は大通りではなく裏の小さな通りを見ていたので一刀は尋ねた。

 

「大通りじゃなくて良いのか?」

「大通りは後でいいのよ。大きなところの意見は、黙っていても集まるのだから」

「ああ、なるほど」

 

華琳の答えに一刀は簡単に納得した。

 

「それより一刀。この辺りは見て、あなたはどう思う?」

「う〜ん、何か変わった様子が見当たらないが……」

 

ありきたりな事を聞いているのではないのと一刀は気づいているがなかなかその答えがわからない。

とりあえず一刀は思ったことを口にした。

 

「食べ物屋が多くて料理屋も多いな」

「でしょうね、食材がすぐに手に入るのだから。で?」

「でって……」

「他に気づいたことは? 何でもいいわよ」

 

華琳に言われてまた周りを見てみる。

 

「包丁…」

「包丁?」

「包丁を研ぐ店や、調理器具を売る店があったら儲からないかな」

「……鍛冶屋のこと?」

「そう、それ」

「鍛冶屋は三つむこうの通りに行かないとないわ」

「それは不便だけど、何かこっちにそれっぽい職人が多いな」

「向こうの通りには料理屋がないの」

「ところでなんで華琳はそんなに街に詳しいの?」

 

一刀はちょっとした疑問を華琳にふっかけた。

 

「そのくらいは街の地図を見れば分かるもの」

「となると知ってて来てるってことは客層や雰囲気を実際に見ておきたかってことか」

「あら、よく気が付いたわね」

「華琳の考えそうなこと、少しずつだけど分かった気がしたから」

「なかなかね。それとね」

「うん?」

「あれの様子は地図じゃ分からないもの」

 

華琳が見る方向を一刀が見る。その先には先ほど陳留に入ったばかりの三人の一人がいた。(ちなみに少々やる気がなさそうな女の子である。)

 

「何だこれ?」

「カゴ屋のよう……だけれど?」

「そうじゃなくて、こっち」

 

一刀が指を刺すほうにはなにやら木材でできたよく分からない機材(?)が置いてあった。

 

(歯車つきとはな……。この世界はどうやら俺が前いにいた世界よりも技術が少し進んでるようだな)

 

「これはなんだ?」

「さあ?」

「そこのお二方、なんともお目が高い! こいつはうちが発明した、全自動カゴ編み装置や!」

「(こいつも関西弁? 霞みたいなやつだな)全自動?」

「カゴ編み装置?」

 

露店の少女の言う「全自動カゴ編み装置」に興味を引かれる一刀と華琳。

 

「せや! このからくりのそこにこう、竹を細ぅ切った材料をぐるーっと一週突っ込んでやな…そこの兄さんこっちの取っ手を持って!」

「?」

 

一刀は言われるがままにその装置のハンドルを回す。

 

「でな、こうやってぐるぐるーっと」

 

ぐるぐるハンドルを回すと簡単に竹カゴが完成していった。

 

「すごいけど、これは手動だろ!!」

「兄さん、ツッコミ厳しいなぁ…。そこは雰囲気重視、っちゅうことでひとつ」

「それでは名前詐欺であろう」

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それから門のところで春蘭、秋蘭と合流したのだが、なぜか春蘭も秋蘭も竹カゴを抱えていた。

ちなみに一刀はあの後、全自動という名の全手動のからくりを爆発させた侘びとして一つ竹カゴを買わされていた。

それに付き合う形で星も竹カゴを一つ買い、抱えている。

秋蘭はどうも気になったようで買ったそうだが、春蘭は季衣の土産というなんとも苦しい言い訳にしか聞こえないような形で竹カゴの中には服が入っていた。

そして城に戻ろうした時、後ろから声を掛けられた。

 

「そこの、若いの」

「誰?」

「ここです」

 

華琳達は後ろを振り向く。後ろには目深に布を被った、年寄りのようでおじいさんかおばあさんかよく分からなかった。

 

「何だ、貴様?」

「占い師か」

「華琳様は占いなどお信じにならん。慎め!」

 

春蘭がその老人を怒鳴るが、華琳がその春蘭をなだめた。

 

「……春蘭、秋蘭。控えなさい」

「強い相が見えるの…。希にすら見たことの無い、強い強い相じゃ」

「いったい何が見えると? 言ってごらんなさい」

「力の有る相じゃ。兵を従え、知を尊び…。おぬしが力を持つは、この国の器を満たし、繁らせ栄えさせることのできる強い相…。この国にとって、稀代の名臣となる相じゃ」

「ほほう、よく分かってるではないか」

 

春蘭はその老人の見立てを褒めるが…。

 

「この国がそれだけの器があればの」

「どういうことだ?」

 

少々難解なことを言われ、秋蘭が尋ねる。

 

「お主の力、今の弱った国の器には治まりきらぬ。その野心、留まるを知らず…あふれた野心は、国を犯し、野を犯し、いずれ、この国の歴史に名を残すほどの、類い希なる奸雄となるであろう」

(ほう、的を射抜いておりますな)

(なかなかの目だ……うん? 待てよ?)

