八陣・暗無14
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 それから30分後、ハプネスに到着するとすぐに葉山と遭遇した。

 あわててバイクを止めると、葉山も向かってくる。

「状況は!?」

 暗殺を担当している者がここまで熱くなるのは暗殺者失格ではあるが、相手はあの軽部。たった一人でハプネスの人口の3分の1ぐらい減らすことは可能かもしれない。

「被害者は確認できたので3名。社長は無事だが、玖珠と荒野とネルがやられた!」

 今葉山が言った名前は全て八陣の名であった。

「―――馬鹿なっ!仮にも各分野のトップ、八陣だぞっ!まだ時刻も1時間も経っていないのにっ・・・・・・!」

 葉山の胸座を掴むと、肝心な言葉を投げかけた。

「それで、軽部の場所はっ!?」

「分からない。本館のC−3で恭平が食い止めていたが・・・・・・あれから連絡が無い。社長を安全な場所に移動したから、今から向かおうと思っているんだ。援軍を50人送ったから、もうとっくに殺しているはずだが、連絡が無いということは、最悪・・・・・・、」

「・・・・・・っ!」

(いらいらする。・・・・・・どこまで、どこまでこの私を侮辱すれば気が済むのだ・・・・・・っ!)

 拳を強く握ると、大きく息を吐いて冷静さを意識させた。

「葉山。君は別館を頼む。まだ非難できていない人間を優先で、軽部を見つけ次第私に連絡をしてくれ。その時は軽部をその場から逃がさないように足止めを頼む。」

「わかった。」

 年齢もキャリアも立場上も葉山が上なのだが、そんなことは関係ない。今は実力が上の人間が仕切ったほうが効率がいい。

「私は本館に行く。殺し次第連絡を入れる。」

 要点をまとめると、二人はまるで弾けるようにこの場から離れ、各々の場所へと向かう。

「・・・・・・冷静に、・・・・・・冷静に。」

 先程までは個々人の問題であった。軽部に殺され、それに対する復讐心のみで動くことが許された。失敗しても、自分が死ぬだけ。

 だが、今は異なる。もし風間と葉山がやられてしまった場合、実質ハプネスは完全な崩壊を招く。

 本館が見え、その巨大な建物に入ろうとしたときであった。

 バリリリイイイイィィィィィン!

「な・・・・・・っ!」

 20階辺りから、防犯ガラスを破って人が振ってきた。

 それは当然凄まじいスピードだが、その人間は血液を撒き散らかしながらも何か丸い物を電灯に投げると、電灯を軸にしてあっさりと着地に成功した。

「・・・・・・っち。むかつくな。」

 見ると170p近くの男性が、肩から酷い出血をしていた。

「おいっ!何があった!?今の戦況はどうなんだ!?」

 慌てて風間は男の下へと走っていく。

「あ〜〜、援軍?やめといたほうがいいよ。あいつは・・・・・・って、神海じゃん。」

 よく見ると、その男は恭平であった。

「恭平!君、大丈夫なのか!?」

「大丈夫なわけないだろっ!見ろよこれっ!血、血!血ぃぃぃぃ!やべーよっ!俺死んじゃうよっ!」

 確かに傷は深そうだが、見た感じでは命に別状はないだろう。

「・・・・・・それで、戦況は?」

「とりあえず全滅。それでまた姿暗ましやがった。こりゃ、ちょっと骨が折れるね。」

「・・・・・・。」

 ということは、とりあえず本館で姿を潜めていることになる。

「それより神海!お前何が軽部を殺しに行くだよ!逃がしてんじゃんか!」

「・・・・・・すまない。」

「すまない。じゃねえよボケ!クズ!カスっ!ハゲ!ハゲ!ハゲ!ハゲエエェェ!」

「黙れっ!殺されたいのかっ!」

「うわ、開き直りやがった、最低だな。」

 何だかんだ言っても恭平は元気だった。その点は流石としかいいようがない。

「今だから言うが、これは極秘任務ということで駆り出され、挙句の果てに情報の誤認!私だって頭にきてるんだ!だから私に非は無いっ!」

「うん。知ってる。」

「・・・・・・。」

 あっけらかんとこの場を楽しんでいる恭平に殺意を覚えた。

「いてててててててっ!こらっ!傷口に指突っ込むなっ!」

「安心しろ。私の指にはミューズが塗ってある。」

「むしろ悪いわっ!ちゃんと石鹸は落としてからおやつを食べるって昔お父さんが口がすっぱくなるほど言ったでしょう!」

「ええい君といると話が進まん!恭平。君はAB層を頼む。C〜E層は私が行く。」

「やだ。」

「AB層を頼むっ!」

「ハゲ。」

「・・・・・・っ!」

 黒妖刀を握ろうか迷った時であった。

「あの・・・・・・、風間様と木田様。ネットワークが繋がったので、ターゲットの居場所が・・・・・・、」

「何処だ!?」

 いつの間にか背後に立っていたポニーテールの女性が、弱弱しく発言する。まだこういった特殊な出来事には対応できないのであろう。

「は・・・・・・はいっ!A層の30―6に潜伏しているのをカメラで確認しました。今も潜伏中とのことです。」

「―――なっ!」

 その場所は、正真正銘風間の個室であった。

「・・・・・・っし!」

 一瞬フリーズした思考を動かすと、全速力でこの場から離れ、自室へと向かった。

 

「・・・・・・ネットワーク、切り離されていたの?」

「いえ、正確には新型の電気のジャマ―で、妨害されていて、確認するにもそれを攻略しなければならなくて・・・・・・。」

 恭平は、少し微笑み、空を見上げた。空は、月の光で満ちていた。

「・・・・・・ふぅん。」

「はあ・・・・・・。」

「大変だったんだ。」

 恭平は本当の武器、小型の鎌を取り出して、空を仰いだ。

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