真・恋姫?無双  魏国獣耳騒動顛末記 後
[全13ページ]
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凪、季衣、春蘭、霞、風が犬、猫のようになってしまったこの事件。

一刀が虎琥を協力者として面倒を見ることとなってしまった。

いろいろと危ないことになりかけもしたが順調(?)に面倒を見ていた。

そして稟、流琉、真桜、沙和がこの事件の手がかりを掴んでいるころ…。

 

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「季衣!ごめんてば!!って待てって!」

「ううう〜!!わう!!!」(ダッ!)

「季衣〜!?」

 

季衣が脱走した。

先ほど、一刀を襲った?ことで怒られたことと、一刀が遊んでくれないことに業を煮やしたのか、扉を破って外へ行ってしまったのだ。

 

「隊長はここにいてください!隊長が行くと逆効果です!」

「はい…」

「では行ってきます!季衣ちゃーん、待ってー!!」

 

二人の声が次第に遠くなる。

結構遠くに行ってしまったようだ。

 

「はあ…後で謝らないと…」

「わう…?」

 

一刀は頭を抱えて座り込む。

そんな一刀のそばには凪が寄り添うように座っている。

 

「はははっ、…凪は退屈じゃないのか?」

「わう!」

 

凪は不満の無いかのように尻尾を振る。

 

「そっか…ありがとな」

「わう♪」

 

一刀が凪の頭を撫でていると猫達が起き上がって来た。

先ほどの騒ぎで目を覚ましたのか、春蘭と風が一刀の方へ向かう。

霞は自由気ままに遊び始めている。

 

「あらら、起きちゃったか」

「にゃ?」

「うなー…」

 

風は一刀の膝の上に移動しそのまま膝の上で眠りだした。

一刀はそんな風を見て思わず苦笑してしまう。

 

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「ははっ…まったく、風は(むにゅ!)って!?」

 

とその時、一刀は背中に柔らかな感触を感じた。

一刀は首だけを後ろに回して背後を見る。

 

「うにゃ〜♪」

「春蘭!!」

 

春蘭が楽しそうに一刀の背中にかぶさるように乗っかっていた。

彼女は今、鎧を着けているわけではない。

そのため一刀の背中には女性特有の柔らかい部分がくっついていた。

 

「しゅ!春蘭さん!?ちょっと(むに!)はう!!?」

「ふにゃあ?」

 

当の本人は恥ずかしげもなく体をくっつける。

一刀は動こうにも膝に風が眠っているから動けない。

そして、春蘭の女性特有の柔らかさに一刀の理性が葛藤を始める。

 

(ダメだぞ、北郷一刀!理性を保(ふにゃ!)うお…!)

「う〜にゃにゃ♪」

 

一刀の中で理性の城壁が攻撃をうける。

例えれば十万の軍隊が一刀の精神の城壁に登り、城壁の門を開けようとする、と言った所だ。

一刀は精神の門と城壁の守りを固める。

 

(耐えろ!俺!ここで崩れると俺の命が危ない!!)

 

ここで彼女らに手を出せば間違いなく首と胴が離れるだろう。

というかそのために監視役をつけたのだ。

今はいないが。

 

(華琳たちの信頼にこたえるために(ふにゃふにゃ!!)うおお!)

 

しかし、敵の武器は強力だった。

危うく一刀は心が折れそうになる。

落ちまいと一刀は折れそうな心に喝を入れる。

だが次の瞬間、

 

「にゃん♪」(ぺろ!)

 

春蘭は一刀の首筋を可愛らしく舐めた。

 

-4ページ-

 

プチッ!

 

一刀の中で理性の城壁に敵の旗が立った。

そして、一刀は後ろにいる春蘭に手を伸ばそうとしたその時。

 

ドンッ!

