真・恋姫無双 読み切り版
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「皆、各自席に着いたかな?」

 

俺は周りを見渡した。

 

そこには丁度最後に来た桃香と朱里が席に座ろうとしていた。

 

二人が座ったのを確認すると、俺は皆に向けて話し出した。

 

「今日集まってもらったのは理由は、前から皆に言っていた怪談百物語をしようと思ったからなんだ。」

 

俺の言葉に誰かが息を呑む声が聞こえた。

 

「ほら、ここの所ずっと暑いだろ?だから怖い話でもして、気分だけでもヒヤッとさせることが出来ればなと。」

 

「でも一刀、その怪談百物語をすると何か起きるとか言わなかったっけ?」

 

雪蓮が俺に疑問をぶつけてきた。

 

「あ〜、そんなのは迷信さ。たかが怖い話でそんなことが起きるくらいなら、この世なんてとっくにおかしくなってるさ。」

 

(いや、貴方の方がもうおかしな現況なんだけどね・・・。)

 

皆のそんな気持ちに俺は気付かず、話を進める。

 

「それじゃあ早速始めたいと思うんだけど、その前に自分の目の前に蝋燭が二本あるのを確認してくれ。」

 

「ご主人様、何故こんなに沢山の蝋燭があるのでしょうか?」

 

愛紗から質問が飛んできた。

 

「ああ、まだ説明してなかったね。その蝋燭は怖い話をするたびに一つずつ吹き消していくんだ。

この蝋燭は丁度百本あってね、それを全て吹き消すと何かが起こる・・・。それが怪談百物語の由縁なんだよ。ここには50人ピッタシいるだろ?だから一人最低でも二つは話してもらうことになるね。」

 

確かそんな感じだったと思ったが、そこら辺は適当にしておこう。

 

「幸いにも、今日は全員の仕事が速く片付いてまだ日も完全には落ちてない・・・。時間は沢山あるから、ゆっくりと話していこうか。」

 

こうして俺達の怪談百物語が始まった・・・

 

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「じゃあ、最初は誰から話す?」

 

俺は皆の顔を見ながら言った。

 

すると、少し離れた席から手が上がった。

 

「では、私が最初でも宜しいでしょうか?」

 

見るとそれは紫苑だった。

 

俺はニッコリと笑って「問題ないよ。」と言った。

 

「では、始めさせてもらいます。あれは・・・そう。今日のような真夏の日だったかしら・・・」

 

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その日は璃々と一緒に川原で涼んでいました。

 

買い物に出かけていたんですが、あまりの暑さに璃々が倒れてしまいまして・・・

 

当時そこの川原は人気がありましてね?若い人からお年寄りの方までよく来られていたんです。

 

しかし、その日だけ何故か空いていたのです。

 

来た時は疑問に思ったのですが、璃々の事もありましたし、すぐに気にならなくなりました。

 

・・・一刻ほど過ぎた頃でしょうか。誰かが此方を見ているような感覚がしたので、振り返ってみました。

 

ですが、そこには誰もいませんでした。

 

きっと誰かが私達の事を見て引き返したのだろうと始めは思いましたが、よくよく考えてみるとおかしな事に気付いたのです。

 

ならば何故私達を見て引き返したのだろうか?と。

 

私達がいたのは川原の端あたりなので、大して邪魔にはならないはずです。

 

それなのに何故?

 

私は先程振り返った場所をずっと見ながら考え続けましたが、やがて考えるのを止めてまた璃々の様子を見ていました。

 

・・・それから半刻ほど経った時、今度は川原の上流から誰かの視線を感じたので先程より素早くそちらを見たんです。

 

・・・そこには、全身に矢が刺さった兵士が立っていました。

 

口から血を流し、腕は千切れ、足の片方は潰れていました。

 

それなのに兵士は此方を見ながら立っていたのです。

 

私は反射的に璃々を抱きしめました。

 

それを見た兵士は、ゆっくりと私達の方へ近づいてきました。

 

私は声にならない悲鳴を上げました。

 

・・・すぐにここから立ち去らないと・・・!!

