小ネタ〜ファーストフード編〜
[全4ページ]
-1ページ-

1:いったいどこへ行くつもり?

 

「いらっしゃいませ」

 

 私は入ってきた男性のお客様に笑顔で声をかける。

 

 楽しくもなんともないけど、店のマニュアルにあるとおりしっかり笑顔を振りまいて、明るく元気なお店をアピール。

 

「ハンバーガーのセットと、ナゲット」

 

「ナゲットのソースは、バーベキューとマスタードがありますけどどちらになさいますか?」

 

「じゃあ、マスタードで」

 

 笑顔で注文を受けつつ、レジ操作もしっかりとこなす。

 

 頭の中ではすでにハンバーガーの作成から飲み物の用意までの手順が構築されていく。

 

 一人営業なんていう無茶をやっている身としては、できる限り待たせないよう無駄な動きはしないようにしなければいけない。

 

「あ、あとフランクフルトも一本おねがい。それでいいかな……」

 

 お客様の注文も終わり、レジに商品の打ち込みも終わった。確認も含めて一応の商品の復唱。

 

「ハンバーガーのセットに……以上でよろしいですか?」

 

 確認の復唱にしっかりと頷いてくれるお客様。いやぁ、こういうしっかりと受け答えしてくれる人はいいねぇ。復唱しても聞いてくれない人多いしねぇ。それで注文間違えてるとか言ってくる人もいるから困り者なんだけどね。

 

「お客様、こちらでお召し上がりですか? それともお持ち帰りで」

 

 注文金額の確認をしながら、マニュアル通り聞いておく。このくらいの量ならイートとテイク両方考えられるから、聞いておかないといけない。常連のお客じゃないしね。

 

「テイク・オフでお願いします!」

 

 自信満々お客はそう言った。

 

-2ページ-

2:盲導犬

 

「いらっしゃいませ」

 

 私は入ってきた厚化粧の中年おばさんのお客様に笑顔で挨拶をする。

 

 しかしそのおばさんの手に抱かれているものにちょっと顔をしかめてしまう。

 

「お客様。ペットの同伴はご遠慮いただいております。申し訳ありませんが……」

 

「んま、〇〇ちゃんをそこいらのペットと一緒にしないでちょうだい」

 

 おばさんは怒って手に抱いた〇〇ちゃんがどれだけおばさんにとって家族も同然か訴えてくるけれど、店にとっちゃそんなこと知ったこっちゃねぇんだよね。

 

 衛生問題にかかってくるから出せって言うのに、私は気にしないじゃないって言うの。

 

「当店では盲導犬、介助犬等でなければ入店を許可できません」

 

 ぐだぐだおばさんが言おうが、ここはきっぱりと拒否しなくては他のお客様に迷惑がかかる。

 

「もうしわけありませんが、ペットは外につない……」

 

「じゃあ、この子は大丈夫ですわね。盲導犬ですから」

 

 おばさんきっぱり言い切った。

 

-3ページ-

3:嫌煙権

 

「お煙草をお吸いでしたら喫煙所でおねがいします」

 

 トレイに載せた商品を手渡しながら半分常連のお客様に声をかける。この人吸ったり吸わなかったりと愛煙家というわけではないんだよね。

 

 だけど今日は煙草を吸うようで店の奥の喫煙席に座って、胸ポケットから出した煙草を一服。

 

 ぷはーと美味しそうに煙を吐き出して、もう一吸いと煙草に口をつけた。

 

「お待たせしました。こちらチキンナゲットでございます」

 

 遅れて出来上がった商品を持ってお客様のところに行った私に、隣のお客からクレームがつく。

 

「おい! ここは禁煙じゃないのか! 煙草なんて吸っていいわけないだろう。アメリカだってお店は全部禁煙なんだぞ。副流煙吸って健康を損なうなんて……」

 

 煙草を吸っていた隣のお客は嫌煙家のようで、私ばかりか煙草を吸っているお客様にも次々と文句を言っている。

 

 延々と垂れ流される嫌煙キャンペーンの謳い文句。

 

 どこかからの聞きかじりとまる判りの知識を堂々と披露しているけれど……。

 

「申し訳ありません、お客様。お客様とこのお客様がいるこの辺りは喫煙席となります。禁煙席がよろしければ、あちらにお席を移っていただけると幸いなのですが?」

 

 笑顔で喫煙マークを示して、優しく諭してあげました。

 

-4ページ-

4:裏メニュー

 

「いらっしゃいませ」

 

 入ってきた男性のお客様に笑顔で挨拶。今日もしっかりマニュアル通り。

 

「ご注文は何になさいますか?」

 

 カウンターでメニューを見る男性客に先を促すように声をかけるも、店の奥をチラッと見た後唸ったまま注文を言いやしない。

 

 チラッと奥を確認したことに気がついた私も、気がつかれないように奥を確認。

 

 先輩がニヤニヤ笑っていやがるということは何かやってくるわけねと確信させていただきました。

 

「じゃあ、こちらで召し上がりで味噌ラーメンと餃子、あと半ライスでおねがい」

 

 目の前の男性客が意を決して注文を言う。

 

「はい、わかりました。少々お待ちください。××さ〜ん、味噌ラーメンに餃子、半ライス入りました! 隣に行って注文してきてください」

 

 グルとわかれば負けません。

説明
拙作の双天とはなんの関係もない純粋なる小ネタ集。
事実を基にしたフィクションです。えぇ、どれも実際にあった話ですが、誇張を多少はしています。(まったくしていないものもありますが)
4コママンガとか描ければよかったのですが、絵心がないのでこんな小ネタ集に(>w<;
こんなの書いてないで双天の続き書けとかあると思いますが、息抜きって大事ですよね( ̄▽ ̄;
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
966 923 1
タグ
店員とお客 小ネタ 事実を基にしたフィクション ファーストフード こういったネタ募集中 

Chillyさんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。


携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com