名勝負数え歌?
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 その日の彼は馬鹿な方の『彼』だった。

 

「僕はっ! 恭介のっ! かませ犬じゃないんだよっ!」

 そう叫んで幼なじみに殴りかかった彼が馬鹿でない

わけがなかった。

「ま、待てっ。それはリキだが、リキじゃない――う

ぼおおおっ」

 なまじ常識があったばかりに突っ込まずにいられな

かった最強の男は(片手がギブスだったこともあって)

ラリアット一発で倒された。

 いきなりの大番狂わせである。

「おおっ、お前もやりゃあできるじゃねーかっ。よおし、

次はオレ――ぐばあああ」

 返す刀、いやラリアットでリトバス世界のブルーザー

・ブロディをも撃破。最初の勝利がフロックでないこと

を証明する。

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 今日の彼は馬鹿だが、ただの馬鹿ではなかった。ただ戦い、ただ逆らい、ただ革命する。

そんな語り継がれるべき馬鹿であった。

 けっしてベビーフェイスにはなれない硬骨と反骨を抱いて、彼は戦い続ける。

 

「ふっ。そんな激情のみの突撃でこのお姉さんが――ぬあっ。しまった!」

 そんな彼にはもはや相手が女性であるか否かなど些細なことだった。

「ま、まて、少年っ! 今日の少年が強いことは認めるが、女性相手に――というかスカ

ートの相手にさ、サソリ固めはどーかと……くっ、はああああああっ」

 

 戦い続ける彼には友の言葉は届かない。

 だから戦いは終わらない。名勝負数え歌を止めることは誰にも出来ない。

 三連勝の後、一敗二分け。すべて勝てるわけではなかった。

 その戦いはまるで蹴りを禁止された猪木対アリ戦を彷彿とさせる激戦だった。

 彼にも勝てない相手がいる。それは勝負の世界では当然で、だからこそ、敗れるからこ

そ、彼はさらに強くなって立ち上がった。彼は負けてはいられない。立ち止まってはいら

れない。だから彼は戦う。戦いつづける。

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「アレ? ど、どうして。あたしにはよーしゃなくサソリィィィィィっ」

 復活の一勝はフェイバリット・フォールドだった。大丈夫だ。相手を見てやっているか

らたぶん大丈夫。

 その勝利がついに宿命の対決への道を開いた。

「ふっ。お前を甘く見ていたようだ。だが、俺はお前をかませだなん――ちょっとまて、

どうして俺もサソリなんだ。……一敗した時に約束させられた? なんだそれは? いや

そんなことはどうでもいいが、ぬああああっ」

 

 宿命の対決にに終止符を打った彼は、文字通り最強の男となり、革命したり維新したり

出戻ったり出て行ったりを繰り返した。

 反抗すること逆らうこと。それが彼の存在理由だといわんばかりに。

 誰も彼を止められない。彼を止めることが出来るのは彼の魂を知る人間だけなのだ。 

 故にそんな彼の快進撃は地下へと進み

 

「ふんぬがあああああっ」

 そこで最後の敵との激突し

「す、スカートの女学生相手にサソリ固めとは掟破りもきわまってるわね……」

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「ま、まさか。ロープがあるなんてっ だが、サソリから脱出出来てもっ」

「だからなによ?――ふんっ」

 彼女は組み合わせた手を巧みに捌いて背後をとる。とった時には両腕を固めていた。

 女性相手のサソリが掟破りなら、石畳の上でのコレはまさしく禁じ手。

「いっぺん死んでっ 頭を取り替えてこいっ ――飛龍っ」

 フルネルソンにロックした肘を胸に抱えて、後ろへもろとも振り上げる。

「原爆固めえええええええっ」

「うわああああああああっ」 

 

――てなカンジに、たった一人、『正しい』対応をしたパートナーの手でやっと終結した

のだった。

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