 

その一心で立ち上がろうとしたのですが、その時はまるで自分の体では無い様に動くことが出来ませんでした。

 

その間にも此方に近寄ってくる兵士を見て、私は目をギュッと瞑りました。

 

・・・気付けば、私は璃々に寝かされておりました。

 

璃々の話によれば、私は璃々を抱きしめたまま気絶していたとのことでした。

 

私はすぐに立ち上がって、璃々を連れてその場から立ち去りました。

 

あの後侍女に聞いてみたところによりますと、何でもその兵士は昔この地で殺された者で、あの時刻によく出るそうです。

 

他の侍女も見たことがあるそうで、あのまま近くに来られたら冥府へと連れて行かれると噂されているようです。

 

以来その時刻には誰も近寄らないようにしているとのことです。

 

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「私の話はこれで終わりです。」

 

紫苑がフッと蝋燭の火を吹き消した。

 

・・・他の皆は少し震えているようだった。

 

「ありがとう、紫苑。とても怖い話だったよ。」

 

「ありがとうございます。ご主人様。」

 

俺の言葉に嬉しかったみたいで、紫苑も笑顔で答えてくれた。

 

「さて、残り99個だ。誰か次に話してくれる人はいるかい?」

 

まだまだ夜はこれからなのだから・・・

 

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あの後から堰を切ったかのように手が上がり始めた。

 

皆それぞれの故郷での話や、とある地方での話。そして最近ここであった話もあった。

 

流石に全てをここに書くことは出来ないけれど、どれもこれも紫苑の怖い話に引けを取らないものだった。

 

そして、遂に俺の最後の一本だけが残された。

 

「皆ご苦労さま。どれもこれも本当に怖い話だったよ?」

 

見ると既に外は深夜を回っているようだった。

 

だが皆は怖い話を聞いているせいか、誰も眠くは無さそうだった。

 

・・・むしろ震えていた。

 

「最後はご、ご主人様だね・・・」

 

蒲公英が声を震わせながら言ってきた。

 

「そうだね。俺も取って置きの怖い話を用意してるから、楽しみにしてくれ。」

 

「わ、わ〜い・・・」

 

顔を引き攣らせながら皆笑っていた。まぁ、皆のも怖かったからな。

 

「それじゃあ、怪談百物語最後の話をさせていただこう・・・。」

 

俺は若干口調を変えて話し始めた・・・

 

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この話は俺が此方に来る前に起きた出来事だ。

 

皆も知っている通り、俺の住んでいたところはここより遥かに文明が進んでいた。

 

・・・だけど、やっぱり世界に関係なく霊という存在はいるんだよ。

 

どうやったって説明が出来ない現象とか、ありえない出来事もあるんだ。

 

俺のもまさにそうだった。

 

その日、俺は夜中にふと目が覚めたんだよ。

 

いくら寝返りを打とうが目を瞑ろうが全く眠れなかった。

 

仕方がないから水を飲みに行ったんだ。

 

鏡の前で俺が水を飲んでいると、少しおかしなことに気が付いた。

 

その鏡は三面鏡と言って、中央とその左右に鏡がついている鏡なんだ。

 

鏡ってさ、普通此方と反対側に映るだろう?

 

なのにその鏡の右側は俺と同じ風に映っていたんだ。

 

・・・つまり、反対じゃなかったってことだよ。

 

俺が驚いてその鏡を見ていたら、その右側の俺の姿が変わっていったんだ。

 

白い服を着た顔が真っ黒で何も見えない女に・・・。

 

そいつは鏡から這い出して来そうだった。

 

それを見た俺は全速力で部屋に戻って鍵を閉めた。

 

・・・しばらくすると廊下からギシッ、ギシッという音が聞こえてきた。

 

俺は部屋にあった木刀を握って、その音を静かに聴いていた。

 

やがて俺の部屋の前で足音が止まると、コンコンッて叩いてきたんだ。

 

俺が黙ったままでいると、今度は少し強く叩いてきた。

 

それでも黙ったままでいると、更に強い力で叩いてきた。

 

・・・最終的には、夜明けまでそれが続いたんだ。

 

日が昇った後、俺は友人を呼んで扉の前まで来てもらったんだ。

 

そしたら、友人は驚いた顔で俺にその扉を見せた。

 

・・・そこには何度も叩かれてへこみ、そして恐ろしい顔が血で描かれていたんだ・・・

 

今でも俺はその時の事を忘れることが出来ない。

 

あの真っ黒い顔は本当に言い表せないほど恐ろしく、強烈だったから・・・

 