「貴様! 華琳様を愚弄する気か!」

 

怒る秋蘭。しかし華琳は意味を分かっていながらも秋蘭を止める。

 

「しかし華琳様!」

「気に入ったわ。秋蘭、この占い師に謝礼を」

 

華琳が秋蘭に謝礼を命じるが、秋蘭は納得できない様子だったので華琳は一刀に謝礼を出すように言い、一刀は占い師に謝礼を渡そうとする。

 

「それじゃあ」

 

一刀は占い師の前にある茶碗にいくらかのお金を入れる。すると占い師は一刀と星に声を掛けてきた。

 

「それから、そこのお主ら」

「俺達?」

「何かな?」

「大局の示すまま、流れに従い、逆らわぬようにしなされ。さもなくば、待ち受けるのは身の破滅。くれぐれも、用心なされよ?」

「何?」

「それは一体どういうことだ?」

「それにあんた、もしかして……」

「悪いが、わしはお暇させてもらうよ」

 

老人は一刀の話を聞こうとせず、立ち去ろうとする。

 

「おい! 待ってくれ!」

 

老人を止めようとするも老人はさっさと去ってしまった。

 

「あのじいさん……」

「どうしたのだ? 一刀殿」

「いや、華琳の事を簡単に見抜いたからさ。もしかしたら貂蝉の仲間かと思ったんだが……」

「なるほど。確かにその考えもありですな」

「貂蝉は他にも世界はあるって言ってた。つまりは貂蝉の仲間も色々な世界にいるかもしれない」

「うむ。先ほどの老人もその貂蝉の仲間っと……」

「あくまで可能性だけどな」

「しかし、あのじいさんが俺達に言ってた言葉どうも気になるな……」

「そうですな」

 

一刀達が占い師の最後の言葉を理解するのはそれからかなりの時間が必要であった。

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そして帰り道、華琳達は帰って来た永琳達と会うが、永琳、光琳、季衣の他にもう一人女性がいる。

その女性は長い黒髪で、膝上10cmの黒いスカートに白い半袖シャツを着ていた。

女性は半袖シャツしか着てないのか、胸のふくらみがよく分かるものであった。

しかもその女性の胸の大きさは紫苑と愛紗の間くらいの大きさであった。

 

(これはすごいな……)

「姉上、丁度いいところに……」

「何かあったのかしら? 永琳」

「はい。実はこの者を姉上に紹介しようと思い……」

 

そしてその見知らぬ女性が華琳の所に近づいた。

 

「あなた、名前は?」

「徐晃、字は公明。真名を澪と申します」

「あらあら、いきなり真名を教えるとはどういうことかしら?」

「話は既に存じております。あなたが曹孟徳であることを……」

「そう。あなたはどういう経緯で永琳達と知り合ったのかしら?」

「私は曹操様に仕えようと思い村を出たところ、近くで村を襲っていた山賊の拠点を見つけて、どう襲撃すべきかと考えていたところ、曹仁殿達の手勢に出会い、一緒に山賊の拠点を壊滅させ、ここまでご一緒させてもらったのです」

「そう……、それであなたはどうしたいの?」

「先ほども申し上げましたが、曹操様に仕えようと思いましたので、願わくば曹操様の下で戦おうと思っております……」

「……永琳」

「はっ!」

「彼女の実力は?」

「なかなかのものです。実力は私や春蘭くらいのものだと思っています」

「あら、それくらい強いの」

「それほどとは……」

「永琳が認めるほどなら、私も認めましょう徐晃」

「先ほど申した真名、澪で結構です」

「澪、私を真名である華琳と呼びなさい。そして今後、私に仕えるように」

「……華琳様……分かりました」

 

こうして徐晃の澪が仲間になった。

 

(徐晃か……。前の世界にいなかった魏の将がまた一人……)

(もしかしたら他にもいるかもしれませぬな。一刀殿)

(ああ、それこそ蜀にも呉に……)

 

色々な事を考えながらも世界は加速していくのであった。

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おまけ

 

 

作者「第7章だ」

一刀「早いな。それに徐晃か」

作者「ああ。悪いが時間が無いから徐晃の詳しい設定は次回のおまけに書く。それでは!」

説明
この作品は真・恋姫†無双が前作(PS2)の続編だったらという過程で作られた作品です。
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コメント
設定が楽しみです。(ブックマン)
かまわないから連れて行くってなんか変じゃね?(2828)
占い師原作と同じこと言ってるけど大丈夫なのか・・・。春恋→無印恋姫→春恋?→真恋姫?ときて魏ENDと同じように統一後はまた飛んじゃうのか?まぁ別の外史にいくことになるとしても星と一緒なら一刀的には問題ないのかな。(corn)
徐晃さん襲来ですか。凪っぽい性格のように見受けられますが、一刀とどう絡んでいくのか楽しみです。 あと、PS2版持ってないのでニコニコで星EDみたのですが…シナリオはいいとしていろいろ困った部分が多かったですなぁ…(よーぜふ)
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