Metamor Maiden 〜私がイケメンアーティストだったら〜
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煌びやかなスポットライト、たくさんの観衆、熱気と歓喜の声。

自分の声が想いが人々を酔わす。

 

ステージの下から歓喜した人々の手が私に向けられる。

手には花束や可愛らしいプレゼント。そしてサインをねだる色紙やメモ帳。

ステージ前の警備員がそれをふさぐが、ファンのパワーには勝てない。

 

会場全体に配備された警備員たちが慌てて、ステージ前へと集まってくる。

 

 

今日は全国ツアーの最終日だった。

特に熱狂的なファンは全国のすべてのライブに参加するほどだ。

 

 

会場のボルテージは一気にあがり、なかには失神するファンもいる。

私の夢見た目標、それが実現している。

 

小学生の頃、父親に連れられて世界で有名なアーティストのライブに

見に行ったときにそれは開花した。

 

歌詞は英語だったけど、発せられる音階は私の心を振るわせた。

それから「歌」に夢中になった。

 

中学生の頃に作詞作曲を始めて、音声ソフトとかで歌わせていた。

自分の声は理想の声じゃなかったから・・・・・・。

 

 

 

その困難を乗り越えて、私は今、此処にいる。

 

 

 

 

 

ファンたちに手を振ってみる。途端に黄色い声が私に降り注いだ。

 

 

 

 

 

 

そう、黄色い声・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

確かに夢は叶ったのに、何かが違った。

彼女たちの心は「歌」じゃなく、私・・・・・・、私たちの姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Metamor Maiden 〜私がイケメンアーティストだったら〜

 

 

 

 

「藍流、お疲れ〜」

 

タオルを肩に垂らしながら、私の肩をぽんっと叩いていく明るい茶髪の青年。

彼の名は緋槻 要。「Eulalia」のドラムスである。

メンバーの中では最年少で明るく、屈託のない笑顔が人気。

 

 

「これから、打ち上げがあるそうだ。ホテルに戻って支度するぞ」

 

携帯を片手に淡々と次の行動を支持する

仏頂面の黒髪の彼の名は暁 京也。「Eulalia」のリーダーであり、ベーシスト。

 

 

「打ち上げって女の子いるの?」

 

汗だくになった長髪を結んでいる銀髪の青年の名は厘元 洸。

「Eulalia」のギタリスト。女好きでファンの子に手を出したりと困った人。

 

 

「いる訳ないだろ!マネジャーと関係者とかだろ!」

 

私はムッとした顔をしながら、髪を梳かしていた。

鏡に映った自分の顔に見惚れてしまう。

 

顔立ちの整った金髪の青年、名前は「藍流」。

 

 

 

 

苗字はない。それだけだ。

 

 

素性が知れない謎のカリスマアーティスト。

そういう肩書きがついている。

 

 

本当の私は・・・・・・

 

 

 

 

 

 

「ちょいと!何、グズグズしているの?」

大きな音を立てて、楽屋のドアが開いた。入ってきたのは長身の女性。

 

「うわわっ!マネージャー」

 

「もうはやくしなさい!ファンの子達が出待ちしているのよ!

裏口を確保しているんだから!気づかれる前に早くなさい!」

 

彼女の名は一那 香。

「Eulalia」のマネージャーであり・・・・・。

 

 

「ほらほら!着替えやシャワーはホテルでやって!さっさと出る!」

 

他のメンバーの背中を押し、楽屋から追い出してしまう。

静かにドアを閉め、香はこちらに向き直る。

 

「んふふvvお疲れ様vv 沙那ちゃんv」

そういって、ぎゅうっと抱きついてきた。

 

「ちょっと!暑苦しい!」

香はにんまり顔をしながら、指を折って数を数えていた。

 

「これで、今月の支払いは間に合うわ。地球のマネーって本当に素敵ねv」

 

「おかげで私はぐったりですけど?」

「まま、そう言わずv ちゃーんとお礼するわよんv」

 

「ケーキなんかで騙されないからね!」

「ジョシコーセーはケーキが好きなんでしょう?」

「イチナー!」

 

きゅ?としたような顔に腹立てて、飛び掛ると香はクルンとジャンプして

兎のような猫のような動物へと変化した。

 

「ボーリョク反対だお!」

 

一那 香の正体は宇宙人のイチナー。

一般女子高生であった私をイケメンアーティストに変身させ、

母星でこさえた大借金を支払うため、私をこき使っている。

 

彼の星にとって、地球のお金の価値はすごいらしい。

例えば1円の場合、向こうでは小さなダイヤモンドぐらいだとか・・・・・・。

 

にしたって、これだけ人気を博している「Eulalia」の売り上げでも

なかなかに返しきれないのだから、どんだけ大借金したんだろうか。

 

 

「とにかく、ホテルに帰ろうお。沙那ちゃん」

 

イチナーの小動物の姿が本当の姿かどうかはわからないが・・・・・

 

「語尾に「お」をつけるな。うっとおしい」

そう悪態をついて、ブツブツ呟きながら楽屋を後にした。

 

 

 

 

 

ああ、神様。

願いが叶ったとして、これはあんまりです。

説明
HPで連載している創作小説です。
一部を載せてみました。
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タグ
オリジナル 変身モノ アイドル 恋愛 

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