真・恋姫†無双 董卓軍√ 幕間第六話後編
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音々音 幕間

 

 

 

「ここで騎兵隊を押し出し、左の陣を抑えるです!!」

 

 

「くっ!!…なかなかやるようになったじゃない。でも、まだまだ詰めが甘いわ!!左陣は取らせないわよ!!」

 

 

今、軍議の間では董卓軍の誇る二大軍師の手に汗握る応酬が繰り広げられていた

 

「ねね、頑張れ!!あともう一頑張りだ!!」

 

「詠ちゃん!!頑張って!!」

 

俺と月はそんな二人に精一杯の声援を送り続ける

 

…何故こんな状況になったかといえば、事の発端は数刻前に遡るのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

「将棋大会?」

 

詠が面倒くさそうに答える

 

「そうです、将棋大会なのです!!そこで詠とねね、どちらがより優れているかをハッキリさせるのです!!」

 

ビシッ!っと詠を指差しつつ宣言するねね…その発言を受け、更に面倒くさそうに詠が言う

 

「どっちが優れているかって、あんたいつも私に惨敗しているのによく言えたものね。それに、それだけなら何も大会にしなくたって…」

 

「まあまあ、詠」

 

あまり乗り気ではない詠を宥めつつ俺が話しに入っていく

 

「将棋は軍略にも通じるんだろ?だから一回、武官文官の中で誰が一番強いのか試してみたいじゃないか。今は冥琳さんもいるし、詠にとっても相手に不足はないと思うけど?」

 

「だからって、仕事があるでしょ。そんなの月が認めるはず無いじゃ…「私も誰が一番か、興味あるなぁ」月!?」

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以外に乗り気の月に驚きを隠せない詠…実は事前に月には話を通してあり、口裏を合わせてもらっているのだ

 

「月だって乗り気だし、急ぎの仕事も終わらせてあるしな。それに、優勝者特典だってあるんだぞ?」

 

そういって俺は何とか詠を説得しようとする

 

…実の所、今回の発案は打倒詠に向け特訓してきた俺とねねの二人がどうせならそれにふさわしい舞台を、という考えから生まれた物だった

それで月に相談した所、皆の軍略を確かめるためにも有用だという事で大会を開こうという話になったのだ

 

「でもね〜。あんまりやる気が出ないわね」

 

ただ、今回の最重要人物であり、俺達のターゲットである詠が参加を渋っているのが現状だった

 

 

「…つまり、詠は公式の場でねねに敗れるのが怖いのですね?」

 

 

「…なんですって?」

 

 

「それならば仕方ないのです。今回の優勝特典〈皆に願い事を一つ叶えて貰える権利〉はねねが戴くです」

 

ねねが肩をすくめて挑発する

 

「分かったわ!!参加してやろうじゃない!!あんたなんか軽くひねってやるわよ!!」

 

その挑発に耐え切れず詠が叫ぶ…軍師が挑発に乗せられるって言うのもどうなんだろうか

まあ事がうまく運んだのでかまわないが

 

「それじゃあ、皆を呼んでさっそく始めましょうか」

 

そうして皆を軍議の間に集め、董卓軍大将棋大会が幕を開けるのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

…こうして冒頭の場面へと繋がってきたのだった

 

ちなみに対戦方式はトーナメント勝ち抜き方式になっており乙ブロックが俺対詠、ねね対華雄

甲ブロックが恋対雪蓮、霞対冥琳となっており一回戦の勝者同士の戦いにより各ブロックの代表を決め、甲乙の代表同士で決勝という流れになっている…ちなみに翠達は現在涼州へ帰還しており不在、月は主催者兼、観覧者だ

俺達のブロックは詠、ねねが順当に勝ち進み、今は乙ブロックの代表決定戦をしているところだった

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「ほらほら、さっきまでの勢いはどうしたのかしら?」

 

「うぐぐ、今は我慢の時なのですぞ!!」

 

板状を見ると先ほどまでとは打って変わって、詠がねねを追い詰めていた

 

「今の所は詠ちゃん優勢ですね」

 

「いや、それは違いますな。ねねも上手く凌いでいますから、今は五分五分といった所でしょう」

 

月と華雄、俺の三人の試合を食い入るように見つめていた

 

(頑張れねね!!いつもの詠ならこの後…!!)

