真・恋姫†無双 董卓軍√ 第二十七話
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数日後、蜀

 

 

「ふぇ〜ん…。仕事が終わんないよぉ…」

 

董卓への降伏が決まった軍議の日から数日が経ったある日、蜀王劉備はダパーっと涙を流しつつ政務に取り組んでいた

 

「桃香様。少しよろしいですか?」

 

そんな時、諸葛亮がが彼女の下を訪れたのだった

 

「あ、朱里ちゃん。帰ってきてたんだ」

 

先ほどまで泣きながら仕事をしていた劉備が瞬く間に笑顔になる

あの軍議の後、諸葛亮と?統は南蛮に赴き、戦後の事後処理を行っていたのだった

 

「はい。あちらは雛里ちゃんに任せて私は先に戻ってまいりました。南蛮の政治を安定させるのも

急務ではありますが蜀の政務もおろそかにできませんからね」

 

「朱里ちゃんが帰ってきてくれたなら大助かりだよ〜。私や紫苑さん、愛紗ちゃんだけじゃとても回らなくって」

 

そういって諸葛亮の手を取り感激する劉備

 

「最近仕事が溜まってたから簡雍さんの様子を見にもいけなかったけど、やっとお見舞いにいけそうだよ」

 

「…え?何を言ってるんですか桃香様。簡雍さんなら使者の任で董卓さんのところに…」

 

劉備の言葉を聞き、意味が分からないといった風に問いかける諸葛亮

 

「あ、朱里ちゃんは出かけた後だったから知らないかな?あの後簡雍さんが具合が良くないからって…「そ、そんなことありえませんよ!!」…え?」

 

劉備の話をきき、物凄い剣幕で諸葛亮が言う

 

「私達が南蛮に発つ時、一緒に簡雍さんも出立したんですよ!?なのに私達が発った後にそんな話がある筈がありません!!」

 

諸葛亮の話によると、あの後急ぎ出立する必要があった両軍師と簡雍は、見送り無しで出立していたという

 

「え?で、でも!!簡雍さんの代わりに、って張任さんが…!!朱里ちゃんの印が押された書簡も持ってたんだよ!?」

 

その話を聞き、一気に難しい顔になる諸葛亮

 

「…桃香様。この一件、簡雍さんの所在、張任さんの言動など怪しい部分が多すぎます。簡雍さんの捜索、そして張任に謀反の疑いありとして捕縛の許可を!!」

 

「謀反の疑いって…!!そんな、まさか…!!それに、捕まえるって言ってもそろそろ董卓さんの所に付く頃だよ!!?」

 

「そうだとしてもです!!もし私の考えが真実だとしたら、大変な事になってしまいます!!」

 

諸葛亮の剣幕に押された劉備は諸葛亮に聞く

 

「考えって何?大変な事って…!!」

 

「もしかしたら張任さんは…我等と董卓さんの開戦を目論んでいるかも知れないんです…!!」

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長安

 

 

「…以上が蜀王の決定でございます。詳しくは蜀の丞相諸葛亮が書いた書簡がこちらにありますゆえ、これをお渡しいたします」

 

俺達は長安で劉備さんからの使者との面会に臨んでいた

その使者…張任の話によると、蜀は俺達の出した条件を飲み、降伏を決意してくれたらしかった

 

(ただ、蜀の劉備さんの使者なのに、張任ってのが気になるんだけど…)

 

俺はそんな微かな疑問が気になったものの、大陸の制覇、そして月の望んだ大陸の平和が現実になったことによる興奮を抑えられなかった

 

「分かりました。良くぞ決意してくださいました、と劉備さんにお伝えください。それと、降伏といっても仲間になるんですからこれからは助け合って平和な世を作っていきたい、ともお伝えいただけますか」

 

月が張任に向かって言う…月も俺と同じ気持ちなのか、溢れんばかりの笑顔をしていた

書簡を改める詠とねね、冥琳さん部屋の脇に並ぶ華雄、霞、恋、雪蓮…皆、平和な世の実現を喜び、少しばかり浮ついているといっていいほどの空気になっていた

 

 

 

 

 

だからだろうか、俺を含め、誰もが張任が微かに発する不穏な気配に気付かなかったのだった…

 

 

 

 

 

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「…これからは助け合って平和な世を作っていきたい、ともお伝えいただけますか」

