変わり往くこの世界 7
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 然し、足速いなアイツは!! 遺跡外めがけてクロスボウを片手に走っている

  が、妙に鈍い音が響き渡ってきた。…なんだ?この音はさっきも…まさか。

 出来る限り全力で駆け、入り口を目指すと…うーわー!案の定扉が閉まりつつある。

  リフィルが出て行った時点で扉が勝手に閉まる仕組みなんだろう。

 歯を食いしばり、出来る限り全力で駆けぬけ閉まる寸での所で、

  ヘッドスライディングして外に飛び出た俺は、立ち上がり息を荒げて中腰になる。

  「あら…? ユタ。貴方は武器を手に入れられたの?」

 へ? 聞きなれた声が物陰から聞こえ、その声の主の方を振り向くと、

  結構深手を負ったのか、服の至る所が破け血が滲み、傷ついたアリアが座り込んで

  いた。それを見た俺は慌ててかけより介抱しようとするが、震えた右手で遮られる。

  どうやら私はいいからリフィルを…と言いたいのだろうが、

  それどころじゃ無いだろうと、彼女の前に座り込むと…失望させないでと、

  右頬をぶたれた。…。以前からの事もあったのか、俺は堰を切った様にリフィル

  の好き勝手っぷりの愚痴をアリアに告げると同時に、俺が守りたいのは

  …。首を横に振られた。 

  「私は大丈夫だから、早くいってあげて」

 行けるかよ! ここもまた何時リザードマンやら来るか判らないだろう。

  そんな所にアリアを置いていけ…だー! 今度は左頬をぶたれた。往復されちまったよ。

  くそ、どうすりゃいいんだ。動けないアリアと、動こうとしない俺。

 恐らく村の方からだろう、またあの地響きと縦揺れだ。一体どんな化物つれて来たと。

  そんな一種金縛り状態の俺の耳に、竪琴の音色が聞こえ、周囲に潜んでいたのか

  アルバートが現れ、アリアはここで見ているから、俺は先にいけと…。

  二人の視線が右手にあるクロスボウに集中している。

 フランヴェールに匹敵する何かだと言う事を判っているのか…。

  使い方も能力も判らないんだが…まぁ、アルバートがいるなら大丈夫だろう。

  意を決して立ち上がり、アルバートにアリアを任せると俺はアリアから背を向けて

  村の方へと走り出す直前に、もう少ししっかりしてくれたら振り向くかも?

 と、ちょっと照れたような声が聞こえた気がしなくもなかった。

  どうやら完全にフラれたわけでも無さそうだ。

 妙にやる気が出てきたのか、俺は村の方へと勢い良く駆け出し、走りながら周囲に

  誰もいないのを確認してクリスに話しかける。内容は使い方、能力だな。

  流石に使い方も判らない物は扱えない。

  「了解しました。正式コードI-00666 機種名 アイシクルフィア」

 氷の恐怖?…いまいちどんな能力なのか不明だな。まぁ、氷を撃ち出すクロスボウなのか?

  それを先ず尋ねると、散弾・狙撃の射撃二種と、迫撃型…迫撃砲か何かにもなるのか?

 色々と立て続けに聞くと、使用時に説明すると黙り込んでしまった。

  いや、有効射程距離とか教えてくれよ!! この白いボウガンを振り回して返事を

  待ちつつ走ったが結局、村に着くまで反応がなく。俺は木々に身を隠しつつ

  村の様子を探る。村の中央付近にセドニー達が…うわ、リザードマンが

  数え切れない程いるぞ…へたすりゃ1000いってないか。村の反対側の森から

  ゾロゾロと顔を出し、その背後にヒュドラまで数体いる。…おいおい。

 セイヴァート本隊の騎士は…ん? 何かあったのか、大きく二つに分かれているぞ。

  セドニー達の所と、セイヴァート側の大将だろう人物の所の二箇所。

  判らんが…取り合えず共闘していると見ていいのかこれは。

 ざっと見た所、セイヴァート500という所か。結構な数だが、完全に劣勢じゃないか。

  というか…さっきの地響きはどいつが。見当たらない、どう言う事だ。

  まぁ、居ないなら今は目の前の敵を…だな。

 少し高い木によじ登り、なるべく判らない様に身を低くクロスボウを右肩に引きつけ

  構え、クリスに使い方を請う。

  「敵勢力確認しました。補助機能起動…」

 と、静かだが僅かに何かが中で動いている音がし、先端にあるレーザーサイトだろう。

  赤外線か何かだろうがどうも不可視っぽい光が出ている様だが…ナヌ!?