 

「これでどう!?ねね!!」

 

自信満々に一手を放つ詠

一方ねねはその一手を受け、ニヤッと微笑む

 

 

「…とうとうかかったのですな!!お前の攻め手は読んでいたのですぞ!!」

 

 

詠の手に対してねねが駒を進める

それを受けた詠は焦りを顔に出して叫ぶ

 

「なっ!!…僕とした事が、ねねに動きを読まれていたとでも!?…で、でも、まだ右翼が…!!」

 

「そちらも対処済みなのです!!」

 

その後も二人の攻防の応酬が繰り広げられる

しかし、一度勢いに乗ったねねは容易には止められなかったのだった

 

 

 

「これで、詰みなのです!!」

 

 

 

バチンッっと音を立てて駒を打つねね

それから数十秒の時が流れ、詠がボソリと呟いた

 

「…ないわ」

 

「え?」

 

「無いって言ってるでしょ!!僕の負けよ!!」

 

そういって敗北宣言をする詠…それを聞き、俺とねねは歓喜の声を上げた

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「…や、やったのですぞーー!!とうとう詠を倒したです!!」

 

「やったな、ねね!!」

 

「一刀との特訓の甲斐があったのです!!やったのですぞーー!!」

 

「ふ、ふん!!今日はたまたま調子が悪かっただけよ!!」

 

そういって負け惜しみを言う詠…月はそんな詠をあやすように頭を撫でる

 

「詠ちゃんも頑張ったね。えらいえらい」

 

「ゆ、ゆえ〜〜」

 

そんな月に抱きついて悔しがる詠だったが、暫くすると未だ狂喜乱舞している俺達に向かって言い放つ

 

「こ、今回は負けを認めてあげるわ!!ただ、私に勝ったんだから優勝しないと承知しないわよ!!」

 

「もちろんです!!詠を破ったねねに敵は無いのですぞ!!周公瑾だろうとおそるるに足らずです!!」

 

「そういえば、甲枠の方は誰が勝ち進んだんだ?」

 

そういいつつもう一つの机に近づいていく…まあ、順当な所で言えば冥琳さんだろうけど

そうして机を覗き込む…するとそこには信じられない光景が広がっていた

 

「…勝った」

 

「なっ!!……私の負け、だと…!!」

 

「え!?」

 

なんと甲枠を勝ち進んできたのは…我らが誇る飛将軍、恋だった

 

「な、なんと!!決勝の相手は恋殿ですか!?」

 

「…ねね。正々堂々と、勝負する」

 

そういって手を差し出す恋

ねねは最初こそ呆然としていたものの、その手をしっかりと握って答える

 

「相手が恋殿であれば敵に不足は無いのです!!ただ、全力で行かせてもらいますぞ!!」

 

「…勿論。こっちも全力でいく」

 

そういって決勝戦を始める二人…ただ俺は、恋がどうやって勝ったのかが気になって冥琳さんたちに話を聞いてみることにした

 

「え?恋ってそんなに強かったの?」

 

「…分からん」

 

「は?」

 

憔悴しきっている冥琳さんから返ってきた答えに思わず聞き返してしまう俺

それを見かねてか雪蓮と霞が代わりに答えてくれた

 

「恋は強いって言うか…正直、動きが全く読めないのよ。それでいて、いつの間にか追い詰められてて…私の勘も全く通じないんだもの」

 

「ありゃあ、考えて打っとるっちゅーより勘で動いとる感じやな。特に、軍師みたいな理詰め型じゃ太刀打ちできへん…」

 

「なっ!!なぜなのですかーー!!!」

 

霞が喋っていると後ろからねねの叫び声が聞こえる

そちらを見ると、いつもの無表情より心なしか誇らしげな恋と…机につっぷしてしまっているねねがいた

 

「…どうやら終わったようやな」

 

二人の態度だけで、盤を見なくても勝敗は明らかだった

 

「恋の、勝ち」

 

「ま、まさか恋殿に負けるとは…!!いくら尊敬する恋殿相手とはいえ、納得できないですぞーーー!!!」

 

ねねの悲痛な叫び声が軍議の間に響き渡る

こうして、第一回董卓軍大将棋大会は恋の優勝で幕を閉じるのであった

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恋 幕間

 

 

「…落ち着いて考えてみると、凄い事になってるよなぁ」

 