 

そんな董卓の言葉を張任は聞き流しつつ、機を見計らっていた

 

目の前の明らかに武の心得のない女子を巻き込むのは武人として忍びない…そう思いながらも決意を固める

 

元々張任は劉備が攻め取る前の蜀…劉璋が治める蜀の臣下であった

 

張任の生まれは貧しかったものの、劉璋にその才を見出されたこともあり蜀の重臣へと上り詰めたのだった

 

そんな彼だからこそ劉璋には絶対の忠誠を誓っていたし、政治に関して愚暗であった劉璋が暴政を敷いていたときも、必死に彼を盛り立てていた

 

だが、ついには劉備に国を取られ、劉璋も処断されてしまったのだった

 

蜀の老臣二君に仕えず

 

その想いを胸に果てようとしたのだが厳顔を始め蜀の将に説得され、さらには民達が劉備を熱狂的

に支持していたこともあり、劉備のためではなく劉璋が治めた蜀の民の為に生きると決めたのだった

 

蜀の為、亡き劉璋の為と張任は懸命に働いた

 

だが、そんな彼に待っていたのは…戦わずして、蜀が大国に下るといった決断だった

 

劉璋が追放されたのも乱世の習い、そう自分に言い聞かせてきた彼にとってその決断は裏切りにも等しい行為だった

 

乱世に生きる為、蜀の民を守る為といって劉璋を殺した劉備があろう事かその蜀を手土産に敵に下る

 

そんな風に張任には見えたのだった

 

(売国奴が如き所業をする劉備に、わしの命を賭け、乱世とはどういうものかを教えてやるわ!!)

 

そういって懐に手を入れつつ、張任が言う

 

 

「そうそう。董卓様に劉備殿から贈り物がありましてな」

 

 

そういって張任は、懐に隠し持っていた短刀を握り締めるのだった

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「そうそう。董卓様に劉備殿から贈り物がありましてな」

 

俺がその動きに気付けたのは、僅かながらも張任を疑っていたからだったかもしれない

奴の懐から光るものが見え、反射的にゆえに向かって駆け出す

 

「月!!危ない!!」

 

「これが蜀王からの土産だ!!董卓、覚悟!!」

 

俺が声を上げると同時、張任が短刀を構え、月に向かっていく

 

あまりの出来事に、華雄たちは一瞬動きが遅れていた

 

「きゃぁぁぁ!!」

 

張任の刃が月に迫る

 

「やめろぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

その刃が届く刹那、俺は月を庇うように立ちふさがり、張任を止めようと掴みかかる

 

「く、この餓鬼ぃ!!」

 

「ああぁぁぁぁぁぁぁあ!!」

 

取っ組み合いになるも、必死の抵抗もあってか張任を弾き飛ばす…その瞬間、硬直から解けた雪蓮が張任の首を飛ばしていた

 

(ああ、良かった)

 

その光景を見て安堵したからなのか、力が入らなくなった俺はその場に倒れこんでしまう

先ほどぶつかったときに痛めたのか、腹部から物凄い痛みを感じた

 

(はは、庇ったって言うのに、こんなんじゃ格好付かないな)

 

そんなことを考えていると、自分の視界に月たちが映る

 

「…ずとさん!!か…さん!!」

 

月が泣きながら何かを叫んでいるが、上手く聞き取れなかった

 

(どうして泣いてるんだよ、月。俺は大丈夫…)

 

そう思い、起き上がろうとするのだが全く力が入らない

そんな自分に苛立ちつつ、痛む腹部に目をやる

 

(…ああ、なるほどな)

 

それを見ると、何故起き上がれないのかが妙に得心できてしまった

 

 

 

 

 

 

俺の腹部には…赤黒く染まった、無骨な刃が突き立っていたのだった

 

 

 

 

 

 

(俺がこんな有様じゃあ、華雄に命を粗末にするな、なんて怒れない、よな…)

 

遠くなる意識の中、そんな愚にも付かない事を考える

 

(月、泣かせて、御免な…)

 

そうして俺の意識は途切れてしまうのだった…

 