 

「うわ!!」

「フニャ!?」

 

何かに突き飛ばされた。

膝の上にいた風も一刀と一緒に突き飛ばされる。

 

「うにゃ…」

「いてて…大丈夫か風?なんだ…?」

 

一刀を突き飛ばした犯人は…

 

「がううぅう!!」

 

凪だった。

凪は牙を立て春蘭に飛びかからんとしている。

 

「ふーーーーっ!!」

 

春蘭も凪を敵と見たのか、威嚇を始める。

春蘭としては遊びの邪魔をされたところだろう。

凪はおそらく嫉妬の様なものに違いない。

二人は(二匹?)一触即発の状況だった。

 

「春蘭…?凪…?ちょっと落ち着け(バキィ!!)ええ!!?」

 

そして一瞬のうちにぶつかり合う。

一刀が止める間もなく、凪と春蘭がケンカを始めたのだ。

もみ合いながら転げ回り、春蘭が爪を振るえば壁が切り裂け、凪が突進すれば机は砕ける。

とりあえずとんでもない状況になっている。

 

(前に秋蘭が猫になった春蘭に引っ掛かれたらと言っていたけど…マジかよ!)

 

こんなものが当たったら一瞬にして体が三等分されかねない。

一刀は二人の争いを見ていることしかできなかった。

 

「にゃーーー!!」

「がるるるる!!!」

 

ドガ!

バキ!!

斬!!!

 

「あ…壁が裂けた、てかこのままじゃ部屋が持たない!!風!ごめん!!」

「ふにゃ〜?」

 

この部屋の危機を感じ一刀は風を抱え部屋を脱出しようとする。

部屋を出て、その場から離れる。その時、一刀は気付く。

 

「霞が居ない…?」

 

その時、遠くから声がする。

 

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「大変だぁ!!張遼将軍が酒蔵を襲撃したー!!」

「って今度は霞かよ!!」

 

どうやら壊れた壁から逃げたようだ。

 

「てか霞は猫になっても酒好きかよ!そこまで飲みたいのか!?」

「隊長!?」

 

と、自分を呼ぶ声が聞こえる。

 

「これは何なんですか!?それに霞様が酒蔵襲撃って!」

「虎琥!?」

 

そこへ虎琥が季衣を連れて帰って来た。

季衣の首には首輪がつけられ、鎖で繋がれている。

虎琥はこの現状に唖然とする。

 

「隊長!一体何をやったんですか!」

「俺のせい!?」

「それ以外ありません!!」

 

断定された。

原因は確かにそのとおりではあるが一刀はわからないだろう。

そんなことをしているうちにとうとう春蘭と凪の二人は表に飛び出してきた。

一刀達が使っていた部屋はボロボロで今にも崩れ落ちそうになっている。

ちなみに春蘭と凪の衣服も互いの爪と牙でボロボロになっている。

 

「ふーーー!!」

「がるるる!!!」

 

二人の争いはさらにヒートアップし、庭の木々は切り裂かれ地面はえぐれとんでもないことになりだした。

このままでは後で庭園?無双を呼ぶ必要があるだろう。

 

「ねえ…虎琥?」

「なんですか…」

「これ、止めれる?」

「…死んじゃいますってば…て凪様ってよく見ると気、使ってますね」

「ホントだ…はぁ…」

「あ、…部屋が…」(がらがら…どしゃーん!!)

「わん!」

「ふにゃ〜〜…すー…」

 

この現状にただ、ため息をつく一刀と虎琥。

そんな二人を尻目に虎琥に首輪をつけられている季衣に一刀にお姫様だっこをされて眠る風だった。

 

「あ!隊長!春蘭様と凪様が…!」

「あっちは…華琳の執務室が!」

 

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その一時間ほど前、華琳たち。

 

「華琳様、軍の調練のことで報告が来ています」

「わかったわ、そこに置いといて」

「はッ」

 

通常の三倍並みに忙しく仕事をしていた。

やはりあの五人が使えないことで大きく政務は停滞しているようだ。

 

「ふう…一刀、ちゃんとあの子達の面倒は見ているのかしら…」

「ふふッ…」

「なにかしら?秋蘭、その笑いは」

 

華琳はそばで笑う秋蘭に問いかけた。

 

「いえ、気になるなら確認に行かれてはどうですか?」

「き、気になってるわけじゃないわよ///」

「そうでしたか、これは失礼」

 

しっかりと気にしている華琳とそんな主で遊ぶ秋蘭だった。

とそんな時、

 

「季衣ちゃーん!待ちなさーい!!」

「わう!!」

 

目の前の戸の向こうを季衣と虎琥が駆け抜けて行った。

 

「…さっそく失敗していますね」

「全く…あのバカは…」

 

仕事の失態を二人に見つけられた一刀だった。

 

