真恋姫無双 刀香譚 〜双天王記〜 第三十一話
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 「反乱軍鎮圧のために、援軍を出してほしい、か」

 

 荊州・襄陽。

 

 荊州の牧に正式に就任した一刀は、自身の居をここに移し、多忙な日々をすごしていた。そんな時、揚州から援軍の使者として周泰が訪れた。

 

 「孫堅さまは兵はこちらで用意するので、船をできるだけ多く送ってほしいと仰せでした」

 

 一刀にそう語る周泰。

 

 「喜んで協力します、周泰さん。朱里、江陵の星と輝里に連絡を。惜しみなく孫家に協力するように、と」

 

 「はい。長沙の袁術さんにもお声をかけますか?」

 

 「いや。美羽たちはまだ、しばらく立て直しに時間がかかるだろうから、今回は江陵の水軍だけで行ってもらおう」

 

 「御意です。周泰さん、すぐに書簡をしたためますから、少々別室にてお待ちください」

 

 「はい!ありがとうございます!」

 

 部屋を出る諸葛亮と周泰。

 

 「それでお兄ちゃん。さっきの話の続きだけど、新野は月ちゃんたちに完全に任せるってことでいい?」

 

 一刀に問いかける劉備。

 

 「ああ。ただ、武将の数が少し手が足りないから、愛紗、君と藍さんで二人を助けてあげてくれ」

 

 「は。では、明日にでも出立します」

 

 「頼りにしてるよ」

 

 「はい!」

 

 嬉々として返事をする関羽。

 

 「江夏については白蓮と水蓮さん、柊さんに任せておけば、大丈夫、と」

 

 竹簡にそれぞれの名を記していく一刀。

 

 「江陵はどうしますので?」

 

 関羽が一刀に尋ねる。

 

 「紫苑に頼むつもりだよ。あと、補佐に恵(けい)さんと泪(るい)さんについてもらう、と。そんなところかな?」

 

 一刀のいう恵とは伊籍、泪とは韓嵩のことである。

 

 「では私のほうからその旨、伝えておきます」

 

 「頼むよ。さてと、今日はこれくらいかな」

 

 ん〜〜〜〜、と。伸びをする一刀。

 

 「じゃあ、私お茶を入れてくるね。おいしいお団子もあるから、一緒に持ってくるよ」

 

 そう言って席を立つ劉備。そこへ。

 

 「失礼します!!」

 

 突然、扉を開けて部屋に入ってく陳到。

 

 「どうしたんですか、蘭さん。そんなに血相を変えて」

 

 「た、たった今、宛より早馬が着きました!「曹」と「魏」の旗を掲げた軍勢に、攻め込まれていると!!その数、十万!!」

 

 『!?』

 

 思いもよらなかった事態に、言葉を失う一同だった。

 

 

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 その頃、揚州・柴桑では。

 

 「じゃあ、こっちは長江を渡った対岸、烏林で陣を張ると」

 

 「ああ。荊州の援軍を合わせたとしても、水上の戦力はやはりあちらが上だろう。となれば、一番の策はやはり、”火”だ」

 

 孫策に自身の策を説明する周瑜。

 

 柴桑城の軍議の間で、会議中の孫家の面々。ただ、そこには家長である孫堅の姿はなかった。

 

 「幸いこの時期、風は北東の風がほとんどです。時折、一日だけ逆の風が吹く日がありますが、その日さえ避ければ、問題にはなりません」

 

 周瑜に続き、そう語る呂蒙。

 

 「ただ〜、一つだけ問題があるとすれば〜、烏林は荊州領だということです〜。同盟関係にあるとはいえ〜、勝手に領内に入るわけには行きませんよね〜」

 

 間延びした口調で話すのは、姓名を陸遜、字を伯言といい、孫家の軍師三本柱の一人である。

 

 「穏のいうとおりね。まずは江夏に使者を出して、こちらの策を説明しておきましょ。確か、江夏の城主は公……なんてったっけ?」

 

 「……公孫賛、どのだ」

 

 「あ、それそれ。その人」

 

 「はあー、まったく。人の名くらい覚えておかないか」

 

 あきれる周瑜。

 