俺は目の前の光景に対して呟く

俺の視線の先には…董卓軍武官文官の全員と雪蓮、冥琳、更には恋の家族である動物達の全てが中庭に集まり木陰で昼寝をしているという圧巻の光景が広がっていた

月と詠は二人寄り添いながら穏やかに寝息をたてているし、ねねは愛犬の張々に抱きついて眠っていた

華雄は金剛爆斧を傍らに置き木にもたれかかって眠り、雪蓮は冥琳さんに膝枕をしてもらい幸せそうに寝ていたし、その冥琳さんも疲れが溜まっていたのか熟睡していた

霞なんか酒瓶を抱えてほろ酔いで眠っていた

 

「まあ、優勝者の要望だから仕方ないんだけどな」

 

この、ある意味異常事態になった理由を語るには先ほどまで行われていた将棋大会終了時のやりとりまで時を遡る必要があるのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

「第一回将棋大会の優勝者は恋さんです。おめでとうございます、恋さん」

 

月が恋にねぎらいの言葉をかける

 

「ん…。ありがと、月」

 

恋はその言葉を受け、少し誇らしげに答える

 

 

「う〜、恋殿相手なのですから仕方が無いですが…それでもやっぱり悔しいのです〜!!」

 

 

「あんたは僕に勝ったからいいでしょ…。僕なんて、全く良いとこなしだったんだから…」

 

 

「分からん…。未だに何故負けたのかすら理解できん…」

 

…後ろのほうから我らが軍師様たちの負け惜しみの声が聞こえるが無視だ

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「それで恋さん。優勝者には特典として、参加者の人たちにお願い事をする権利が与えられるんですが…なにか、希望はありますか?」

 

月達もそんな声は華麗にスルーしつつ、ご褒美の話に移っていく

 

「……………ん」

 

月の問いに暫く悩んだ恋だったがどうやら決まったようだった

 

 

 

 

 

「それじゃ、皆でお昼寝する」

 

 

 

 

 

「「「「「「「「……は?」」」」」」」」

 

 

 

 

 

恋の全く予想外の答えに皆が同じ反応で聞き返す

 

「恋と、皆と、セキトたちと…皆で、お昼寝」

 

「い、いえ。意味は通じてるんですけど…」

 

自分の発言が通じていないと思ったのか、もう一度同じ内容の発言をする恋に狼狽しながらも月が返す

 

「ま、待ちなさいよ!この後は皆仕事が…!!」

 

いち早く呆然状態から抜け出した詠が反論をする…しかし恋はそんな詠を見てボソッと言った

 

「勝ったのは、恋。詠は負けたんだから、黙ってる」

 

「っ!!…うう、まさか恋に口論で負けるなんて…!!」

 

恋の一言に打ちひしがれた詠はその場に手を突いて俯いてしまう

 

「え〜と、どうしましょう…」

 

月が困ったように周りを見る

 

「私は賛成〜!!なんたって優勝者特権なんだし」

 

「ウチも賛成や!!あ、ついでに酒もええかな?」

 

雪蓮と霞が率先して賛成の意を示す

 

「雪蓮!!貴様はただサボりたいだけだろう!!」

 

「霞もだ!!大体我等はこの後警邏が…!!」

 

そんな二人を冥琳さんと華雄が諫める…だが、そんな二人にも恋の言葉が突き刺さる

「冥琳も、恋に負けた。華雄なんて一回戦負け」

 

「「うっ…!!」」

 

二人は痛いところを突かれたといった顔をして黙ってしまう

 

「月…」

 

そうして、じっと何かを訴えるような眼差しで月を見つめる恋

 

「へ、へぅ〜」

 

その眼差しを受け困ったように月がこちらを見てきた

 

「う〜ん、まあ、一日ぐらい良いんじゃないかな?仕事も差し迫った物は無いし、警邏も徐栄達に頼んで変わってもらえばいいし。…何より、恋は頑張ったんだから。どうかな、月」

 

「…そうですね。何でも願い事をかなえる約束でしたしね。…じゃあ皆、自分の仕事の引継ぎが終わり次第中庭に集合してください」

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そんなやりとりの末、こんな状況になったのだった

 

「本当に凄い光景だよなぁ…」

 

もう何度目になるか分からない感想を呟く…でも、一国の王に神策鬼謀の軍師、龍佐の才に驍騎校尉に神速の驍将、元小覇王に元大都督、それに飛将軍が動物に囲まれて昼寝をしているなんて光景を見ればこんな感想しか出ては来ないだろう