「仕方ないわね…秋蘭、虎琥を手伝ってあげなさい」

「御意…」

 

そういうと秋蘭は戸を開けて外へ行った。

 

「虎琥、私も手伝おう!」

「秋蘭様!?ありがとうございます!」

 

二人の声は次第に遠くなっていく。

華琳はそんな光景にため息をつきつつも笑顔でいた。

 

(やれやれ…)

 

それからしばらく華琳は政務を続けた。

 

「ふう…もうこんな時間なのね、誰か!」

「はい」

 

華琳が人を呼ぶと侍女が現れる。

 

「お茶を用意してもらえるかしら?」

「わかりました」

 

侍女はそう答えると部屋を出て行った。

少しの間休憩でも入れよう。

そう思い椅子に深く腰を掛けなおす。

その直後、何か騒ぎ声が聞こえてきた。

華琳が何事かと思っていると兵が入ってくる。

 

「大変です!」

「何事なの!?」

 

華琳が勢いよく椅子から立つ。

 

「張遼将軍が酒蔵を襲撃しております!!」

「…はぁ?」

 

何が起きたかと思えば今度は霞の酒蔵襲撃だった。

おそらく一刀が部屋から逃げた霞に気付かなかったのだろう。

 

(これはお仕置きが必要ね…)

 

華琳は額に青筋を浮かべながらそんなことを考える。

 

「いかがいたしましょう!」

「北郷一刀が城の西側の方にいるはずよ、一刀に任せなさい!!」

「は、はい!!」

 

華琳の形相に驚いた兵は慌てて部屋を出て行った。

部屋には華琳一人となった。

 

「全く…あのバカは…」

 

そう言うと華琳は椅子に座る。

 

 

「…お茶が遅いわね」

 

何かおかしい、そんなことを考えた、

その時だった。

 

 

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(殺気!?)

 

ヒュ!!

風切り音が聞こえる。

華琳はすぐに体を翻し机から離れ、机の方を見据えた

そこには一本の短剣が刺さっていた。

スタッ…

天井から机の上に黒ずくめの姿をしている者が下りてきた。

華琳は相手を見ると体を半身にして身構える。

 

「何者!」

「…」

「答えるつもりはないのね…」

 

刺客は懐からもう一本、短剣を取りだす。

対して華琳は無手。

愛用の大鎌「絶」は机の向こうにある。

 

(武器が手元にない…!)

 

華琳が心の中で舌打ちをする。

無手では華琳と言え、どうしても不利になる。

華琳がこの場をどう切り抜けるか、思案しているその時だった。

ドバン!!!

突然戸が破られた。

 

「うにゃーーー!!!」

「がるるる!!!!」

「へ…?」

 

春蘭と凪が戸を吹き飛ばしながら現れたのだった。

吹き飛ばされた戸はそのまま刺客に激突。

暗殺者はもんどりうってしまう机の向こう側に消える。

当の春蘭と凪は再び部屋の外に消える。

 

「何事なの、これは!!」

「華琳!大丈夫か!!って…どうしたんだ?」

 

そこに一刀と虎琥がやって来た。

一刀は風をお姫様だっこで抱きかかえて、虎琥は季衣に首輪をして紐でつないでいる。

華琳はひとまず一刀達の方に移動する。

 

「…どうしてあなたは風を抱いているのかしら?」

「緊急だったんだよ!仕方ないだろう!」

「お二人とも!!危ない!!」

 

華琳と一刀が言い合っている時、虎琥が叫び二人の前に出る。

虎琥は二人の前に出ると愛用する細身の剣を抜き振るう。

 

キン!!キン!!

 

虎琥の足元に短剣が落ちる。

黒ずくめの投げた短剣だった。

 

「どうしたんだ!?虎琥!」

「誰かいます!」

「私を殺しに来た刺客よ!!」

「「…ッ!」」

 

華琳は一刀に答えた。

一刀は机の方を見ると黒ずくめの姿をした人間を見つけた。

その手には短い剣が握られている。

 

「刺客!?」

「チッ!」

「曲者です!!だれか!!」

 

虎琥は兵を呼ぼうとするも誰も来ない。

一刀が外に出て、風を部屋の脇に寝かせると一緒に周囲を確認した。

外にいるのはいまだにケンカしている春蘭と凪だけだ。

 

「だめだ!さっきの騒ぎで兵がいない!」

「何をやってるのよ、あなたは!!」

「お二人ともケンカは後で!…来ます!!」

 

二人がまた言い合いを始めた時、虎琥が叫ぶ。

刺客が虎琥と華琳、めがけて飛び込む。

 

ガキン!!