  スコープはなく覗き込んで居る訳でもないが、何故か片目だけ遠くが良く見える。

 両目を開けていると遠近感がおかしいので、左目は瞑る事にした。

  然し、矢か弾はどうなるんだ?手持ちに無いんだが…尋ねると空気中の成分を

  圧縮凍結。それを撃ち出す物らしい…弾数無制限かよ。

  「距離・敵数・兵装・味方勢力の確認。近距離の散弾をお勧めします」

 いやいや、取り合えず地響きの主がまだ見えない。出るのは危険だと伝えると、

  納得したらしく、別の弾を生成すると…どんな弾なのか続けて尋ねた。

  恐ろしい事に大気中にある微量な毒素を凝縮させた弾を生成すると。

 ま、まぁ。強力なのに越した事は無いが…うん。取り合えず生成完了したとの事なので、

  セドニー達から少し離れた村の外れの森から出てきているソコを狙えと。

 ふむ…一体どんな弾を。 狙いを一番奥の奴に定めて引き金を引く。

  微弱だが撃ち出した振動が肩に伝わるが、

  サイレンサーでもついてるのか射出音が無いに等しい。

 その直後、敵に着弾したソレは爆裂し何か煙の様なものを上げて周囲の奴も巻き込み出す。

  暫くして、煙から飛び出し、ただでさえ大きいギョロ目を剥き出しにして、

  首を押さえ苦悶の表情を浮かべながら倒れこみ、体を痙攣させて動かなくなった。

 …。怖すぎだろ。味方にまで下手したら被害及ぶじゃないかこの弾!!

  何事かとセドニー達が周囲を見渡しているが、気づいてくれ。俺だと気づい…た様だ。

  アルヴァがセドニー達に何か伝えると、再び身構えた。

 然しこりゃ、使い勝手がちょい悪い。普通の弾は出せないのか?クリスに尋ねると、

  水分を凝固した氷は撃ち出せると、ただ距離からか絶命させる威力にはならず。

  だから近距離での散弾を勧めたのかよ。威力が極端だなこの武器。

 …ん?そいやリフィルの姿が見えないぞと、ああ居た居た。セイヴァートの方に

  どうやら居る様だ。察する処、あの四人の解放求めてるのだろうか。

  て、この状況で捕まえようとするな!何考えてんだあの大将。

  クロスボウの向きをセイヴァート側に向け、クリスに氷の弾にしたのか確認してから、

  リフィルを捕まえていた騎士の脚を狙って撃つ。 その距離100mは軽く離れて

  いるだろうに。見事に当たってしまった、恐ろしい命中補正機能だな。なんだよこれ。

 何かちょっと楽しくなってしまったのか、立て続けにリフィルの周囲にいる騎士の腕や脚

  を撃ち抜き、更に大将の周辺の地面へ向けて乱射する。

  「ぶはっ!」

 思わず噴出して笑ってしまうわ!漫画みたいに両手を挙げて蟹股で踊りやがった!

  で、あの四人は何処に…周囲を探ると目印というか、あのやたら大きい槌を

  振り回していた巨人みたいな男がここぞとばかりに座っているじゃないか。

 リフィルから、その四人に至る騎士。その脚や腕を撃ち抜く見事な援護射撃。

  いや、補助機能とやらがあっての事なんだが。何か凄い強くなった気持ち。

 もう何?眉毛をキリッと極太にしたい気分なわけで。と、どうやら四人を無事解放した様だ。

  あの四人相当強かったよな。 リフィルは安心か…と視線をセドニー達に戻すと、

  今の狙撃が合図になったのか、リザードマンの群れが雪崩の様に押しかけ、

  乱戦となっていた。 セドニーは戦斧の一振りで何匹も纏めて蹴散らし、

 セイヴァートの騎士の方もそこそこ強いらしく…何か妙に若い奴らが多いな。

  アルヴァを囲い陣形みたいなものを組んで守りながら戦っている。

 どう言う事だ。…判らん。しかしこの乱戦状態だと、流石に援護射撃はキツいな。

  かといって威力の足りない状態で奥のヒュドラを狙うってのもな。

  「状況的に、近距離戦闘を推奨します」

 そうなりますか。どうも状況把握して戦術補佐も行ってくれるらしい。

  信じて一丁突っ込んでみますか。俺は木をから身を起こして下りて行き、

  なるべく敵さんに気づかれない位置からセドニー達の背後へと回っていった。

 