 

「…でも」

 

皆それぞれ好き勝手に眠っているのだが皆一様に幸せそうな笑顔を浮かべていた

 

 

「皆幸せそうだよなぁ…」

 

 

「…うん。皆、笑顔」

 

 

「え?」

 

 

俺の呟きに答えたのは…先ほどまで寝ていた恋だった

 

「あ、悪い恋。起こしちゃったか?」

 

そういって謝りつつ、恋の方に近寄っていく

俺の謝罪にフルフルと首を振り、恋は答える

 

「そんなこと無い。大丈夫」

 

「そっか」

 

そういって俺は恋の横に腰を下ろす…木陰にさわやかな風が吹き、とても気持ちが良かった

 

「でも、恋。せっかくのお願いがこんな事でよかったのか?」

 

俺がそう聞くとコクッと首を振り答えてくれる

 

「皆、最近忙しそうだった。たまには、お休み」

 

「…そういうことだったのか」

 

どうやら恋は皆の事を考えて発案してくれたようだった

 

「皆でお昼寝。皆幸せそうだと、恋も幸せ」

 

「…そっか。ありがとうな、恋」

 

そういって俺は恋の頭を優しく撫でる

 

「…やっぱり、一刀はあったかい」

 

「なあ、前から思ってたんだけど、あったかいってどういうことだ?」

 

始めてあった時もいっていたがどうにも意味が分からなかった俺は聞いてみた

 

「…あったかいは、あったかい」

 

「…そっか、まあいいや」

 

恋から返ってきた答えはあまり要領を得なかったが、それでもいいかと恋の頭を撫で続ける

 

そんな風に俺達の慌しかった一日は穏やかに過ぎていくのだった…

 

説明
董卓軍IF√幕間六話後編です
今作でやっと幕間が終わり、次回から本編へと戻ります
誤字脱字、おかしな表現等ありましたら報告頂けると有難いです
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コメント
moki68k様 一刀君は今回ねねの勝利にのみ標準を定めてきた為、詠さんにぼろ負けをしていますw 覇気が足らんですなw(アボリア)
kitarou様 まさにパーフェクト超人ですなw(アボリア)
あれ?一刀が詠にけちょんけちょんにやられるシーンが省略されてるw 軍師っぽいこともしたけど、多分負けて当然だと思ってそうですね。覇気がたらんですよw ねねもいつもの雪辱は一応果たせたしのんびり英気を養ってください?(moki68k)
今回の恋は、弓だけでなく、将棋まで・・まさしく最強ですな。(kitarou)
うたまる様 ねねさん今回めっちゃ活き活きしてましたねw(アボリア)
hokuhin様 気に入っていただけたようで何よりです アフターは基本考えていませんがそんな話もいつか書けたらと思います(アボリア)
ヴァニラ様 智勇に優れる天然飛将軍様ですw(アボリア)
ねねがイキイキしていて可愛かったです(うたまる)
この将棋大会、大陸統一した後でも、是非朱里や華琳達も交えて読んでみたい。(hokuhin)
さすが飛将軍!!(ヴァニラ)
弐異吐様 乱世の中では貴重な、平穏な一コマです(アボリア)
かもくん様 恋さんは何気になにやらせても高スペックですねw(アボリア)
みんなでお昼ねいいなぁ(弐異吐)
やっぱ恋は」天才ですね(かもくん)
ジョージ様 戦の合間の平穏な一コマですね 彼女達以外は皆仕事の穴埋めの為、奔走していた為誰もスナップ等は残せていませんw(アボリア)
suisei様 ねねも日々頑張っていますw 恋ちゃんは結構皆に気を配れる子ですw(アボリア)
future様 何時の日か、自分の駄作でもどなたかがイラスト化してくれる事を夢見ていますw(アボリア)
砂のお城様 ねねさんのツン成分が若干少なめで仲良しですからねw 恋ちゃんええ子ですw(アボリア)
いやぁ、日常の良い雰囲気でてますね〜♪ ・・・・誰かスナップしてないか?諭吉さんまでなら出すぜ?(峠崎丈二)
音々の成長は微笑ましいですねー^^  そして恋の願いも恋らしいですねぇ(suisei)
皆で昼寝だと・・・!?その光景を見てみたい・・・!!(future)
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