 

「クッ!!」

「でやぁ!!!」

 

虎琥と刺客が切り結ぶ。

虎琥は自身の持つ細身の剣と短剣をふるい、刺客を退けようとする。

しかし、相手の腕が良いのかじりじりと追いつめられてくる。

 

 

(こいつ、強い…!!)

 

相手の短剣を剣で受け、投げられる短剣を自身の持つ短剣で払う。

飛来する短剣を払う虎琥に一瞬の隙ができる。

刺客はその瞬間を見逃さなかった。

その瞬間、虎琥の腹部に強烈な蹴りが入る。

 

「ガハッ!?」

「虎琥!!?」

 

虎琥はそのまま壁に激突してしまう。

思わず虎琥の方を見る華琳。

刺客はその隙にそのまま華琳へ向かって走ってくる。

 

「死ね!曹操!!」

「…ッ!!」

 

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華琳は回避も間に合わず目を閉じる。

その時、華琳は右肩に何かがぶつかるのを感じた。

華琳はそのまま左に倒れこむ。

華琳はすぐに自分がいた場所を見る。

そこにいたのは…

 

「…一刀!!?」

 

一刀だった。

とっさに華琳を突き飛ばしかばっていた。

 

「…くッ。華琳、無事か…?」

 

一刀は刺客の左手を掴んだままいつもの笑顔を華琳に向ける。

しかし、

その右肩には短剣が刺さっていた。

肩から血を流しみるみる一刀の白い服を血に染める。

 

「邪魔だ!!」

「ぐあッ!」

 

刺客は一刀を肩に短剣が刺さったまま蹴り飛ばす。

一刀は戸の無くなった入り口から外へ吹き飛ばされる。

 

「一刀!!」

 

華琳は一刀の方へ行こうとする。

しかし、前に暗殺者が立ちふさがる。

 

「ここまでだな…」

「クッ…」

 

華琳は後ろへと下がる。

その動きと一緒に刺客は華琳へと距離を詰める。

しかし、

その時だった。

華琳の目の前から刺客が消えた。

 

「え…」

 

ドガッ!!

 

瞬間、何かがぶつかる音がした。

華琳は音の方に目を向けるとそこには刺客が執務室の机に手をついてよろめいていた。

そしてさっきまで刺客がいた場所には春蘭と凪がいた。

 

「春蘭?凪!?」

「フーーーー…!!」

「グルルル…!!」

 

二人は酷く怒っている。

その視線は子を殺された狼の様な殺気をみなぎらせたものになっている。

 

(まさか…!)

 

華琳はすぐさま、外に飛ばされた一刀の方へ向かった。

そこには風と季衣がいた。

 

「うにゃぁ…」

「くーん…」

 

二人は気を失っている一刀の顔と傷口を舐めている。

 

「貴方達…!」

 

そのまさかだろう。

春蘭と凪は一刀が外に吹っ飛ばされた時、傷ついた一刀を見たのだろう。

そして、そのまま刺客の仕業と理解し攻撃したのだ。

華琳は部屋の方を見る。

そこでは一方的な戦いが行われていた。

 

 

「くっそ…!」

「がるるる!!!!」

「フニャーーーー!!!!!」

 

暗殺者が凪と春蘭にボロボロにされていた。

どんなに短剣を投げようと自慢の体術で攻撃しようとかわされてしまっている。

しかも凪達は動物そのものの様な状態なので武器は持っていない。

だが、刺客は良いようにやられていた。

 

(このままでは…クッ!)