説明
董卓軍IF√二十七話です
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コメント
深緑様 元主への憧憬、昔の国への信仰が狂信へと変わってしまった結果なのかもしれませんね(アボリア)
想いが募りすぎ止まらなくなった時、暴走が始まる。そしてそれは時として最悪の道筋を開く・・・か。狂気は怖い;(深緑)
K-999様 正論と感情は一致してくれるのでしょうか? 次話を投稿しましたので、そちらをご覧ください(アボリア)
暗殺しても劉備陣営に何の得もないことは解り切っているので、ここはグッとこらえて攻め込むのは自重すべきだと思いますねー。死ぬのは兵士で悲しむのは遺族で苦しむのは民ですから。上手い落とし所は無いものか。一刀が生きてりゃ何とでもなりそうですが。(K-999)
瓜月様 爆弾か、花火か とても良いたとえだと思います ちなみに作者は物語という物は花火(ハッピーエンド)であってこそだと思っておりますw(アボリア)
PON様 桃香さんは確かに謝って話し合いで解決したいでしょうね 彼女の思いは伝わるでしょうか あと、PON様がおっしゃるようにこの世界では確かに死にさえしなければ許してもらえそうですね ですがそんな甘さのある世界というのもいい物だと思います(アボリア)
サイト様 確かに武官勢は怒り心頭でしょうね 彼女達もどのような決断を下すのでしょうか(アボリア)
mokiti1976-2010様 両王の決断はいかに!?といった所でしょうか 今後の展開にご期待ください(アボリア)
桃花は必死で誤って許してもらおうとするんだろうけど周りの人々が止めるだろうしなぁ…案外この世界だと必死になって謝れば一刀が死んでない限り許してもらえそうな気がするんですがね(PON)
まずいな、もし月や詠がやらなくても周りが黙っちゃいない(サイト)
この結果を聞いた桃香がどうするのか?月は開戦に踏み切るのか?とても気になります。(mokiti1976-2010)
hokuhin様 せっかくの彼女の決意は踏みにじられてしまいましたが、この後蜀はどのような動きを見せるのか 次回更新をお待ちください(アボリア)
ジョージ様 一刀くんは平和を望んでいるでしょうが、月さんたちはその思いに応えることができるでしょうか(アボリア)
砂のお城様 もしよさそうな案があれば挙げて頂けるとありがたいですw(アボリア)
砂のお城様 正しい戦なんて無いでしょうが、どのような選択を取るのでしょうか? 次回更新も頑張ります! あと、国号はまだなく、平和になった暁に付ける予定なのですが今の所全く決まっておりませんw(アボリア)
sion様 おっしゃる通り、月さんはいくら優しいとはいえ、全てを許せるわけではないでしょうね ちなみに張任さんはこれでお役御免です(アボリア)
ZERO様 今まで董卓軍は自分から戦を仕掛けた事が無いですが、今回はどうなるでしょうか(アボリア)
邪眼の魔王様 最早開戦は避けられないのでしょうか 更新頑張ります!(アボリア)
PON様 自分も張任さんは好きな武将なんですが、いつも悪役は下種なキャラばかりだったので少し変えた結果張任さんを使う事にしました 彼に限らず、オリジナルモブキャラはあまり扱いが良くないですがご容赦ください(アボリア)
うたまる様 月さん始め、董卓軍のメンバーの怒りはどのような結果をもたらすのか 次回にご期待ください(アボリア)
吹風様 張任さんは自分の主君(劉璋)の国が、戦わず敵国に奪われるのが我慢ならず周りが見えていないのでしょうね(アボリア)
moki68k様 月さん暴君化…どうでしょうか(アボリア)
yu- 様 ひねくれた意見大歓迎ですw 確かにいくら使者とはいえ、ボディチェックは重要です(アボリア)
suisei様 はたして月はどのような決断を下すのでしょうか(アボリア)
黒幕様 あと、誤字修正いたしました ありがとうございます(アボリア)
黒幕様 このような展開となってはたしてどのような結末に至るのか? 次回にご期待ください(アボリア)
kurei様 はたして全面戦争となってしまうのか!? 次回更新をお待ちください(アボリア)
田仁志様 間違い上等ですww(アボリア)
KU−様 お返事は遅くなってすみません 次回は彼について触れるかも!?(アボリア)