 「いや〜。何でかこの名前だけは覚えらんないのよ。……なんでかな?」

 

 「知らん」

 

 

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 「はっくしょん!!」

 

 「うお!?何だ姉貴、風邪か?」

 

 「ん〜。誰か私の噂でもしてるのかな?」

 

 そんなやり取りを交わす、公孫賛とその妹公孫越。

 

 先の孫堅による江夏攻めの後、当時の牧であった劉gから、公孫賛は江夏の城主を任された。それは一刀が牧となっても変わらず、地味に、無難に、そして普通に役目をこなしていた。

 

 「……噂をされる、ね。姉貴にそんな存在感あったっけ?」

 

 「……水蓮、それは喧嘩を売ってるのか?だったら喜んで買うぞ?」

 

 ぎろり、と。妹をにらみつける公孫賛。

 

 「じょ、冗談だって!」

 

 (喧嘩なんてしたって勝てっこないっての)

 

 子供の頃から姉妹喧嘩で姉に勝てたことなど、一度もない公孫越であった。

 

 そこに、

 

 「白蓮、いるか?柴桑から使者が来たぞ」

 

 執務室に入ってきてそう告げる華雄。

 

 本来なら新野で董卓に仕えていなければならないのだが、人手不足の親友を心配し、董卓と一刀の許しを得て、公孫賛の下に現在ついていた。

 

 「ん。わかった、すぐに行く」

 

 

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 ちょうどその頃、長江を遡る船団の姿があった。闘艦と呼ばれる大型船五隻を中心とした、五十隻の大艦隊であった。その先頭を行く闘艦に翻る旗の文字は、「許」と「劉」。

 

 「壮観、というべきだな。のう、劉?どの」

 

 「ですな。これだけの船団を用意できたこと、本当に感謝いたしますぞ、禰衡どの」

 

 劉?と呼ばれた男が、後ろに立つ一人の女に声をかける。

 

 「どうかお気になさらず。わが主公の望みは、陛下の御名の下、大陸を安寧に導く事ゆえ」

 

 そう言って拱手する、禰衡と呼ばれた女。

 

 「仲達公にはよろしくお伝えくだされ。揚州を制した後は、漢の一門として陛下を盛り立ててみせまする、と」

 

 「それがしも漢のために尽力いたす。なにとぞ良しなに」

 

 揃って頭を下げる、劉?と許貢。 

 

 「もちろんです。期待いたしますわ、ご両所とも」

 

 (漢のために、ね。ククク。よく言うわ)

 

 二人の言葉に答えながらも、気づかれぬようにほくそえむ禰衡であった。

 

 

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 ところ変わって、荊州・宛県。

 

 「……これまで、か。恋、ねね。脱出の用意を。二人で一刀の元へ行きなさい」

 

 呂布と陳宮にそう告げる、丁原。

 

 「ははうえどのは?」

 

 丁原に問う陳宮。

 

 「あたしは残る。誰かが時間を稼がないとね」

 

 「……だめ。おかあさん残るなら、恋も残る」

 

 「ねねも残るですぞ!」

 

 そう言って丁原を見つめる呂布と陳宮。

 

 「駄目だ。お前たちはこれから、一刀の力にならなきゃいけないんだ。あたしのような老いぼれと違ってね」

 

 「でも!」

 

 「恋!!」

 

 「!!」

 

 ビクッ!

 

 さらに食い下がろうとする呂布を一喝する、丁原。

 

 「……この間言ったろ?どのみちあたしの命はもう長くないんだ。心の臓が、いつ破裂してもおかしくない。……だから最後に、母親としてお前たちを守らせておくれ」

 

 笑顔で二人を、そうやさしく諭す丁原。

 

 「……おかあさん」

 

 「ははうえどの……」

 

 いつしかその両の目に泪を浮かべる、呂布と陳宮。

 

 その時だった。

 

 どおおおおんんんん!!