 

暗殺者はこの場は逃げることを決断した。

すぐさま部屋を飛び出し、塀を越えて逃げ出す。

しかし、春蘭と凪がすぐに後を追いかけた。

 

「凪!?春蘭!?」

 

華琳は彼女らに声を掛けるも怒りで聞こえていないのか、そのまま走り去っていった。

 

「華琳様!これは一体…どうしたんだ、北郷!?」

 

そこへ秋蘭がやって来た。

 

「秋蘭!あなた、どこにいたの!?」

「申し訳ありません…兵から霞が酒蔵を襲撃していたと聞き指示を与えていました」

「そう…ならばすぐに春蘭達を追いかけなさい!刺客を追っているわ!」

「ッ!わかりました!!」

「それと兵をこっちに数人よこして。…一刀と虎琥が怪我をしているわ」

「…ッ御意!」

 

指示を受けた秋蘭はすぐに動いた。

 

-9ページ-

 

 

春蘭、凪は刺客を追いかけていた。

それを見た刺客は走る速度をあげる。

しかし、追う二人の速度はすさまじいものであっという間に距離を詰められていく。

刺客は後ろを見て焦る。

 

(くっそ!!早すぎる!このままでぶご!!!)

 

前を向いた時、刺客の視界が揺れた。

刺客は何者かに横っ面を叩かれて吹っ飛ばされ壁にめり込んだ。

 

「ゴハッ…。なッ何だ…?」

 

壁にめり込んだ刺客が揺れる頭を無理やり動かして視線を前に向ける。

そこにいたのは…

 

「にゃ〜ご…ひっく♪」

「ひいッ!!!」

 

酒を飲んで酔って顔を真っ赤にした霞だった。

なぜここにいるかは謎だが、その目は獲物を見つけた虎の物だった。

刺客はその場を急いで離れようとする。

しかし。

 

ドガ!!

 

「ぐわ!!」

「がるるる…」

 

そうはさせないと凪が壁に刺客を押し付ける。

その気配は怒りに満ち、今にも噛み殺さんばかりだ。

その後ろでは春蘭が霞に何かを伝えているように春蘭が唇に着いた赤い物、おそらく一刀の血だろう、それを霞に舐めるよう顔を近づける。

それを舐めた霞の表情が怒りに満ちる。

刺客は三人から発せられる怒気に蹴落とされる。

 

「な、なんなんだよ!こいつら…!」

 

それが暗殺者の最後の言葉だった。

それから間もなくこと。

暗殺者は死にはしていないもの、悲惨な状況で兵に見つかり捕獲された。

その光景をみた兵士はあまりの惨状に誰もが口をつぐむほどだった。

 

 

 

 

 

 

「隊長!!」

「大丈夫なの!?」

 

一刀は城の医務室の寝台の上にいた。

肩を短剣で刺されたのと腹部に思いっきり蹴りを食らったため気絶している間に運ばれていた。

真桜と沙和はそれを聞きつけ駆けつけていた。

 

「真桜、沙和…このとおり、何ともないさ、しばらく右肩は動かせないけど…」

「はぁ…心配掛けんといてな…」

「そうなの〜」

 

二人はほっとした表情を浮かべる。

するとその反対側の部屋から声が聞こえてきた。

 

「真桜様、沙和様!手掛かりは見つかったんですか!」

 

虎琥だ。

彼女も腹部に一撃をもらって動けなくなってしまったことで医務室に運ばれていた。

彼女はどうやらあばら骨にヒビがはいったらしく、体を包帯で巻いた状態でいた。

 

「虎琥!?まだ寝てなきゃだめじゃないか!」

「問題ありません!!」

「それならさっきわたしてきたで、稟様達もおったし…てか虎琥!隊長の言うとおりさっさと床に入って寝とかんかい!」

「なの〜♪…そう言えば凪ちゃん達は?」

 

沙和がそう言うと一刀は目線を寝台の左側に向ける。

寝台の隣で凪と春蘭、季衣、風、霞はみんな一刀のそばで寝ていた。

 

「あらま〜…また隊長、もてもてやなぁ」

「ホント、かわいいの〜♪」

「ですよね〜♪」

「ははッ…うれしいかぎりだよ」

 

「「「ふにゃう…ごろごろ…」」」

「「わう…すー…」」

 

-10ページ-

 

その頃、華琳達は真桜、沙和の報告と稟達の調査をまとめていた。

部屋には華琳、桂花、稟、秋蘭が顔を合わせている。

 

「つまり…あの五人は昨夜、街の酒屋でこの酒を飲んでいたということなのね?」

「はッ、真桜達の報告ではその通りです」

 