 

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「次から次へとキリが無い!」

 押し寄せるリザードマンを戦斧一つ、身一つで豪快に蹴散らし押し返すセドニーの声。

  その目は大将だろうガイアスをどうやら探している様だが、これだけ相手にして

  そんな余裕あるのかこの爺さん。左腕や、右足にしがみ付いているリザードマンを

  意に介さず、周囲の敵を戦斧で蹴散らすその姿。さながら鬼神という所である。

 そして、アルヴァを守る様に取り囲みリザードマンを一体一体確実に倒していく

  セイヴァートの騎士達。さて、どちらの援護おぉぉぉぉぉぉぉっ!?

  周囲の確認していた真横から、リザードマンの手斧が振り下ろされるが、

  寸での所で交わし、地面に倒れこむ俺は慌ててクロスボウを向け、狙いも定めずに

  撃ち出す。その直後リザードマンの体の至る部分が吹き飛び、緑?

  か良くわからないそれっぽい体液と肉片を撒き散らしつつ地面に崩れ落ちた。

  「威力すげぇぇぇ!」

 思わず口から声を出してしまった俺に気づいたのか、アルヴァが声を掛けてきた。

  無事に武器を得られたかと。…いや、リフィルはそうではなかった事を、

 周囲のリザードマンを爆散させつつ叫び返した。 額に右手当てて溜息を吐いた様だ。

  どうやら予想していた事だと言うのは、彼女の素振りを見てわかったが…今は

  それどころじゃないな! これなら戦えるだろうと踏んだ俺は、セドニー達とは

  少し離れた位置からリザードマンの群れに向かい、弾数無制限の散弾を撃ち

  トカゲを爆散させまくり、またたくまに周囲に緑色っぽい体液と肉片が飛び散りだす。

 相手が人間じゃなくてよかったと心底思いつつ、撃ちまくり、奥へ奥へとセドニーと歩を

  合わせる様に進んでいく。少し気になったのか、リフィルの居るだろう場所を見ると、

  あっちはあっちで騎士とやりあってるじゃないか! …流石に人間はこんなもので

  爆散させたくないな。ったく…お? それに気づいたのかアルヴァがリフィルの方へと

 こっちのセイヴァートの騎士達を連れていったな。 安心していいだろうかっと!

  油断してるとまた増えてきやがったこのトカゲ!!倒せど倒せどキリが無いな!

  こりゃ確かに大将でも狙わんと…ぐあ! 

 奥に居たヒュドラがリザードマンを押しつぶしつつ地面を這って、セドニーの方へと。

  畜生!行こうにもこいつら邪魔で動けないな。これでもかとばかりに乱射して蹴散らす

  が、どうにも数が数だ。…そうだ迫撃砲がまだ…トカゲを爆散させつつクリスに尋ねると、

  状況的に使用は推奨出来ませんと。駄目かよ畜生!