 

 すさまじい破壊音が響く。それが城門の破られた音だと、三人はすぐに悟った。

 

 「……どうやら、手遅れだったかね?」

 

 「そ〜でもないわよん」

 

 『え?』

 

 突然した自分たち以外の声に、思わずそちらを見る三人。そこにいたのは、

 

 「ば!化け物なのですーーーー!!」

 

 「だあああれが、地獄の底から這い出てきたような、怪物ですってーーー!?」

 

 「誰もそこまでいっとりゃせん!何者じゃ、ぬしは!?」

 

 小さな腰布(?)を身に着けただけの、どこから見ても変態にしか見えない”それ”に、丁原が突っ込む。

 

 「わたしは愛と美の伝道師、そして、ご主人様の忠実な肉奴隷、漢女(おとめ)貂蝉ちゃんよお。あ、心配しないで。わたしはあなたたちの味方よん。うふん」

 

 そう言ってニッコリと微笑む(おえ)漢女貂蝉であった。

 

 

説明
荊州と揚州における大戦。

まずは導入部です。

そしてついに”ヤツ”が来る・・・!!

皆さん、心の準備を。

では、逝ってみよー。
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コメント
禰衡!?また面白いところを^^;色々事態が動き出してきて余予断を許さない状況になってきました。これからも楽しみです!(深緑)
フィーメさま、だ、大丈夫ですか?!失明してませんか?!(狭乃 狼)
天覧の傍観者さま、き〜たぞ〜、われら〜の(違)、ば〜け〜も〜の〜ww(狭乃 狼)
紫電さま、二面作戦、とはちょっと違うかも?あーでも、裏にいるやつは同じだし・・・。(狭乃 狼)
目がぁ・・・目がぁ・・・!?(フィーメ)
出たな!貂蝉(と書いてバケモノと読む)!!!!!(天覧の傍観者)
東方武神さま、ちょーせんが王子なら、王はやっぱりひみこですかぬぇ?(狭乃 狼)
・・・漢女と言う名の変態王子がやってきたか・・・(東方武神)
ZEROさま、どおおおんん、って音は城門の破壊音です。ちょーせんの飛んできた音じゃありません。ヤツ音もなく忍び寄りますから。ブフフ。(狭乃 狼)
何でいつも飛んでくるんだろうかねえ? 危ないだろうが。(ZERO&ファルサ)
hokuhinさま、長く生きてればいろいろ見てるんでしょう。漢女以上のモノも^^。(狭乃 狼)
nayuki78さま、なぜみんな、そんなにちょーせんに反応する・・・。しかも喜んで。不可解なwww(狭乃 狼)
漢女の登場に、丁原さんの心臓がよく耐えたな(実はあんまり驚いてなかったとか)(hokuhin)
砂のお城さま、すいません、拒否反応を抑えきれませんでしたwww(狭乃 狼)
村主さま、喜ぶ要素です?筋肉だるまが?・・・・へ〜え。(狭乃 狼)
瓜月さま、だいじょーぶですかー?生きてますかー?(狭乃 狼)
とんぷーさま、うん、まさに、まさか、でしたでしょ?くす^^。(狭乃 狼)
クラスターさま、・・・壊れました?(狭乃 狼)
ちょーせん!( ゚∀゚)o彡° ちょーせん!( ゚∀゚)o彡°  ちょーせん!( ゚∀゚)o彡° ちょーせん!( ゚∀゚)o彡° ちょーせん!( ゚∀゚)o彡°(nayuki78)
戦力的には申し分無いけど・・・>漢女 何でしょう、この喜んでいいのか悪いのか反応に困る状況はw(村主7)
まさかの展開・・・此処で奴とは・・・。(とんぷー)
化物!( ゚∀゚)o彡° 化物!( ゚∀゚)o彡° 化物!( ゚∀゚)o彡° 化物!( ゚∀゚)o彡°(クラスター・ジャドウ)
よーぜふさま、本当の地獄はこれから^^。さ、誰に訪れるでしょう?www(狭乃 狼)
漢女、襲来・・・ そして戦場は地獄(主に精神的に)となった(よーぜふ)
はりまえさま、普通に出てきたら奴じゃないでしょ?www(狭乃 狼)
t-chanさま、きーたーぞー!!ぶるあああああ!!!(狭乃 狼)
ここで化け物登場、普通に現れられんのか・・・・・次回は・・・・・・どうなる!?(黄昏☆ハリマエ)
やつが、漢女がきた〜〜〜〜!!!(t-chan)
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