華琳の手には霞が持ち込んでいた「猫狗酔酒」が握られている。

秋蘭はその報告をまとめた書簡を持って説明する。

霞がどこかでこの仙酒を入手。その後、霞は調練に一緒に言っていた春蘭と季衣、視察から帰って来た風に新兵訓練をしていた凪を加えて酒屋に言ったようだ。

 

「で稟達の調査でこの書にはこの酒の記述があると…」

「はい、華琳様」

 

稟が華琳の問いに答える。

 

「詳しく見てみれば…この効果は永久的なものではなく短期的なもののようです」

「短期ってどのくらいなのよ」

 

桂花が稟に尋ねる。

 

「そこまではのってはいませんでした…しかし記述によればこの効果は酒に酔っているものと同じらしくつまり、酔いが醒めれば効果は無くなるそうです」

「酔いが醒めればか…しかしこの酒は仙酒だ。普通の酒と一緒とは思えないぞ」

 

稟の説明に秋蘭が付け加える。

その意見に稟、桂花、が無言で同意する。

そこに華琳が声をあげる。

 

「どのみち様子を見るしかないのなら仕方ないでしょう…」

「では今と同じように…一刀に任せますか?」

「そうね、一刀は今怪我をしているし…」

 

その瞬間、華琳の顔がわずかに暗くなる。

それを見た秋蘭と稟は互いに目配せをし、

 

「華琳様、とりあえず一刀にこの事を伝えに行ってはどうでしょう?」

「そうですね、秋蘭殿の言うとおりでしょう。本人に確認を取らずにでは都合が悪いと思います」

 

秋蘭、稟の提案に華琳は驚いた顔をする。

 

「へっ!?そっそうね…」

「華琳様があのバカの所に行くことなんて、フガ!!?」

 

桂花がすぐに文句を言おうとするが秋蘭が桂花の背に回り口を塞ぐ。

 

「華琳様、では行きましょう」

「ムグー!!!!」

「わ、わかったわ…」

 

そして華琳達四人は一刀の元へ行くことになった。

 

-11ページ-

 

「そういえば…一刀殿はいったいどうして怪我を?」

 

医務室への道中、

稟が声をひそめながら秋蘭に聞いてきた。

稟は一刀の怪我を詳しくは知らなかったようだ。

 

「北郷は華琳様をかばったんだよ。刺客が虎琥を倒して、そのまま華琳様に向かってきたところをな…よく華琳様を守ってくれたよ、北郷は…」

「そうですか。…華琳様が暗くなるのも当然とでしょう」

「ふん…」

 

秋蘭は元気のない笑みを浮かべ、稟は俯き目を伏せる。

桂花は不機嫌ながらも複雑そうに鼻を鳴らした。

そんなことを話しているうちに医務室へと近づいてきた。

 

「ちょ…ぎ!…らん!痛いって!!」

 

 

「…秋蘭、中が騒がしくない?」

「はい。…確かに」

 

医務室から何やら一刀達の騒ぎ声が聞こえる。

その物音と騒ぎ声に華琳達はため息をついた。

華琳は戸を開けると同時に大声をあげる。

 

「あなた達!一刀はけが人なのよ!ちょっとは静かに…」

 

そこにいたのは…

 

「やあ、かッ華琳…」

 

春蘭ら猫、犬になった彼女らに抱きつかれたり舐められたりしている一刀の姿だった。

ちなみに虎琥は怪我をしているため動けないでいる。

もっとも凪達の可愛さに目を輝かせているため止める気はない。

真桜、沙和もじゃれられている一刀をただただ、にやにや笑いながら見ているだけだった。

 

「かぁずぅとぉ…?」

 

華琳はゆっくり一刀に近づく。

その気配には明らかな怒。

その場にいた武将達はそれぞれ苦笑いを浮かべる。(桂花は思いっきり一刀を笑っているが)

凪達もおびえたように一刀にしがみつく。

その状況がますます華琳の逆鱗に触れた。

 

「あーなーたーは…!!」

「華琳!?いやこれは、俺のせいじゃ…!!」

「問答無用!!!」

 

ゴスッ!!