 何とか倒して近づくしかない…か。 やばいな…気づいてるのだろうがセドニーも

  トカゲで手一杯だぞありゃ。その上でヒュドラに喰い付かれでもしたら…くそ。

 …そうだ。一旦俺はトカゲを倒しつつ、後退し近場の家の屋根に薪からよじ登り、

  上りきった後に薪を蹴り飛ばして進路を塞ぐ。そのままクリスに氷の弾に変えて貰う。

  この距離なら威力も十分だろう。セドニーを取り囲むトカゲどもの頭を

  これでもかと狙い撃ち、セドニーと共に周囲からトカゲを一掃する。

 ヒュドラとセドニーの一対一の場を作り出しつつ、彼に近づかせない様に周囲のトカゲを

  倒し続ける。 ついにヒュドラがセドニーに辿り着き、一戦交える事になる。

 あの時、俺は気絶したリフィルを連れて逃げたから、結局どうやって勝ったのか。

  それがハッキリするだろうが…っと、また増えてきたので、周囲のトカゲを撃ち抜く。

  もう何かあたり一面緑色のトカゲが横たわって凄いんだが…。それでも結構数が減った

  ようだ。パッと見残り200かそこらという所か。セドニーの強さもあるが、

  あと一人は俺…いやこの場合は、アイシクルフィア。クリスが倒したというべきか。

 慢心はいかんな慢心は…うん。流石に恐れを抱いたのだろうか、

  トカゲの攻めが止まってきた様にも思える。 視線をセドニーに移すと、おおぉ。

  食いついてきたヒュドラの頭を戦斧の腹で払うでもなく、ましてや避けるでもない。

  人間一人軽く丸呑みするだろう口、更に大きく開かれ彼めがけて襲い掛かるが…。

 この爺さんに恐怖とかそういうモノは無いのか!? その口というか下顎目掛けて

  戦斧を横少し斜めに振り回し、喰いつく勢いすら利用して下顎を斬り落とした。

  その直後、振り回した戦斧の勢いに負けたのか、

  背を向けた爺さんに別の頭が襲い掛かるが、そのまま遠心力を利用して頭を横一文字

  で斬り裂いてしまった。 残ったもう一つの頭が何やら絶叫をあげて倒れこみ、

  そこを容赦なくセドニーが首と頭を斬り離した。…強過ぎるこの爺さん。

 然しそのヒュドラも一匹だけではなく、森の奥からこれでもかと言うぐらい大きい頭を

  覗かせている。 それを見たセドニーは一旦アルヴァ達のいるセイヴァート本隊の方へと。

 俺もそれを確認して、屋根から飛び降り同じ方向に走りつつ残るトカゲを撃ち殺して進む。

  

 

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「まだ判らないのかい。あれはアンタみたいな奴が扱える武器じゃない」