samidare様 だれかDr,Kを!! …余談ですがこれだけ聞くと野球みたいですねw(アボリア)
まさか暗殺で開戦させる気だったとは・・・ これで開戦となったら桃香の決断も無駄になちゃうな。(hokuhin)
これは・・・・・・・・史実のような暴君の降臨か?一刀の意思をちゃんと理解しているなら、そうはならないとは思うけど。しっかし、蜀メンバーは根本的に『信じる』という行為を勘違いしている節があるな。(峠崎丈二)
月なら一刀が私怨での戦を望まないことは理解できると思いますが・・でも月は神でも仏でもありませんしね、感情を抑えきれず戦に・・なんて結果でも致し方ない気がします。もしくは張任がまだなにか仕掛けているのか・・気になりますね。(Sirius)
ふむ、怒りに任せての戦いになってしますのかねえ。次も楽しみにしています。(ZERO&ファルサ)
更新おつです^^これは蜀との開戦は免れそうもありませんね><月達の怒りで蜀の皆がどうなるか楽しみにしていますw(邪眼の魔王)
うー張任はもっと高潔でいてほしいなぁ…まぁ劉備に降っている時点で演技の張任とは違う人物か…しかも首落としちゃったし。だれかも書いてますが開戦することで民や兵が死んでいくのにも気づかずに何が蜀の民のためだ、売国奴はお前じゃないか、片腹痛いわ!と誰かにSEKKYOUしてもらって絶望と後悔の中惨めに死んでほしかったなぁ…(PON)
更新お疲れさまです。 あーあ、やっぱりこういう事になってしまいましたね。 これは明らかに桃香の判断ミス 月達の怒りが行き過ぎない事を祈ります(うたまる)
やはり張任の目的はこれだったか。けど手段に暗殺入れた時点でダメだよなぁ、別に月は悪くないんだし…まあ開戦狙いならこれしかないのも確かですが。しかし張任、お前やらんでもよかった戦争で死ぬ蜀の民はいーのかよ(吹風)
月はいままで、せっかく一刀のハーレムを作ろうと頑張ってきたのに(ぉ これは史実のような暴虐董卓光臨か? 部下の管理が出来てない蜀も悪いですがみんなにげてーーw(moki68k)
あーあ、あーあ やっちゃったよ張任が、て感じですww ボディーチェックをしない董卓軍がわるいなんて捻くれた見方をするのは私だけかな。しかし物語りも終盤、終わりが見えてくると寂しさがこみ上げてきます(yu-)
悪い予感が的中してしまった・・・   このことがきっかけで開戦してしまうのか? そして一刀の安否は?  続き楽しみにしております^^(suisei)
書簡が偽物だと思ってたら本物だったのか。その替わりにこんな展開になるとは・・・ 報告です。4P そんな“具”にも付かない=>愚(黒幕)
想定した中では最悪の事態になりましたね・・・一刀を想う董卓勢は勿論のこと、英傑である華琳や雪蓮も暗殺なんていう卑怯な真似は蜀の総意で無かったとしても絶対許さないでしょうね・・・(kurei)
あ、いっけね間違えたΣr(‘Д‘n)(ペンギン)
早い更新でびっくり。医者王がどのタイミングで来るかが鍵ですね(KU−)
医者王Kを呼べーーー!!(samidare)
田仁志様 勇者王!?w(アボリア)
eni_meel様 この先の展開は次話をお楽しみに!拙い文ですが執筆も頑張っていきます!!(アボリア)
勇者王かも~ん♪♪(ペンギン)
あぅ・・・・、やっぱりこうなるのですね・・・・・・。この先どうなってしまうのでしょうか・・・・。そして一刀の運命はいかに。執筆頑張ってください。(eni_meel)
ほわちゃーなマリア様 早く、早く彼を!!誰か医者王を呼んで!!(アボリア)
村主様 早めのアップに気をとられすぎて内容が短い&稚拙になってしまった感がありますが早く投稿したかったのでこうなりました こうなったら早くあの医者王を!!(アボリア)
一刀を刺された理由で、開戦しそうな予感が・・・って、誰か!彼を、彼を召喚してくれーー!!(ほわちゃーなマリア)
早めのアップお疲れ様です そう来ましたか こうなったら開戦は免れなくなりましたな(どうあれ張任の思惑通りになったと) 蜀側も「知りませんでした」では済みませんし・・・早くスーパードクターKを召喚せねば!(村主7)
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