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俺が最後の蝋燭を吹き消すと、あたりは真っ暗になった。

 

「さて、これで怪談百物語はお終いだよ。皆、お疲れ様。」

 

そういうと、辺りから溜息やら何やらを言い始めた。

 

「一刀の怖い話はあまり怖くはなかったわね?」

 

「そうかい?まぁ、そうだろうね。この話は少し省いたところがあるからね。」

 

「省いた?」

 

華琳が新たに蝋燭をつけ始めた。

 

他の皆も聞いていたようで、俺へと視線を向けていた。

 

「実は、あの女の正体はもう一人の俺らしいんだよ。」

 

「・・・は?」

 

「そういうことに詳しい友人がいてね?現実にいる俺を殺して、その俺に成り代わろうとしたんじゃないかっていうことらしいんだけど。」

 

俺は苦笑しながら言った。

 

そして俺はふと窓を見た。

 

そこにあるものに俺は驚いてしまっていた。

 

「・・・どうやら、本当だったみたいだね。何かが起きるっていうのは・・・。」

 

「???」

 

皆も俺の視線を追って窓を見た。

 

「・・・ッ!?」

 

そして、皆は固まってしまった。

 

だってそこにいたのは、さっき俺が話した顔が真っ黒で白い格好をした何十人もの人がそこにいたのだから・・・

 

『ギャ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!』

 

そこで俺達の意識は飛んでいってしまった・・・

 

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あとがき

 

いかがでしたでしょうか?

 

夏といえば花火や海などが上げられますが、怖い話もまた捨てがたいものですよね。

 

今回はホラーに挑戦してみましたが、上手くできたかな?っと思います。

 

自分は怖いのも平気なんですが、周りにいる人はあまり好きじゃないみたいで少し残念です・・・

 

さて、まだまだ夏本番です!!

 

皆様も夏風邪などを引かぬように体調管理などをしっかりしてくださいね♪

 

それでは本編でまた会いましょう!!

説明
読み切り版ですよ〜
今回はちょっとホラーにしてみました。
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コメント
かっかっか、ほれ、後ろに居るぞ?(東方武神)
さー何もかも忘れて寝てしまおう!そうだ!それが良い!・・・何も聞こえない聞こえない・・・ToT(深緑)
>関平さん 今まで気が付かなかった・・・どうもですwww(東方武神)
futureさんへ、あれ?あなたの後ろに何かいますよ?丁度真っ白な服を着た何かが・・・(東方武神)
べ、別に、怖がってなんか、な、ないんだからね!(涙目)(future)
nakatakさんへ、ですよね〜。最初に見たときゾクッてきますよね・・・(東方武神)
浅井とざしさんへ、あぁ、そういえば明るい部屋でも出るときは出ますよ?実際自分ありましたし?(東方武神)
きたさんへ、あなたももうすぐ・・・フフフ・・・(東方武神)
ググッてみました……あれが大量にいたら怖ぇ~…(nakatak)
さてと・・・・・今日は眠れそうにないので明るい部屋で徹夜します。(浅井とざし)
れ・・れ・霊なんて単なる錯覚でしかないって!  誰かが言っていたヨ?  あれ皆?! どこ?(きたさん)
320iさんへ、またまた〜♪声が震えているじゃないですか〜www(東方武神)
よーぜふさんへ、確かにその話もあったのですが、最後はどうしてもこれで締めたかったものですから♪(東方武神)
ヒトヤさんへ、そうですね。分からない人はググッテくださいな♪(東方武神)
・・・ガタガタプルプル・・・ 一瞬合わせ鏡のお話かとおもいました・・・何枚目か向こうに何かが横切るてきな・・・おぉぅ、寒気がとまらないのですよー(よーぜふ)
意味が分かると怖い話・・・ググって♪(ヒトヤ)
ほわちゃーなマリアさんへ、おぉ!!よく分かりましたね!!てっきり今の若い人は分からないだろうなぁと思っていたのですが、意外な伏兵がここに!?(東方武神)
関平さんへ、好きな嫁の手も震えているはず!!握って安心させてくださいな♪(東方武神)
おぉ!まさしく妖怪青行燈。百物語で有名な妖怪でしたよね、確か。それを何十人もいたら、怖いよ普通に(ほわちゃーなマリア)
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