 ん? 何か言い合いしてるぞ。セイヴァート側の大将だろう人と、アルヴァだな。

  リフィルも無事な様だ、セドニーは…かなり肩で息をしてるな。そりゃそうか。

  セドニーに大丈夫かと尋ねると、若造に心配される程弱ってはおらん!と。

 心配する必要も無い程の元気っぷりだ。それよりも、一体何をもめているんだろう…

  んだよ。俺の右手を見て…ああ、これが欲しいのか。 何か周囲の騎士に命令して

  奪い取れと。 ・・・。

  「おっさん、奪い取るのは構わないが奪い取る前に、おっさんの頭ふきとばすぞ」

 ちょっと強気な俺参上…と。クロスボウを大将だろう人の頭に向けてそう言うと、

  目を丸くして周囲の騎士に隠れやがった。…なんだこいつ。セドニーやらアルヴァ

  ・リフィルについてた4騎士と比べると…情け無いなぁおい。

 ん?そのリフィルが物欲しそうな目で俺を見てるな。 …ちょっとリフィルに見える

  様にクロスボウを振ってみると気が付いたのか、眉間にシワを寄せて目を反らした。

 やっぱ欲しいのか。おもっきり拒絶されたもんなぁコイツ。

  と、遊んでる暇も無いな。向こうも警戒してか襲ってこないが、こんな馬鹿に時間

  喰ってる場合じゃないだろう。当たり障り無い程度で、武器の事を話すと、

  両肩をガックリと落として意気消沈している大将。まぁ気持ちは判らなくも無い。

 それよりもだ。何でセイヴァートの騎士が真っ二つに分かれてるのか…。

  俺はそれをアルヴァに尋ねようと…お? どこからともなく竪琴の音色。

  アルバート…一々出てくる時に奏でるなよ。

  「誰もが認める女王。 この大陸にあるアンシュパイクの女王であり…。

     この大陸で起こる戦に彼女が立つ時、多くの騎士が彼女に剣を預けます」

 …。成る程な、大陸の英雄とも言える彼女が立つ側が絶対であるという所か。

  普段はただのアルヴァさんだが、戦場で立って初めて隻眼の女王となる。

  言えば、この大陸の戦場を統べる女王と言った所か。武力では無く、

  圧倒的なカリスマとでも言えばいいのか。彼女が現れれば敵兵の大半は味方になると。

 恐ろしい人を連れてこれたものだな。それを聞いて良くみれば、若い騎士達は皆して

  目を輝かせアルヴァを見ているじゃないか。まるで子供が勇者か何かに憧れてる

  とでも言うのか、そんな目だ。…その目が嫌なのか頭をかきむしって嫌そうにしている

  アルヴァは、話を反らそうと森から顔を出しているヒュドラの群れへと視線を向ける。

 そうだな、まだ終わったわけでは…っておいアルバート!!

  「アリアはどうしたアリアは!?」

 思わず口に出して、彼の首根っこを掴んで声を荒げてしまった。 そうすると、

  苦しそうに彼女のいるだろう方向を指をさし、無事ですよと。

 安堵の息を漏らして手を離し、むせるアルバートを無視してアリアの方へと駆け寄る。

  「凄いじゃない。あのセドニーと肩を並べて押し返すなんて…」

 何か褒められたが…、俺の力じゃないしな。軽く首を振りアイシクルフィアの能力と、

  力を貸してくれたクリスに礼を言いつつアリアに答えた。

 それに満足したのか、笑顔で笑ってくれたが…リフィルの事忘れてない?と、小声で

  呟いてきたが、どうしろと? あの猪突猛進娘をどうしろと?

 全く持って武器より手に余るぞ、アイツは! 苛立ちが表情に出ていたのか、

  それを悟ったのかアリアが少し不機嫌そうな顔になり…しまった。

  「さぁ冗談言ってる暇は無い、ここからが正念場だよ!」

 と、アルヴァが声をあげると、周囲の騎士達が各々の武器を掲げて声を上げる。

  士気が高まるとでも言うのか。あの大将とは偉い違いだな。 一応立場上だろうか、

  少し歳を召した騎士達は、大将の方を気にしつつも、やはりアルヴァについていきたい

  のか、遅れて武器を掲げだした。 良く見ると、さっき俺が撃ち抜いた騎士達も、

  肩を貸し合って立ち上がっている。 どんなカリスマだよこの人。

 そして、アルヴァがいくつか部隊を分けるのか、命令を下し始めた。

  現存勢力約450という所、大きく三つに分けると言う事。

  なるべく熟練した騎士達は、セドニーと正面からヒュドラを迎え討つ。

  俺やリフィルを含めた若い者は森からヒュドラを誘い出すと。

 残りの一部隊は、セイヴァートに戻りアルヴァの名を使い援軍を要請してくると。

  この人数でいけないか…と尋ねて見ると、まだ何が潜んでいるのだろうと。

 …そういやまだ地響きの主が出てきてないな。 その事をアルヴァに伝える。

  恐らくヒュドラより手強い、頑強で尚且つパワフルな火を吐く厄介な

  化物が潜んでいる可能性があると。間違いなくでてくるだろうしな。

 それを聞いたアルヴァが何かを思い出したのか、眉間にシワを寄せて頷くと、

  森に向けて真紅の剣を振りかざす。

  そうするとセドニー・リフィルを含めた騎士達が

  森へ向けて二部隊に別れ突撃していく。それを俺は残って見ていると、

 アルヴァは行かないのかと尋ねてきたが、一応ワンテンポ置いて行った方が、

  アイシクルフィアの性能上援護し易いと伝えた。 何よりアルヴァやアリア、

  アルバートを置いて大丈夫なのかと思ったわけで…。

  「アタシの心配でもしてるのかい? なめられたものだねぇ」

 うわー…怒らせたか表情が引きつったぞ。それを見て焦る俺の横からアルバートが

  力を失っても鉄の獣と戦って生き残った人であると言う事に変わりはありませんよと。

 まるでその時その場所に居たかの様に、少し恐れを抱いた表情で、俺からアルヴァに視線を

  移した。…この人も爺さんクラスの化物かよ。

 う…、更に横から刺す様な視線が…アリアが睨んでいる。くそう…将来尻に敷かれるんじゃ

  ないか俺、一つの妙な不安を抱きつつ、陽動部隊の方へと俺も後を追いかける事にした。

  

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