 

華琳は一刀の弁明を聞くまでもなく、その顔に右腕による全力の一撃を入れた。

 

-12ページ-

 

 

それから凪、季衣、春蘭、霞、風の五人が元に戻るのに三日かかった。

五人は犬、猫になっていた時のことをうろ覚えながらも覚えていたらしい。

 

 

「凪ちゃ〜ん!」

「もうええかげん出てきぃや〜」

 

凪は部屋の中で…

 

「私はなんてことを〜!!!///」

恥ずかしさのあまりしばらく部屋にこもってしまった。

春蘭は照れ隠しなのか、元に戻った直後に一刀を一発殴っていた。

しかしその後は…

 

「あっ!春蘭!」

「ッ!///」

ダッ!!

「どうしたんだ、春蘭…?何か知らないか、秋蘭?」

「さぁ?どうしたんだろうな?(恥ずかしがる姉者も可愛いなあ///)」

 

一刀の怪我もあり一刀を殴るようなことはしなかったが目を合わせた途端、顔を赤くし逃げるようになった。

季衣は犬だったことが抜けないのか…

 

「季衣〜どこいるの〜?」

「わん!!」

「って季衣!もう犬じゃないでしょ!!」

「わん!…そうだった」

 

季衣はしばらく、犬のような行動をとることが続いた。

霞は猫になったことの味をしめたのか…

 

「なあ〜おっちゃん〜ん、猫狗酔酒って酒知らん〜?」

「ん〜そんな酒聞いたこともねえですよ…」

「そっか〜…」

「って霞!あんた何してるのよ!!もうあんなことはさせないわよ!!」

「って桂花!?ええやんかぁ!!」

「ダメって言ってるでしょ!!」

 

また猫狗酔酒を探そうとしていたが桂花に止められた。

風は…

 

「ぐぅ…」

「風…あなたは猫になってもそんなに変わらないですね…」

 

稟の膝枕で寝ていた。

稟の言うとおり、いたっていつも道理だったのか対して変わりはない。

しかし…。

 

「おや?お兄さんではないですか〜また風をメス猫にしてあそびますか?」

「なんでだよ!!そんなことはしない!」

「またまたぁ〜、お兄さんは〜」

 

猫になったことを引き合いにし、一刀をからかうようになった。

だがこの事件の後、街にある変化が現れた…

 

「ねぇ、一刀?」

「どうしたんだ?華琳」

「何で街の若い女の子とか子供達とかが猫耳とか獣耳をつけるようになったのかしら?」

「それ…は、あははっ…」

「まったく…」

 

一刀は街の服屋に頼んで猫耳、犬耳の服を作らせたのだった。

そのためか、しばらくの間、魏国では猫耳犬耳+尻尾がはやりとなった。

 

(そんなに見たいんだったら言えばいいのに…///)

「華琳?どうしたの」

「なっなんでもないわよ!!///」

 

顔を真っ赤にする華琳とその真意に気付かない一刀だった。

 

-13ページ-

 

獣耳シリーズ…終了です。

一時期データが消えたりしてちょっと焦りましたがなんとか完成しました。

それぞれの設定は凪、季衣が犬。春蘭、霞、風は猫としましたがどうだったでしょうか?

他のキャラだったらどうなるかな〜とか考えてたりします。

それはそうと、

萌将伝発売まで一カ月切りました。

私ももちろん購入しますよ!

これからが楽しみです。

さて今後ですが一回孫礼事虎琥の話を作ろうかな…と思っています。

一回キャラをきれいに整理してしまった方がいいかな〜と思いました。

とりあえず少々お持ちください!

てかそろそろ魏以外のメンツの話書きたいなぁ…

てか現実大学の方も忙しくなってきたし…時間を作らなきゃ…

説明
猫犬シリーズ終了ということで…ではどうぞ!
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コメント
jackryさん>萌えちゃいましたか…これからも2828させれるように頑張りましょう!(同人円文)
サイトさん>どういたしましてです!満腹でしたか?(笑)(同人円文)
リョウ流さん>わかりました…構想を練ってみましょう!!ついでに蜀呉バージョンも!!(同人円文)
tanpopoさん>蜀と呉には間違いなく雌豹が存在しますよ(笑) しかし蜀と呉ですか…(同人円文)
よーぜふさん>華琳の猫化ですか…さてさて…(同人円文)
うp主まぁ〜一言!ご馳走様でしたw(サイト)
これが蜀と呉だったらどうなっていたかな?(tanpopo)
皆かわいすぎる…でも華琳の猫化もみたかった・・・w(よーぜふ)
タグ
真・恋姫?無双  春蘭  季衣  虎琥 

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